10万円給付金失敗の二の舞に
コロナ予防接種に番号利用?

●マイナンバー制度の利用にこだわれば・・・・・・

 昨年4月20日、共通番号いらないネットは「新型コロナ対策に便乗したマイナンバー制度の利用に反対する」声明で、 政府が給付金支給にマイナンバー制度の利用を検討していることに対して「マイナンバー制度の利用にこだわれば、かえって円滑な給付はできなくなる」と指摘した。
  しかし政府は、一人10万円の特別定額給付金の支給を利用してマイナンバーカードを普及させようと、 5月1日からマイナンバーカードを使ったオンライン申請を始めた。マイナンバーカードが普及しておらず電子証明書の更新も始まっている中で行った結果、カードの交付申請や電子証明書の手続きなどで役所の窓口に殺到し、迅速な給付のはずが郵送申請よりも遅くなるという事態を招き、市区町村は次々とオンライン申請を中止するに至った
 政府はこの誤りを反省せず、「デジタル対応が可能となっているにもかかわらず、実運用するための準備不足や、対面・書面を前提とした行政運営により、デジタルが活用されず、迅速な給付等に支障が出た」(「世界最先端デジタル国家創造宣言」5頁)などと自治体に責任転嫁していた。

●コロナ予防接種はマイナンバー活用の試金石?

 この誤りがまた繰り返されようとしている。
 1月19日の記者会見で、平井デジタル改革相(マイナンバー制度担当)は突然、新型コロナウイルスのワクチン接種の管理にマイナンバーを活用すべきだと述べた。報道によれば、「誰にいつ何をうったかを確実に管理するのはマイナンバーしかない」とか「マイナンバーは個人を特定する唯一の番号。それにワクチンをひもづけるのは当然の考えだ」「マイナンバーを使うと間違いが起きない。今回使わなくていつ使うのか」などと主張したようだ。
 「どのようにマイナンバーとひもづけ、管理するかはこれから考えるべき」とも発言しているようで、ワクチン接種の実務を踏まえた発言ではなく、 マイナンバー制度を使わせたいということからの主張だ。
 すでに昨年暮れから準備してきた厚労省も自治体も困惑していると報じられている。ワクチン接種の情報管理にマイナンバーを活用することに関し、全国市長会はワクチン接種を担当する河野太郎行政改革相に、「自治体の事務が増えることは非常に困る」との懸念を伝えている。それでもシステム導入をしようとしているようで、短期間の大規模なプロジェクトに混乱を生じることが心配される。
 「マイナンバー活用の試金石」とか「マイナンバーの効果や意義を知ってもらう機会になる」(毎日新聞1月27日) などという意図で、ワクチン接種を利用すべきではない。特別定額給付金の失敗が、「マイナンバーシステムをはじめ行政の情報システムが、国民が安心して簡単に利用する視点で十分に構築されていなかった」(「骨太の方針2020」15頁)ことを知らしめたことを思い起こすべきだ。

●すでに予防接種事務にマイナンバーは利用

 実は、すでに予防接種事務にマイナンバー制度は利用可能になっている。
 マイナンバーを利用できる事務は番号法の別表第1とその省令に、情報提供ネットワークシステムを利用できる事務は別表第2とその省令に列挙されているが、予防接種は2013年に番号法ができた当初から、利用事務として別表第1の10に載っていた。なお予防接種事務にマイナンバーを利用できるのは市区町村長または都道府県知事であり、国は利用できない。
 さらに2015年9月に成立した番号利用拡大法で、予防接種の実施に関する情報を情報提供ネットワークシステムで提供することが加わり(下図)、転居前の接種履歴を照会できるようになっている(別表第2の16)。このときあわせて特定健診の管理にマイナンバーを利用することも加わり、マイナンバー制度の開始前にもかかわらず、当初は利用しないことになっていた医療健康情報に利用が広がることへの懸念が指摘されていた。

IT総合戦略本部マイナンバー等分科会第8回(2015年2月16日)資料2

 情報提供ネットワークシステムは2017年7月18日から試行運用が、同年11月13日から本格運用が開始されている。新型コロナのワクチン接種については、2020年12月9日に予防接種法6条の臨時予防接種とする法改正が施行され、マイナンバー制度の利用が可能となっている。

  「接種記録について」(2019年12月23日厚労省資料)

●実際のマイナンバー制度の利用状況は?

 しかし実際に予防接種事務でマイナンバー制度がどのように利用されているかは、厚労省も把握していない (毎日新聞1月27日) 。昨年12月11日にまとめられた「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」が、 既に情報連携が開始されている事務における実施の徹底や、マイナンバー法上は情報連携が可能だが未だ開始していない事務における対応を求めているように (24頁) 、情報提供ネットワークシステムは想定したほどには使われていない。
 1月9日の「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」学習会の検討資料18~20頁で紹介しているように、年金事務など大量の照会が発生する事務で利用件数は増えているが、単発で処理する事務ではあまり利用されていないのではないかと思われる。
 また予防接種事務では、厚労省が情報連携の本格運用開始に当たっての留意事項を通知しているように、医療機関に委託して実施しているために接種状況の確認に一定の時間を要し、転入者が転入した直後に情報連携を行っても正しい情報が得られないため、従前どおり母子健康手帳等により予防接種履歴を確認することを求めている。このようなタイムラグは、その他の事務でも発生している。
 情報提供ネットワークシステムは一般に思われているほど効率的ではなく、自治体間で電話で問い合わせた方が早いということもある。

 横浜市の例「特定個人情報保護評価書(予防接種事務)」より

●どうマイナンバーを使おうとしているか

 新型コロナのワクチン予防接種は2月下旬から医療従事者に、4月以降高齢者への接種開始が予定されている。実施が迫っているが、マイナンバーをどう使おうとしているかは明らかではない。
 1月26日の衆議院予算委員会では、ワクチン接種担当の河野大臣は「接種の業務そのものにマイナンバーカードは必要ない。自治体が発行するクーポン券、接種券でやる」と答弁し、ワクチンの配送等を管理する厚労省の「ワクチン接種円滑化システム」(V-SYS)と自治体の予防接種台帳を連携する新システムを一から作ると報じられていた

 1月29日の日経新聞によれば、自治体ごとの接種台帳ではなく住民基本台帳を基盤にマイナンバーを活用した全国共通の一元化システムをつくり、接種の際は自治体から送られた接種券(クーポン券)を接種会場で提示し、免許証など本人証明を示し券に記載したQRコードを読み取ってもらう方法だという。免許証など本人証明が必要では、接種会場の混雑に拍車をかける。

  1月28日の参議院予算委員会では、田村厚労大臣は副反応の詳細な状況を把握するために河野大臣が新システムを検討していると答弁した。河野ワクチン接種担当大臣は自治体の接種台帳や厚労省のV-SYSとはまったく別個に、リアルタイムで接種情報を取得したり転居した人を追いかけるシステムを新たに足すかどうかの検討をしていると説明し、自治体の接種台帳をベースとしたシステムには触らないので自治体に迷惑はかけないと答弁した。平井デジタル担当大臣は、早く接種状況を把握するために世界ですでに使われているシステムの中でいいものを導入することを検討中と答弁した。  

       厚労省の自治体への説明資料より

●これからマイナンバーを使うのは無理

 既存の自治体の予防接種台帳とは別に新たな一元的管理システムを作ろうとしているようだが、 国が管理する新たなシステムでマイナンバーを利用するのであれば、番号法の改正が必要だ。

 国の新たなシステムであればもちろん、自治体のシステムとして作るとしても、マイナンバーを付けた個人情報(特定個人情報)を利用するためには特定個人情報保護評価を事前に行う必要がある。これは特定個人情報ファイルの取扱いが個人のプライバシー等の権利利益に影響を及ぼしかねないことを認識し、特定個人情報の漏えいその他の事態を発生させるリスクを軽減させるために適切な措置を講じ、個人のプライバシー等の権利利益の保護に取り組んでいることを事前点検するものだ。実施した「評価書」は各自治体や個人情報保護委員会のサイトで見ることができる。
 新たなシステムを作るのであれば、事前に特定個人情報保護評価が必要だ。既存のシステムに付加する場合でも、「評価書」の重大な変更であり保護評価の再実施が必要になる。対象人員が30万人を超える自治体では、パブリック・コメント(期間は原則1カ月)で意見聴取を実施し、個人情報保護審議会等で第三者点検を実施する必要がある。遅くともプログラミングの開始前に完了することが原則だ (個人情報保護委員会の概要資料参照) 。

特定個人情報保護評価について(概要版)」 (個人情報保護委員会)

 さらに自治体が情報提供ネットワークシステムの利用を変更する場合は、情報連携の対象となるデータを規定する「データ標準レイアウト」を修正しなければならないが、この改版は年1回7月となっている。事前に正しく連携されるか団体間でのテストなどが必要だ。国による新しいシステムなら、情報提供の仕組みを作るだけでなく、連携用のデータ標準レイアウトも作らなければならない。

 高齢者向け接種では2月に接種券の印刷などを行い、3月中旬に郵送するための準備が進んでいる。この時期に新たに一元的な管理システムを作ることの是非の検証も必要だが、それにマイナンバーを利用するなどというのは現実的ではない。日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)を試す(日経新聞1月29日朝刊)ために、人命のかかったワクチン接種を利用するなどというのはとんでもない。

デジタル庁で再構築される
マイナンバー制度の危険

●デジタル庁なんていらない! 1・18院内集会開催

 国会開会日の1月18日、 共謀罪NO!実行委員会と「秘密保護法」廃止へ!実行委員会の主催(共通番号いらないネットも賛同)で、デジタル庁なんていらない! 1・18院内集会が行われ、ライブ配信を含め約350名が参加した。海渡弁護士(共謀罪対策弁護団)と共通番号いらないネット(原田)より発言。伊藤岳参議院議員、逢坂誠二衆議院議員、福島みずほ参議院議員から挨拶を受けた。
 海渡弁護士からは、首相直属で作られるデジタル庁の集約した情報が内閣官房の内閣情報調査室を介して警察と共有される可能性が否定できず、公安警察や自衛隊情報保全隊、公安調査庁などの活動を監視する政府から独立した機関を、アメリカ、ドイツ、オランダなどの制度を参考に作る必要を訴えられた。
 共通番号いらないネット(原田)からは、 政府は普及・利用が行き詰まっていたマイナンバー制度をコロナ禍を利用した「ショック・ドクトリン」で抜本改善(再構築)しようとワーキンググルーブ(WG)報告をまとめ、それがデジタル改革関連法案になっていることを紹介し、あわせて個人情報保護条例が国基準化によって有名無実化しようとしていることを報告した。

●J-LISの国管理化で迫る「国民総背番号制」

 住基ネットができた際に「国民総背番号制ではない」と政府が説明した根拠の一つが「地方公共団体共同のシステムであり国が管理するシステムではない」ということだった。しかしWG報告やデジタル改革関連法案では、その「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」を国と地方の共同団体の管理に変え、国(デジタル庁・総務省)が目標設定や計画認可し、改善措置命令に違反すると理事長を解任するなど、事実上、国管理化しようとしている。
 地方公共団体情報システム機構は、住基ネットの全国センターやマイナンバーの生成、マイナンバーカードの交付システム、公的個人認証(電子証明書)、そして情報連携用の 全住民の最新の住民データを保管する「中間サーバープラットフォーム」を設置するなど、住民情報を一手に管理している(下図)。そこが国管理化されれば、公安機関の不正アクセスや警察の捜査関係事項照会などによって、 海渡弁護士の指摘のように住民情報を警察と共有する不安が高まる。

         J-LIS案内パンフ(2頁)

●プライバシー保護から個人情報の提供拡大へ

 住基ネットに反対していた民主党政権下で構想されたマイナンバー制度は、住基ネットへの市民の強い反対や最高裁判決を受けて、それなりにプライバシー規制やセキュリティを意識した仕組みとして作られてきた。
 しかし自民党政権や経済界は、プライバシーに配慮しすぎたために利用が広がらないと見なして、デジタル庁の下でマイナンバー制度を再構築し個人情報の官民共同利用を進めようとしている。

 行政機関間の情報連携の仕組みである情報提供ネットワークシステムの利用の徹底を求めるとともに、社会保障・税・災害の3分野以外への利用拡大やマイナンバーを使わない事務への利用に広げ、さらに情報連携の仕組みそのものを抜本的に見直そうとしている。
 民間との間では、本来マイナンバーで管理・提供される自分の情報を確認するという個人情報保護のために作られたマイナポータル(番号法では「情報提供等記録開示システム」)を、マイナンバーで管理する個人情報を民間等に提供する仕組みとして利用し、個人・官・民をつなぐ「情報ハブ」にしようとしている。
 いま政府が力を入れているのは、マイナンバーカードに内蔵(任意)の電子証明書の発行番号(シリアル番号)を、 利用に規制のあるマイナンバーの代わりに個人を識別特定するIDとして転用し、官民のデータベースのIDとリンクさせる利用だ。マイナポイントも健康保険証利用もこの仕組みを使っている。そのためにマイナンバーカードを全住民に所持させようとしているが、必要な保護措置は講じられていない。
 さらにあらゆる行政手続をスマホから可能にするため、電子証明書をスマホで利用できるようにしようとしているが、マイナンバーカードを使った初期設定が必要だ。スマホと電子証明書のシリアル番号による個人識別がむすびついて、一人一人の生活と行動を監視するツールになる。

●2025年までにデジタル庁が作ろうとしている社会

 デジタル庁は、マイナンバー関連システムや電子証明など「社会のデジタル化の基盤」となるシステムを関係省庁から移管して、個人を識別する番号に関する総合的・基本的な政策の企画立案やマイナンバー制度の利用や情報提供ネットワークシステムの設置・管理などを一括して行うことになっている。権限と予算と人員を集中して、トップダウンでシステムの再構築をすることが目的だ。
 さらにクラウドサービスの利用環境である「(仮称)Gov-Cloud」を整備し、政府システムだけでなく準公共分野(医療、教育、防災等)や地方自治体、独立行政法人の情報システムなどで活用し、自治体の業務システムを標準化・共通化するなど「ガバメントネットワーク」を整備しようとしている。
 このようなデジタル庁によって2025年までに、官民でデータをシームレスで共有化するため庁内連携・団体間連携・民間との対外接続に対応する「公共サービスメッシュ」という情報連携基盤を作ろうとしている。
 マイナンバー制度は、制度発足時に説明されていた姿からは似つかないものに変貌をとげようとしている。

    ワーキンググルーブ報告 有識者提出資料より

院内集会で使用した説明資料は以下のとおり

※資料のダウンロードはこちらから

デジタル改革関連法案で
個人情報保護法制改悪!

●個人情報保護法制改悪のパブコメに意見を提出

  2020年12月26日から2021年1月15日まで 、「個人情報保護制度の見直しに関する最終報告」に関する意見募集(パブリック・コメント)が行われた。本ブログ「自治体の住民情報を守ってきた個人情報保護条例が潰される!」で、意見提出を呼びかけたが、共通番号いらないネットでは1月15日、以下の意見を提出した。

自治体の個人情報保護の取組を軽視し、住民の自治体への信頼と地方自治を損なう個人情報保護条例の「国基準化」は行わないでください

1)検討は十分な時間を取り、地方自治体の意見を取り入れながら行うべきだ
 保護法制の大改正であるにもかかわらず、意見募集期間が年末年始を挟んで3週間というのはあまりに短すぎる。自治体は閉庁しコロナ対策で忙殺されており、意見を聞くつもりがあるのか疑う。このような状態での法案を提出すべきではない。
2)ルールは自治体の保護水準を維持するものにせよ
 自治体の創意工夫でつくられてきた条例に多様性があるのは当然で、それを利活用を阻害する「2000個問題」などというのは自治体の40年間の積み重ねを否定するものだ。規定のほぼすべてを国と同じにするのではなく、自治体の保護規定を取り入れたものに見直すべきだ。
3)地方自治を損なう是正措置は削除せよ
 「最終報告」は独自の保護措置を自治体独自の施策に伴うものなどごく例外的なもののみ認め、それに反する場合は「国地方係争処理委員会」や裁判により従わせようとしている。これは憲法に保障された自治立法権を損ない、個人情報保護法第5条が地方公共団体の区域の特性に応じた保護施策を求めていることにも反する。
4)「外部オンライン結合制限規定」を認めよ
 「最終報告」は、オンライン結合制限規定は共通ルールでは認めないと明記している。私たちは、マイナンバー制度はプライバシーを侵害し市民監視を強めるとして反対してきた。自治体の外部オンライン結合制限規定は、このような市民の不安をうけて、自治体が住民情報の管理に責任を持つ姿勢を示すものであり、廃止は市民との信頼関係を損なう。
5)個人情報保護審議会による利活用の第三者点検は維持せよ
 多くの自治体は個人情報を収集・記録・利用・提供する際に、住民代表や有識者による審議会の意見を聞いているが、「最終報告」は法律とガイドラインにより判断し個別の個人情報の取扱いの判断をしないように求めている。審議会による第三者点検は住民参加と行政の透明性のために必要であり維持すべきだ。

●デジタル関連法の一括審議で個人情報保護改悪

 政府は1月15日、自民党デジタル社会推進本部にデジタル改革関連法案の概要を説明した。それによれば、関連法案は
1.デジタル社会形成基本法案(仮称) 【新法】
2.デジタル庁設置法案(仮称) 【新法】
3.デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(仮称)【整備法】
4.公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(仮称)【[新法】
5.預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(仮称) 【新法】
6.地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(仮称)【新法】
の6法案からなっている。
 報道では2月9日に閣議決定の予定だ。

 そのうち3.の整備法では、
・住民基本台帳法(個人番号カード所持者の転入手続の負担軽減及び利便性向上等)
・地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律(地方公共団体が指定した郵便局における電子証明書の発行・更新等の可能化)
・健康増進法(住民が居住していた他の市町村に対する健康増進事業の実施に関する情報提供の求め)
・電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(電子証明書のスマー卜フォンへの搭載、本人同意に基づくJ-LISによる署名検証者への基本4情報(氏名、生年月日、性別及び住所)等の提供)
・個人情報の保護に関する法律(個人情報保護に関する法律と所管の一元化、医学・学術分野における現行法制の不均衡の是正)
・行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(転職時等の使用者間での特定個人情報の提供、国家資格に関する事務等における個人番号の利用及び情報連携の実施、J-LISの個人番号カードの発行・運営体制の抜本的強化)
・地方公共団体情報システム機構法(J-LISに対する国のガバナンスの強化)
・民法、戸籍法、宅地建物取引業法、建築士法、社会保険労務士法等(国民の負担の軽減及び利便性の向上に資する押印を求める手続及び書面の交付等を求める手続の見直し) 等
という、さまざまな法律が一括して審議されようとしている。

 どれ一つをとっても大きな制度改正であり、個々の法案ごとに十分な審議時間が保障されなければならない。
 とくに個人情報保護法改正は既存の3法を統合し、さらに40年間にわたって自治体が作ってきた個人情報保護条例を事実上御破算にして国基準に一本化するという、制度始まって以来の大きな変更になっている。
 一括審議では十分な検討が保障されず、議会制民主主義をないがしろにするものであり、このような法案提出に反対する。

     宮下一郎衆議院議員ブログより

210109 「デジタル庁構想のデータ戦略の重要性について」資料(宮崎さん分)

デジタル庁構想では、これまで以上にデータの利活用
のための「データ戦略」が重視されています。デジタルガバメント
閣僚会議にもとに「データ戦略タスクフォース」というワーキング
グループが設置され、第1次とりまとめが昨年12月に出されました。
今回はその中の人・法人・自然などの最も基本的なデータについて
共有化を図るための基本的なデータベースである「ベース・レジストリ」
を材料にその構想について検討しました。

宮崎俊郎さんのレジメ ↓

引用している、『ベース・レジストリ・ロードマップ(案)』は、以下をクリック。
ベース・レジストリ・ロードマップ(案) 資料1(別紙)

自治体の住民情報を守ってきた個人情報保護条例が潰される!

●個人情報保護法制の大改革を3週間の意見募集で

 政府(内閣官房)は2020年12月26日から2021年1月15日(必着)まで 、「個人情報保護制度の見直しに関する最終報告」に関する意見募集(パブリック・コメント)を行っている。その後、通常国会に改正法案を提出予定だ。
 今回の見直しは、個人情報保護関係の3法(個人情報保護法、⾏政機関個⼈情報保護法、独⽴⾏政法⼈等個⼈情報保護法)を一つの法律に統合するとともに、自治体ごとに定めている個人情報保護条例の内容を国の法律に合わせて共通ルール化し、自治体独自の保護措置を原則として認めないという大改革だ。にもかかわらず年末年始を挟んで3週間という短い意見募集で立法化しようとしている。
 改正案にはさまざまな問題があるが、とくに住民情報を企業や研究者が利活用しやすくするために個人情報保護条例を国基準化することは、プライバシー保護よりも利活用を優先し、 行政と住民の信頼関係を損ない、地方自治を破壊する大問題だ。
◆パブコメ対象の保護法制改正の「最終報告」はこちら
◆最終報告の「概要」はこちら
◆国の検討経過資料はこちら。(条例の国基準化関係は主に個人情報保護制度の見直しに関する検討会の第7回~第10回)
◆ 個人情報保護委員会の行った 「地方公共団体の個人情報保護制度に関する懇談会」の資料はこちら

  個人情報保護制度の見直しに関する最終報告(概要) より

●国に先行して作られてきた自治体の保護条例

 日本の個人情報保護制度は、住民のプライバシーを守り住民に信頼される行政を運営しようとする地方自治体の創意工夫で作られてきた。1970年代から各地で条例が作られたが、国は10年遅れて1988年に行政機関のコンピュータ処理のみを対象とした法律をつくり、個人情報保護法ができたのは2003年だった。
 今回の「最終報告」でも「国の法制化に先立ち、多くの団体において条例が制定され、実務が積み重ねられてきた。独創的な規定を設けている条例も見られるなど、地方公共団体の創意工夫が促されてきたところであり、我が国の個人情報保護法制は、地方公共団体の先導的な取組によりその基盤が築かれてきた面がある。」(32頁)と評価している。地方自治が発揮された条例だ。
 にもかかわらず「最終報告」は、自治体で積み重ねられた成果を尊重せず、独創的な規定を認めない国基準化を強権的に押しつけようとしている。

●条例の「国基準化」とはどういうことか

 自治体が 創意工夫で条例をつくり、審議会など住民参加で運用してきたことから、自治体ごとに規定の違いがある。
 「最終報告(概要)」の図示(下図)では、国と同様の規定をしている団体(A)もあれば一部事務組合など保護条例のない団体(B)もあり、法律に比べて保護規定が不足している団体(C)もある。その一方で国にはない独自の保護規定をしている団体(D)や規定は国と同様でも収集・提供・利用などで審議会の意見を聞く手続きを付け加えている団体(E)など、上乗せ横出しもある。
 それを国の法律と同じ規定(下図の青色)に揃えて、共通化ルール化し、独自の規定を極力なくそうとしている。「最終報告」では、個人情報の定義、要配慮個人情報の定義、個人情報の取扱い(保有の制限、安全確保措置、利用及び提供の制限等)、個人情報ファイル簿の作成及び公表等、ほぼすべての規定を国と同じにするとしている。

  個人情報保護制度の見直しに関する最終報告(概要) より

●条例の独自の保護規定はどうなるのか

 自治体の中には、共通ルール化しても現在の保護規定は残せると思って(期待して)いる団体もあるようだ。しかし「最終報告」はそうではない。
 (5)条例で定める独自の保護措置(「最終報告」39頁~)では、以下のように述べている。(イタリック体は私の意見
1.共通ルールより保護水準を下げるのは認められない(これはいい)
2.共通ルールより保護水準を高める規定は「必ずしも否定されるものではない」。ただし「共通ルールを設ける趣旨が個人情報保護とデータ流通の両立を図る点にあ」り、条例で独自の保護措置を規定できるのは、特に必要な場合に限る(保護のみを考えた規定は認めないということ)
3.国が保有することがない個人情報(LGBT、生活保護の受給、一定の地域の出身である事実等)については、不当な差別・偏見のおそれが生じる得る情報として条例で保護規定を追加できる(これら以外の追加は認めない)
4.法律で共通ルールを定め、解釈は国がガイドラインで示すので、個別の収集・利用・提供などの取扱いについて「審議会等に意見を聞く必要性は大きく減少する」(審議会等で取扱いを判断するな、ということ)
 つまり国が許容する独自の保護規定は、3.だけということだ。

●個人情報保護委員会が監視し、国が従わせる

 では自治体が独自の保護規定を残したり、追加しようとするとどうなるのか。「最終報告」では、独自の保護措置を「必要最小限」に抑制するための手続きを書いている(下図参照)。
 独自の保護規定を条例で規定しようとする自治体は、個人情報保護委員会に事前確認し、定めた条例を個人情報保護委員会に届け出、委員会は必要に応じて助言等監視し、違法または著しく適正を欠く場合は国は地方自治法等に基づき助言・勧告をし、是正の要求をして「国地方係争処理委員会」や裁判に訴えて従わせる、としている(41頁)。
 地方自治は憲法で保障され、自治体は法律の上乗せ横出しなどの自治立法権を持っている。また個人情報保護法第5条は「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その地方公共団体の区域の特性に応じて、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」と規定している。
 「最終報告」は地方自治を軽視し、地域の特性に応じた個人情報保護の要請にも反している。

個人情報保護制度の見直しに関する検討会 第10回資料1より

●どんな規定が国と自治体で違うのか

 総務省の調べでは、下図のように自治体間でも規定している項目が異なる。さらに国にない独自の規定(※印)として、死者に関する情報、情報の種類(要配慮個人情報)による収集・記録の規制、外部機関とのオンライン結合制限をあげている。

地方公共団体の個人情報保護制度に関する懇談会第1回資料4

●争点としての「外部オンライン結合制限」規定

 この自治体の独自規定で、国と地方の争点になってきたのは「外部機関とのオンライン結合制限」規定だ。自治体により規定の仕方は異なるが、「個人情報を処理するために、その自治体以外の機関との通信回線による電子計算組織の結合を行ってはならない」とか、「必要な保護措置が講じられている場合に限り、 通信回線による電子計算組織の結合ができる」という規定がされている。
 ただ結合できる例外的な場合として「法令の定めがある場合」「審議会が特に必要と認める場合」などを定めており、この規定によって住基ネットやマイナンバー制度などに不参加の自治体はない(「住基ネット不参加自治体」は、国が約束に反して個人情報保護措置を講じていないこと等を理由にしていた)。
 それでも国はことあるごとに、IT社会実現に支障として見直し(廃止)を求めてきた。今回の「最終報告」では行政機関個人情報保護法第6条、第8条等により個人情報の安全性の確保等が図られているため、オンライン結合制限規定を置くことは不要で「共通ルールには当該規定は設けない」と明記している(37頁)。
 しかし自治体は国の法律があっても、93% 1669団体がこの規定を維持してきた。それはこの規定が、住民情報の管理は自治体が責任を持つ、という住民との約束として作られてきたからだ。

   個人情報保護制度の見直しに関する検討会 第8回資料1

●なぜ自治体で先行して個人情報保護制度が?

 自治体は大量の個人情報を扱い、プライバシー性の高い「センシティブ(機微)情報」「要配慮個人情報」も多く、個人情報の扱いはもともと重要な課題だった。ただ1970年代に次々と個人情報保護条例(当初は「電算条例」)が誕生したのには理由がある。
 きっかけは1967年の住民基本台帳の制定で、市区町村ではそれまで税務、国保、年金など業務別に管理してきた住民情報を、住民基本台帳を中心にコンピュータを使って市町村の中で統合化していくことになった。
 一方1970年に当時の行政管理庁が準備を始めた「各省庁統一個人コード」に対して、「国民総背番号制」として反対運動が大きく盛り上がり検討は中止になった。住民基本台帳のコンピュータ化に対しても、国民総背番号制につながるのではないかとして、各地で反対運動が起きた。

 そのような中で自治体事務のコンピュータによる統合化を進めるために「国の国民総背番号制にはつなげない」という住民との約束をしたのが「外部オンライン結合制限規定」だった。
 1978年に条例を定めた杉並区の個人情報保護対策研究協議会の答申では、
「区において事務処理の効率化と区民サービスの向上に寄与するため、電子計算組織を利用することを否定するものではありません。住民記録の電算化が、直ちに国民総背番号制に結びつくとは考えませんが、反面、絶対につながらないという保障もありません。
 このため、杉並区においては、電子計算組織を利用するにあたって、国あるいは他の地方自治体のシステムとの結合を行うようなことは、絶対に避けなければならないと考えます。」
と述べている。これは当時次々と条例を作った市区町村に共通する思いだった。

●国民総背番号制と個人情報保護の歴史

 日本における個人情報保護法制は、下図のように「国民総背番号制」に反対する世論との関係で作られてきた。
 「最終報告」は改正理由として官民や地域の枠を超えたデータ利活用が活発化しており、現行法制の縦割りに起因する規制の不均衡や不整合がデータ利活用の支障になっているとしている。とくに自治体条例の違いは、産業界やメディアから「2000個問題」などと中傷されてきた。
 個人データの流通が進む時代だからこそ、信頼される行政を作るためには条例の規定を「支障」とみて強権的に国基準に揃えるのではなく、むしろ自治体が住民参加で先導的に作り上げてきた個人情報保護条例の運用に学ぶ必要がある。

●自治体が40年先行した「要配慮個人情報」保護

個人情報保護委員会資料(2016年11月)

 国は2015年の個人情報保護法改正で、「要配慮個人情報」の規定を新設した。要配慮個人情報は不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように取扱いに特に配慮を要する個人情報で、その他の個人情報と違い取得や第三者提供には原則として本人の同意が必要で、 オプトアウトによる第三者提供は認められていない。

 しかし自治体では国に先行してすでに1970年代から「センシティブ個人情報」として思想、信条、宗教、人種や差別の原因となる社会的身分の収集制限やコンピュータへの記録禁止などを条例に定め、審議会の意見を聞きながら運用してきた。
 そのため地域のプライバシー意識や施策に応じてさまざまな規定がされている。それを画一的に国基準に統一すれば、住民の信頼を損なうことになる。不十分な規定があれば、個人情報保護委員会が条例改正を支援すれば済むことだ。

●審議会で住民参加とシステムの透明性を確保

 条例の「国基準化」で運用上大きな問題になるのが、自治体の個人情報保護審議会だ。構成や運用や名称は自治体でさまざまだが、住民代表や学者有識者が参加しているところが多い。
 自治体が新たに個人情報を収集・記録・利用・提供したり外部オンライン結合をする際に、審議会の意見を聞くために行政機関はシステムや個人情報の内容を説明し、審議結果は住民に公開するという「第三者点検」を行っている。間接的だが、住民の自己情報コントロール権を保障する意味もある。不十分な内容だと審議会の了承が得られないため、行政機関は個人情報保護に常に注意している。

 これに対し国は、マイナンバーを利用する事務についてだけは「特定個人情報保護評価」制度によって同様の第三者点検をしているが、その他は行政機関の判断で記録・利用・提供がされておりシステムの透明性も確保されていない。自己情報コントロール権も、マイナンバー違憲差止訴訟で未だに国は憲法で保障された権利ではないと主張している。
 また自治体の個人情報保護審議会は、行政の進める利活用を個人情報保護の視点からチェックしているのに対して、国の個人情報保護委員会は「個人情報の有用性」と個人情報保護のバランスを重視し、2015年の法改正でさらに有用性・利活用を重視する規定が目的に加わっている。

 国と自治体では個人情報保護の取り組みも違っている。個人情報保護委員会が主催し自治体との意見交換を行った「地方公共団体の個人情報保護制度に関する懇談会」では、第4回の議事録のように、条例の国基準化の必要性を疑問視する自治体側に対して委員会は民間事業者からの利活用推進の声を力説し「どういったニーズがあるかということについては必ずしも現場の実務をやっている皆様方の心に刺さる形では日々届いていないのだなということが改めて分かりました」などと、自治体の利活用への無理解を嘆いていた。
 自治体がまず住民の「個人情報を守ってほしい」というニーズから考えるのは当然だ。住民は法律の定めや行政サービスを受ける必要から、その目的に限って使われると思って個人情報を自治体に提供している。利活用されるために提供しているのではない。
 「最終報告」では国の法律とガイドラインに従い、審議会は個別の個人情報の取扱いの判断をせず、個人情報保護制度の運用についての調査審議や意見具申に役割を限るよう求めており(40頁)、住民参加やシステムの透明性は確保されなくなる。むしろ国が自治体の審議会の運用に学び、参加と透明性確保を図る制度にすべきだ。

●国基準化で個人情報保護は向上するか

 「最終報告」は保護法制改正の必要として「デジタル庁を創設し、国及び地方公共団体の情報システムの標準化・共通化や教育、医療、防災等の各分野における官民データ連携等の各種施策をこれまで以上に強力に実施していくことが予定されている。こうした改革の方向性について国民の理解を得るためには、増大が予想される官民のデータ流通を個人情報保護の観点から適正に規律し、個人の権利利益を引き続き十全に保護することが不可欠」と、保護の水準を向上させる必要を述べている(5頁)。
 自治体の条例については、条例がないなど求められる保護水準を満たさない団体があることや、小規模団体では条例の運用が負担になっていること、個人情報保護委員会の監督が及ばずEUのGDPR(⼀般データ保護規則、 2016年4月制定)など国際的な制度調和がとれないことなどを指摘していた。

 しかし保護水準を満たさない団体に国基準を押しつけても実効性は確保されず、個人情報保護委員会や都道府県などの丁寧な支援で向上を図る必要がある。
 町村など小規模団体は、 限られた人員で多くの業務を抱え個人情報保護を含め専任の職員がいないことが一般的であり、むしろ国基準化によって条例改正の負担や「匿名加工情報」の扱いなどで負担が大きく「本来業務に支障が生じたり、圧迫しかねない制度設計には反対」とヒアリングで述べている。
  GDPRなど国際的な制度調和が自治体でどこまで課題になるか不明だが、GDPRが「特殊な種類の個人データ」の取扱い原則禁止を規定していることについて、国は2015年に要配慮個人情報を規定して合わせたが自治体はすでに1970年代から整備してきたように、自治体の方が国際的な制度調和に合致している面もある。
 第三者委員会としての個人情報保護委員会が保護制度を監視する必要については、「特定個人情報保護評価」の第三者点検を自治体では審議会が行い委員会に評価書を提出しているように、 条例を委員会に報告して一覧性を確保するなど、地方自治に配慮した監視に止めるべきだ。

●自治体から異議申立てを

 条例の国基準化の動きに対して、意見書を国に提出している自治体も出てきたが、まだあまり知られてはいない。
◆国立市議会  「日本で最初に個人情報保護に関する条例を制定した自治体として、法律による自治体の個人情報保護制度の標準化について慎重な検討を求める意見書」意見書はこちら
◆あきる野市議会「個人情報保護法の改正について慎重に検討するよう求める意見書」意見書はこちら
◆小金井市議会「法律による自治体の個人情報保護制度の標準化に反対する意見書」意見書はこちらの議員案68号

 全国知事会、全国市長会、全国町村会は、これまで確保してきた保護水準が維持されるならば、として共通ルール化に理解を示しているが、これまでの条例の運用を否定し統一することが国基準化の目的であり維持されない。維持するためには、自治体からの強力な働きかけが必要だ。
 自治体の個人情報保護の取り組みと地方自治を軽視した国基準化に対して、地方議会や個人情報保護審議会、自治体の首長が関心を向け、問題を発信してほしい。

●参考資料 2021年1月11日学習会資料

20210111

「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」学習会開催

 2020年12月11日、デジタル・ガバメント閣僚会議のマイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループが、第6回会合で報告「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」をまとめました。
 その内容は「骨太の方針2020」がマイナンバー制度を「国民が安心して簡単に利用する視点で十分に構築されてこなかった」と認めたことを受けて、「普及」や「利用拡大」でなくデジタル庁のもとで「抜本的な改善」と称する再構築をしようとするものです。

●J-LISを国の管理機関にして「国民総背番号制」に

 たとえば、地方公共団体が共同で運営してきた「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」を、新たに国と地方の共同団体の管理に変え、デジタル庁と総務省で共管し、デジタル大臣と総務大臣が目標設定・計画認可し、改善措置命令に違反するとJ-LIS理事長を解任するなど、事実上、国管理化しようとしています。
 J-LISは住基ネットの全国センターやマイナンバーの生成、マイナンバーカードの交付システム、(10万円の定額給付金のトラブルで有名になった)公的個人認証(電子証明書)、そして全住民の最新の住民データを保管する「中間サーバープラットフォーム」を設置するなど、マイナンバー関連の個人情報を一手に管理しています。
 かつて国会で住基ネットを新設する住基法改正が審議された際に、当時の小渕首相は、住基ネットは地方公共団体共同のシステムで国が管理するシステムではなく、したがって国民に付した番号のもとに国があらゆる個人情報を一元的に収集管理するという国民総背番号制とは異なる、と答弁していました(1999年6月10日衆議院地方行政委員会)
 国管理化されれば、まさに国民総背番号制度です。

●官民で個人情報の共有を一気に拡大

 マイナンバー制度の目的である情報連携についても、 低調な情報提供ネットワークシステムの利用の徹底を迫るだけでなく、社会保障・税・災害という3分野以外での利用に広げ、「情報連携に係るアーキテクチャーの抜本的見直し」など制度の作り替えをしようとしています。
 さらにもともとはマイナンバーで管理・提供されている自分の情報を確認するという個人情報保護のために作られたマイナポータルを、逆にマイナンバーで管理する個人情報を民間などに提供する仕組みとして利用し、デジタル政府・デジタル社会における個人、官、民をつなぐ「情報ハブ」にしようとしています。

●電子証明書を使った「脱法マイナンバー

 昨年12月16日の日経新聞がマイナンバー制度を使った小中学生の成績・履歴データ化の管理を報じて、学校の成績がマイナンバー制度で管理されて一生ついてまわるのかと話題になりました。今回の「報告」に「学習者のID とマイナンバーカードとの紐付け等、転校時等の教育データの持ち運び等の方策」も入っています。
 この管理に利用されるのがマイナンバーカードに内蔵の電子証明書です。電子申請などに使われる電子証明書を、その本来の目的と異なり、電子証明書の発行番号(シリアル番号)を個人を識別特定するIDとして利用し学習者のIDとひも付けて管理しようとするものです。今回の「報告」では、さまざまなデータとのひも付けを計画しています。
 マイナンバー制度をつくるためにまとめられた「社会保障・税番号大綱」 (47頁) では、 電子証明書のシリアル番号について住民票コードと同様の告知要求制限を設けるなど保護措置を検討することになっていましたが、保護措置も講じられないまま、政府は規制の多いマイナンバーのかわりに 「民間も含めて幅広く利用が可能」などと「脱法マイナンバー」として利用を広げようとしています。

● 1月18日からの国会で一挙に法改正目論む

 このようなマイナンバー制度の再構築が、デジタル庁やデータ戦略などと一体となって、1月18日からの国会に法案提出されようとしています。

 共通番号いらないネットでは、この急な「抜本改善」の動きについて、1月9日に緊急に学習会を行いました。以下は、学習会の資料です。
 学習会の様子はYouTubeで見ることができます(ここをクリック)。

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