以下は、JCA-NETも署名している国際的なデジタルID制度に関する国際開発銀行、国連、国際援助機関、資金提供機関、各国政府に向けた公開書簡の翻訳です。
国際開発銀行、国連、国際援助機関、資金提供機関、各国政府の指導者に向けた公開書簡。
私たちは、世界中でデジタル・アイデンティティの開発に取り組んでいる市民社会組織、技術者、専門家のグループです。私たちは、考慮不足、設計不良、および実装不良のデジタル ID プログラムが人命に及ぼし得る影響 を考慮し、人権を保護するために私たちの勧告に従うことを強く求めます。私たちは、デジタル ID の「何を」「どのように」「いつ」「誰が」を追求する前に、このデジタル ID プログラムの目的、必要性、および利点に関するいくつかの基本的な疑問に答えなければならないことを強く訴えます。私たちは声を上げて、この最初の基本的な質問 - なぜ ID なのか - を問うために書いています。
基本的な疑問。なぜ ID なのか？
ある種のデジタル ID プログラムは、法的な識別や公共サービスへのアクセスを与えることで、ユー ザ、特に周縁化された集団のユーザに権限を与えるという一般的な想定がなされている。デジタル ID プログラムは、従来の ID と同じ利点を利用者に提供することができ、テクノロジーのスケーラビリ ティという利点を享受することができる。しかし、デジタル ID プログラムのスケーラビリティは、その危害もスケーラブルにする。ほとんどのデジタル ID プログラムが、利用者をリスクにさらすことなく、利用者にさらに便益を もたらしたことを証明するにはほど遠い。
これらのプログラムの現在の正当化理由は、多くの場合、机上の空論であり、約束された利点の十分な裏付けがないままプログラムが導入されている。一方、不適切に設計され実施されたデジタル ID プログラムによって個人が被る危害は現実的で、 多くの場合、修復不可能である。残念なことに、社会から疎外された人々が最も大きな危害を被る。これらのデジタル ID プログラムは、地域や地方の現実を認識することなく、また最も弱い立場の 人々を含む主要な利害関係者と協議することなく設計・実施されることがあまりに多い。多くの先進国が同様のデジタル ID プログラムに疑問を持ち、反対しているというのに、なぜ開発途上国で日常的に導入されているの だろうか。
ヒューマン・エージェンシーと選択が、人間の尊厳の基礎を形成している。何らかのプログラムに登録される人間は、システムとその正当性を理解し、その構造 と実装の設計に参加する基本的な権利を有する。デジタル ID の「何を」「どのように」「いつ」「誰が」を追求する前に、このようなデジタル ID プログラムの目的、必要性、および利点に関するいくつかの基本的な疑問に答えなければならない。
デジタル ID プログラムの現在の問題点
ほとんどのデジタル ID プログラムは、ユーザに付加的な恩恵を与えることなく、中央集権的でユビキタスな モデルにしたがっている。中央のデジタル ID は、各ユーザの他の複数の ID や目的にリンクされている。このフレームワークは、ユーザーの日常的な活動や トランザクションを追跡し、記録する機能を提供する。
注目すべき事例として、これらのプログラムは、そのようなプログラムに関連するデータベースにアクセスできる政府や民間団体によって、ユーザーの360度のプロファイリングや監視のリスクを生み出す可能性があることが実証されている。このような生態系は、ユーザーのプライバシーに対する基本的な権利に大きな損害を与える可能性がある。この問題は、包括的なプライバシーと監視の枠組みがなく、制度的基準が危うく、独立した執行機関が弱い国々で顕著になる。このような国では、政府や民間企業がプライバシーやデータ保護の基準を先延ばしにして弱める一方、危険なデジタル ID プログラムを可能にする財政的インセンティブが強くなる。
このような中央集権的プログラムの支持者の中には、いわゆる「single source of truth」モデルを実現するために、その配備を擁護する者もいる。しかし、これらのモデルは、むしろ単一障害点[「この1カ所で障害が発生するとシステム全体が停止してしまう」という致命的な部分のこと]を生み出す結果となり、コミュニティや全住民の機密情報へのアクセスを提供する可能性がある。また、このような中央集権的なアーキテクチャは悪意のある行為者を惹きつけるため、サイバーセキュリティのポリシーに反することになる。エコシステムへの 1 つの侵入が、データベースの神聖さと安全性を破壊する可能性がある。
ほとんどのデジタル ID プログラムの強制的な性質は、排除的な結果を招く。テクノロジー・インフラの不備、テクノロジー設計のギャップなど、さまざまな事情で登録できな い周縁化されたグループは、基本的な権利を行使することができない。デジタル ID プログラムへの登録は任意でなければならない。デジタル ID は、基本的なサービスや権利を利用するための前提条件であってはならない。
周縁化された人々が最も大きな影響を受けている。難民、トランスジェンダーの人々、HIVの影響を受けた人々などの集団は、援助を受けるための前提条件として、デジタルIDプログラムへの登録を要求されている。援助プログラムを担当する国際機関や組織が、このようなデジタルIDの枠組みへの登録を要求しているのを見ると、胸が痛む。脆弱な人々は、このような状況下では交渉力が全くないことを理解することが不可欠だ。
このような状況での同意は有効な同意とは言い難く、このような登録は強制的なものになりかねない。援助提供者は、これらの人々の権利を尊重しながら、援助を提供する義務がある。
指紋、虹彩スキャン、顔面形状などの生体認証は、個人をシステムに登録し、ユーザーを認証する手段としてますます一般的になってきている。生体情報は、他の認証方法と同様、ハッキングに対して脆弱である。しかし、パスワードとは異なり、生体認証は必要に応じてリセットしたり、変更したりすることができない。そのため、生体情報の漏洩やハッキングによる被害を修復し、生体認証システムの健全性を回復することはますます困難になり、より高いセキュリティリスクをもたらす。
重要な疑問と提言
上記のすべての問題を考慮すると、デジタル ID プログラムの普及は深く懸念される。人権は、デジタル ID プログラムに関連するすべての検討事項の中心を形成する必要がある。
したがって、私たちは、このようなデジタル ID プログラムの提唱者と支持者に次のことを要請する。
[1] WhyID に回答する 基本的な WhyID の疑問には、任意の地域または国でのデジタル ID プログラムの開始時に問われなければならないいくつかの要素を含んでいる。
これらのプログラムを推進する人々は、まずこの基本的な WhyID の疑問を批判的に評価し、それに答えるとともに、その合理的根拠の証拠を提示しなければならない。私たちはこの質問に答えることに加えて、これらの関係者はすべての関係者を積極的に関与 させ、協議しなければならない。説得力のある論理的根拠、証拠に基づくポリシー計画、および危害を回避し修復するための対策がない場合、デジタル ID プログラムは導入されるべきではない。
[ 2 ] 評価し、必要であれば停止する。既存および潜在的なすべてのデジタル ID プログラムの人権への潜在的な影響は、独立に評価されなければならない。必要なセーフガードをチェックし、詳細な監査報告書を公開し、精査しなければならない。必要な保護措置が講じられていない場合、デジタルIDプログラムは停止されなければならない。
[3 ] 認証目的でのバイオメトリクス（顔認識を含む）の収集と使用のモラトリアム。デジタル ID プログラムは、バイオメトリクス認証が完全に安全であり、包括的であり、誤りがなく、プログラムの目的で利用できる唯一の認証方法であることが証明されるまで、利用者の 認証のためにバイオメトリクスを収集または使用すべきではない。生体情報の漏洩による危害は、ユーザーとエコシステムにとって回復不能である。
結論
署名した組織は、国際的、地域的、および国家の指導者が行動する前に、その理由に対処することを期待する。デジタル ID プログラムを推進する者は、この疑問にしっかりと答え、ID に対する人権中心のアプローチに従わなければならない。各 ID プログラムには、ユーザーからの信頼という固有の必要条件がある。信頼は、透明性と説明責任の基礎の上にのみ構築することができる。信頼は、世界中の市民の権利を促進し、権限を与え、保護するようにシステムが設計され ている場合にのみ構築することができる。そしてそれこそが、すべての政策立案者の主要な目的であるべきである。
賛同署名を希望する団体、個人は下記で署名してください。
https://www.accessnow.org/whyid/
署名団体と個人の署名者
ORGANIZATIONS
A Common Future (Cameroon)
Access Now (Global)
Accountability Counsel (Global)
Action for Research and Development (AFORD) (Kenya)
ADUCID (Czech Republic)
AfroLeadership (Cameroon)
Alternatives, Inc. (Canada)
Article 19 (Global)
Article 19 Eastern Africa (Kenya)
Article 21 Trust (India)
Asociación por los Derechos Civiles (Argentina)
Association for Progressive Communications (APC) (Global)
Bareedo Platform (Somalia)
Bits of Freedom (The Netherlands)
Body & Data (Nepal)
Centre for Minority Rights Development (Kenya)
Civil Liberties Union for Europe (Europe)
Civil Pole for Development and Human Rights (Tunisia)
Collective Data Trust (Global)
Civilsphere Project (Czech Republic)
CRC4D (Netherlands)
Cytech (Greece)
Danube Tech (Austria)
Data Rights South Africa (South Africa)
Den norske Uighurkomiteen / Norwegian Uyghur Committee (Norway)
Derechos Digitales (Latin America)
Digital Rights Foundation (Pakistan)
Digital Rights Nepal (Nepal)
Digital Rights Watch (Australia)
dotCIVICs (Africa)
Electronic Frontier Finland (Effi) (Finland)
Electronic Frontier Foundation (EFF) (Global)
Epicenter.works (Austria)
Ethics in Technology (USA)
Fight for the Future (USA)
Foundation for Media Alternatives (Philippines)
Freedom House (Global)
Fundación Acceso (Central America)
Fundación Datos Protegidos (Latin America)
Fundación Huaira (Anden Region, Latin America)
Gambia Cyber Security Alliance (Gambia)
Gala Initiative Uganda (Uganda)
Give1Project Gambia (Gambia)
Global Identity Foundation (Global)
Global Data Justice (Global)
Homo Digitalis (Greece)
Human Rights Online Philippines (Philippines)
Human Rights Watch (HRW) (Global)
HumanFirst.Tech (USA)
Hiperderecho (Peru)
HORIBA Europe GmbH (Germany)
HTTPS Card - Internet Identity Card (United Kingdom)
humanID(USA)
Immigrant Defense Project (USA)
Impacto Digital (Argentina)
Imperial College London Infectious Diseases Society (United Kingdom)
Innovative Identity Solutions Limited (United Kingdom)
Institute for Technology and Society of Rio de Janeiro (Brazil)
Internet Freedom Foundation (India)
Internet Policy Observatory, Pakistan (Pakistan)
Internet Sans Frontières (Global)
IPANDETEC (Central America)
IVPN (Europe)
Jamaicans For Justice (Jamaica)
JCA-NET (Japan)
Karisma (Colombia)
Kenya Human Rights Commission (Kenya)
KICTANet (Kenya)
Kijiji Yeetu (Kenya)
Kiyita Foundation (Uganda)
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Spectrum (MENA)
STOPAIDS (UK)
Swathanthra Malayalam Computing (India)
Taiwan Association for Human Rights (Taiwan)
Techfugees (Global)
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Thai Netizen Network (Thailand)
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The Loki Project (Australia)
The Tor Project (Global)
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