2022年11月12日午前11時から、JCA-NETなどの呼びかけで、エジプトの政治犯、アラア・アブデル-ファッタさんの解放を求めて、緊急の抗議行動をエジプト大使館前で実施しました。直前の呼びかけでしたが、10名ほどの参加者で約1時間、抗議のスタンディングを行ない、ちらしを配布しました。

アラアさんは、弁護士との面会すら認められていません。アラアさんは、エジプトの「アラブの春」において、インターネットを駆使した新しい異議申し立て運動の可能性を切り開いた先駆者でもあります。「革命」敗北後、彼は繰り返し投獄、拷問などの虐待を受けつづけていきましたが、ひるむことなく闘いつづてきました。

エジプトには多数の政治犯が不当にも投獄されており、深刻な人権侵害が続いています。しかし、COP27で世界中の国々の指導者やNGOなどが集まりながら、この政治犯への深刻な弾圧の問題は置き去りにされかねない状況にあります。Greenwashという言葉があります。環境保護に配慮しているとみせかける虚報を企業や政府が流すことを指して言われるととばですが、環境に配慮していることが、同時にあたかも人権にも配慮しているかのような印象を与えて、深刻な人権侵害を隠蔽することもまた一種にグリーンウォッシュといえるとも指摘されています。世界中の政府や環境NGOが、開催国の人権侵害に無関心であるとすれば、それもまたグリーンウォッシュに加担する行為となりかねません。

アラアさんが、COP27の開催に合せて、自らの命を賭けて訴えようとしたのは、エジプト国内のメディアが全く彼のことを報じられない状況にあるなかで、命をかけたハンストでもしない限りエジプトの人権状況に世界が関心を持つように働きかけることが非常に困難だという判断があったと考えられます。

COP27によって、かろうじて、世界の大手メディアもアラアさんについて報道するようになりましたが、アラアさんの国籍でもある英国政府も、あるいはG7のように民主主義の「価値観を共有する」という日本政府もエジプト政府の人権侵害に対しては全くといっていいほど無関心なままであることを私たちは、厳しく批判したいと思います。自由なインターネットを通じた世界中の一人一人の#FreeAlaa #SaveAlaaのメッセージの広がりだけが、彼の命の支えになっているといっても過言ではない状況が続いています。

アラア・アブデル-ファッタさんの状況は極めて危機的です。10日付のAccess Nowの報じているところでは、刑務所が強制的な医療措置に入ったとの未確認の情報があります。以下、10日付のAccess Nowの記事を翻訳して紹介します。(JCA-NET理事、小倉利丸)


(Access Now)#ProofOfLife: 虐待をやめ、今すぐアラアさんを解放せよ

2022年11月10日|午前10時51分

アラアさん(Alaa Abd El-Fattah)は解放されなければなりません。彼の不安定な健康状態について地元では全く報道されない中、アクセス・ナウと世界中の市民社会は、このイギリス国籍のエジプト人活動家が、監獄でハンガーストライキと水断ちのストライキをするなかで、当局は、家族や弁護士に知らせることなく医療介入を行なったと伝えられ、信じられないほどの憂慮を抱いています。アラアさんが、医学的に危険で暴力的な拷問である強制的な食事療法を受けていることを意味するのかどうかは不明です。

アクセス・ナウのMENAポリシー&アドボカシー・マネージャーのマルワ・ファタフタは、「拷問を強化・継続する目的でアラアさんを生かしておくことは、2011年の革命の痕跡を一掃しようとする政権による復讐のための堕落した非人道的行為です」「英国政府はアラさんを解放し、この残酷な行為を終わらせるために直ちに介入しなければなりません」と述べています。

エジプト政府が監獄の体制を強化する中、アラアさんの家族、そして全世界が今、生きていることの証明を必要としています。当局が面会を妨害しているため、アラさんの現在の状況に関する情報は少ないのですが、妹のモナ・セイフさんは、刑務所職員とのやり取りをツイートし、「司法機関の知見のもと、アラさんには医療介入が行われた」と述べたことが伝えられています。アラさんの弁護士は本日11月10日、面会が認められたと報じられましたが、その後、刑務所への立ち入りを拒否されました。

何年も投獄され、自由を奪われ、本やラジオ、領事へのアクセスなどあらゆる手段を拒否されたアラアさんに残された武器は、体だけです。2022年4月、アラアさんは1日100カロリーしか摂取しない無期限のハンガーストライキを開始しました。2022年11月1日、彼は完全なハンガーストライキに入りました。2022年11月6日、エジプトで開催された世界有数の気候変動サミットであるCOP27の開始時、アラアさんは水を飲むのをやめました。これに対して、政権がこの活動家に対して「医療介入」を行ったと報じられたわけです。

アクセス・ナウのMENAキャンペーン担当者であるカセム・ムネジャは、「エジプト当局は10年以上にわたって、アラさんを追い回してきました」「彼らは彼を監禁し、友人や家族との接触を奪い、自国の領事館へのアクセスを拒否してきました。エジプト政権はアラアさんを打ち負かすことはできない。彼を自由にすることが彼らの唯一の選択肢です」と語ります。

世界がエジプトに注目している今、エジプト大統領アブデル・ファタフ・エル・シジがアラアさんを、そして人権の行使を理由に拘束されたすべての活動家と良心の囚人を解放するまで、圧力をかけ続けなければなりません。

出典:https://www.accessnow.org/proof-of-life-alaa/