日本ジャーナリストクラブ(JCJ)

コンテンツ配信
日本ジャーナリスト会議(JCJ)のブログです。
最終更新: 5週 2日前

暗黙の了解も「共謀」、冤罪増える=守屋龍一

2017/06/03(土) 04:00
 安倍政権・自公両党と別働隊日本維新の会は、「共謀罪」法案を強行可決。この暴挙を許すな!
 あらためて確認しよう。「共謀罪」法は、犯罪行為の「予備」や「未遂」よりも前の行為を処罰する法律だ。その法でいう「準備行為」とは何か。「組織の変質」は誰が判断するのか。「一般人」に及ばないという規定は、どこにあるのか。
 それらの認定や判断は、全て捜査機関や裁判所に委ねられている。「内心」や「準備行為」を探るには、日常的な監視、メール・LINE の盗み読みが不可欠。さらには逮捕、自白の強要、証拠の捏造すらありうる。「共謀罪」は死刑から懲役4年以上。誰でも「犯罪者」や「死刑囚」になりうる。
 藤原聡・宮野健男『死刑捏造─松山事件・尊厳をかけた戦いの末に』(筑摩書房)は、24歳の若者が逮捕され、自分の留置場に送りこまれた警察ダミーに「自白」をそそのかされ、殺人犯にデッチあげられ死刑が確定。だが獄中29年の闘いで、無罪を勝ちとる軌跡を追う。
 共著者の一人・藤原聡さんは「足利事件の無罪といい、袴田事件の冤罪も含め、死刑まで捏造して、無実の人間がズタズタにされる悲劇を繰り返してはならない。今も代用監獄での取り調べ・自白の強要が続き、捜査や刑事司法の在り方が問われている」と言う。
 最近でも、風力発電所の建設に反対する一般市民の言動や集まりを警察が監視する大垣事件が起きている。刑事が情報収集を目的に忍びこみ、内容を電力会社に提供していた。まさに「一般人」がターゲット。
 日本の刑法では、犯罪が成り立つには「共謀」や「準備行為」だけではダメ。最低「実行に移した」という「事実」が必要となる。
 しかし「共謀罪」が成立すれば、「共謀」「準備行為」で犯罪となるから、捜査機関は監視、盗聴、潜入、密告奨励、挑発へと拡大させ「内心」捜査に必死となる。
 くわえて「共謀」の概念に、「未必の故意」の「黙示的共謀」まで、取りこむ危険性がある。現に昨年6月の静岡地裁は、立候補予定者のチラシを配布した事件に対し、「黙示的な共謀があった」と認定、6人全員に有罪判決を出した。
 「あうんの呼吸、暗黙の了解」すら「共謀」とみなし、犯罪とするのだから、冤罪事件が発生するのは目に見えている。
 〈森友疑惑〉や〈加計学園問題〉が象徴するように、政治家・官僚の「忖度」がはびこる。「共謀」と勘繰られてもおかしくない。だからか政治家が関係する犯罪は「共謀罪」の適用から外されている。
 しかし「共謀」の概念を恣意的に使い、「一般人」への適用に及べば、「テロ防止」など吹っ飛び、「政治権力にとって目障りな人々や組織を、監視・処罰する」法律へ一変する。力を合わせ廃案へ追いこもう。
(JCJ代表委員)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号
<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html ・タブロイド判8面、毎月25日の発行です。 ・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。

重要さ増す平穏生活権 ネット上の嫌がらせ防ぐ=渡邉知行

2017/06/03(土) 02:00
 メールなどでの脅迫は「平穏生活権」を侵す。元朝日新聞記者・植村隆さんの名誉棄損訴訟で注目されるこの権利はどのようなものか。成蹊大学法科大学院教授の渡邉知行さんに解説しても らった。

 朝日新聞記者だった植村さんは1991年に従軍慰安婦に関する記事を署名入りで書いた。2013年末には、新聞社を早期退職して大学教授に就任することが内定していた。
 これに対し週刊文春は2014年2月と8月、2回にわたって、植村さんが書いた新聞記事を捏造などと誹謗中傷する記事を掲載した。2月の文春の記事に誘発され、記事を引用し、採用を 取り消すように要求する抗議や脅迫のメールなどが大学に送られた。その結果、採用の契約が解除され、嫌がらせの被害は家族にまで及んだ。
 8月に出た文春の2回目の記事は、このような被害が発生している状況のもとで、追い打ちをかけるようなものになった。植村さんは、文春の報道に誘発されたメールなどによって、私生活 の平穏を害された。私生活に関する平穏生活権は、プライバシー権として憲法で保障されている。
 平穏生活権で注目されるのは99年6月の神戸地裁判決。電話帳に記載された眼科医の氏名、電話番号がパソコン通信に無断で公開されて、メールなどによる嫌がらせが誘発された事案だ。< BR>  ネットの掲示板は、診察を希望しない人も含めて多数の者が容易に見ることができ、電話帳に掲載されるより比較にならないほどに、いたずら電話や嫌がらせの被害が発生する恐れがあると して、眼科医のプライバシー侵害による損害賠償請求を認めた。
 この事件から現在に至るまで、パソコンやスマホの普及とともに、第三者による非難攻撃の嫌がらせを誘発する危険が、当時と比較にならないほどに高まっている。それゆえに、平穏生活権 の意義は増している。
 誰でもパソコンやスマホから、容易に情報を発信できる。表現の自由や通信の秘密は、憲法で保障されるので、プロバイダーに発信者の情報の開示を請求しても、プロバイダー法の厳格な要 件のもとで、容易に開示してもらうことはできない。情報を開示させるために訴訟で争わざるをえないこともある。
 ネットの利用者の匿名性は、誰もが自由に情報をやり取りするために重要であるばかりか、災害時の情報伝達、不祥事の内部告発などには欠くことのできないものである。
 匿名性があってこそ、非民主的な独裁国家での人権侵害の実態を暴露できることもある。しかし、匿名性を悪用して、他人の名誉やプライバシーを侵害し、非難攻撃や嫌がらせを誘発する被 害をもたらしている。
 今年4月26日、京都地裁は、NTT発行の電話帳を基にして、氏名、住所、電話番号を無料電話帳サイトに掲載した業者に対し、「待った」をかける判決を下した。
 電話番号を掲載された人が個人情報の削除と損害賠償を求めて提訴したもので、判決は、情報が他人に知られて私生活の平穏を害されうるものであると判断して、被害者の請求を認めた。
 一方、個人のメールや書き込みは、発信者が容易に特定できない場合には、明らかに違法であっても、私生活の平穏を侵害したとして、発信者に責任を問うことが困難であるのが実情である 。今後の課題だ。
(成蹊大学法科大学院教授)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号
<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html ・タブロイド判8面、毎月25日の発行です。 ・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。

ナチスを想起、改憲へ東京オリ・パラ利用=大野 晃

2017/06/03(土) 00:00
 安倍首相が「日本で五輪が開催される2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と改憲五輪を明言した。東京五輪開催を道具とする改憲は明確な五輪の政治利用宣言である。政治利 用を厳しく糾弾する五輪憲章違反であり、バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長ら幹部が容認しても、結集する世界スポーツ界に不信と非難が広がり、国内向け宣言とはいえ、海外派 兵の改憲だけに国際的影響も大きく、東京五輪ボイコットを生みかねない。
 安倍首相は、「そもそも」(閣議決定によれば「基本的に」の意)大都市再開発五輪を狙い、東日本大震災と福島原発事故の混乱で政権を奪うと五輪招致で福島第1原発の「汚染水はコント ロールされている」と原発事故隠し五輪を意図し、国内向けには復興五輪を表明。原発事故の深刻さと遅々として進まぬ復興の現実が表面化して批判されると、「共謀罪法がなければ五輪を開 催できない」と共謀罪五輪を持ち出し、ついに改憲五輪に及んだ。安倍首相の一貫した五輪の政治利用は明白である。
 IOCは、多くの国でボイコット論議を呼んだ1936年のベルリン五輪が、ヒトラー政権による侵略ルートを想定した聖火リレーの新設や黒人競技者への侮蔑など侵略準備と差別拡大の五輪開催となったことを大きな教訓に、政治利用を厳しく排除した。第二次大戦後の五輪で、安倍首相ほど露骨に政権による五輪の政治利用を意図した例はない。安倍首相は、あえてヒトラーを真似ているようだ。内外の非難が高まるのは必至である。 日本オリンピック委員会はじめ日本スポーツ界にも動揺が広がる。開催国民の不信でリオデジャネイロ五輪を目前にブラジル大統領が弾劾され、平昌五輪1年前に韓国大統領も弾劾失職した。安倍首相の国民分断で東京五輪も目前の混乱が起きかねない。五輪開催の危機を招く改憲五輪宣言である。 (スポーツジャーナリスト)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号
<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html ・タブロイド判8面、毎月25日の発行です。 ・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。

【今週の風考計】5.28─「豊洲移転の破綻」と都議選の選挙公約

2017/05/28(日) 11:19
■1カ月後となった都議選がヒートアップ、いまや本番さながらの状況だ。自民党の古屋圭司・選挙対策委員長は「東京が混乱すれば国政も混乱に陥る。国政レベルの戦い」と位置づけ総力を挙げる。■選挙公約も出そろい、重要な「豊洲市場の移転問題」に関する、各党・会派のスタンスがはっきりした。整理しよう。■築地再生・豊洲移転反対─共産党、生活者クラブ。豊洲移転推進・是認─自民党、公明党、日本維新の会、民進党。どちらでもない─都民ファーストの会となる。■先日だされた「豊洲市場の無害化はできない」という専門家会議の結論は、いよいよ豊洲移転の破綻が明白となった証拠。基準値の100倍という桁違いの汚染土壌の上に、生鮮食料品を扱う市場を造るなど、常識からして無茶な発想が間違っているのだ。■この明白な結論にもかかわらず、奇妙なのは「都民ファーストの会」の態度。築地とも豊洲ともいわず、ダンマリを決めこむ。それでいて豊洲移転推進の公明党とは選挙協力を進める。選挙後の様子見のうえ、どちらに転ぶか決めるというのは、無責任のそしりは免れない。■豊洲移転計画を見直し、築地市場を現在地で再整備し、豊洲の建物は市場以外の用途に転用すべきだとの考えを、築地の地元の中央区から無所属で出馬して訴える、気概のある男にエールを送りたい。6月1日から都議会が開かれる。共産党、生活者クラブを先頭に「豊洲市場の移転問題」を、果敢に追及してもらいたい。(2017/5/28)

「中立」を隠れ蓑にするな 世界報道自由デー・フォーラム=鈴木賀津彦

2017/05/27(土) 01:00
 「ヘイトスピーチとメディアの責任―メディアリテラシーの可能性」をテーマに「世界報道自由デー」フォーラムが5月6日、教育関係者や高校生・大学生、研究者やジャーナリストらが参 加して都内の法政大学市ケ谷キャンパスで開かれた。
 国連が定めた3日の「世界報道自由デー」(World Press Freedom Day)に合わせ、アジア太平洋メディア情報リテラシー教育センター(AMILEC、理事長・坂 本旬法政大教授)が主催して企画。JCJも今回初めて共催に加わって協力した。
 川崎市の在日朝鮮人へのヘイトスピーチ問題の取材を続けている神奈川新聞デジタル編集部編集委員の石橋学さんと、生活保護者に対するヘイトを追っている毎日新聞新潟支局の東海林智さ んがメディア側からの問題点と課題を報告。参加者からの質問を受ける形で議論を深めた。
 石橋さんは、昨年6月にヘイトスピーチ対策法が成立したのを受け、補完する条例づくりを川崎市が進めるようになった成果を説明した一方で、「ヘイトは人権侵害で、差別だということを メディアがきちんと報道しなければならない。『報道の中立』を理由に両論併記のような報じ方も見られるが、彼らの言うことは『論』ではなく暴力であることをきちんと指摘する必要がある 」と強調し、「中立」がメディアの隠れ蓑になっている現実を批判した。
 「マイノリティーを死ね殺せと言っている連中を批判するのが先決だ。朝鮮学校の無償化制度からの除外など政府の差別政策がヘイトにお墨付きを与えている現実もある。真の意味での公正 ・公平な報道ができるのか、権力と対峙する覚悟が問われている」と強調した。
 東海林さんは、在日特権を許さない市民の会(在特会)などのヘイトの動きを取り上げると、在特会からメディアに抗議行動が起こされ、記者が「厄介な存在」と面倒なことになるのを避け 「書かない」傾向になると指摘。そこからヘイト以外の分野にも自主規制が拡大し、記者会見で政治家から本音(ファクト)を引き出さない〝勝負しない〟体質につながっている状況を報告し た。
 こうしたメディアの状況に対し、坂本教授からはネットに流れた記事や意見を鵜呑みにする学生が多くなっている問題を、授業での具体的な事例を示して紹介。
 「学生たちの批判的に情報を読み解く力をつけていくメディア情報リテラシー教育を、各地で展開する必要がある。対策法では、地方公共団体が不当な差別的言動を解消するための教育活動 を実施すると定めていることを追い風に、教育関係者とジャーナリストが協力する取り組みを重ねていきたい」と展望を語った。
 議論の中では「ヘイトスピーチ問題は人権問題であり、人間の尊厳という教育の根幹に関わる問題であることを共有していこう」と確認した。
 JCJは今後、同センターと継続的に連携し、学校や図書館などでの教育活動に取り組みたいと考えている。
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号
<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html ・タブロイド判8面、毎月25日の発行です。 ・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。

阪神支局襲撃事件から30年 樋田毅さん講演 朝日記者ゆえに殺された=廣瀬 功

2017/05/27(土) 00:00
 87年5月3日、朝日新聞阪神支局が襲撃され、記者2人が散弾銃で殺傷された事件は、発生から今年で30年を迎えた。
 事件と時代状況を改めて問い直し、引き継いで行こうとする集いが4月27日、アジア記者クラブ主催で開かれた。
 会場には、朝日新聞で同事件の取材班キャップとして赤報隊を追い、現在も独自に事件を取材する樋田毅さん(朝日新聞大阪秘書役)が招かれ、事件について語った。
 樋田さんは、襲撃の状況から言えるのは「犯人の明確な殺意だけ。朝日の言論・報道」が標的で、「小尻記者が殺されたのは朝日の記者という以外考えられない」と述べた。
 赤報隊による一連の事件は、87年1月の朝日東京本社銃撃から90年5月の愛知韓国人会館放火まで、3年4カ月間に計8件。うち、前半の東京本社銃撃、阪神支局襲撃(銃撃で記者2人 を殺傷)、9月名古屋社員寮襲撃(銃撃)、88年3月静岡支局爆破未遂(時限式ピース缶爆弾)の4件で朝日が狙われた。
冷戦構造崩壊期  中曽根前首相、竹下首相への脅迫状は爆破未遂事件とほぼ同時に投函された。8月に江副・元リクルート会長宅への銃撃と、標的が変化。90年5月、名古屋市の愛知韓国 人会館への放火事件が最後となった。
 事件が起きた30年前は冷戦構造の崩壊期で、中曽根政権は日本版「新自由主義」推進。その一方で「戦後政治の総決算」を掲げて国家主義的傾向を強め、85年、靖国神社を公式参拝。中 韓両国の強い反発を受け、翌年以降は参拝を取りやめた。
 また、皇国史観や国家主義に基づく歴史教科書にも力を注いだ。
 こうした一連の動きを厳しく批判したのが朝日新聞だった。
 樋田さんは、「30年前、事件に結びついた政治的な問題が今も形を変えて存在している」と指摘。
 「赤報隊が当時『参拝しなければ処刑リストに載せる』と竹下首相、中曽根前首相を脅迫してまで求めた首相の靖国参拝は3年前の11月、安倍首相により実現した」
 「教科書問題では、現政権のもと『近隣条項』が骨抜きにされ、国家秘密法は、特定秘密保護法と名前を変えて成立」「安倍首相が唱える『戦後レジームからの脱却』、例えば『教育勅語を 全否定はしない』という閣議決定をみても赤報隊犯行声明文に流れる戦後体制への憎悪、否定が現実のものとなっている」と、過去と現在を比較。
 「中曽根首相は色々なところに配慮しながら政策を進めた。赤報隊はそれに怒り、事件を起こし、脅迫した」
 今、安倍政権の下で当時の課題がどんどん実現されている。
 「憲法改正や集団的自衛権の憲法解釈変更を含めて、リベラルな主張が受け入れられにくい社会になりつつある。これが30年後の今の状況だ」と述べた。
 また「赤報隊の事件は今も社会に深刻な影響を与えていると思う」、特に「事件が未解決であることが非常に深刻だ」と語り、「事件時効の紙面で右翼にあえて『どう思うか』と聞いたら『 事件の未解決は好都合だ。物議ある発言があれば赤報隊が動き出す、という無言の圧力。社会への重石になるから』という答えだった」のがその理由。
 安倍政権は特定秘密保護法、安保法制を強行採決した、共謀罪も強行成立目前の状況にある。
 「次は憲法9条だ」と勢いづく右傾化、国家主義の流れは民主主義を根底から揺るがしている。
(元朝日新聞記者)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号
<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html ・タブロイド判8面、毎月25日の発行です。 ・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。

社会運動・市民運動サイトからの情報