ポイントをエサに普及を図る
不人気なマイナンバーカード

●2兆円かけてマイナポイント2万円のバラマキ

 11月10日の自民党と公明党の与党協議で、新たな経済対策として18歳以下への10万円相当の給付とともに、上限2万円の新たなマイナポイント付与が合意された。19日に決定し、年内の成立をめざす補正予算案に盛り込む方針とされている。
 マイナポイントの付与は マイナンバーカードの保有が条件で、これから新規に取得したりマイナポイントを利用していない保有者に上限5000円、健康保険証の利用登録をした時に7500円、預貯金口座とマイナンバーのひも付けをすると7500円と、段階的な付与で一致したという。
 市民が望んでいないマイナンバーカードや預貯金口座へのマイナンバーのひも付けを、エサを鼻先にぶら下げて少しずつ受け入れさせようとする、動物の調教のような不愉快なやり方だ。そのために2兆円も使おうとしている
 日弁連が5月7日に「個人番号カード(マイナンバーカード)普及策の抜本的な見直しを求める意見書」で指摘しているように、こうまでしないと普及しないマイナンバーカードは見直すべきだ。

●利用が広がらなかったマイナポイント事業

 マイナポイントは消費税増税に伴う消費活性化策として、キャッシュレス決済のポイントサービスの終了に続いて、2020年9月から2021年3月までの予定で始まった。一人2万円の支払いに対して上限25%5000円分のポイントを付けるもので、4000万人分の予算を措置していた。
 しかしマイナンバーカードの取得が前提で、マイナポイントの予約・申込みのためにはマイナンバーカードの電子証明書を読み込むカードリーダーを購入して「マイキーID作成・登録準備ソフト」をインストールするか、マイナポイントに対応したスマホにアプリをダウンロードするなど面倒な手間がかかり、利用が広がらないのではないかと予想されていた
 案の定2020年末になっても、予算の1/4程度の申込しかなかった(下図参照)。にもかかわらず政府は予算を5000万人分に増額し、利用対象期間を3月から9月まで延長。その後さらにマイナポイントの対象となるマイナンバーカードの申請受付を4月末まで延長し、利用対象期間も今年12月末まで延長しているが、9月2日時点で手続きしたのは約2265万人で予算の半分にも達していない。

令和3年度全国都道府県財政課長・市町村担当課長合同会議(2021年1月22日)資料22より

●効果に限界があると総括されたマイナポイント

 マイナポンイトの経済効果は、実施前から疑問視されていた。 2020年9月3日の記者会見で麻生財務大臣(当時)も、ポイント還元しても消費が活性化するか今の段階ではわからないと延べていた。その後新型コロナ流行で状況が大きく変わったにもかかわらず、見直すどころか予算増額し延長までした。
 結局、2021年10月11日の財政制度等審議会財政制度分科会では、効果に限界があったと総括されている。そのようなマイナポイントを、なぜ巨額の予算を投じてまたやろうとしているのか。

「マイナンバーカードの普及促進に向けて、国はマイナポイント事業を実施(本年4月までにカードを申請した者が対象)。カードの申請増加に一定の効果はみられたが、本年8月末時点でカードの申請率は全国民の40%、交付率は38%にとどまっており、ポイント付与施策の効果には限界がある。」(財政制度等審議会財政制度分科会資料3 19頁)  

●不公平な普及事業を中止した自治体も

 国のマイナポイント事業とは別に、自治体が普及のためにマイナンバーカード取得者に商品券やポイント付与などを行っている。
 最近の報道でも亀山市でマイナンバーカード申請先着1500人に千円分のQUO カード(10/1伊勢新聞配信)、浜松市で来年 1 月 1 日からキャッシュレス決済を利用した市民に上限 1 万~ 2 万円相当のポイント還元(10/5静岡新聞配信)、平塚市で条件を満たすマイナンバーカードの新規取得者先着2万人に、地域限定マネー「ひらつか☆スターライトマネー」 2000 円分追加付与(10/1BCN配信)、新潟県がカード新規取得者に抽選で5千円分の県内特産品をプレゼント(10/31新潟新報)など報じられている。
 総務省が7月末に補助金交付要綱を改正し、昨年度はマイナンバーカード申請1件につき最大1000円だったのを1件最大2000円に倍増したことを利用したものだ(8/30読売オンライン)。なりふり構わず自治体を普及拡大に誘導しようとしている。

 そのような中、 山梨県笛吹市は、マイナンバーカード取得をした市民に1万円分の商品券を配る補正予算案を撤回した。カード取得にひもづけた商品券配布に反対する市民の署名活動や、議会の「対象者を限定することは不公平だ」との意見を受けて取り下げ、全市民への配布に切り替えた(9/30朝日デジタル)。
 この「がんばろう笛吹!応援商品券事業」は、新型コロナで影響を受けている市民や事業者を応援するとともに、マイナンバーカードの普及拡大を目的として、12月から市内の中小規模事業者で使える7千円分と市内の大型店舗でも使える3千円分、合計1万円分の商品券を交付するもので、マイナンバーカード取得者および申請者を対象として5億1492万円を補正予算で計上していた。
 しかしマイナンバーカード取得を条件にすることは不公平感があるとの議会や市民の声を受けて「より市民生活の支援につながる予算編成が必要であると考え」、「がんばろう笛吹!応援商品券事業」の歳出予算の全額を減額し、当該事業の特定財源となる国庫補助金8827万円を減額する補正予算の訂正を行った (令和3年笛吹市議会第3回定例会会議録より) 。

  国もこの市民と議会の見識を見習い、義務ではないマイナンバーカードの取得の有無によって不当な差別をするマイナポイントは撤回すべきだ。 

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