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2022年度JCA-NET総会議案書
JCA-NET理事会
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2022年7月3日総会にて採択
Table of Contents
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1. 2021年度の情勢について
.. 1. デジタル庁の設置
.. 2. サイバー警察局の設置
.. 3. 監視社会化と戦争
2. JCA-NETの活動
.. 1. セミナーやイベント
.. 2. 声明など
.. 3. APC関連
.. 4. セキュリティ対策など
..... 1. Gmailによるブロックへの対処
..... 2. EMOTET感染
..... 3. パスワード管理
..... 4. ドキュメントの翻訳
..... 5. その他
3. 2022年度の活動方針案
.. 1. コミュニケーションの権利運動の推進
..... 1. 社会運動、市民運動のコミュニケーションのライフスタイルを変える
..... 2. 政府と企業の監視社会化への取り組み
..... 3. JCA-NETサービスの充実に向けて
..... 4. ネットアクティビズムと高齢化問題
..... 5. セミナーの継続
..... 6. APCとの連携
.. 2. JCA-NETの運営体制について
1 2021年度の情勢について
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1.1 デジタル庁の設置
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2021年は、日本のデジタル社会やインターネットをめぐる国家の統治機構に大
きな転換が起きた年になった。2021年9月に「デジタル社会形成の司令塔とし
て、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、
デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指」
すとしてデジタル庁が新設された。政策課題としてマイナンバー(個人番号)
制度を中心的に担う組織となった。マイナンバーについては、官民が保有する
個人データを統一的に集約して「利活用」することに前のめりになっており、
何年もの間争点となり裁判にもなってきた「番号」による監視社会化について
の議論は十分に検討されないままになっている。結果として、政府、民間の個
人データの保有と利用に関する実態、マイナンバーを支える技術の実態などは
ブラックボックスのままである。
1.2 サイバー警察局の設置
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2021年秋の通常国会には、もうひとつの重要な制度改正が提案された。警察庁
によるサイバー警察局の2022年4月新設に向けた刑法改正が国会に上程され、
ほとんど実質的審議もなされないまま、野党の立憲民主党や国民民主党なども
賛成して成立した。警察庁が最も上位の部局となる「局」規模の新設を行うの
は1994年の生活安全局設置以来のことである。サイバー警察局設置に伴って、
戦後警察制度の根幹をなしてきた自治体警察の体制を否定し、全国を捜査対象
とする事実上の国家警察として警察庁直轄のサイバー特別捜査隊も新設された。
サイバー領域は、憲法21条で明記されている「集会、結社及び言論、出版その
他一切の表現の自由は、これを保障する」「検閲は、これをしてはならない。
通信の秘密は、これを侵してはならない」とされている領域そのものである。
サイバー警察局は、この憲法で保障された私たちの言論・表現領域を専門に取
り締る捜査機関である。4月に設置されたばかりであり、今後サイバー警察局
やサイバー特別捜査隊がどのように運用されるのかについては不透明である。
今後の動向を注視したい。
1.3 監視社会化と戦争
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2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナへの侵略は、SNSがコミュ
ニケーションの重要なツールとなっている時代に起きた大規模な戦争である。
ロシアによるウクライナ侵略とともに、インターネットの環境もまた戦争に巻
き込まれた。ロシア政府はFacebookやTwitterなどのコミュニケーション・プ
ラットフォーム制限を試み、ウクライナ政府はロシアで登録されたすべてのド
メインをブロックするようICANNに訴えるといった行動をとった。また、ロシ
アへの経済制裁の一環としてインターネットへのアクセスに関連するサービス
の停止もありうるのではないかという危惧が拡がるなかで、コミュニケーショ
ンの権利を確保する運動も拡がった。ロシアでは、オンライン検閲が劇的に増
加し、新たな「フェイクニュース」法によってニュースメディアだけでなく、
ブロガー、一般市民が政府の公式見解に反する情報を流した場合最高で15年の
禁固刑が導入された。また、ロシアによるとみられるウクライナへのサイバー
攻撃も急増した。他方でウクライナ政府は、Clearview社の顔認識システムを
導入して、ロシア兵の戦争犯罪の証拠収集などに利用していることが報じられ
た。Clearview社のシステムはプライバシーへの深刻な侵害をまねくとして米
国などで使用禁止とされている技術であり、戦時という例外状態であればプラ
イバシー侵害技術の使用も容認できるのかどうかをめぐって判断が迫られる事
態になっている。
戦争に限らず、政府が強権的に反政府言論を抑圧するような事態が置きている
国、地域では、選挙や反政府運動などの重要な政治課題への対応として、政府
が強権的にインターネットを遮断する動きが目立っている。また、捜査機関に
よるネット監視や捜査の必要性から、エンドツーエンド暗号化の弱体化(捜査
機関による暗号コンテンツへのアクセスを確保するためのバックドアの設置な
ど)への国際連携や法整備などの動きもみられ、こうした動きに対してインター
ネットの市民的権利やプライバシー団体が繰り返し警告と批判の意思を示して
きた。
戦争のなかで、巨大プラットフォーマーの動向や当事国や同盟国などのインター
ネット関連政策によってコミュニケーションの権利が大きく影響を受ける事態
が鮮明になっている。コンテンツの検閲、アクセスの遮断や規制、軍への強力
など、戦争状態にあって、プラットフォーム企業が文字通りの意味での中立を
維持することはできないこと、また、情報発信が厳しい弾圧や監視に晒される
なかで、戦争に反対する言論の権利を確保するための国際的な支援体制を、民
衆みずからが構築することの大切さが改めて明かになったといえる。
なおJCA-NETとしてこうした状況に対しては、APCと連携して共同声明を出した
り、諸外国の人権団体などと連携して共同書簡を出すなどの活動をしてきた。
(下記の「JCA-NETの活動」参照)
2 JCA-NETの活動
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2.1 セミナーやイベント
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以下、時系列(新しい日付から古い日付へ)でセミナーなどの開催実績と配布資
料へのリンクを一覧として報告します。
6月
- 6月22日(水) 19時から:暗号化サービスを使ってみる:Protonを中心に
- 6月25日(土) 15時から:セキュリティと使い方相談会:サポートの相互扶助
のために
- 6月28日(火) 19時から:リスクに晒されているユーザーの権利のために闘う:
アクセスナウ(世界のネットアクティビズム:第三回)
5月
- 5月22日(日)15時から:監視・検閲との長い闘い―電子フロンティア財団と
は
- 5月26日(木)19時から:機械翻訳を使ってみる―大きく変化する世界の生の
声に直接接するために
- 5月31日(火)19時から:ロシアの反戦運動とインターネット―ネットと実空
間を繋ぐ市民たちの闘い
4月
- 4月23日(土)15時から:インターネットとジェンダー
- 4月26日(火)19時から:APC(進歩的コミュニケーション協会)とグローバルサ
ウスのネットアクティビズム(世界のネットアクティビズム:第一回)
- 4月30日(土)15時から:「サイバー戦争」に加担しないために(戦争とインター
ネット:第二回)
3月
- 3月23日(水)19時から:ネットとパソコン使い方情報交換会―オープンソー
スとセキュリティ―
- 3月26日(土)15時から:戦争とインターネット―民衆のサイバーセキュリティ
- 3月30日(水)19時から:サイバー警察局とマイナンバー制度
2月
- 2月19日(土)15時から:海外情報を調べる
- 2月20日(日)15時から:Jitsi-meetでオンライン会議(会議主催者のノウハウ)
- 2月23日(水)19時から:JCA-NETの紹介(入会キャンペーン)
1月
- 1月23日(日)15時から:セミナー1 ネットで情報収集:ノウハウの共有のため
に
- 1月26日(水)19時から:セミナー2 Linux入門・情報交換会
- 1月30日(日)15時から:セミナー3 パスワード管理
2021年12月
- 12月22日(水)19時から:世界各地で起きているインターネット遮断
- 12月26日(日)15時から:セキュリティとプライバシー対策―来年に向けて―
11月25日: JCA-NET会員集会(オンライン) JCA-NETのこれまでの活動と今後の
活動について、会員の皆さんと意見交換の場を設けます。
11月
- 11月27日:『反対派を防衛する』Part3を中心に
- 11月30日: インターネットガバナンスって何?ネットの民主主義の屋台骨が
ど
うなっているかを知る
グローバル暗号デーの取り組み
- 10月21日 (木)JCA-NET月例セミナー特別編 午後7時から
(テーマ)国際人権運動から暗号の重要性を考える
- 10月23日(土) シンポジウム 午後1時から3時
(テーマ)監視社会と暗号:小笠原みどり さん(監視研究者、カナダ在住)宮崎俊
郎さん(NO!デジタル庁、共通番号いらないネット)小倉利丸さん(JCA-NET:司会)
9月
- 9月18日(土) 15時から17時ころ:ブログを作る(2回目)
- 9月22日(水) 19時から21時ころ:警察庁サイバー局構想とは
- 9月25日(土) 19時から21時ころ:Tutanotaブログを読む:個人情報防衛のた
めに(その2)
8月
- 8月25日(水) 午後7時から:Linux情報交換会
- 8月28日(土) 午後3時から:ブログを作ろう
- 8月31日(火) 午後7時から:Google脱出作戦:個人情報防衛のために(その1)
7月
- 7月25日(日) 15時から17時ころ:オリンピックで加速する監視テクノロジー
- 7月27日(火) 19時から21時ころ:Jitsi-meet使い方セミナー
- 7月31日(土) 15時から17時ころ:暗号化メール(ProtonmailとTutanota)を使っ
てみる
6月
- 6月20日(日) 15時から17時ころ:生体認証技術の禁止をめぐって
- 6月26日(土) 15時から17時ころ:ギガスクール問題
- 6月28日(月) 19時から21時ころ:Jitsi-meetはじめての方のための使い方入
門
5月
- 5月15日(土) Jitsi-meetはじめての方のための使い方入門
- 5月16日(日) Jitsi-meetでストリーミング配信
- 5月22日(土) マイナンバーと監視社会
- 5月29日(土) パスワード対策を今度こそなんとかしてみよう!!
4月
- 4月17日(土) 15時~17時ころ:個人情報漏洩の実態を自分で調べてみる
- 4月21日(水)19時~21時ころ:Linuxに乗り換え! どうしたら実現できるか、
体験交換会
(日経Linux2021年5月号付録より)
- 4月24日(土)15時~17時ころ:Jitsi-meet使い方セミナー
2.2 声明など
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ウクライナのインフラと市民社会へのサイバー攻撃は人権侵害だ(2/18)
(賛同)(声明)警察法改悪反対、サイバー警察局新設に反対します(2/14)
Safer Internet Day 世界暗号化連合運営委員会の声明(2/8)
(賛同)Re: 虐待とネグレクイトをなくすためのインタラクティブ・テクノロジー
2022年法(EARN IT Act)」への反対意見
(賛同)専門家が英国政府の反暗号化キャンペーンに異議(2/8)
(賛同)JCA-NETは130余りの団体とともに、国連のサイバー犯罪条約案に人権セー
フガードを盛り込むよう国連に要請
(賛同) 国際開発銀行、国連、国際援助機関、資金調達機関、各国政府のリー
ダーに宛てた公開書簡
(紹介)WhyID: アフガニスタンの国際的なアクターは、危険な生体認証の痕跡
を一掃し、制限しなければならない(8/25)
(賛同) 暗号にバックドアを設けることを決定したAppleへの共同公開書簡
(8/19)
(呼びかけ団体)(共同声明)東京オリンピック・パラリンピックにおける生体認
証技術の使用を直ちに中止することを求める(7/9)
(賛同)(グローバル暗号化連合)ブラジル刑事訴訟法改革は、暗号化を弱めるも
のであってはならない
(賛同)人工知能のための普遍的なガイドライン(2018年起草の声明に2021年7月
に賛同)
(賛同) 東京オリンピックにおけるIOC/JOCによるGPS等による監視の撤回を要
求します(7/13)
(賛同) 集団的・差別的な監視を可能にするバイオメトリック技術の世界的禁
止を求める公開書簡(6/7)
(紹介) (国際署名の呼びかけ)テクノロジー企業はパレスチナ人のコンテンツ
を黙らせるな
(賛同) 市民共同声明:デジタル監視6法案の制定に反対します
2.3 APC関連
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APCのポリシー解説。偽情報disinformation(2/9、オリジナル21/8/30)
韓国のwomenonweb.krの閉鎖を阻止するための提訴を支援する国際的な支援の
取り組み(3/10)
翻訳紹介:デジタル社会の内側。インターネットガバナンス8つの課題(デイビッ
ド・ソウター)
韓国PIDMC、フェイスブック社とそのユーザーとの集団的紛争調停を開始(7/8)
APC:抗議活動に伴うインターネットの遮断に関する共同口頭声明(国連人権理
事会 第47回会合)(7/1)
(APC)2021年5月のパレスチナ人に対するデジタル権利侵害の劇的な増加(5/31)
2.4 セキュリティ対策など
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2.4.1 Gmailによるブロックへの対処
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2022年1月ころから、メーリングリストのメールがGmailに届かないという問題
が発生し、メーリングリストの管理者から、対処に苦慮しているという声が寄
せられた。対処として、たとえば、Gmailの登録者に別のメールアドレスでの
登録変更をお願いする、Gmail宛に善処の要望をメールで送信するなど対処の
努力をした。APCの技術者とも相談しながら、最終的には、これまで導入して
こなかったDMARCなど新たな認証システムを導入することで解決を図った。
JCA-NETのメーリングリストをお使いの皆様へ: Gmailから別のメールアドレス
への変更のお願い(1/29)
2.4.2 EMOTET感染
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2022年度の出来事であるが、重要なので、簡単に報告する。2022年4月ころか
らEMOTETの急激な感染拡大が報告されるようになった。JCA-NETでも理事のひ
とりが感染し、JCA-NETやPOEM関係者にもなりすましメールなどが大量に送信
される結果となった。サーバーは感染していない。こうした状況を踏まえて、
会員向けにEMOTET感染の危険性を周知するように努力した。
特に、社会運動や市民運動などの活動家のパソコンが感染した場合、住所録や
メールのコンテンツを窃取されることによる影響は深刻である。この点を十分
に理解してもらえるようキャンペーンを繰り返す必要がある。
2.4.3 パスワード管理
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パスワードの管理について、改めてお願い (2/16)
Google Chromeをお使いの会員の皆さんへ ――ユーザー行動追跡の仕組みFLoC
が問題視されています
2.4.4 ドキュメントの翻訳
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「反対派を防衛する―社会運動のデジタル弾圧と暗号による防御」グレンコラ・
ボラダイル
APCのインターネットフェミニストリサーチ白書を訳してウエッブに掲載
2.4.5 その他
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「子供の性被害防止プラン(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)202
2(仮称)」(案)についてのパブリックコメントを提出
3 2022年度の活動方針案
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3.1 コミュニケーションの権利運動の推進
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3.1.1 社会運動、市民運動のコミュニケーションのライフスタイルを変える
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JCA-NETの会員の高齢化も含めて、高齢化した活動家がインターネットのセキュ
リティの対応に追い付いていない現状があり、社会運動にとってのリスク要因
になっている。パスワードの管理などセキュリティの基本がおろそかになって
いるだけでなく、パソコンの苦手意識から、商用サービスや営利企業のビジネ
スモデルの戦略にとりこまれているケースが一般的だろう。
JCA-NETとしては、これまでもセキュリティ対策の基礎をセミナーなどで提供
してきたが、更に、コミュニケーションは「商品」ではなく、また企業の利益
が優先されたり、国益に従属するものではなく、私たち一人一人の人権であり、
強固な民主主義の基盤であること、また人々の基本的な権利行使の実践的な場
そのものでもあることを認識して、ネットやパソコン環境のオルタナティブを
提案することを継続していきたい。とくに、オープンソースやフリーソフトウェ
アなどの活用や、ユーザー相互の協力関係がより一層可能なコミュニティの枠
組を構築していきたい。
こうしたことから、コロナによる公共施設の閉鎖などに対応して、オンライン
での会議などを促進する目的でJitsi-meetを提供してきた。一定の利用があり、
30名までならば、十分実用性があり、会議なのでも活用されている。今後も
Jitsiの提供を継続していく。
3.1.2 政府と企業の監視社会化への取り組み
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いわゆる監視社会化への傾向は年々強まる一方である。米国やEUのようにイン
ターネットを中心に市民的自由やプライバシー問題に専門に取り組む団体が日
本には存在しない。JCA-NETがこうした役割を果すには力不足でもあるが、関
係諸団体とも連携しつつ、取り組みを進めたい。とくに、監視社会問題のなか
でも、暗号化規制(エンドツーエンド暗号化への規制など)は最重要課題のひと
つだが、ほとんど日本国内では取り組まれていないし、理解もされていない。
この点で、海外との連携を図りつつ、この分野での運動については、一定程度
のリーダーシップを発揮することが必要だろう。
また、日本の社会運動で草の根の運動から全国規模の運動まで、反戦平和運動
の層は比較的厚いものがあるが、「サイバー戦争」に関しては関心が高いとは
いえず、憲法9条と「サイバー戦争」の関係についても議論が十分ではない。
海外では、多国籍企業の監視技術が軍や警察によって利用されている問題への
関心が高い。この分野でも、JCA-NETが担いうるものがある。
デジタル庁(マイナンバー)やサイバー警察局、そしてウクライナ戦争で急展開
しつつある「サイバー戦争」などから民間企業による生体認証技術やAIの利用
まで、日本ではプライバシーの権利や市民的自由の権利を明確に保障した制度
的な枠組が存在しない。政府や企業による監視社会化を抑止するような法制度
についても関連する諸団体と連携しながら取り組む必要がある。
3.1.3 JCA-NETサービスの充実に向けて
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JCA-NETとしては、オープンソースによるオルタナティブなサービスの提案を
これまで以上に充実させていく必要がある。たとえばライブストリーミングや
SNSについても、JCA-NETが独自に設置可能な選択肢を検討し、提案することに
よって、市民運動、社会運動の情報発信のプラットフォームを大企業に依存す
る体質から脱却できるような支援をより強化する必要がある。
Jitsi-meetについては一定の利用があるが、ストリーミング・サービスへの要
望もあるため、今後どのようにサービスを拡充できるかPOEMとも相談していく。
とくにストリーミングはYoutubeへの依存が大きい。少なくとも、代替的なサー
ビスをオープンソースによって独自に提供することができれば、選択肢の幅を
拡げることにも寄与できるだろう。オープンソースによる分散型のSNS(たとえ
な、mastodon)や動画提供((たとえばpeertube)が可能になってきており、こう
したサービスを提供することが現実的に可能かどうかなども含めて、巨大多国
籍企業に依存する情報発信の環境に対するオルタナティブが提供できるような
検討を始めるべきだろう。
会員向けのクラウドサービスのNextcloudについては、まだ利用は十分ではな
いように思われる。会員のなかで一定程度普及すると、利用にはずみがつくと
思われるが、そこまではいっていないと思われる。同種のGoogleなどのクラウ
ドを使うことになっている会員も多いのではと思われるが、他方で、そもそも
クラウドを利用するということ自体が敷居の高いことと思われているところも
ある。Nextcloudそのものは定評のあるオープンソースであるが、活用方法に
ついての告知が不十分である。この点を反省して、今年度はさらに利用を促進
させたい。また、ブログの作成などについても、十分には浸透していない。こ
れらは、会員組織として、会員の利用をサポートできる体制を一層充実させる
必要がある。
3.1.4 ネットアクティビズムと高齢化問題
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市民運動や社会運動の高齢化もあり、草の根の運動体のなかには、メールを利
用することなどで精一杯で、セキュリティの確保など基本的な事柄が十分では
ない場合がある。企業などがセキュリティを重視した組織的な対応を行うなか
で、運動の側が大きく遅れをとっている印象は否めない。こうした事態を放置
しておくと、ますます市民運動や社会運動が監視社会のリスクに晒されかねな
い事態にもなる。民衆のサイバーセキュリティの必要と具体的なノウハウを提
供する体制を構築していきたい。
草の根の市民運動などでは、ブログなどの設置も行なわれていない団体がまだ
多く見受けられる。基調な活動を多くに人々と共有できる技術的な支援は、と
くに高齢化した団体にとっては解決が困難な課題として放置されがちだ。
JCA-NETとしては会員サポートを含めて、こうした状況を打破する試みに挑戦
したい。このことは、他方で、無料で簡単に利用できるという理由だけで、大
企業の営利目的のサービスを、そのビジネスモデルの問題点などへの考慮なし
に、利用する人達も多いという現状に対する、挑戦でもあることを念頭に置い
た取り組みが必要だろう。
3.1.5 セミナーの継続
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毎月のJCA-NETセミナーは今年度も継続して開催する。可能であれば、オフで
の開催も視野にいれる。
3.1.6 APCとの連携
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今年度も継続し、可能な限り豊富なAPCのコンテンツを日本語で提供し、また、
日本の状況もAPCのメンバー団体に発信できるような努力を重ねたい。
3.2 JCA-NETの運営体制について
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最大の課題は、理事会のジェンダーアンバランスである。少なくとも次期の改
選に際しては、半数を女性の理事にすることを目指したい。ジェンダーアンバ
ランスを招いた原因として、JCA-NETの活動そのものがジェンダーに焦点を当
てて課題設定することができていないという問題がある。こうしたジェンダー
課題に取り組むには、女性のより一層の参加なくしては実現できないのだが、
理事会の構成が男性のみという現状ではジェンダーへの取り組みには限界があ
り、「ニワトリが先かタマゴが先か」というような事態に陥ってしまっている。
今年度の課題としては、意識的にジェンダーを課題としたプロジェクトを立ち
上げて、女性の会員による独自のとりくみを支援するような体制をまず作るこ
とを目指したい。
そのほか、規約が現状にそぐわない箇所が散見する。この件については、継続
して検討し、必要な改訂ができるようにする。