2023年度JCA-NET総会議案書(抄)

下記の議案書は総会で承認されました。総会報告はこちら
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2023年度JCA-NET総会議案書

JCA-NET理事会
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Table of Contents
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1. 2022年度(2022年4月〜2023年3月)の状況と活動
.. 1. 2022年度を中心とする情報通信とコミュニケーションの権利をめぐる状況
..... 1. ウクライナ戦争と国家安全保障戦略
..... 2. サイバー警察局とサイバー特別捜査隊
..... 3. マイナンバーとコロナ対応を名目とした例外扱いの拡大
..... 4. TwitterをめぐるスキャンダルとSNS
..... 5. ChatGPT(生成AI)の急速な普及と規制の議論の立ち遅れ
.. 2. セミナー
..... 1. 2022年4月
..... 2. 2022年5月
..... 3. 2022年6月
..... 4. 2022年7月
..... 5. 2022年8月
..... 6. 2022年9月
..... 7. 2022年10月
..... 8. 2022年11月
..... 9. 2022年12月
..... 10. 2023年1月
..... 11. 2023年2月
..... 12. 2023年3月
.. 3. 団体としての賛同署名など
.. 4. キャンペーン行動
.. 5. 情報発信の支援
.. 6. 資料の紹介
..... 1. 『フェミニスト・インターネット・リサーチ白書』日本語訳を公開
.. 7. APC関連報告
..... 1. 概要
..... 2. 最近の主な活動
..... 3. JCA-NETで翻訳紹介した資料
.. 8. 注意喚起、技術サポート
..... 1. JCA-NETからEMOTETの感染再流行についての注意喚起
..... 2. JCA-NETのメーリングリスト管理者のみなさまへ(報告とお願い)
..... 3. [members 288] JCA-NET会員への注意喚起のお知らせ(なりすましメール)
2. 2023年度活動方針案
.. 1. 22年度から継続して行なう活動
.. 2. 23年度の重点的な取り組み課題
..... 1. 反戦平和運動における「サイバー戦争反対」の取り組み
..... 2. ネットを中心とした監視社会反対の取り組み
..... 3. コミュニティレベルの小集会、ワークショップの開催
..... 4. 会員拡大活動と広報
..... 5. IGC京都へのAPCの参加に協力
..... 6. そのほかの重要な活動
..... 7. 理事の選出と補充についての提案
..... 8. 規約への住所、代表の明記について

1 2022年度(2022年4月〜2023年3月)の状況と活動
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1.1 2022年度を中心とする情報通信とコミュニケーションの権利をめぐる状況
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1.1.1 ウクライナ戦争と国家安全保障戦略
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2022年12月に、日本政府は国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画
の3文書(安保・防衛3文書)[1]を閣議決定した。これら文書に対しては、多く
の批判が出されてきた。特に、敵基地攻撃能力(反撃能力)を明記することによっ
て、自衛隊の存在を合憲とした上で、その役割を専守防衛に限定するという従
来の政府見解から更に大きく逸脱する内容になっている点については批判が集
中した。

他方で、JCA-NETの主要な活動領域でもあるサイバー領域――インターネット
やコミュニケーションの領域――における3文書における言及については、国
会野党の対応も含めてほどんど議論にならないまま素通りといっていい状況に
なっている。(批判としては、わずかに、日弁連の意見書[2] 朝日の社説[3]
がある) 以下では、この点を中心に問題点を簡単に述べる。

「サイバー」が他の軍事活動と比べて注目されにくいのは、その領域が、直接
人命を奪う武力行使そのものではないために、武力行使や武力による威嚇といっ
た憲法の争点となる論点との関係が分りにくく、ただでさえ、コンピュータ・
コミュニケーション領域については理解しがたさや私たちの運動の弱さから、
反戦平和運動における基本的な理解が未だに確立していない。しかし、国家安
全保障戦略で以下のように述べている通り、サイバー領域を手掛かりとして、
政府が日本の社会を全体として戦争体制に組み込むきっかけにしようとしてい
ることに、私たちは十分警戒しなければならないだろう。

「領域をめぐるグレーゾーン事態、民間の重要インフラ等への国境を越えたサ
イバー攻撃、偽情報の拡散等を通じた情報戦等が恒常的に生起し、有事と平時
の境目はますます曖昧になってきている。さらに、国家安全保障の対象は、
経済、技術等、これまで非軍事的とされてきた分野にまで拡大し、軍事と非軍
事の分野の境目も曖昧になっている。」[4]

上記のような「グレーゾン事態」という曖昧な概念がもちだされることによっ
て、従来の軍事領域の境界があいまいされつつ、社会のあらゆる領域を軍事安
全保障の領域に包含するような観点が前面に押し出されている。「偽情報の拡
散等を通じた情報戦等が恒常的に生起」といった表現によって、わたしたちの
コミュニケーションの環境が、「情報戦」の戦場として位置づけられている。
そして、情報のコンテンツの真偽が常に問題にされることになる。戦争状態を
前提にしたとき、自国の国益に反するような情報は「偽情報」とみなされかね
ず、同時に、自国政府が戦争遂行の国策として展開するプロパガンダは「真の
情報」として受け入れることを半ば強いられたり、SNSでの情報の抑制と拡散
が情報通信産業をまきこんで展開される危険性がある。

実際に、2022年暮に、自衛隊がSNSで世論操作・誘導の研究に着手したことを
複数のメディアが報じた。[5]共同通信は以下のように報じている。

「防衛省が人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を
誘導する工作の研究に着手したことが9日、複数の政府関係者への取材で分かっ
た。インターネットで影響力がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに
同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有
事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネッ
ト空間でのトレンドづくりを目標としている。」

ここで用いられている手法は、民間企業が広告などで用いている手法の転用と
もいえるものだ。海外では、選挙運動などでも用いられており、米国防総省は
Twitterのアカウントを利用して中東地域で世論操作を長年実施してきたこと
も明かになっている。([6])

こうした手法を政府が行なったときのリスクは、あからさまなプロパガンダや
政府広報による世論の扇動とは異なって、これが意図的な誘導なのかどうかの
判断そのものが不可能なために、そもそも真偽を判断しようとするための信頼
できるリソースを獲得すること自体が非常に難しくなる。

政府は、この自衛隊による世論操作の研究を否定しているが、2022年4月に防
衛省が公表した「防衛省におけるAIに関する取組」[7]という文書では「AIに
よる利活用の基礎となるデジタル・ツインの構築」として「行動・神経系のデー
タと神経科学的知見に基づいてヒトのデジタル・ツインを構築し、教育訓練や
診断治療への応用のための研究開発を推進する」ことが明記されており、「情
報戦」のなかの世論操作が課題とされていることは明かといえる。

もうひとつのウクライナ戦争とサイバー領域との関連で注視すべき課題は、自
衛隊のサイバー関連の部隊が積極的にNATOのサイバー部隊と連携し、大規模な
訓練にも参加していることだ。こうしたNATOのサイバー戦争の訓練には、自衛
隊だけでなく政府の関係省庁(内閣府、警察庁など)とともに、民間のIT事業者
や電力インフラを担う関係企業などもこぞって参加しており、サイバー領域で
は軍事と非軍事の境界が文字通りとりはらわれた取り組みが既に行なわれてい
る。(NTT[8] 東北電力グループTOINX[9] ) 事態の深刻さに比べて、国内の反
戦運動などの関心が低いことが課題である。

ウクライナ戦争のなかで、インターネットが戦争のために利用される一方で、
反政府運動を弾圧する目的でインターネットを遮断したり、サービスの利用を
禁止する傾向が世界的にも示されており、JCA-NETもこうしたインターネット
遮断に抗議する国際共同声明に何度か参加してきた。(「団体としての賛同署
名など」の項参照) こうして、インターネットそのものが「情報戦」に巻き込
まれる事態が既に現実のものになっている。2022年は、こうした事態を目の当
たりにした年になったともいえる。

JCA-NETが主に活動の分野としているインターネットは、それ自体は軍事的で
もあり非軍事的でもあるが、現状では、インターネットの言論の自由は平時を
基準に、私たちの基本的人権が保障されるべきものだという前提にたって成り
立ってきた。しかし、この前提は、崩れつつあり、むしろ戦時(有事)を前提と
して、私たちのコミュニケーションの権利を国家安全保障に従属させるような
法制度が支配的になりつつあるのではないか、という危機感をもつ必要がある。
安保戦略の文書の位置付けでは、「情報戦」の戦場とされ、逆に有事を想定し
たインターネットの言論への監視や統制を正当化してしまう危険性がある。

1.1.2 サイバー警察局とサイバー特別捜査隊
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2022年4月に新設されたサイバー警察局と捜査権をもつサイバー特別捜査隊に
ついては、発足当時、新たな監視警察国家の動きとして批判と警戒があった。

2022年4月に警察におけるサイバー戦略及び重点施策(戦略に基づき取り組む
べき施策を定めるもの)を改定し、今後3年間の警察の取組について定めた
「警察におけるサイバー戦略」を公表した。[10]

サイバー警察局は、警察庁内各局や国内外の多様な主体と連携し、サイバー政
策の)推進における中心的な役割を担い、また、サイバー特別捜査隊は、外国
捜査機関等との国際共同捜査に積極的に参画すること、情報技術解析部門では
情報技術など解析等を実施することなどが定められた。自衛隊とも共通するが、
「実態解明を進めるためには、インターネット上の情報収集、不正プログラム
の解析等が不可欠であることから、人工知能等の先端技術を活用した分析・解
析の高度化・効率化を推進」とも明記された。そして、産官学連携の推進や民
間事業者等と連携した犯罪インフラ対策の推進として」民間事業者等と連携し
て対応することが不可欠」「サービス設計の見直し、事後追跡可能性の確保」
などが言及されている。文言が抽象的なために、私たちのコミュニケーション
の権利に対してどのような規制を意図しているのか、また、民間事業者への協
力要請がどのように具体的に検討されているのか、など肝心な点については曖
昧なままだ。

サイバー警察局、特捜隊設置以後のこの1年の動きは、報道が少なく、十分に
活動実態が明かにされていない。22年度上半期について、サイバー特捜隊が担
当した「重大サイバー事案」は十数件以上で国際共同捜査も行なわれていると
いう。身代金目的の不正プログラム「ランサムウエア」による被害が大半で、
海外から行われたとみられる、と報じられている。[11]

いわゆるサイバー攻撃への対処の一環として、2022年10月に、日本政府(金融
庁、警察庁、内閣サイバーセキュリティセンター)は、サーバー攻撃の加害者
として、「ラザルス」を朝鮮民主主義人民共和国当局の下部組織を名指しで注
意喚起する声明を出した。[12]これはサイバー攻撃の攻撃者を公表し、非難す
ることでサイバー攻撃を抑止する「パブリック・アトリビューション」と呼ば
れる取り組みである。[13] 日本政府がパブリック・アトリビューションを行
うことは極めて珍しいといわれている。他方で、河原淳平サイバー警察局長は
朝日新聞のインタビューで今回のアトリビューションについて「生安部門の捜
査で得られた情報に警備部門が持つ情報などを加味して、実態を解明した結果」
であると述べている。パブリック・アトリビューションはおしなべてあらゆる
サイバー攻撃において国家を背景とする場合に、実施されているというわけで
はない。2021年にも一度パブリックアトリビューションが行なわれたが、この
時の相手国は中国だった。(前掲、警察白書) いずれの場合も、明確な根拠に
あたるものが公表されるわけではなく、その蓋然性が高いというだけで、いわ
ば犯人扱いすることになり、刑事司法というよりもむしろ政治的な手法である
という点がこれまでも批判されている。[14] こうした手法は、ウクライナの
戦争や東アジアの地域的な緊張関係に対して日本政府が一方的な立場をとり、
世論誘導を行なう傾向が強いなかで用いられていることに留意する必要がある。

また、今後、国際的な捜査協力が一層強化する可能性が高く、こうした動きに
対して私たちもまた、国際的な反監視運動の連携をつくっていく必要がある。

1.1.3 マイナンバーとコロナ対応を名目とした例外扱いの拡大
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マイナンバーカードをめぐっては、誤った登録や紐付けなど様々なトラブルが
続出している。この問題については、既に多くの批判も出されており、ここで
はあえて立ち入らない。JCA-NETとしてもマイナンバー/カードが監視社会化の
重要なインフラとなることを危惧して、複数回にわたりセミナーでも取り上げ、
共通番号(マイナンバー)いらないネットの皆さんにも協力をいただいた。

ここでは、将来の監視社会のインフラへの危惧との関連で一点に絞って問題点
を提起しておきたい。

日経XTECHは2021年3月10日[15] 、以下のように報じた。

「政府は自治体向けの「ワクチン接種記録システム(VRS)」で、
マイナンバー法の例外規定を初めて適用しマイナンバーを利用す
る。異なる市区町村が住民らの接種履歴を迅速に把握するためだ。
マイナンバー制度の今後の在り方に影響を与えそうだ。

内閣官房の情報通信技術(IT)総合戦略室(以下IT室)は2021年
2月に医療スタートアップのミラボと随意契約を結んでVRSを開発
中だ。クラウドサービスを利用して2021年4月から自治体向けに
提供する。新型コロナウイルスのワクチンは1回目の3週間後に2
回目の接種が推奨されており、住民が他の自治体に転出した場合
も自治体間で接種履歴を把握する必要がある。

マイナンバー法は行政機関や自治体がマイナンバーを含む個人情
報(特定個人情報)の「利用」や「提供」ができる事務手続きを
限定列挙している。市区町村が予防接種の記録にマイナンバーを
利用することについてはマイナンバー法に規定がある。VRSに保
存した特定個人情報を他の自治体へ「提供」する際に例外規定を
初適用する。 」

最近マイナンバーの紐付けでの入力ミスの連発が明みにでたが、実はVRSにつ
いても、その発足当時から全体の数パーセントの誤入力などのミスが報告され
ている。[16]VRSが従来のマイナンバーのシステムと大きく異なるのは、「新
型コロナ禍のワクチン接種事業では、国が一元的なシステムを構築して自治体
に貸し出すという、国と自治体が連携する新たなマイナンバー活用システムの
モデル」[17] だという点にある。

ワクチン接種について、番号法上、住民の転出入にともなって接種記録を自治
体間で共有することは、本人の同意なしでは認められていないという法解釈が
なされてきたが、22年11月になりデジタル庁は解釈変更し、第19条16号の特定
個人情報(マイナンバー)の提供制限の例外規定「人の生命、身体又は財産の
保護のために必要がある場合」で「本人の同意を得ることが困難であるとき」
という規定をワクチン接種にも適用できるとした。

このVRSをめぐる問題は、2021年当時、番号いらないネットにおいて、「今回
のワクチン接種記録システムは情報提供ネットワークシステムを使わずに、マ
イナンバーを含む個人情報を自治体間で情報連携するものであり前例はない」
こと、そして「政府が必要性・緊急性を口実にすれば、いくらでも拡大解釈で
きるような個人情報保護措置では、マイナンバー制度における安心・安全は確
保されない」と厳しく批判していた。[18]

コロナ対応の過程で、私たちの個人情報を網羅的に紐付け・把握する能力をも
つマイナンバーなど政府のデジタルシステムが、法による厳格な規制よりも、
危機管理などを口実として恣意的に運用可能なことが明かになった。そして、
自治体からも本来セキュリティ上の理由から特定個人情報をクラウドで集中的
に管理する仕組みの導入への危惧もあったにもかかわらず、事実上国がトップ
ダウンで決定してしまった。[19] 更にこのシステムは、2022年3月1日に自治
体職員が住民のマイナンバーを入力することで、他自治体における接種記録を
一括照会できる機能を実装するようになる。

とくに注目したいのは、本来、マイナンバーが自治体の住民管理を基盤とした
システムであるとされながら、VRSではむしろ国が一元的なシステムを構築し、
自治体がこのシステムを事実上強制的に利用する仕組みを導入した点だ。つま
り、こうした仕組みが導入可能なシステムの技術的な制度設計がなされている
ということに私たちは注目したい。システム設計そのものにプライバシーを保
護するような仕組みが組み込まれておらず、恣意的に技術を運用したり転用す
ることが容易であることが明かになった。現在コロナは5類に引き下げられた
が、VRSは存続したままだ。危機に際して例外的な扱いという位置づけで導入
された仕組みが、その後事態の解決や解消があっても、制度としては残り、結
果として監視強化の社会システムが定着してしまうことは、これまでも人権団
体などから危惧されてきたが、VRSとマイナンバーはこの典型的な事例となっ
ている。

1.1.4 TwitterをめぐるスキャンダルとSNS
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2022年10月、米国自動車会社テスラや宇宙開発のスペースXのCEO、イーロン・
マスクがTwitterを買収する。表現の自由を標榜して、ドナルド・トランプを
はじめとして差別的な投稿によって停止されていたアカウントの大規模復活
[20]がマスクの鶴の一声で決定される一方で、ニューヨーク・タイムズ、ワシ
ントン・ポスト、CNNなどのマスクに批判的な記者のアカウントが凍結された。
[21] 同時にマスクはTwitterの従業員の約半数を解雇するという暴挙にもでた。
[22]

更に、Twitterに対抗して台頭してきたMastodonに対しても露骨な対応をとっ
た。ITmediaの記事[23]によると、Mastodonに関連するURLを記載したツイート
ができなくなり、投稿済みのリンクを有害なリンクと表示して投稿できず下書
きも保存できないなど敵対的な排除策といえる対応をとった。そして、
mastodonのTwitter公式アカウントも凍結された。

こうした事態は、人々のほぼ生活必需品となっているSNSが、経営者の裁量に
よって検閲まがいの横暴な行動をとることができるサービスであることを如実
に示した。そして、無料で便利で皆が使うから自分も使う、という発想に疑問
を投げかけることになった。とくにTwitterやFacebook、日本ではLineのよう
なサービスが特定の営利企業による無料サービスであり、その経営方針に大き
く影響されることや広告収入による経営にとって不可欠な利用者の個人データ
の取得の問題などにも注目が集まり、異なるSNSサービスの間での自由な通信
ができない仕組みが、これら企業による顧客の囲い込みを生んでいること、望
まない誹謗中傷やヘイトスピーチに晒されるリスクが大きいなど、様々な問題
が指摘された。

これに対して、注目されたのがMastodonをはじめとする「フェディバース」
「分散型」と呼ばれるSNSだ。22年から23年にかけて急速にユーザー数を増や
した。Mastodonは特定の企業が独占するサービスではなく、プログラムはオー
プンソースとして公開されており、誰でもサーバーを立ち上げることができ、
異なるサービスとの間でも連携できるなどの特徴がある。JCA-NETのセミナー
でも何度かMasotodonなどを紹介した。

他の大手SNSも従来から抱えてきた問題を払拭できずにいる。Facebookは2021
年に内部告発者が膨大な内部データをウォールストリートジャーナルに提供す
る出来事が起き、この件は米英両議会でも取り上げられることになる。利益優
先で構築されたアルゴリズムが憎悪を煽るような投稿を助長する実態が明みに
でた。

私たちにとっての最大の課題は、数多くの問題があるにもかかわらず、人権や
社会問題に取り組む個人、団体が既存の営利目的で提供されているSNSなどの
サービスを断ち切ることができていない、という点だ。それだけSNSの社会的
影響力は大きく抗いがたい力を持っているともいえる。人権や社会的正義を推
進するためには、自分たちの理念とは抵触しかねないビジネスモデルをもつ有
力なプラットフォーマーには目をつぶり利用せざるをえない、という矛盾した
対応をとる団体が圧倒的に多い。社会運動やNGOがどうしたら、個人データを
搾取する営利目的のSNSから決別しながらその社会的影響力を削がれないよう
な情報発信の体制を構築できるか、これが喫緊の課題になっている。

1.1.5 ChatGPT(生成AI)の急速な普及と規制の議論の立ち遅れ
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2022年12月に公表されたChatGPTが、対話型による人間の会話に極めて酷似す
るコミュニケーションを可能にするものであったために、大流行となり、現在
もブームが続いている。そして、文字による対話から、更にイメージや動画な
どの生成へと、その範囲も急速に拡がっている。

こうした生成AIの仕組みを民間企業だけでなく行政も導入する動きが活発になっ
ている。デジタル庁が主管するデジタル社会推進会議幹事会は、2023年5月8日
に「ChatGPT等の生成AIの業務利用に関する申合せ」を策定し、「要機密情報
を扱う場合は原則了承をしない」とした。TechTrendsの記事[24] によると、
中央省庁ではすでに農水省が4月から導入し、文科省が5月から審議会などでガ
イドライン策定の検討を開始している。自治体の方が対応が早いようだ。東京
都、横須賀市などが導入前提での取り組みを開始している。民間企業について
はあえて言うまでもないだろう。

国会でも、ChatGPTを用いた質疑などまで登場した。2023年3月29日の衆議院内
閣委員会で立憲民主党の中谷一馬議員がChatGPTで作成した質問を岸田首相に
した。[25] 西村経済産業大臣は機密情報の取り扱い懸念が解消されれば、国
会答弁の対応などへ活用を検討していくとも報じらており[26]、行政での利用
が進むことは確実だ。

ChatGPTについては、多くの問題点が指摘されている。なかでも、大規模な言
語学習モデルに基く限り、社会が内包している差別や偏見を反映し更にこれを
増幅する懸念や、いわゆる「偽情報」の拡散などの利用の懸念、著作権との兼
ね合いなど、いずれも重要な問題ばかりだ。しかし、こうした問題の指摘にも
かかわらず、政府や企業は利用のデメリットよりもメリットが大きいと判断す
るとともに、AIの技術開発と社会インフラへの実装などでの国際競争力の遅れ
への危機感を煽るばかりで、冷静な判断がなされているとはいいがたい。

ChatGPTについては、JCA-NETとしてもセミナーで複数回とりあげ、その問題点
を議論してきた。AIが人間の「対話」領域に介入するということは、対話を前
提として成立してきた民主主義の基本的な枠組を根底から覆しかねない問題を
はらんでいる点については、十分な危機意識をもつ必要があるだろう。従来対
面で行なわれてきた議会での審議・討論、裁判、労働組合の団体交渉、住民の
行政や企業との交渉など、私たちの対面による権利行使と意思決定の場にAIが
登場することによって、事実上交渉や審議の基本的な枠組そのものが成り立た
なくなる可能性がでてきている。

他方で、日本政府はSociety5.0の一環として「人間中心の AI 社会原則」[27]
を掲げてきたが、現実の政府の政策は、むしろAIを中心とした開発を優先させ
ており、こうした政府の態度を糊塗し隠蔽するイデオロギー的な性格をもつ文
書になってしまっている。

ChatGPTなど生成AIの活用は、別の項目で述べたマイナンバー制度による個人
データの利活用や法執行機関による監視テクノロジーの活用、民間企業による
職場から消費者に至るまで生活のさらゆる局面を網羅的に把握して管理しうる
ような技術の開発・導入に至るまで、社会の様々な局面とも連動して、現代日
本の監視社会を形成している。2022年は、ポストコロナ+ウクライナ戦争とい
うこれまでにない社会状況の年となり、監視社会化の傾向が端的に露出した年
だったといえる。

1.2 セミナー
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1.2.1 2022年4月
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/184
- 4月23日(土)15時 インターネットとジェンダー
- 4月26日(火)19時 APC(進歩的コミュニケーション協会)とグローバルサ
ウスのネットアクティビズム(世界のネットアクティビズム:第一回)
- 4月30日(土)15時 「サイバー戦争」に加担しないために(戦争とインター
ネット:第二回)

1.2.2 2022年5月
---------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/190
- 5月22日(日)15時 監視・検閲との長い闘い―電子フロンティア財団とは
- 5月26日(木)19時 機械翻訳を使ってみる―大きく変化する
世界の生の声に直接接するために
- 5月31日(火)19時 ロシアの反戦運動とインターネット―ネットと実空間を繋
ぐ市民たちの闘い

1.2.3 2022年6月
---------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/197
- 6月22日(水) 19時 暗号化サービスを使ってみる:Protonを中心に
- 6月25日(土) 15時 セキュリティと使い方相談会:サポートの相互扶助のた
めに
- 6月28日(火) 19時 リスクに晒されているユーザーの権利のために闘う:ア
クセスナウ(世界のネットアクティビズム:第三回)

1.2.4 2022年7月
---------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/201
- 7月25日(月) 19時 運動のドキュメントを残すには―Internet
Archive
- 7月28日(木) 19時 データ搾取と闘う。プライバシーインターナショナルの
紹介(世界のネットアクティビズム:第4回)
- 7月31日(日) 15時 女性の権利プログラム(APC)、ヘイトをハック
する。ゲストコメンテーターに本山央子さん(アジア女性資料センター)をお招
きします。

1.2.5 2022年8月
---------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/222
- 8月23日(火) 19時 アンケート、署名集め、共同作業で脱Googleは簡単にで
きる!
- 8月27日(土) 15時 セキュリティ、プライバシーからネット活用のノウハウ
まで何でも相談
- 8月30日(火) 19時 ミャンマー軍事政権の現状と私たちのできること(仮)

1.2.6 2022年9月
---------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/224
- 9月18日(日) 政府、議会の情報収集
- 9月21日(水) Linuxユーザー情報交換会(これから始めたい方歓迎)
- 9月29日(木) フォローアップ(CryptpadとInternet Archive使い方など)

1.2.7 2022年10月
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/229
- 10月22日(土)15時 グローバル暗号化デー参加企画――暗号をライフスタイ
ルに
- 10月26日(水)19時 JCA-NETセミナー「読書の秋特集」
- 10月31日(月)19時 フォローアップ――セミナーで取り上げたテーマに関連
した質疑や情報交換

1.2.8 2022年11月
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/237
- 11月22日(火)19時 パスワード管理ソフトウェアを使ってみる
- 11月26日(土)15時 マイナンバーの問題をグローバルな監視資本主義から考
えてみる――世界中の人びとが直面してるデジタルIDのリスク
- 11月29日(火)19時 フォローアップ――セミナーで取り上げたテーマに関連
した質疑や情報交換

1.2.9 2022年12月
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/246
- 12月21日(水) 19時 分散型SNSとは:twitterからの移行、これから初める
SNS入門
- 12月24日(土) 15時 デジタル植民地主義をめぐって
- 12月27日(火) 19時 フォローアップ――セミナーで取り上げたテーマに関連
した質疑や情報交換

1.2.10 2023年1月
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/254
- 1月24日(火)19時 twitterから連合型SNSへの移行の課題
- 1月28日(土)15時 防衛3文書をサイバー、デジタル監視社会の観点から読む
- 1月31日(火)19時 フォローアップ

1.2.11 2023年2月
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/254
- 2月23日(木) 19時 市民だれもができるオンライン・オープンソース調査と
は――ベリングキャットを手がかりに
- 2月26日(日) 15時 安保・防衛3文書――サイバー領域の非軍事化と民衆のサ
イバー安全保障とは
- 2月28日(火) 19時 フォローアップ――セミナーで取り上げたテーマに関連
した質疑や情報交換

1.2.12 2023年3月
----------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/256
- 3月19日(日) 15時 ChatGPTと民主主義の未来
- 3月23日(木)19時 日本語・英語支配を克服する:機械翻訳の使い方と課題
- 3月30日(木)19時 フォローアップ

1.3 団体としての賛同署名など
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

- 英国Online Safty 法案への危惧(国際共同書簡)
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/185

- 国際共同書簡:国際的に連携している諸団体は、スリランカ当局および通信
事業者に対し、すべての人がインターネットに自由にアクセスできる状態を
維持するよう要請します
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/188

- (国際共同公開書簡)欧州議会におけるIMCO(域内市場)およびLIBE(市民的
自由)委員会宛て公開書簡
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/191

- カンボジアは、人権を侵害する国家インターネットゲートウェイを廃棄すべ
きである
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/193

- EUが提案するネット上の子どもへの性的虐待対策のための規制の危険性につ
いての共同声明
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/194

- すべての国際的なアクターへの呼びかけ:ミャンマーにおける放火と殺戮を
覆い隠すインターネット遮断を止めるためにさらなる努力を
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/200

- (プレスリリース)#WhyID: 世界銀行と危険なデジタルIDシステムは相容れな

https://www.jca.apc.org/jca-net/?page=2

- 共同声明:イラン当局はサッゲズ市での抗議活動中のインターネット接続を
確保せよ
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/226

- 要請書:アフリカ連合はティグレ州およびエチオピア全土のインターネット
接続を再開するために行動すべきだ
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/236

- 公開書簡:バングラデシュの当局および通信事業者は、すべての人が支障な
くインターネットにアクセスできる状態を維持すべきだ
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/247

- サイバー犯罪条約策定国連アドホック委員会(第4回)への公開書簡
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/252

1.4 キャンペーン行動
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

- 6月17、18日、APC、「ヘイトスピーチと闘う国際デー」キャンペーンを実施
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/199

- 2022年グローバル暗号化デーの取り組みについて(10月22日に実施予定)
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/227
グローバル暗号化デー2022の成功に感謝
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/234

- エジプト人の活動家、ブロガー、ソフトウェア開発者であるアラ・アブ・エ
ル・ファッタさんを救え
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/238
12日、東京のエジプト大使館前で抗議のスタンディング
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/240
11月12日 午前11時から12時:エジプト政府はAlaaさんとすべての政治犯を今
すぐ釈放せよ!! 緊急行動:エジプト大使館前スタンディング
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/239
11月14日13時からエジプト大使館前緊急行動::Alaaさんとすべての政治犯を
今すぐ釈放せよ!!
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/241
18日13時からエジプト大使館前:エジプト政府はAlaaさんとすべての政治犯を
今すぐ釈放せよ!!
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/242

1.5 情報発信の支援
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

賛同しました:2023年5月「G7広島サミットを問う市民のつどい」
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/233

「つどい」のブログをJCA-NETのサイトに設置しました。

1.6 資料の紹介
~~~~~~~~~~~~~~

1.6.1 『フェミニスト・インターネット・リサーチ白書』日本語訳を公開
------------------------------------------------------------------

https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/186

1.7 APC関連報告
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1.7.1 概要
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APCは現在世界中に 62 の組織会員、41 の準会員をもち、74か国で情報市民運
動のグローバル・ネットワーク組織として活動している。

◆ビジョン

APCのビジョンは、公正で持続可能な世界を創造するために、人々がインター
ネットとデジタル技術を活用し、形成することである。

◆使命

APCの使命は、活動家、組織、排除されたグループ、コミュニティ、社会運動
の力を結集して、公正で持続可能な世界を創造し、既存の権力構造に挑戦し、
インターネットがグローバルな公共財として発展・管理されるようにすること
である。

◆戦略

上記のAPCの使命は、研究調査、アドボカシー、ネットワークとキャパシティ
の構築、コミュニケーション、アウトリーチという5つの戦略によって達成さ
れると考えている。APCコミュニティにとって有益であるためには、研究調査
に基づくエビデンスを効果的に伝え、アドボカシー活動を支援する必要がある。

◆インパクト

・コミュニティの総合力を活用する

APCネットワーク内外のコミュニティの集合的な力は、変革的な行動と私たち
が共有するビジョンを中心に構築された既存および新たな関係を通じて活用さ
れている。

・最も弱い立場の人々のデジタル包摂を可能にする

排除、差別、不平等の影響を受けている人々が、インターネットやデジタル技
術を有意義に利用し、それぞれのニーズを満たすことができる。

・フェミニスト・インターネットを共同創造する

女性や多様なセクシュアリティやジェンダーの人々が、自分たちの生活実態を
反映し、それに応えるインターネットやデジタル技術に参加し、それを形成し、
共同創造する。

・オンラインでもオフラインでも人権を擁護する

人々、特に差別や抑圧に直面している人々が、デジタル・テクノロジーを通じ
て、オンラインでもオフラインでも、あらゆる人権を行使するための、より大
きな力と自律性を持つ。

・グローバルな公共財としてのインターネットのガバナンスを促進する

インターネットがグローバルな公共財として認識され、包括的で透明性が高く、
民主的で説明責任のある方法で管理される。

・環境正義と持続可能性のための集団行動を動員する

APCの集団行動と活動は、環境正義と地球保護に貢献し、インターネット、デ
ジタル技術、デジタル経済が環境に与える悪影響を軽減する。

1.7.2 最近の主な活動
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2022年11月
英国人とエジプト人の政治犯、アラさん(Alaa Abdel Fattah)の釈放を求める
JCA-NET として支援

APCメンバー会議

2022年11~12月
インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)2022 に参加

2023年 4月
インドにおけるインターネット遮断に関する法的・規制的枠組みの見直しと改
革を求める声明

2023年 5月
国連グローバル・デジタル・コンパクト・プロセスへの市民社会の参加に関す
る共同書簡

2023年 6月
国連人権理事会(HRC47)の第53回定期会合に参加。

韓国のフォトジャーナリストJan Jin-youngを支援するキャンペーン(Open Net
Korea) JCA-NET として賛同

スーダン戦争:女性と女性の人権擁護者を含む難民と国内避難民の保護を求め
る声明

1.7.3 JCA-NETで翻訳紹介した資料
-------------------------------

(APC) 2022年 Internet Governance Forumにおける優先課題について
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/245

APC ジェンダー関係の文献リスト(女性の地位委員会(CSW)第67回会合に向け
て)
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/257

APC コミュニテイアップデート(2022/10)
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/232

APCのポリシー解説。偽情報disinformation
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/180

『フェミニスト・インターネット・リサーチ白書』日本語訳を公開
https://www.jca.apc.org/jca-net/sites/default/files/2022-04/2022_apc_wh…

1.8 注意喚起、技術サポート
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1.8.1 JCA-NETからEMOTETの感染再流行についての注意喚起
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https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/255

1.8.2 JCA-NETのメーリングリスト管理者のみなさまへ(報告とお願い)
---------------------------------------------------------------

JCA-NETのメーリングリストの配信がGmailなど一部のメールサービスによって
「スパムメール」と誤認されて配信されないという事態が頻発したことから、
POEMやAPCの技術スタッフとも協議して新たにDMARCと呼ばれるなりすましメー
ル対策となる仕組みを追加した。

(参考) DMARCとは(日本ネットワークインフォーメーションセンターJCNIC)
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/dmarc.html

1.8.3 [members 288] JCA-NET会員への注意喚起のお知らせ(なりすましメール)
-----------------------------------------------------------------------

2022年5月31日になりすましメール対策をmembersに配信した。

2 2023年度活動方針案
====================

2.1 22年度から継続して行なう活動
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

例年実施してきた活動については、今年度も引き続き継続する。
- セミナー 毎月3回程度の開催
- 会員のネット関係のサポート(メーリングリスト、ブログ開設、nextcloudを
はじめとしたサービス)
- 会員および一般の人々へのプライバシー、セキュリティについての防衛対策
- 連携団体との協力(主に、共同声明などの賛同要請等への対応)
- APC及び加盟団体との協力
- ウエッブでの情報提供(重要ドキュメントの翻訳紹介など)
- グーバル暗号デーへの参加(今年の実施があれば)

会員の高齢化がある一方で、インターネットを巡る社会状況は劇的に変化して
おり、こうした変化に対応することが難しいと感じている会員も少くないと思
われる。高齢者会員が直面しやすいスパムやマルウェアなどの対策から基本的
なセキュリティやプライバシー防御のノウハウ(パスワード管理、ウエッブア
クセスにおけるプライバシー対策など)については、22年度もセミナーや個別
の相談などを通じて対処してきたが、こうした活動を23年度も継続する。

2.2 23年度の重点的な取り組み課題
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2.2.1 反戦平和運動における「サイバー戦争反対」の取り組み
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政府は「能動的サイバー防御」について、22年12月に閣議決定した安保・防衛
3文書ののなかで明記し、23年1月に内閣官房に防衛省や外務省など各省庁の出
向者45人で構成するサイバー安全保障体制整備準備室(室長、小柳誠二内閣審
議官)を新設した。[28]そして、法整備のための有識者会議を設置することも
決まった。[29]

能動的サイバー防御をはじめとするいわゆる「サイバー戦争」と呼ばれる戦争
形態は、サイバー領域における敵基地攻撃ともいえる分野から偽情報など「情
報戦」と総称される分野まで広範囲にわたり、その多くが私たちの日常的なイ
ンターネットなどの通信環境そのものを包含する。その結果として、私たちの
コミュニケーションの権利が、国家安全保障や戦争などの緊急事態を理由に制
約されることになりかねない。更には、プライバシーの権利や通信の秘密につ
いても深刻な侵害を被りかねない。

サイバー領域での戦争は、ウクライナのIT軍に日本から参加する若者がいるよ
うに[30]、戦争への参加のハードルが極めて低い。22年度の状況報告で述べた
ように、防衛省はAI活用してSNSで世論を誘導する研究に着手していると報じ
られているような事態も含めて、AIやSNSを情報戦の「武器」とした政府のプ
ロパガンダは、従来想定さていなかったような手法で人々を戦争に駆り立てる
場になる危険性がある。しかし、従来からの反戦平和運動のなかでこうしたサ
イーバー戦争の領域を主要な取り組み課題としている団体はない。JCA-NETの
力量も限られているが、こうした状況においてJCA-NETの果すべき役割は大き
いといえる。JCA-NETとしては、反戦平和運動団体により一層サイバー領域に
関心をもってもらい、共にたたかえる体制を構築するための取り組みを強化す
る年にしたい。

2.2.2 ネットを中心とした監視社会反対の取り組み
----------------------------------------------

日本の監視社会化の焦点になっているマイナンバー/カードについてJCA-NETで
は主体的にとりくめてこなかった。マイナバーカードの紐付けや登録など、シ
ステムに次々と深刻な不具合が発覚し、マイナンバーカードへの保険証一本化
といった政府の方針が大きく揺らいでいる。しかし、その反面、政府はマイナ
ンバーの仕組み全体を抜本的に見直そうとはしておらず、むしろ今後スマホ搭
載や民間への開放などマイナンバーカード社会へとのめりこんでいる。いわゆ
る監視社会問題はネットに限定された問題ではないが、ネットが監視社会に果
す負の影響は年々大きくなる一方だ。

他方で、日本には残念ながらネットの監視・プライバシー問題に焦点を当てて
とりくむ団体がない。このことも念頭に置いて、JCA-NETとしては、主にネッ
トワーク関連の課題に注目して、反監視運動についても関係団体との連携を構
築する。特に、暗号化、匿名化が私たちのコミュニケーションの重要な条件に
なっていること、オープンソース/フリーソフトウェアの普及なども関連した
活動として重視したい。

暗号化については、毎年秋に開催されるグローバル暗号化デーのイベントに参
加しながら暗号化の意義についての啓蒙活動を行なっているが、今年も取り組
む。国際的な状況としては、従来から捜査機関が解読可能な暗号のみを合法と
するような措置をとりたいと考えている政府は日本の含めて少くない。21年に
JCA-NETは「暗号規制に反対します―日本政府は「エンドツーエンド暗号化及
び公共の安全に関するインターナショナル・ステートメント」から撤退を!!」
の声明[31]を出したが、今後とも日本政府の動静に関心をもちつつ暗号規制に
反対する運動を継続したい。

匿名性については、そもそもネットへの接続や携帯電話契約などで本人確認が
厳格な日本では、匿名の権利を行使するためには、一般に普及しているネット
の使い方だけでは不十分な場合が多い。DVの被害者、企業の内部告発者、自国
政府から追跡されている難民など人権上脆弱な立場にある人達が自由にコミュ
ニケーションをとることができるためには、匿名性と暗号化は必須のツールで
ある。他方で匿名性の権利を「後ろめたいことがなければ匿名など必要ないは
ずだ」という考え方も根強くみられる。匿名の権利の重要性をアピールしつつ、
ツールを使いこなせるようなネットの文化を構築するために、セミナーやワー
クショップ、ウエッブなどでのキャンペーン、政府による規制への反対運動な
どで関係する人権団体などとも協力しながら取り組む。

2.2.3 コミュニティレベルの小集会、ワークショップの開催
------------------------------------------------------

前述のようなサイバー戦争反対、ネットにおける監視社会反対は、従来の日本
の社会運動では、活動の蓄積も少なく、技術的な議論への苦手意識や、直感的
に理解しづらい分野であったりするために、ネットでの情報発信だけでは、問
題の重要性を周知徹底できない。

コロナ・パンデミックも収束しつつあるなかで、対面での取り組みを可能な範
囲で増やしていきたい。とくに、10名前後の小規模な地域での会合をなるべく
多くの場所で開催できるような努力をしていく。全国各地にいる会員の皆さん
とも協力して、数人規模でもよいので、ざっくばらんな話し合いができる場を
もつことを企画する。

こうした小規模なミーティングを通じて、市民運動、労動運動、社会運動など
の活動の場で、反戦平和運動であれば、「サイバー戦争反対」「ネット監視社
会反対」などのスローガンを常に組み込んでもらえるような、理解と協力関係
を構築したい。こうした活動に必要な基本的なドキュメントの作成などにも取
り組む必要がある。

2.2.4 会員拡大活動と広報
------------------------

現在、JCA-NETの会員拡大のための基礎的な資料(参加の呼びかけ、JCA-NETの
紹介、費用、参加者からの声、理事の紹介などなど)が準備されていない。ウ
エッブでも参加勧誘に特化したページもない。最低限の「加入のしおり」など
の作成(紙媒体によるもの)は必要であり、今年度の取り組み課題としたい。

現在、JCA-NETの主要な情報発信のツールはウエッブとメールに限られている。
ほとんどの運動体などは、これらに加えて、SNSでの発信が当たり前になって
いるが、JCA-NETではSNSでの発信は行なっていない。FacebookやTwitterなど
既存の商用サービスの問題点が様々指摘されるなかで、あえて、これら主流の
SNSを選択することが、JCA-NETのコミュニケーションの権利運動の趣旨からみ
て妥当かどうかという観点から考えたとき、オープンソース、脱中央集権、非
営利などの特徴をもつ別の選択肢を視野に入れて、SNSでの発信についてもオ
ルタナティブの必要性について議論する機会を作りたい。

また、動画での発信についてもほとんど実現できていない。jitsi-meetの提供
はされているものの、JCA-NETが独自に動画を作成するなどには取り組めてい
ない。他方で、オンラインの集会やシンポの増え、ディスカッションやインタ
ビューなどの動画発信も当たり前になっている。動画配信=Youtubeが主流になっ
ている現状に対しても、オープンソース、脱中央集権、非営利などの特徴をも
つ別の選択肢を提起することが必要である。こうした観点からも、動画配信に
ついても検討を進めたい。

2.2.5 IGC京都へのAPCの参加に協力
--------------------------------

インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGC)[32]が今年秋に京都で開催さ
れる。APCはこのフォーラムでいくつかのセッションを主催することを企画し
ている。JCA-NETとしてもセッションの実施について、協力していく。

2.2.6 そのほかの重要な活動
--------------------------

ジェンダー問題への取り組みは、APCの動向[33]をみてもわかるように、重要
課題になっている。この点について、会員との議論を深めていく。理事のジェ
ンダーバランスの問題も含めて、喫緊の課題である。

ネットの活用についても、セキュリティやプライバシーの観点だけではなく、
商用サービスや一般的に普及しているサービスとは異なる問題意識をもった多
様な利活用の可能性を追及することが重要になっている。たとえば
- オープンソース/フリーソグトウェアを標準とするようなライフスタイルの
提案。
- 動画の編集、配信などのノウハウ
- 支配的なネット文化に対する対抗文化運動あるいは対抗メディア運動
などは重要な領域である。文書、表計算、プレゼンテーションをMSOfficeを標
準とするのではなくLibreOfficeが標準になるような環境を文化運動として作
る必要もある。また、セミナーでも取り上げてきた課題になるが、LinuxOSの
紹介も継続したい。

上に挙げた活動方針案は、会員との連携を含めて、どれだけ人材を確保できる
かによっても取り組める範囲も変わる。理事の補充や、理事にはなってもらえ
ないにしても協力してもらえる人間関係お拡げる努力が必要である。

2.2.7 理事の選出と補充についての提案
------------------------------------

次期の理事立候補者は別紙の通りである。理事の数は圧倒的に少なく、またジェ
ンダーバランスを著しく欠いており、これらを解決する上でも、24年度総会に
おいても、理事の補充を行うことを提案する。

2.2.8 規約への住所、代表の明記について
--------------------------------------

JCA-NETの事務局住所や理事改選に伴う理事と代表の変更については、規約に
明記することとしたい。

理由。金融機関へのこれらの事項の変更届けについては、規約または議事録に
明記されていることを必須の条件とするばあい(ゆうちょなど)があるため。

Footnotes
_________

[1] https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou.html

[2] https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/opinion/2022/221216…

[3] 朝日
https://www.asahi.com/articles/DA3S15540935.html

[4] https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou/nss-j.pdf

[5] 共同
https://www.47news.jp/8673315.html

[6] (Intercept) Twitterが国防総省の秘密オンラインプロパガンダキャンペー
ンを支援していたことが判明」
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowled…

[7] https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/senryaku/9kai/siryo7.pdf

[8] https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/04/19/230419a.html

[9] https://service.toinx.co.jp/tsq/news_003#heading-1

[10] https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/202204_senryaku.pdf

[11] 時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022093000672&g=soc

[12] NHK
https://www.nisc.go.jp/pdf/press/20221014NISC_press.pdf

[13] 警察白書
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r04/honbun/html/y3321000.html

[14] The Problem With Ill-Substantiated Public Cyber Attribution: A
Legal
Perspective.
https://carnegieendowment.org/2022/03/28/problem-with-ill-substantiated…

[15] 日経XTech
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05289/

[16] 日経XTech
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06052/

[17] 日経XTech
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/052901295/

[18] コロナ予防接種で崩される!マイナンバーの個人情報保護(2)
http://www.jca.apc.org/activist/?m=202103

[19] 日経XTech
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01614/040700004/

[20] NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221125/k10013903221000.html

[21] NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221216/k10013925251000.html

[22] 毎日
https://mainichi.jp/articles/20221109/k00/00m/020/155000c

[23] ITmedia
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/16/news161.html

[24] TechTrend
https://techtrends.jp/trends/utilize-chat-gpt/

[25] 日経
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA28BY00Y3A320C2000000/

[26] NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230411/k10014035011000.html

[27] 統合イノベーション戦略推進会議、20199年3月
https://www8.cao.go.jp/cstp/aigensoku.pdf

[28] 日経
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA3186D0R30C23A1000000/

[29] 日経
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA242HE0U3A620C2000000/

[30] MHK
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pM2ajWz…

[31] https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/104

[32] https://www.intgovforum.org/en 総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin06_02000261.html

[33] https://www.apc.org/en/topic/feminist-internet-0