上田慶司(長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会・事務局長)
4月22日 長生炭鉱遺骨収容・政府との意見交換会は160名が参加し満員となった。対応に出てきたのは、厚労省人道調査室長、外務省北東アジア第1課日韓交流室長など4名。4月7日の参議院決算委員会で大椿ゆうこ議員が石破首相と直接対決、首相が「危険があるということを政府が承知していながら……自己責任ですからね、みたいなことを言うわけにもならぬ」など数々の積極的な発言を行い、意見交換会の意義はそれを受けたものとして高まっていた。刻む会も山口から7名、全部で13名が参加し政府に全力でぶつかった。
開会前に厚労省が着席したのであいさつに行くと、「上田さんのX見ると報道も質問できるとなっていて我々は刻む会と話すのですからそれは受け入れられない」とのっけから攻撃的。そもそも、頭撮りは認めるが、報道は意見交換会には参加させないという強行姿勢に対して1か月以上の折衝を行い、撮影は禁止するものの、報道は議論に参加してよいと認めさせたばかりである。私たちはマスコミフルオープンを求める要請書も提出した。石破首相が全国生中継で真摯な議論を国会でオープンにやっているのになぜ行政は議論を隠そうとするのか?意見交換会の前哨戦が続き相当程度押し戻すことができた。
国会議員も過去最大の15人が参加し意見交換会が始まった。厚労省は「実地調査にかんがみて政府の対応する範囲を超えている」と繰り返しながらも、「事案の性格にてらし専門家から意見を聞き検討する」とも言う。事案の性格とは何かと聞くと「専門的知識が必要」と言うことらしい。石破首相は潜水調査について潜水艦救難などに当たる自衛隊の高度な技術を持つダイバーと伊佐治さんが話し合えば活路が開けることもあると国会で述べているが、それを受けたもののようだ。「検討」「検討」と言うが、政府の対応する範囲を超えていると断言するなら今までと同じだと追及すると、「首相の発言を受けて、今までと同じではない」と答えるので、本当に以前とは違うのだろう。
やり取りしている私としてはもどかしいが、客観的に見て1歩も2歩も前進しているようだ。専門家ならば我々にはダイバーの伊佐治さん、ピーヤ内の障害物を除去している地元のダイバー、下関からクレーン台船を導入した港湾関係の会社も参加している。調査にあたる専門家を政府の関係する専門家との話に加えるよう国会議員や井上代表も追及するが返事はなかった。
報道関係者が議論に参加できたことで、各社が議論を踏まえた正確な評価を記事にしている。「専門的な意見を聞き検討する」と言ったことにさほど大きな意味を持たせていない記事もあるが、多くの社は今までと変わってきたという評価を打ち出している。
記者会見では「前進したという評価でよいか」と尋ねられたが、冷静に見て「前進している」と答えた。さらに、「2023年12月8日政府との意見交換会で私たちは水中ドローンの話をしていた。しかし、今回の意見交換会は水中ドローンでは無理だという結論に達し、潜水調査含めもっと具体的な話をしている。それこそが前進をしている証左である」と。
また、この前進をどのような段取りで押し上げていくかという具体的プロセスに関する質問も出た。
ちょっと待ってくれ、石破発言は小手先で作り出したものではない、連続する潜水調査は韓国のダイバーまで迎え、困難にはクレーン台船まで投入する我々の決意が社会の支持を作り出し、政治を変え始めたのだ。「私たちが次にすることは、第3次クラウドファンデングを成功させ困難なピーヤの障害物を除去し、ご遺骨への道を切り開くことによって大きく変わる」と説明した。
外務省とのことは報道されなかったが重要な話があった。「ご遺骨が見つかった場合のことだが仮定の話に応えられないということはだめだ、韓国政府は5月2日までにさらに長生炭鉱のご遺族のDNAを集めていると報道されている。DNA鑑定を韓国政府に要請し外交交渉する準備をすべき」との質問に、外務省は「するかしないか含めて各省と調整する」と用意した官僚答弁を繰り返した。
毎日新聞のK記者から質問のメモが来た。「報道の質問は受けないそうだが報道からの質問を私の質問として質問する」と宣言し質問に入る。外務省は、このようなことを認めた。「DNA鑑定以外に遺族を照合する方法はない」「遺族のDNA情報を得るには韓国政府に要請しなければならない」「要請する責任は外務省になる」。これは重要な話だ。
さらに、「韓国遺族が海で遭難したわけではなく、日本の警察ではなく韓国政府から遺骨を返してほしいという希望だ。そうしてこそ初めて犠牲者の名誉が回復される」と伝えたところ、外務省は「ご遺族の気持ちは承った(聞いた)」と答えた。官僚答弁を用意して繰り返しそうになったが、譲ってよい発言として現場判断したようだ。
4月17日クレーン台船を投入し、1本100KG以上はあるような大きな鉄管、おそらく太さから排気管であろうと思われる鉄管をピーヤから5本排出した。ピーヤ内は木材や漁網などが詰まっており前に進めないが、木材を除去すると鉄管が崩れ落ちてくる危険があり、まず鉄管を排出した。次は水深25m地点から3mにわたって折り重なっている材木を人力で排出する。予定稼働日数30日である。その後横穴が見つかるか、また土があるかもしれない。土が大量にあれば人力では無理で再度のクレーン台船を必要とする。また2次クラファンで集めた資金550万円で坑口補強工事を行う予定だ。クレーン台船の資金は一部坑口工事予算から流用している。
刻む会の資金は底をついている。第3次クラウドファンデング目標700万円で今後の作業や潜水調査の費用を充てる。期間は4月22日から7月21日まで全国の皆さまの支持を得て我々は前へ進むことができる。皆様のご協力をお願いしたい。
長生炭鉱遺骨収容プロジェクト第3次クラウドファンデング
https://for-good.net/project/1001960
●次回潜水調査は6月18日正午〜、19日午前9時〜
皆様一度現地にお越しいただきたい。
●長生炭鉱については、以下で詳細を読めます。ご参照してください
長生炭鉱は市民の力で坑口をあけた/上田慶司、
強制連行・強制労働の現場 長生炭鉱の闘い--坑口を開けるぞ!/上田慶司
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全国にテレビ中継!4月7日参議院決算委員会で大椿ゆう子議員の質疑への石破首相答弁
石破首相、しっかり聞きました。国としての責任を果たしていきましょう!
●内閣総理大臣(石破茂君)
引き続き丁寧に意見交換を続ける必要がありますし、先ほど委員から、これだけあと掛かるんだよという御指摘がございました。私、専門的な知識を有しておりませんが、そういうことにどれだけ掛かるのか、国としてどういうような支援を行うべきかということにつきましては、更に政府の中で検討はいたしたいと思っております。
●大椿ゆうこ君
政府が対応可能な範囲を超えていると言っているようなこと、先ほどのように、私たちも危険性を理解していないわけではありません、様々な危険性が考えられる中で、それでも今市民がお金を出し、この潜水調査を行い、御遺骨の収容ができないかということをやっているということについてはどう思われるでしょうか。
●内閣総理大臣(石破茂君)
それは尊いことだと思っております。ただ、私どもとして、そういう危険があるということを承知をしておるという中にあって、危険があるということを政府が承知していながら、そういう方々がそういう作業をしておられると。そうしますと、自己責任ですからねみたいなことを言うわけにもならぬところでございます。いかにして安全が確保できるかということは、技術は進歩するものでございますので、いかにして安全にそのような作業がしていただけるかということについて、政府としてもこれは勝手にやってくださいという話にはならぬと思っております。
そういう御遺骨なるもの、御遺骨というものが安全な作業によって発見される、そして遺族の元へ帰っていくということの重要性は私自身よく認識をいたしておるところでございますが、作業において安全を期すというのもまた当然のことでございます。
●内閣総理大臣(石破茂君)
今厚労大臣からお答えをしたとおりでありますが、必要があれば現場に赴くということも私は選択肢としてあるのだと思っております。いや、危ないですからねと、自己責任ですよというようなわけにはまいりません。いろんな、もちろん厚労省もプロでございますから、いろんな数字を分析をしながら、そういうような危ないですよということ、なかなか作業もこれ以上困難ですよということを申し上げているのだと思いますが、現場を見た方がより正確に事態が把握できる、あるいは関係者の方々の御納得を得られるということは、必要であれば私はちゅうちょすべきだと思っておりません。いずれにいたしましても、御指摘を踏まえて、どういうことが必要かということは政府が責任を持って判断をさせていただきたいと思っております。
●内閣総理大臣(石破茂君)
現場に行って見るということも、潜水の専門家が見ないと分からないことってたくさんございます。それは、私も防衛省の仕事をしておりまして、潜水艦救難のいろんなケースでそういうような話は聞いてまいりました。物すごく高いスキルを必要とするというものでございますので、そういう専門の方々同士の話合いというものから活路が開けていくということもあるのではないか。その辺辺りは厚生労働大臣が責任を持って判断をするということでございます。
●内閣総理大臣(石破茂君)
そこにおいて、市民団体の方々が尊い志を持って自費をもってしてまでも、あるいはクラウドファンディングをもってしてまでもこういうことをやりたいというふうにおっしゃっておられるわけで、そういう方々に御納得いただく、そして国はいかなる責任を果たすべきかということでございます。そのことも併せて、福岡大臣を中心に政府として判断をいたしてまいります。