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《沖縄リポート》奇跡に近い20年に及ぶ辺野古闘争 日米両政府への怒りが噴出=浦島悦子<br />

2018/01/08(月) 13:11
 1997年12月21日、名護市民が住民投票で「辺野古新基地NO」の市民意思を示してから丸二十年になる。日本政府の権力と金力を総動員した市民投票潰しを跳ね返し、地域住民・市民が心血を注いで勝ち取った勝利はわずか3日後、政府の圧力に屈した当時の比嘉鉄也市長によって覆され、以来、私たちは日米の国家権力との対峙を強いられてきた。
 その間に基地建設計画の中身は何度も変わり、沖縄県知事も名護市長もそれぞれ4人目を数える。彼我の圧倒的な力の差を考えれば、20年もの長い間たたかい続けてこられたことは奇跡に近い。地域住民の地を這うようなたたかいが名護全体へ、そして沖縄から全国・世界へと広がってきたからこそ、「着工」されたとはいえ工事は計画通りには進んでおらず、辺野古・大浦湾の海はまだ、私たちの目の前に美しく輝いている。
 しかし今、私たちは、この海を守り切れるかどうかの瀬戸際にある。埋め立て工事を加速させる護岸用石材の海上輸送が明日にも始まるかもしれないのだ。国頭村奥港はその後使われていないものの、辺野古への海上輸送船の給水や乗組員の休憩のための中城湾港使用を沖縄県が許可した(12月7日)こと、県が有効な手立てを打てないまま本部町が11日、本部港塩川地区の港湾使用許可を出したことは、辺野古ゲート前で体を張って石材搬入に抵抗している市民を落胆させた。
 名護市安部海岸へのオスプレイ墜落・大破からちょうど1年目の12月13日、普天間基地に隣接する普天間第二小学校の体育授業中の校庭に、飛行中の米軍CH53ヘリの窓が落下するという信じがたい事故が起こった。6日前にも、同じ宜野湾市の保育園の屋根に同型機の部品が落下したばかりだ。同日行われた「安部のおばぁ達の会」主催の「オスプレイNO!」勉強会では、「海も空も奪い」「この島を勝手放題に使う」米軍と、それを野放しにしている日本政府への怒りが噴出した。
 2004年8月の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落・炎上事故のあと、「普天間基地の危険性を除去する」ためと称して、辺野古新基地建設に向けた作業が強行・加速されたのを思い出す。今回も同様の口実に使われることを許してはならない。
浦島悦子

【今週の風考計】1.7─年始の早々から気がかりな三つの動静

2018/01/07(日) 10:57
■あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。さて、年始の1週間、気になって気になって、しまいに腹が立ってきた三つの動静を挙げておきたい。

■まずは安倍首相の日々だ。渋谷・富ケ谷に豪邸がありながら、昭恵夫人ともども都心の高級ホテルに連泊しゴルフ三昧、そして昼となく夜となく3つ星クラスの料理店で贅沢な食事。これらの費用は税金から? 昭恵夫人は自宅で朝の味噌汁など作らないのか? もしや森永ビスケットで済ませてしまうのか? 私たち庶民には、すぐに浮かぶ素朴な疑問だ。

■二つは、9日に開催される韓国と北朝鮮との高官級会談に対する日本政府の態度である。2年ぶりの対話による南北関係の改善は、北朝鮮の非核化に向けた環境づくりに役立つのは間違いない。大歓迎だ。
■だが政府は南北会談を歓迎し成功を祈るどころか、北朝鮮の脅威を「国難」と煽り、制裁・圧力に血道をあげるだけ。北朝鮮にミサイル核の放棄を求めるのなら、まず国連で可決された核兵器禁止条約に賛成するのが先だろう。戦争核による唯一の被爆国・日本が、いまだに反対し続ける態度に、ブーイングの声は世界中に広がっている。
■あまつさえ、安倍首相は12日から東欧6カ国を訪問し、「北朝鮮への制裁・圧力強化に向け緊密な連携を強化したい」と意欲マンマンだ。

■三つには原発への態度だ。「原発輸出」に拍車をかけ、担う民間企業には、巨額な銀行融資が可能となるよう、政府保証まで与えて厚遇する。10日には小泉・細川元首相らが、脱原発運動を積みあげてきた成果を踏まえ、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表する。22日に召集の通常国会に提出するという。世界から拍手や歓迎の声が挙がるだろう。安倍首相、少しは煎じて飲んだらよい。(2018/1/7)

≪おすすめ本3冊≫ まず伊藤詩織『Black Box』─性暴力被害に屈せず闘い続ける強い矜持=伊藤和子(弁護士/「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長)

2018/01/05(金) 11:45
 昨年6月、デイビッド・ケイ国連特別報告者は日本の表現の自由に関する調査報告書を国連に提出、報道の自由を確保するよう勧告した。
 彼は「日本のメディアは政府からの圧力を跳ね返す力が弱い」とし、記者クラブ制度など報道機関と政権の癒着に疑問を呈し、ジャーナリストの横の連帯、調査報道の環境醸成を訴えた。この提起は主要メディア内では、必ずしも掘り下げられなかったが、現状を打ち破る新しい動きが起きた。

 東京新聞の望月衣塑子記者による政権追及である。著書『新聞記者』 (角川新書)には、記者を志した軌跡、官邸会見で追及する心の葛藤や熱い想いが綴られている。
 多くの記者が政権幹部に踏み込んだ追及をしなくなる中、あえて質問を重ねる勇気を支えるのは権力監視というジャーナリストとしての強い使命感だ。「前川さんや詩織さんがたった一人でも戦おうとし、社会的に抹殺されるかもしれないリスクと背中合わせで疑惑を追及している。2人の勇気をだまって見ているだけでいいのか」と問う。

 その詩織さんは、首相に近い元テレビ記者による性的暴行被害を告訴、逮捕状執行が直前で見送られ不起訴に。検察審査会でも「不起訴相当」。それでも諦めず記者会見で被害を実名告発し、伊藤詩織『Black Box』 (文藝春秋)を出版した。
 屈せずに闘い続ける動機は「自分の中で真実に向き合えないのであれば、私にこの仕事をする資格はないだろう」というジャーナリストの強い矜持にある。性暴力被害者に泣き寝入りを強いる日本の社会的法的システムを、実体験から克明に問題提起した価値ある一冊だ。

 最後に横田増生『ユニクロ潜入一年』 (文藝春秋)を挙げたい。企業内部の過酷労働の実態を追及するため、自ら働き、潜入調査するという究極の調査報道姿勢に心から敬意を表したい。圧巻のルポだ。彼らに孤独な戦いをさせてはならない。社会が、そしてジャーナリストの横の連帯がこれを支え、真実に迫り権力を監視する報道が強まることを期待する。

《月間マスコミ評》NHK記者過労死、当確報道に疑問=諸川麻衣

2018/01/04(木) 17:24
 2013年7月24日、NHK首都圏放送センターで都議選、参院選取材に当たってきた佐戸未和記者が、月159時間余の時間外労働の末に31歳の若さで過労死した。4年後の今年11月20日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀 過労死と闘い、命を守る」では、冒頭で生前の佐戸さんの活躍や今のご両親の声を紹介、過労死問題は「この番組を作るNHKにとっても大きな課題です」と述べた。
 調べてみると実はNHKは06年度に既に、年間総労働時間2100Hを指標に各職場で働き方を見直すという「働き方総点検」を始めていた。さらに12年度にはこれを「働き方改革」に発展させ、「業務の棚卸し」を課題とした。13年度には、全経営業務量に見合う要員数(約一万)の枠内で各職場の「歪み」を解消するため、要員再配置や業務の調整=「全体最適」に乗り出した。
 翌14年5月に佐戸さんの過労死が認定されたが、この年は改革の重点事項に「過重労働防止による健康確保」を掲げ、記者の勤務制度の議論、「専任職」を労働時間を管理する一般職に移行する、三六協定の上限を超えた勤務を「限度越え」として報告するよう労組が呼びかける、などの動きが見られた。
 その後、番組の編集期間に休日を設けるなども行われ、16年度には全部局で年間総労働時間平均が前年度を下回り、全体最適も達成されたという(ただし「限度越え」報告は14年度以降一貫して増え続けているらしい)。
 そして今年度には記者の「専門業務型裁量労働制」が発足、10月に佐戸さんの過労死がやっと公表された。また12月7日には、NHKグループ全体として「長時間労働に頼らない組織風土をつくります」と宣言した。
 このように、NHKが過重労働問題にまったく無策だったとは言えない。ただし、佐戸さんの件は当初、職場集会参加者に口頭で報告されただけで、一斉周知はされなかったという。「過労死の事実をしっかり伝え、再発防止に役立ててほしい」とのご両親の気持ちは裏切られていたのである。「できるだけ早く当確を打つ」という意義不明な目標のために人材を集中投入する選挙報道のあり方への根本的な見直しも、ほとんど見られない。
 一方で佐戸さんの過労死はメディアの他社でも反響を呼び、選挙取材期間の勤務管理のあり方を見直す動きが出ているという。三年後、五年後、放送の現場が「以前よりは働き方がまともになってきた」と実感できるようになれば、報道人として志半ばで斃れた佐戸さんの無念は少しは晴れるだろうか? 
      

JCJに多額遺贈 元出版部会の阿部丈夫さんは、「静」と「動」の人だった=池田隆(出版部会世話人)<br />

2018/01/02(火) 13:14
 出版部会会員だった阿部丈夫さんは「静」と「動」の人でした。1953年4月に日本出版販売(日販)に公募1期生として入社し、7年間ほどは「自称」文学(演劇)青年として活動、青春を謳歌。動の人生に入った転機は、60年「安保闘争」だった。労組執行委員としてデモ行進に参加、壮大さに触発、感動、その後23年間組合役員として活動した。私と阿部さんとの出会いは67年の青年部結成でした。69年から8年間書記長として民主的労使関係の確立に向け千代田区労働組合協議会(千代田区労協)、75年には日本出版労働組合連合会(出版労連)に参加し、その先頭に立って実現した。背景には常に民主的出版物の普及に貢献したいという信念でした。

 退職後は、23年間の運動を記録した組合機関紙や資料を、過ぎた事として廃棄するのは忍び難いと7年間にわたって住まいがあった草加市であったことから「想過思今」として編集、かつての仲間に送付。その集大成は全3巻私家版「日販労働運動史」として刊行された。「出版流通九条の会」の結成にも尽力された。

 阿部さんは81歳で昨年4月に亡くなられたが、相思相愛、同志でもあった夫人の明子さんが今年4月に亡くなられ、生前お二人の遺志で何らかの費用に活用してほしいということでJCJに遺贈された。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号

【今週の風考計】12.31─ウオッチ・ドッグとして歩んでいきたい

2017/12/31(日) 10:00
◆ゆく年くる年、酉が飛び立ち、戌が走ってくる─使い納めとなる年賀52円はがきに、「9条が正念場、懐憲ストップ! 力を合わせよう」と認め、投函する。

◆このほど組まれた防衛予算を見れば、背筋が寒くなる。なんと5兆2千億、6年連続の増額、過去最高となる。弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入だけではない。射程千キロに及ぶ巡航ミサイルを、ステルス戦闘機に搭載するシステムの予算化まで図る。
◆加えて護衛艦<いずも>を「攻撃型空母」へ改修する計画だ。空母化すれば米軍のステルス戦闘機F35Bが垂直のまま離着陸できる。まさに「専守防衛」どころか「敵基地攻撃能力」を持つ兵器の導入と活用のオンパレードじゃないか。憲法9条2項「戦力の不保持」を踏みにじる“戦争予算”と言っても過言ではない。

◆政官歩調を合わせ、南スーダンPKO部隊に派遣された自衛隊の「日報隠し」に始まり、<モリ・カケ>疑惑にはフタをし、「ご意向や忖度」にキュウキュウとする。国会では「共謀罪」法を強行可決し、準備・計画・未遂の行為まで処罰する。政治権力にとって、目障りな人々や組織を監視・処罰する法律に一変するのは必定だ。
◆あらためてJCJは、「忠犬ポチでなく、ウオッチ・ドッグ」に徹したい。しかも市井に暮らす人びとの心に寄り添い、危険を嗅ぎとったら鋭く吠える役目を果たしたい。

◆お年玉は、初読みにおすすめの一冊、ボストン・テラン『その犬の歩むところ』(文春文庫)をあげよう。犬も人間も等しく翻弄され過酷な目に遭うが、互いに助け合いながら逆境を克服していく感動の物語だ。(2017/12/31)

≪おすすめ本≫ 新垣毅『沖縄のアイデンティティー』 沖縄メディアで奮闘する記者の情熱と使命感=米倉外昭(「琉球新報」文化部記者)

2017/12/30(土) 13:36
 「新聞記者をしながら本を書く」ということがどれほど大変なことか、私には、正直なところ実感できていない。今年、2人の畏友がそれを実行した。
 沖縄タイムスの阿部岳『ルポ沖縄 国家の暴力』(朝日新聞出版)が8月に発刊された。そして11月、琉球新報の新垣毅『沖縄のアイデンティティー』(高文研)である。

 阿部は北部支社報道部長として基地問題の最前線を担当。副題は「現場記者が見た『高江165日』の真実」である。全国から機動隊を動員してヘリパッド(オスプレイ発着場)の建設工事が強行された「戒厳令下」の現場を、軍事基地に反対する住民の立場に身を置いてリアルに描写。「政府の暴走を本土の無関心が可能にしている」と指摘する。
 名護市安部海岸のオスプレイ墜落など、大事件が相次ぎ、忙殺されている阿部が本を出したと知った時は驚いた。あとがきに、半年間、休日を全て執筆にあてたとある。日本全国に伝えなければという強い情熱と使命感ゆえであろう。
 ネトウヨの攻撃にもさらされている沖縄メディアには、多くの「本土」出身記者がいる。東京生まれの阿部は「沖縄に対する本土という多数派、加害者の側にいる者として」「責任の果たし方は、これからもずっと問われていくだろう」と記し、本土出身という「十字架」を背負って現場に身を置くことの決意を示した。

 一方、新垣は「沖縄人」としてアイデンティティーを正面から問うた。東京支社報道部長の新垣は、沖縄と「本土」がぶつかり合う第一線である東京で多忙な日々を送る。そんな中で、20年前の修士論文を基に、その後の取材や変化を踏まえて加筆・修正したという。
 記号論、言説(ディスコース)理論、ポストコロニアリズムなどの用語は、ややとっつきにくいが、「うちなーんちゅとは何者か」と自問自答しながら、格闘してきた成果を結実させた。これも情熱あふれる一冊である。

≪リレー時評≫ 最高裁の受信料制度「合憲」判決、公共性が問われるNHK=隅井孝雄

2017/12/28(木) 09:28
 NHKの現行の受信料制度について、最高裁判所は12月6日「合憲」と認めた。
 放送法は「NHKを受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」としている。一方受信料の支払いは、NHKの内部規約だ。そこでこれまで「受信者はNHKの番組や経営姿勢に同意できない場合には、支払拒否もありうる」という解釈が有力だった。判決は「双方の意思表示の一致は必要だ」としながらも、「受信料は合理性、必要性がある」とした。NHKとっては追い風だ。

 1990年代の初頭、本多勝一『受信料拒否の論理』に触発されて、受信料拒否が注目された。2004年紅白歌合戦の制作費着服の発覚をきっかけに、不払いが広がり、2005年1月海老沢勝次会長が引責辞任した。収納率は低下、2006年度末までには63%まで落ち込んだ。NHKが不払いに対する裁判を始めたのは2006年11月からだった。
 その後、籾井勝人元NHK会長が、「政府が右というものを左とは言えない」と発言(2014年1月)、政府寄りの姿勢を見せたことから、市民の新しい運動形態として「籾井退任まで支払いを保留する」という動きで、一期での退任という結果となった。
 受信料訴訟のほとんどはNHKによる。だが奈良地裁では視聴者が「NHKは放送の公正を守っていない、放送法順守義務違反だ」として46人が集団訴訟している。

 現在、NHKはインターネットへの放送再送信を計画しており、受信料をデジタル機器所有者にも付加するかどうかが論議を呼んでいる。デジタル時代、変化する受信料環境に、最高裁は全く触れなかった。
 私が注目するのは最高裁判決が受信料の役割を述べている部分だ。
(受信料は)「特定の個人、団体、国家機関から支配や影響が及ばないよう、広く負担を求めた」。「憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足する」。

 現実はどうか。安倍第二次政権下で、政府主導のメディア操作、NHK御用化が進んでいる。「公正ではない放送を繰り返せば、免許停止もありうる」発言(高市元総務相、2016年2月)、国谷裕子キャスター退任(2016年3月)、「安倍首相の意向を代弁するレポートばかりだ」と批判される記者、秘密保護法、集団的自衛権、安保法制についてNHK報道が民放に比べて著しく不十分、などなどを視聴者は体験している。
 果たしてNHKは「国家機関からの影響が及ばない」、「知る権利を充足する」公共放送なのか、という疑問が市民、視聴者の間で広がっている。

戦争の危機迫る 自衛隊員の心境は=橋詰雅博

2017/12/26(火) 17:06
 安倍晋三政権は安保法成立など戦争する国に向かい着々と手を打っている。戦争の最前線に立つことになる自衛官は今、何を思っているのか。東京・練馬区の陸上自衛隊駐屯地を中心に部隊の行動の監視と自衛官への接触を行う練馬平和委員会の坂本茂事務局長(64)に今の自衛官の心境を聞いた。

――安倍政権が戦争する国づくりを進めていることに自衛官はどう感じているのか。
 昨年10月16日に中央観閲式予行訓練が陸上自衛隊朝霞駐屯地訓練場で行われた際、一般向け入場券で駐屯地内に入った。警務隊などが尾行していましたが、「安保法をどう思うか」「8月、家族向けに配布された安保法解説書の感想は」などの質問を自衛官にぶつけた。「安保法は違憲」「入隊する際に署名捺印する『服務の宣誓書』には日本国憲法及び法令を遵守と書かれており、これと矛盾する」「解説書は美辞麗句だらけでインチキ」などと答えた。

20人が答える
 また、PKO(国連平和維持活動)の新任務である駆け付け警護の訓練を経験した自衛官(1曹)は「海外に派遣されたら死ぬかもしれない」ともらした。3年に1回実施される中央観閲式は自衛隊のひのき舞台。予行演習とはいえ、本来は一般の人とのおしゃべりは厳禁です。にもかかわらず直撃インタビューに20人もの自衛官が答えたのは、命が危ういという不安の現れだと思います。

――九条改憲について何か言っていますか。
 九条改憲には口を閉ざしているが、自衛隊のイラク派遣(2003年12月から09年2月)でこんなエピソードがあります。イラクに6カ月間派遣されて帰国した幹部自衛官は、私に「九条があったから生きて帰れた」と話してくれました。憲法改正についてどうなのかと尋ねると「政治問題には答えられない」と言いました。

ドタキャン増加
――志願者の大幅減により自衛官募集も相当減っているそうですが……。
 13年から一般曹候補生(正社員に当たる)募集は毎年2割ペースで激減している。1年を通して募集している非正規雇用に当たる自衛官候補生(陸自2年、海自・空自3年の任期制)も同じペース。
 最近目立つのが試験当日のドタキャンです。母親や祖父などから『紛争地への海外派遣もあり得る。命は一つ。受験は止めなさい』と忠告されて止めるという。ある自衛官募集担当者は「上官から縁故募集も命令されている。わが子は自衛隊以外の仕事に踏み出したので、内心ホッとしている」と話した。若者の自衛隊離れは加速しています。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号

《おすすめ本》 『亡国の武器輸出』 池内了+青井美帆+杉原浩司編=橋詰雅博

2017/12/26(火) 16:50
 2014年4月、安倍晋三内閣は「防衛装備移転三原則」を閣議決定。武器輸出三原則が撤廃されて武器の輸出が全面解禁になった。「平和国家」から武器輸出を国家の「成長戦略」として政策が転換されたことで、大物防衛利権フィクサーが再び蠢動している。

 秋山直紀氏だ。秋山氏は防衛利権に絡んだ事件で約1億円の脱税容疑によって11年10月に懲役3年執行猶予5年の有罪判決が確定した人物。彼の復活を印象付けたのは16年5月都内のホテルでの現職の国会議員と防衛官僚による講演会の仕掛け人として名前が挙がったのだ。自ら理事を務める国際平和戦略研究所の代表理事、久間章生元防衛相を呼びかけ人として講演会開催を企画した。ただ、講演会は、直前に中止になった。本書執筆陣の一人であるジャーナリストの田中稔氏は、その理由を有罪になった人物が関係する会合で国会議員らが講演するのはまずいと防衛省などが判断したと指摘する。
 本書は武器輸出の問題点を15人が多面的に摘出した好著。
(合同出版1650円)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
 

《編集長EYE》 タックスヘイブン3つの問題点=橋詰雅博

2017/12/26(火) 16:41
 巨大企業や富裕層、特権層が納税を逃れ秘密裏に資産を増やすために利用するタックスヘイブン(租税回避地)。その正体が明るみに出た昨年の「パナマ文書」に続く第2弾「パラダイス文書」が11月に報道されて世界に再び衝撃を与えた。

 これを受けてEU(欧州連合)の議会組織で開会中だった欧州議会では、タックスヘイブンへの批判が集中した。ベルギーのランバーツ議員は「租税回避は民主主義を掘り崩す行為だ」と強調。モスコヴィシ税制担当委員も「もしこれが合法だと言うのなら、法の方を変えなければならない」とまで言及した。

 12月3日の民間税制調査会(座長・三木義一青山学院大学学長)でパラダイス文書などについて講演した北海道大学法学研究科博士課程の津田久美子さんは、こう述べた。

 「タックスヘイブンの主な問題点は三つあります。不平等の温床、マネ―ロンダリングなど犯罪の助長、過剰なマネー取引による金融危機発生に加担です。独自の対抗策としてEUではマネロンを防ぐ案の検討や多国籍企業への課税強化、タックスヘイブンブラックリストの作成、パナマ文書に対する調査機関の設置などを挙げています」

 特に過剰に生み出されるグローバル・マネーを制御する試みとしてEU金融取引税(FTT)の導入に向けてフランスやドイツを中心とした10国が取り組んでいる点に注目が集まる。

 「当初は11カ国でしたが、経済の効率性が阻害されるとFTTに反対する金融業界などのロビー活動によりエストニアが離脱し、活動が停滞しました。とりわけ株式や債券などで運用する年金基金がFTT導入で損害を受ける可能性が大きな問題になりました。この数年は総論賛成、各論反対で税制の詳細を詰めるプロセスが頓挫していました。しかし、最近はEUの新財源として再び脚光を集めつつあります」(津田さん)

 日米は反対だが、EUのFTT導入への挑戦は注視すべきだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号

《支部リポート》前川講演―第3会場まで用意=徃住嘉文(北海道支部)

2017/12/25(月) 18:48


「理想のない現実主義はない」「心の中はアナーキスト。振舞いは公務員だが、いかなる権威にも縛られない」。次々と繰り出される言葉に皆、うなずいている。 
しかも、表情が柔らかい。笑顔だ。10月28日、札幌市エルプラザでJCJ北海道支部と「さっぽろ自由学校『遊』」が開いた元文科省事務次官前川喜平さんの講演会。事前の問い合わせが殺到したため、定員350人の会場のほかに、第3会場まで用意し中継を手配した。それでも合計780人であふれ、中継不調などでご迷惑をおかけした。
 これほど関心を呼んだのは、権力を監視すべきマスコミすら「忖度」「自粛」「服従」する安倍晋三政権下で、勇気、正義への渇望が広がっているからではないか。本紙「ジャーナリスト」のインタビューは衝撃的だったが、講演でも前川さんの率直な物言いは変わらない。「私は下村博文文科相のもとで教材『私たちの道徳』を作った責任がある。『自由の価をきちんと書く』よう注文したが、結局『自由には責任が伴う』などと書かれた。『国を愛そう』など集団主義的な価値が強調された」「憲法は教育を受ける権利を保障している。学ばなければ、憲法で享受すべき人権、国の原則は守れない。権力の暴走を許してしまうのは、無知蒙昧な国民。えらい人に従う、プロパガンダに流される国民をつくったのではないかと反省している」
 会場からは「管理的な仕事が増え、子供たちとともに考える時間がない、満足な教育ができない」(現役の教員)「選挙権を得たが主権者教育が足りない」(高校生)などの意見も出た。前川さんは、現実が厳しいことは認めつつ、自分のできる範囲で少しでも変えていこう、と面従腹背の勧めを説いていた。
 私事で恐縮だが、前川さんと、安倍首相、志位和夫共産党委員長、私は学齢が同じ。「同期」として、日本を戦中に戻す安倍首相の復古主義を改めさせる責任がある。言論、運動両面の戦いは、今後も続く。

【今週の風考計】12.24─心残りの<'17読書回顧─おすすめ3冊>

2017/12/24(日) 13:55
■わが機関紙「ジャーナリスト」<書評欄>を担当して10年。今年も掲載できなかった良書は数多い。とりわけ小説や境界領域の本は採用できず、無念の思いがよぎる。

■濯ぐ意味もこめ<おすすめ3冊>を挙げておきたい。まずは文藝賞を受賞した若竹千佐子さんの小説「おらおらでひとりいぐも」。東京新聞「本音のコラム」で斉藤美奈子さんの紹介エッセイを記憶し、河出書房新社から刊行されるのを待って購読した。
■夫をなくした悲しみを超え、残りの人生は自分なりに生きようと、新たな「老いの境地」を描く。遠野地方の口承文芸にも通じる会話文と地の文章が重なり合う叙述に圧倒された。

■実は、このタイトルが、宮沢賢治「永訣の朝」にある<Ora Orade Shitori egumo>に由来しているのを知った。以来、宮沢賢治の詩集を引っ張り出して読み直し。続けて『銀河鉄道の夜』も再読。
■そんなところへ門井慶喜『銀河鉄道の父』(講談社)が目に留まり一気読み。人間・宮沢賢治を、父・政次郎の視点から、その家族と紡いだ日常生活を通して描き出す。これまで政次郎について書かれた本は一冊もない。著者がコツコツと調べ続けて完成させた、賢治一家の再発見となる稀有な物語である。

■最後は伊沢正名『葉っぱのぐそをはじめよう』(山と渓谷社)。ノグソを続けて43年、「糞土思想」が地球を救うと述べる著者は、ノグソは人が自然と共生する最良の方法だという。その熱い想いが80種以上の葉っぱのカラー写真と共鳴して響き合う。
■山に行けば<お花を摘みに行ったり、雉撃ちに行く>のはよくある事。また『うんこ漢字ドリル』(文響社)が累計281万部の時代、決してビロウな本だと忌避してはならない。(2017/12/24)

≪おすすめ本≫ 望月衣塑子『新聞記者』─記者は「傍観者でいいのか」この自問が事実に迫る原動力=斉加尚代(毎日放送報道局ディレクター)

2017/12/23(土) 11:36
 この時代に生きる新聞記者として「自分にできることは何か」を考え現場に向かう。菅義偉官房長官の会見で「東京新聞、望月です」と切り出し、舌鋒鋭く質問を畳みかけた女性の声を覚えている方は多いだろう。官邸記者の横並び主義に殴り込みをかけた社会部記者。

 その原動力を生い立ちから綴る著者は、ジャーナリスト志望の理由や仕事への思いを率直に記す。
 たとえば滑舌のよい凛とした声は、子ども時代に熱中した演劇で磨いた。徹底的に粘り強く聞く姿勢は東京地検特捜部を担当してスクープを放ち、特捜部から事情聴取を受けても書き続けたスタイルと繋がる。
 彼女にしてみれば積み上げてきた取材スキルを、「総理のご意向」と記された文科省文書に揺れる加計問題で発揮したにすぎないのだが、他の記者たちは彼女を批判、個人攻撃といえる中傷記事を放つ者すらいる現状に、読者は何を思うだろうか。大きな声援と渦巻くバッシング、そのストレスから体調を崩したことも。

 それでも彼女は権力の不正を告発する人々に向き合い、「自分の中で燃え盛ってくる。こうなってくるともう私のペース」と自身を突き動かす。多忙を極める取材と各地での講演、そして2児の子育てを担う姿は、ペンを手にしたアスリートを思い出す場面も多い。
 彼女が追い求めてやまないのは、権力が隠そうとする真実と国民が知るべき事実。傍観者でいいのか?と自らに問いかけ、個の記者の力を信じて現場に立つ望月記者。その思いを全国の記者が共有できたなら、暴走気味のこの国が少しはマシになるのではないかと思えてくる。(角川新書800円)

《沖縄リポート》県民の批判を受け入れた翁長知事 港の使用を止められるかに注目=浦島悦子

2017/12/23(土) 00:02
 11月初め、『沖縄タイムス』『琉球新報』両地元紙が、辺野古新基地建設に向けた埋め立て用石材の海上輸送にかかわる岸壁使用を沖縄県が許可していた(6月申請、9月許可)ことを報道、県民に衝撃と動揺が走った。
 辺野古ゲート前での県民の粘り強い座り込みや海上抗議行動によって基地建設作業が大幅に遅れていることに焦った安倍政権は、ダンプトラックによる石材の陸上輸送に加え海上輸送を行う方針を打ち出した。海上輸送では、台船1隻でダンプ2百台分以上が運べる。来年2月の名護市長選を前に作業を加速させ、名護市民・県民のあきらめを誘う狙いもあるだろう。
 そんな中で、「あらゆる手段で新基地を阻止する」と言ってきた翁長県政が、基地建設を加速することが明らかな港の使用許可を出したことに、座り込みの現場でも批判が相次いだ。13日には、県の許可を得た国頭村奥港で、奥区民や区長に何の説明もないまま、機動隊を大量動員して台船への石材積み込みが始まり、抗議する区民や村民ら約百人を機動隊が排除して強行、翌日、約50台分の石材を大浦湾に搬入した。翌日、沖縄県は奥区を訪れ、「申請に法的不備がなければ許可せざるを得なかった」と説明したが、区民らは納得しなかった。
 基地建設に反対する市民や市民団体の間で使用許可の撤回を求める声が高まったのを受けて15日、「基地の県内移設に反対する県民会議」(山城博治共同代表)は県庁で謝花知事公室長と面談、知事の「言行不一致」を厳しく批判し、使用許可の撤回を要請した。
 同日夕方、記者会見した翁長知事が、ダンプの粉じんや騒音などの環境問題を「新たな事態」として使用許可の撤回を検討していると報道され、それははじめからわかっていたことではないかと思いつつも、私はいささか安堵した。何よりも、このまま県や県知事への不信感が強まれば、市民・県民との結束が崩れていく心配があった。県民の批判を受け止めた知事の姿勢を評価したい。
 政府は奥港に続いて本部港塩川地区を海上輸送に使う方針だ。口頭で使用許可を出した本部町に対し県は指導に入ったが、使用を止められるかどうか、県民は固唾を呑んで見つめている。

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