「いらないネット主催」カテゴリーアーカイブ

1月21日(日)14時~予定の
新宿駅南口街頭宣伝活動は
中止します

共通番号いらないネットでは、月1回「マイナ保険証を強制するな!マイナンバーカードなんていらない!JR新宿駅南口 街頭宣伝アクション」を行ってきました(こちらのいらないネットのサイト参照)。

2024年最初の街頭宣伝を1月21日(日)午後2時からJR新宿駅南口で予定していましたが、荒天が予想され、雪の可能性もあるため、中止とします。

月イチJR新宿駅南口 街頭宣伝アクションでは、市民が「マイナ保険証を強制するな!マイナンバーカードなんていらない!」を、1時間リレートークで訴えています。
過去のリレートークの模様は、下記で「ビデオ」をクリックするとご覧になれます。

ビデオ記録▼
●日時●2023年12月17日(日)
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●日時●2023年11月12日(日)
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●日時●2023年10月8日(日)
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●日時●2023年9月1日(金)(デジタル庁前)
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●日時●2023年8月20日(日)
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●日時●2023年7月1日(土)
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●日時●2023年6月10日(土)14時〜
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●日時●2023年5月31日(参院議員会館前行動)
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●日時●2023年5月19日(参院議員会館前行動)
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●日時●2023年4月9日(日)14時〜
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●日時●2023年3月12日(日)14時〜
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●日時●2023年2月12日(日)14時〜
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●日時●2023年1月21日(土)14時〜
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●日時●2022年12月3日(土)14時〜
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マイナンバー制度改悪迫る
「改正」案成立を許さない

●番号法「改正」案の国会審議開始

 マイナンバー制度の個人情報保護措置を崩し、利用を3分野から拡大し、健康保険証廃止に向けて準備し、公金振込口座を不同意しなければ登録してしまう番号法「改正」案の国会審議が、4月14日の衆議院本会議で審議が始まった。4月18日から衆議院地域・こども・デジタル特別委員会で審議され、来週にも採決が予想されている。
 共通番号いらないネットでは、国会議員への徹底審議の要請をしつつ(要請は末尾参照)、当面4月25日(火)12~13時に「番号(マイナンバー)法「改正案」の成立を許さない!衆議院第二議員会館前行動」を取り組む(詳細はこちら)。

●番号法「改正」反対のさまざまな取り組み

 日弁連(日本弁護士連合会)は3月29日「マイナンバー(個人番号)利用促進の法改正の再検討を求める会長声明」を発表した(→こちら)。法曹界では自由法曹団も4月18日「国民のプライバシー権を軽視するマイナンバー(個人番号)利用促進の法改正に反対する声明」を発表している(→こちら)。
 3月9日のマイナンバー訴訟最高裁判決が、利用の3分野への限定や利用・提供を法律で限定列挙していることなどを示して合憲判決を下していることをふまえ、拡大の歯止めや国会の関与の必要、任意取得の原則をふまえたマイナンバーカードの普及・利用などを指摘している。

 マイナ保険証(オンライン資格確認等システム)については、4月からの医療機関への導入義務化に対して、東京保険医協会の呼びかけで保険医・歯科保険医274人が2月22日「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」を提訴した
 導入義務化に伴い廃業する医院も出ており、医療の本質とかかわりのない資格確認の方法によって地域医療が損なわれることがあってはならないという立場から、義務化を定めた療養担当規則が違憲・違法であるとして提訴したものだ。全国の保険医に対して、引き続き原告団への参加を呼びかけている

 保団連(全国保険医団体連合会)は、医療現場などの実態調査をふまえ、法案撤回の厚労省への要請国会要請行動など取り組んでいる。
 実態について4月10日に「健康保険証廃止に伴う高齢者施設等への影響調査」の結果を発表した。厚労省はマイナカード利用が困難な方への対応として、施設職員や支援団体等にマイナカードの申請・代理交付等の支援について協力要請し、施設長が施設入所者分のマイナカードを管理し受診等の際にマイナカードを介助者など第三者に預ける場合等の対応を検討するとしている。
 調査結果では、現状約84%の施設で利用者・入所者の健康保険証を管理しているが、9割以上の施設が利用者・入所者のマイナカードの申請代理したり管理ができず多大な負担とトラブルを心配していることが明らかにされた。
 保団連とともに中央社保協(中央社会保障推進協議会)、マイナンバー制度反対連絡会は、国会審議に向けて法案撤回を求める緊急Twitterデモ&国会前昼休み集会を呼びかけている。

 その他、各地で法案に反対する集会等が行われている。多岐にわたる問題(共通番号いらないネットの下記議員要請参照)を束ねて決めて、マイナンバー利用・提供の法定を崩して無制限な拡大を図り、健康保険証の廃止や不同意表明しなければ勝手に公金口座を登録するなど、人権無視の暴走を止めるために、今、行動が必要だ。

●番号法改正案に対する疑問・懸念

 関係議員に要請した「番号法改正案に対する私たちの疑問・懸念」(→ダウンロードはこちら

個人情報保護措置を崩す
マイナンバー法改正案

●番号法の改悪案を国会提出
●制度のあり方を変える改悪案の内容
●マイナンバーの利用「範囲」を拡大
●法律による利用・提供の制限をなし崩しに
●利用や提供の歯止めがなくなる
●有識者からも法改正に懸念の声が
●最高裁判決からも許されない改正案

●番号法の改悪案を国会提出 

 2023年3月7日、政府は番号法改正案を閣議決定し、国会に提出した。4月にも審議が始まろうとしている。共通番号いらないネットは、3月14日、マイナ保険証の強制と番号法改悪に反対する院内集会を開催した。

  集会決議

●制度のあり方を変える改悪案の内容

 この改正案は、いままでの改正が利用事務の拡大であったのに対して、利用範囲を社会保障・税・災害対策の3分野以外に拡大するとともに、個人情報保護措置とされていたマイナンバーの利用・提供の法律に定める原則を崩すなど、マイナンバー制度の仕組みそのものを変える今までにない改正になっている。
 デジタル庁による「法案概要」では、今回の法改正は
[1]マイナンバーの利用範囲の拡大
[2]マイナンバーの利用及び情報連携に係る規定の見直し
[3]マイナンバーカードと健康保険証の一体化
[4]マイナンバーカードの普及・利用促進
[5]戸籍等の記載事項への「氏名の振り仮名」の追加
[6]公金受取口座の登録促進(行政機関等経由登録の特例制度の創設)
がポイントとなっている。

    テジタル庁資料 法案「概要」

●マイナンバーの利用「範囲」を拡大

 「法案概要」の1では、改正案では法の理念として、社会保障制度、税制及び災害対策の3分野以外の行政事務もマイナンバーの利用の促進を図ることをうたっている。
 現行法では第3条(基本理念)2で、社会保障・税・災害の分野は利用の促進他の行政分野や行政以外の国民の利便性向上になる分野は利用の可能性を考慮して進めることになっていた。
 それが改正案では「その他の行政分野」が、「利用の可能性を考慮」から「利用の促進」に変わる。

【現行法】第三条2 個人番号及び法人番号の利用に関する施策の推進は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、行政運営の効率化を通じた国民の利便性の向上に資することを旨として、社会保障制度、税制及び災害対策に関する分野における利用の促進を図るとともに、他の行政分野及び行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮して行われなければならない。
   ↓ ↓ ↓
【改正案】第三条2 個人番号及び法人番号の利用に関する施策の推進は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、行政運営の効率化を通じた国民の利便性の向上に資することを旨として、社会保障制度、税制、災害対策その他の行政分野における利用の促進を図るとともに、行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮して行われなければならない。

●法律による利用・提供の制限をなし崩しに

 「法案概要」の2では、マイナンバーの利用と提供(情報連携)の法定主義をなし崩しに緩和しようとしている。
 現行法では、マイナンバーを利用できるのは法9条により別表第一に列挙する事務と自治体が条例で規定する事務のみであり、情報提供ネットワークシステムを使って情報連携できるのは法19条8・9により別表第ニに列挙する事務と個人情報保護委員会規則で認めた自治体の事務に限定されている。
 それを改正案では、第9条の別表第一に列挙されている利用事務に「準じる事務」として省令で定める事務を「準法定事務」として、法律に規定がない事務も行政の判断で国会に図ることなくマイナンバーの利用を可能にする。
 それとともに法19条を改正し、情報連携事務を限定列挙した別表第二を廃止して、別表第一(改正後は単に「別表」)による主務省令で利用を認めている「特定個人番号利用事務」であれば、行政機関等の判断で情報提供ネットワークシステムを使って提供できるようにしようとしている。

●利用や提供の歯止めがなくなると

 番号法が成立した2013年の国会審議では、個人番号の利用範囲あるいは提供範囲は、番号法で社会保障・税・災害と限定的に書いているので、警察や公安でのマイナンバー制度の利用は想定していない、と説明されていた(参議院内閣委2013年5月21日向井政府参考人)。
 自衛官募集業務について、DMを送る対象者を絞り込む際の情報収集にマイナンバー制度を使うことはないかと質問された際には、「社会保障、税、災害対策の分野で利用されるものでありまして、自衛官の募集の分野では利用することはできないものだと承知をいたしておりまして、自衛官の募集につきまして、現在のところマイナンバー制度を利用する予定はございません。」と中谷防衛大臣は答弁していた(参議院安保特別委2015年9月2日)。
 利用を3分野に限定する番号法の規定が、これら利用拡大を防ぐ歯止めとなっていた。
 政府はマイナンバー制度が「安心・安全」である根拠の一つとして、マイナンバーの利用範囲・情報連携の範囲を法律に規定し目的外利用を禁止していることを、私たちにも国会でも説明し、裁判でも主張してきた(下図)。その前提が崩れていく。

法制審議会戸籍法部会2017年10月20日参考資料3マイナンバー制度について

●有識者からも法改正に懸念の声が

 この法改正は、デジタル庁が設置した「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」で検討されてきた。
 2022年11月29日の第7回WGでは、デジタル庁の示した法改正事項に対して、有識者から「何かよく分からない間に利用範囲を広げたように伝わらないように」「便利になるから、ということだけで拡大するのではなく、国民の理解を得ることが不可欠」「なぜ歯止めが必要なのかというのは、幾つか懸念があった名寄せリスクですとか、いわゆる国民の情報が全て一元管理されるのではないかというリスクに対する答えだったということは忘れないでいただきたい」などの懸念が示されていた(議事録)。
 デジタル庁が提出した法改正の資料(11頁 下図)でも、「新たに追加されるマイナンバー利用事務や情報連携の状況について事後監視のあり方についても検討が必要か。」との記載がされているが、「事後監視」についての説明はされていない。個人情報保護の役割を果たせていないことがマイナンバー違憲訴訟で指摘されている個人情報保護委員会に、監視を委ねることはできない。
 そもそも「どこまでマイナンバーによるひも付けが広がってしまうのか」との不安に対して法律で明確に制限するための規定であり、「事後監視」すれば済む話ではない。

「マイナンバー法の改正事項」(2022年11月29日第7回WG資料)

●最高裁判決からも許されない改正案 

 この改正案が閣議決定された2日後の3月9日、最高裁は全国8カ所で争われているマイナンバー制度を憲法違反として利用差止等を求めた訴訟のうち、九州・仙台・名古屋訴訟を先行して棄却する判決を下した。大阪訴訟は最高裁に上告中であり、東京・神奈川・金沢訴訟はまだ高裁判決も出ていない段階での異例の最高裁判決だった。
 最高裁判決は争点であった憲法13条のプライバシー権について、15年前(2008年3月6日)の住基ネット最高裁判決と同じく「みだりに第三者に開示又は公表されない自由」と解し、情報化の進展に対応した自己情報コントロール権を認めなかった。また指摘してきた現実に起きている問題事例(いらないネットリーフ12参照)を検証せずに、法の規定をなぞるだけで漏洩や目的外利用等の「危険性は極めて低い」と判断するなど不当な判決だった。
 しかしこの最高裁判決でも、具体的な法制度や実際に使用されるシステムの内容次第では、芋づる式に外部に流出したり、不当なデータマッチングによって、個人情報がみだりに第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じ得ると認め、番号法が利用範囲を社会保障・税・災害対策に限定し、提供を制限列挙した例外事由に該当する場合にのみ認めていること等を、合憲理由の一つとしていることに注視しなければならない。
 政府が番号法改正で行おうとしているのは、これら個人情報保護措置をなし崩しにすることであり、この最高裁判決に照らしても認められるものではない。

2023年3月9日最高裁判決 第1(抜粋)
第1 2(2)個人番号及びその利用範囲イ(抜粋)
「番号利用法は・・・(利用することができる)上記一定の事務の範囲を、社会保障、税、災害対策及びこれらに類する分野の法令又は条例で定められた事務に限定することで、個人番号によって検索及び管理がされることになる個人情報を限定している。」(3頁)
第1 2(3)特定個人情報の提供に関する規制(抜粋)
「番号利用法は、特定個人情報の提供を原則として禁止し(同法19条)、その禁止が解除される例外事由を同条各号で規定している。」(9頁)

2023年3月9日最高裁判決 第2 1(2)(抜粋)
「・・・前記第1の2(2)イのとおり、番号利用法は、個人番号の利用範囲について、社会保障、税、災害対策及びこれらに類する分野の法令又は条例で定められた事務に限定することで、個人番号によって検索及び管理がされることになる個人情報を限定するとともに、特定個人情報について目的外利用が許容される例外事由を一般法よりも厳格に規定している。
 さらに、前記第1の2(3) 及び(5)イのとおり、番号利用法は、特定個人情報の提供を原則として禁止し、制限列挙した例外事由に該当する場合にのみ、その提供を認めるとともに、上記例外事由に該当する場合を除いて他人に対する個人番号の提供の求めや特定個人情報の収集又は保管を禁止するほか、必要な範囲を超えた特定個人情報ファイルの作成を禁止している。
 以上によれば、番号利用法に基づく特定個人情報の利用、提供等は、上記の正当な行政目的の範囲内で行われているということができる。」(9頁)

2023年3月9日最高裁判決 第2 3(抜粋)
「もっとも、特定個人情報の中には、個人の所得や社会保障の受給歴等の秘匿性の高い情報が多数含まれることになるところ、理論上は、対象者識別機能を有する個人番号を利用してこれらの情報の集約や突合を行い、個人の分析をすることが可能であるため、具体的な法制度や実際に使用されるシステムの内容次第では、これらの情報が芋づる式に外部に流出することや、不当なデータマッチング、すなわち、行政機関等が番号利用法上許される範囲を超えて他の行政機関等から特定の個人に係る複数の特定個人情報の提供を受けるなどしてこれらを突合することにより、特定個人情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じ得るものである。
 しかし、番号利用法は、前記第1の2(2)イ及び(3)のとおり、個人番号の利用や特定個人情報の提供について厳格な規制を行うことに加えて、前記第1の2(5) 及び(6)のとおり、特定個人情報の管理について、特定個人情報の漏えい等を防止し、特定個人情報を安全かつ適正に管理するための種々の規制を行うこととしており、・・・・」(10頁)

個人情報保護条例が
なくなっていいのか

7月18日個人情報保護条例改悪に抗する学習会

 2021年5月の個人情報保護法改正により、全ての自治体が2023年3月までに個人情報保護条例を「国基準」に見直すことを求められている。個人情報保護委員会は2022年4月20日に改正のガイドライン、4月28日にQ&Aと事務対応ガイドを公表し、現在各自治体で検討が進んでいる(都内市区町村については漢人都議の調査参照。かながわ市民オンブズマンの調査はこちら)。
 共通番号いらないネットでは7月18日(月)午後1時30分から文京シビックセンター4階シルバーホールで、個人情報保護と地方自治を守るために自治体はどのような取り組みができるか考える学習会を行う(集会案内はこちら)。

●個人情報保護条例の「改正」でなく「廃止」に

 条例改正というが、政府が求めているのは個人情報保護条例を廃止し、個人情報保護法の「施行条例」に作り替えることだ。4月28日に公表された「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」では、改正後の条例を「(個人情報保護)法施行条例」とよんでいる。2021年6月の自治体向け説明会で示した「条文イメージ」のように、条例に規定するのは手数料など法を執行するための手続的なことにかぎり、半世紀にわたって自治体が国に先行して住民情報を保護するために培ってきた個人情報保護制度は「リセット」されようとしている。その目的は「活発化する官民や地域の枠を超えたデータ利活用に対応するため」だ(ガイドライン74頁)。

 共通番号いらないネットでは、2022年1月25日「地方自治体のみなさまへ 個人情報保護を引き下げないでください」を発表(こちら)し、自治体から個人情報保護を守る取り組みを訴えた。4月1日には共謀罪NO! 実行委員会と「秘密保護法」廃止へ! 実行委員会の主催で、統合された個人情報保護法の問題点を考える市民の集いが開催された(資料や集会ビデオはこちら)。日弁連は2021年11月16日、「地方自治と個人情報保護の観点から個人情報保護条例の画一化に反対する意見書」を発表している。
 このブログでも法改正後の個人情報保護委員会の対応に対して「地方自治は「許容されない」?!個人情報保護委員会の条例対応」(こちら)と批判し、2022年1月28日から2月28日まで行われたガイドライン等の意見募集に対して、「地方自治を認めず個人情報保護を後退させる条例改正パブリックコメント」(こちら)で問題点を指摘してきたが、残念ながらまったく意見はガイドラインに取り入れられなかった(意見募集結果はこちら)。

●個人情報保護と地方自治が問われている

 個人情報保護委員会が「法施行条例」で規定を求めている「委任規定」は、開示等請求の手数料と匿名加工情報利用の手数料だけだ。
 また条例で定めることを「許容」するのも、「条例要配慮個人情報」の内容、個人情報取扱事務登録簿の作成・公表、開示請求等の手続や不開示情報の範囲、専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要があると認めるときの審議会等への諮問で、それについても制限を付けている。
 その他認めるとするのは、自治体の内部的な手続の規定だ。
 従来の条例が定めてきた個人情報の収集・利用・提供・保管・廃棄等の規制については、個人情報保護法に規定のない個人情報保護やデータ流通に直接影響を与えるような事項(例:オンライン結合に特別の制限を設ける規定、個人情報の取得を本人からの直接取得に限定する規定)や、法と重複する内容を条例で定めることは「許容されない」とする(ガイドライン74頁)。

 憲法で規定する地方自治の本旨に基づき、自治体には条例の自主制定権がある。国も「我が国の個人情報保護法制は、地方公共団体の先導的な取組によりその基盤が築かれてきた」(「個人情報保護制度の見直しに関する最終報告案」2020年12月32頁)と述べているように、個人情報保護制度は自治体の創意工夫によって発展してきた。
 自治体の創意工夫を否定することは、個人情報保護の水準を低下させその発展を阻害し、住民と自治体との信頼関係を損なう。そればかりでなく、個人情報保護法制を突破口に地方自治そのものが破壊されていくのではないか、との懸念が専門家に広がっている。

●分かれつつある?自治体の検討状況

 個人情報保護法改正にあたって国会は、地方公共団体が条例を制定する場合には地方自治の本旨に基づき最大限尊重することを求める附帯決議をしていた。しかし個人情報保護委員会が立法府の意思に反して従来の保護措置を条例に残すことは「許容されない」という姿勢を崩さないために、自治体の対応は国から指示された手続的な「法施行条例」に変えるか、従来からの保護水準を維持するための工夫を検討するか、分かれつつあるようだ。

 後者では、たとえば1976年に「電算条例」をいち早く制定してその後の個人情報保護条例の原型を作った世田谷区は、次の3つの基本方針に沿って新たな個人情報保護制度を構築しようとしている。

1 世田谷区はこれまで実施してきた、区民の個人情報保護に係る先進的かつ丁寧な保護施策を維持・発展させるよう努めること。
2 区が扱う個人情報は、原則、区民が情報主体であることを十分に意識し、今後は一層、その実効性を担保しうる運用上の工夫に努めること。
3 行政への区民参加・区民監視の制度として審議会制度が有効であることを確認し、情報公開・個人情報保護審議会を今後も十分に機能させていくこと。

 また1990年に都道府県で最初に個人情報保護条例を制定した神奈川県は、情報公開・個人情報保護審議会で次のように法とガイドラインなどを詳細に検討しながら、対応を探っており参考になる。ただ後述するように公表された最新のO&Aの記載には、若干変化があることに注意が必要だ。

*検討経過(こちら
*法と条例の相違点と対応の方向性(こちら
*目的外利用・提供について(こちら
*要配慮個人情報の取扱い制限について(こちらこちら
*「条例要配慮個人情報」について(こちら
*個人情報の本人収集の原則について(こちら
*電磁的方法による提供(こちら
*審議会への諮問案件について(こちら
*個人情報ファイル簿及び個人情報事務登録簿(こちら
*保有個人情報の訂正請求及び利用訂正請求に係る開示請求前置主義(こちら
*開示決定等の期限(こちら
*費用負担(保有個人情報の開示請求に係る手数料(「開示手数料」)等)(こちら
*行政機関等匿名加工情報等の情報公開条例上の取扱いについて(こちら
*行政機関等匿名加工情報の利用に関する手数料の徴収について(こちら
*個人情報保護審査会規則の条例化等について(こちら
*改正個人情報保護法と神奈川県個人情報保護条例の対比(法律順条例順
*答申(2022年5月30日)(こちら

●「可能な」自治体の対応を考える

 住民情報は、住民が法律の規定やサービスを受けるために自治体に提供した情報であり、民間事業者の利用を目的とするものではない。自治体には住民情報の管理責任があり、まず考えるべきは情報主体である住民の意思であり、利活用ではない。
 地方分権のもとでは、法令の解釈について国と自治体は対等だ。住民に信頼される行政のためには、必要とあれば法の規定を超える個人情報保護委員会の統制は拒む姿勢が必要だ。
 とはいえ現実の国と地方の力関係では、国(個人情報保護委員会)の解釈を拒むことは首長の覚悟が必要だろう。しかしそこまで構えなくても、4月28日に個人情報保護委員会が公表した「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」では、批判を意識してか若干ガイドラインより工夫の余地のある解釈を示している。保護水準を低下させないための工夫が求められる。Q&Aのいくつかを紹介する(太字、改行は引用者)。

●自治体の審議会への諮問について

 ガイドラインでは、自治体の個人情報保護審議会等への諮問について、「個人情報の取得、利用、提供、オンライン結合等について、類型的に審議会等への諮問を要件とする条例を定めてはならない」(70頁)としている。この点について「Q&A」(23頁)では、「諮問」ができないとしているだけで、審議会が自発的に調査・審議・意見陳述することはかまわないとしている。

Q7-1-3 法施行条例において、 審議会等が諮問に基づかずに行う調査、審議又は意見陳述に関する規定を設けることは可能か。
A7-1-3 法第129条は審議会等に対して地方公共団体の機関が行う諮問について規定するものであり、地方公共団体が附属機関等として設置する 審議会等が自発的に行う調査、審議又は意見陳述を妨げるものではありません
 ただし、地方公共団体が調査等を受けることを事実上の要件としたり、審議会の意見を尊重することを義務として定めるような法施行条例の規定を設けることはできない点に留意する必要があります。(令和 4 年 4 月追加)

 いくつかの自治体の検討では、個人情報の取得等の諮問ができないので「事後報告」にする対策を出しているが、「事後」である必要はない。従来の諮問の代わりに事前に審議会に「報告」し、審議会自らが必要と判断したら調査・審議し意見陳述し、首長の判断で進めていくことは許容されている。諮問より行政に対する「拘束力」は低下するだろうが、識者や住民による行政の第三者チェックや、その結果の住民への公表、審議結果により個人情報保護のあり方について意見を提出することは可能だ。審議会や首長の自発的な姿勢が、より問われることになる。

●個人情報保護法以外の諮問は可能

 審議会の審議事項の中には、マイナンバー法に基づく特定個人情報保護評価の第三者点検がある。一般的には第三者点検は個人情報保護委員会が行うが、自治体については30万人以上の特定個人情報ファイルなどを対象に個人情報保護審議会等が行っている。Q&Aでこのような個人情報保護法以外の法令に基づく意見聴取は、従来どおり可能であることが明記された。
 また自治体によっては、たとえば住民基本台帳法に基づいて住基ネットの利用状況を審議会にはかっているところがあるが、こういう役割は今後も変わりない。

Q7-1-1 法第 129 条で規定する「個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要があると認めるとき」とは具体的にどのような場面を想定しているのか。
A7-1-1 ・・・・・・なお、いわゆる「オンライン結合制限」や目的外利用制限などに関する規律として、個別案件における個人情報の取扱いについて、類型的に審議会等への諮問を行うべき旨を法施行条例で定めることは認められません。
 一方で、特定個人情報保護評価に関する規則(平成26年特定個人情報保護委員会規則第1号)第7条第4項に基づき審議会等に意見を聴く場合等、法第129条の規定に関わらず、個人情報保護法以外の法令に基づき、審議会等に対し意見を聴くことは妨げられません。(令和4年4月追加)

●匿名加工情報の提供も審議会に諮問可能

 2021年の個人情報保護法改正で、自治体も事業者からの求めがあれば住民情報を匿名加工し提供する制度が追加されたが、附則により当面は都道府県と政令指定都市に制度の実施が義務づけされ、その他の市区町村が制度を行うかは任意で判断することになっている。
 この提供の可否の基準について、審議会に諮問することも認められている。

Q6-1-2 地方公共団体の機関が法第 114 条第 1 項の規定に基づき法第 112 条第 1 項の提案の審査を行う場合において、法第 129 条の規定により、審議会等に対して諮問を行うべき旨を法施行条例で定めることは許容されるか。
A6-1-2 法第 114 条第 1 項各号に定める基準については、委員会においてその解釈を示すものですが、同項第 4 号の「事業が新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであること」についての審査に当たり参照する基準の策定のために、必要な専門的知見を有する有識者に対して意見聴取を行うことは妨げられるものではなく、法第129条の規定により、法施行条例に定めを置いて、当該基準について専門的知見を有する委員で構成される審議会等に対して諮問することも妨げられません
 なお、この場合であっても、法第 114 条第 1 項第 4 号の適合の有無の判断は「行政機関の長等」が行うものであり、審議会等が実質的な判断を行うことはできないことに留意する必要があります。(令和 4 年 4 月追加)

●開示請求しなくても訂正請求等は可能

 個人情報の訂正等請求について、個人情報保護法では開示請求をして開示決定をうけた個人情報について訂正等請求を認めているが、多くの条例では開示請求をしなくても誤り等がわかれば請求を認めている。開示請求を前提とすると訂正のための負担が増え、開示決定まで訂正請求ができないなどの不都合が指摘されていた。
 Q&Aでは開示請求をせずに訂正請求・利用停止請求を認める条例を定めてもよいとされた。

Q5-8-2 法は、訂正請求や利用停止請求の対象となる保有個人情報について、本人が法の開示決定に基づき開示を受けたもの又は法第 88 条第 1 項の他の法令の規定により開示を受けたものに限っているところ(法第90条第1項及び第98条第1項)、法施行条例で規定することにより、本人が開示を受けていない保有個人情報についても訂正請求や利用停止請求の対象とすることはできるか
A5-8-2 法は、対象となる保有個人情報の範囲を明確にし、訂正請求及び利用停止請求の制度の安定的運用を図るため、これらの制度について開示を受けた保有個人情報を対象としています。
 他方、法第108条は、訂正及び利用停止の手続に関する事項について、法第5章第4節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしているところ、開示を受けていない保有個人情報について訂正請求及び利用停止請求の対象とすることは、これらの請求の前提となる手続に関するものであり、訂正及び利用停止の手続に関する事項に含まれるため、訂正請求や利用停止請求の制度の運用に支障が生じない限りにおいて、そのような法施行条例を規定することは妨げられません。(令和 4 年 4 月追加)

●利益相反する代理人からの開示請求

 虐待で保護している子の加害者である親が、居場所などを探るために法定代理人として子の情報の開示請求をすることへの対応に、自治体は苦慮している。また今回の法改正で、任意代理人による請求も認められたが、本人の意思に反した請求が行われることが危惧され、自治体ではこれら不当な請求を防ぐための措置を必要としている。
 Q&Aでは請求に応じるかについて、必要に応じて本人の意思の確認を条例に規定することが認められている。

Q5-3-1 未成年者とその法定代理人との利益相反が生じるような場合があり得るところ、未成年者の法定代理人による開示請求について、本人の意思を確認することはできるか。また、一律に本人の同意を証する書類の提出を義務付ける法施行条例の規定を設けることはできるか。
A5-3-1 法定代理人は、任意代理人とは異なり、本人のために代理行為を行う義務はっても、代理行為に本人の同意は要しないため、本人の意思と独立して開示請求を行うことができます。
 法第108条は、開示の手続に関する事項について、法第 5 章第 4 節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしていますが、未成年者の法定代理人による開示請求について、一律に本人の同意を証する書類の提出を義務付けることは、実質的に任意代理のみを認めて法定代理を認めないこととなり、開示請求権について法に定めの無い制限を課すものであって開示の手続に関する事項であるとはいえず、そのような規定を法施行条例で定めることは認められません
 もっとも、開示請求に係る保有個人情報について、当該保有個人情報を法定代理人に開示することにより本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報(法第78条第1項第1号に規定する不開示情報)に該当する場合もあるところ、同号該当性の判断に当たって、必要に応じて本人の意思を確認することは妨げられません。(令和 4 年 4 月更新)

Q5-3-3 任意代理人からの開示請求について、本人の意思を特に確認する必要があるときに、本人に対して確認書を送付し、返信をもって本人の意思を確認する手続をとることはできるか。また、これを認める法施行条例の規定を設けることはできるか。
A5-3-3 任意代理人による請求の場合は、法定代理人による請求の場合と異なり本人から委任を受けていることが要件となります。そのため、なりすまし等による開示等請求制度の悪用を防止する観点から、任意代理人の資格を確認することは重要であり、必要に応じて本人に対して確認書を送付し、その返信をもって本人の意思を確認することは妨げられません。また、法第108条に規定する開示の手続に関する事項としてこれを認める法施行条例の規定を設けることも妨げられません。(令和 4 年 4 月更新)

●条例要配慮個人情報の規定について

 自治体の裁量をほとんど認めない法改正の中で、唯一自治体の判断を「尊重」したのが、条例要配慮個人情報の新設だ。「個人情報保護制度の見直しに関する最終報告」(40頁)では、次のようにその必要を述べている。

「(5)条例で定める独自の保護措置
3.例えば、地方公共団体等がそれぞれの施策に際して保有することが想定される情報で、その取扱いに特に配慮が必要と考えられるものとして「LGBTに関する事項」「生活保護の受給」「一定の地域の出身である事実」等が考えられるが、これらは、国の行政機関では保有することが想定されず、行個法・行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第548号。以下「行個令」という)の「要配慮個人情報」には含まれていないものである。
 また、将来においても、地方公共団体等において新たな施策が展開され、その実施に伴い保有する個人情報が、行個法・行個令の「要配慮個人情報」には規定されていないものの、その取扱いには、「要配慮個人情報」と同様に特に配慮が必要な個人情報である場合も想定される。
 こうした個人情報について、不当な差別、偏見等のおそれが生じ得る情報として、地方公共団体が条例により「要配慮個人情報」に追加できることとすることが適当である。 」

 要配慮個人情報は2015年の個人情報保護法改正により新設された。不当な差別・偏見等のおそれが生じ得る情報として下記の個人情報を「要配慮個人情報」とし、取得の際は本人同意を得ることを義務化した。しかし行政機関については、取得に特別の規定は設けられていない。個人情報ファイル簿に要配慮個人情報であることを記載することや、要配慮個人情報の漏えい等が発生したときに個人情報保護委員会への報告などを求めているだけだ。
 一方多くの自治体は、条例でセンシティブ(機微)個人情報の取得を原則禁止し、審議会の意見を聞くなどを条件に例外的に取得可能にしている。またコンピュータへの記録を禁止している条例もある。

改正個人情報保護法について」2016年11月28日 個人情報保護委員会事務局

 多くの個人情報を扱う自治体は、(条例)要配慮個人情報の取扱いの規制の継続を望んでいたが、ガイドライン4‐2‐6は「条例要配慮個人情報について、法に基づく規律を超えて地方公共団体による取得や提供等に関する固有のルールを付加したり、個人情報取扱事業者等における取扱いに固有のルールを設けることは、法の趣旨に照らしできない」(16頁)と認めていない。
 Q&Aも同様だが、ただ行政内部の安全管理体制構築にあたり要配慮個人情報の取扱いを勘案することは考えられるとしている。

Q3-2-1 要配慮個人情報の取得制限を法施行条例で規定することは可能か。
A3-2-1 要配慮個人情報の取得を制限することは、行政機関等において要配慮個人情報の取扱いについて特別の制限を設けていない法の規律に抵触する規律を定めるものであり、個人情報保護やデータ流通について直接影響をあたえる事項に当たります。一方で、法はこのような規律を定めることについて委任規定を置いていません。よって、要配慮個人情報の取得制限を法施行条例で規定することは認められません
 他方、法は、行政機関等における要配慮個人情報の取得について特別の規定を設けていませんが、行政機関等において取り扱う個人情報全般について、その保有は法令(条例を含む。)の定める所掌事務又は業務の遂行に必要な場合に限定することとし(法第 61 条第1項)、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有してはならないこととしている(同条第 2 項)ほか、法第 63 条(不適正な利用の禁止)、法第 64 条(適正な取得)等の定めを置いており、要配慮個人情報の取扱いに当たってもこれらの規定を遵守する必要があります
 また、行政機関の長等の安全管理措置義務(法第 66 条)に関しても、求められる安全管理措置の内容は、保有個人情報の漏えい等が生じた場合本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、保有個人情報の取扱い状況(取り扱う保有個人情報の性質及び量を含む。)等に起因するリスクに応じて、必要かつ適切な内容とする必要があり、行政機関内部における安全管理体制の構築に当たって、取り扱う保有個人情報が要配慮個人情報に当たることを勘案することは考えられます。(令和 4 年 4 月追加)

 自治体の検討の中では、条例要配慮個人情報を定めても取得など取扱いが規制できないので規定する意味が乏しいと、規定に消極的な議論が多いようだ。しかし取得段階でのチェックができなくなるのであれば、取得後の扱いについての安全管理体制を整備することで、条例要配慮個人情報を定めることの意義はある。前述のように改正法の中で唯一自治体の裁量を尊重した規定であり、将来も考えれば自治体は積極的な規定を考えるべきではないか。

●法施行条例でなく個人情報保護条例を

 Q&Aでは条例と法との関係について、次のように条例に理念規定を設けることを認めている。

Q9-1-1 地方公共団体が定める法施行条例において、基本理念や事業者・市民の責務についての規定を設けることは可能か。
A9-1-1 法の目的や規範に反することがなく、また、事業者や市民の権利義務に実体的な影響を与えることがない限りにおいて、法施行条例上に独自の理念規定を設けることは妨げられません。(令和 4 年 4 月追加)

 実体的な影響を与える規定はできなくても、単なる手続き的な「法施行条例」ではなく、自治体としてどのように住民情報を保護しようとしているのか、その主体的な姿勢を示すことは重要だ。
 まずは名称を「個人情報保護法施行条例」ではなく「個人情報保護条例」とし、自治体としての個人情報保護に向けた理念を規定することを訴えたい。

アメとムチで押しつけるな!
危険なマイナンバーカード!

 共通番号いらないネットは6月4日、「これでも必要?マイナンバーカード~持たなくても大丈夫! 返すことも可能!~」集会を行った。集会の資料や映像は、こちらから見ることができる。

●強引な普及と利用拡大をやめよ!と決議

 下記集会決議のように、政府は2023年3月までにほぼ全ての住民にマイナンバーカードを持たせるというムチャな方針を掲げ、6月30日から1兆8千億円もの税金を投じてマイナポイント第二弾を本格実施しようとしている。その一方で「マイナンバーカード利用で健康保険証が廃止される」など、不正確な情報で不安を煽っている。
 私たちが利便性を感じないカードを、なぜ政府は利益誘導や不安を煽って強引に押しつけようとしているのか、集会ではその狙いが様々な視点から明らかにされた。

    決議のダウンロードはこちらから

●変貌し拡大するマイナンバーカードの状況

 集会ではまず「マイナンバーカードをめぐる状況」(資料)が報告された。2023年3月までに全住民に取得させる方針を2019年6月に決めたが、マイナポイントの利益誘導で一時的に申請が増加しても終了するとまた申請は低迷している。そもそもマイナンバーカード(個人番号カード)は、マイナンバー提供時の成り済まし詐欺を防止する本人確認と電子申請など利便性向上を目的としており、取得は任意で「全住民」が所持する必要はなく義務付けはできない
 ところがいま政府はマイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」(岸田首相)にしようとして、本来マイナンバー制度の危険性に対する個人情報保護措置の一つとしてつくられたマイナポータルを、逆にマイナンバーで管理する個人情報を民間に提供する仕組みに使ったり、内蔵の電子証明書を管理する発行番号を、規制の厳しいマイナンバーの代わりに民間事業者の顧客管理IDなどとひも付けて個人情報を名寄せする手段に使うなど、導入当初の説明にも法律にもない利用拡大を進めている。

 その結果マイナンバーカードは、健康保険証利用(オンライン資格確認システム)を基礎に医療健康情報を共有したり、学校の教育・健診等の情報を追跡管理したり、運転免許との一体化で警察の利用を可能にしたり、2020年5月に成立した公金給付口座登録と預貯金口座管理の2法により税務調査と福祉の資産調査のための預貯金口座へのマイナンバー付番に誘導したりするなど、分野を超えて個人情報を名寄せし生涯追跡する国民監視に使われようとしている。
 マイナポイントも、総務省が作った法的根拠もない「マイキープラットフォーム」で電子証明書の発行番号とのひも付けにより管理され、将来は自治体からの給付の管理や中国のようなポイントの利用状況で個人を格付けする社会に向かいかねない。

●診療情報の利活用が目的の健康保険証利用

 「医療におけるマイナンバーカード利用」(資料)では、患者にとっても医療機関にとってもデメリットが大きく普及がすすまない健康保険証利用(オンライン資格確認)だが、政府の目的は「データヘルス改革」によって全国医療情報プラットフォームをつくり、医療機関から医療情報を収集共有する利活用にあることが報告された。
 情報共有は医療を行う側からは有用に思えても、患者にとって病歴は「弱み」の面がある。ある医師には話しても他の医療機関には知られたくないことが、これからは知られることになりプライバシーが無い状態になる。

 政府は2023年からオンライン資格確認システムの導入を医療機関に義務付けると言っているが、医療機関では問題点が多い。健康保険証のように窓口で一時預かりすることはできなくなり、受付が混乱する。マイナンバーカードは10年毎、電子証明書は5年毎に更新手続の手間がかかる。紛失等での再発行に2カ月くらいかかり、その間の受診はどうなるのか。スペース的・人的に導入が困難な医療機関は廃業せざるをえなくなる。インターネットに常時接続が必要になり、サイバー攻撃をうけると患者のプライバシーを危険にさらし医療がストップする。
 政府も「原則として」義務化と言っており、最低限医療機関の意思を尊重すべきだ。また「保険証の原則廃止」を目指すと掲げているが、「加入者から申請があれば保険証は交付される」とも注記しており、引き続き健康保険証での受診は可能だ。このシステムでメリットを得るのは誰なのか、十分な議論が必要で、拙速な導入は日本の医療に危機をもたらす暴挙だ。

●教育データ利活用に前のめりな政府

 「教育におけるマイナンバーカード利用」(資料)では、「教育データ利活用ロードマップ」をデジタル庁・文科省・経産省・総務省の連名で公表したように、教育が各省庁の草刈り場となっていることが報告された。教育産業やIT業界が教育データの利活用に力を入れるのは児童生徒の個人情報が金になるからで、神奈川県では高校生にグーグル・アカウントを配布しグーグル・クラスルームを使用するなど外国資本も参入している。個人情報はどこに集められていくのか。

 教育データ利活用のためには「学習者の識別子(ID)」が必要。マイナンバーの利用はあいまいにしているが、学習者IDとマイナンバーカードをひも付けて転校時等の教育データの持ち運びを、閣議決定で検討中だ。学習者IDのもとに学習・健康・体力の履歴や読書情報、奨学金や職業訓練など、思想信条や機微な情報がひも付けられていくことは恐ろしい。経産省の推進するEdTechでは、学習履歴として何回発話や挙手したか、視線や脳波なども取り込んでいくことを検討している。すでにモニターで脳血流を見ながらAIで分析する授業の実証実験を埼玉県でやっている。
 教育データ利用の目的は、「個別最適な学び」と「国民の生涯学習」。同じ教室にいても一人一人バラバラの教材をやっている。学校に行く必要はなくなる。それを「いつでも、どこでも、誰とでも、自分らしく学べる」教育DXと言っている。データは学習者IDでくし刺しされ、生涯積み重なっていく。
 これには個人情報保護上も問題がある。集められる情報は目的外収集でも要配慮個人情報でも集め、不要になった情報の廃棄もされるか不明。収集を拒否したときに、その子に他の子と同等の教育が保障されるのか。プロファイリングや信用スコアリングに使われる危険もある。学習指導要録は5年、学習記録は20年と保存期間が決められているが、学習者IDにひも付けされると忘れたい情報も未来までつきまとう。

●番号法の規制が及ばない個人番号カード利用

 「マイナンバー違憲訴訟とマイナンバーカード問題」(資料)では、まず全国8地裁に提訴したマイナンバー違憲訴訟の現状として、地裁判決はすべて原告の請求を棄却、高裁では仙台・名古屋・福岡で棄却判決があり最高裁に上告、新潟が8月4日判決予定、その他は次回予定が金沢が7月13日、神奈川が7月20日(資料を訂正)、大阪が8月23日、東京は8月24日となっており、いずれも結審が近いことが報告された。

 裁判では自己情報コントロール権や漏えい事例、警察等での利用、個人情報保護委員会の機能不全などの問題を主張しているが、個人番号カードについては東京訴訟で、電子証明書の発行番号が個人番号(マイナンバー)と同等の個人識別符号になっているにもかかわらず、発行番号の利用には番号法の規制が及ばないため規制なく情報連携され民間を含めて利用を広げていることを問題にしている(準備書面)。
 民間のデータベースや国のマイキープラットフォームで個人番号カードの利用履歴が蓄積されるのではないかという点とともに、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)でも利用履歴が蓄積されるのではないかという疑念がある。利用履歴がデータベース化されれば、2008年3月6日の住基ネット最高裁判決が否定した「住基カード内に記録された住民票コード等の本人確認情報が行政サービスを提供した行政機関のコンピュータに残る仕組み」と同等かそれ以上の仕組みが作られることになり、最高裁判決に照らして違憲というべきだ。

●いらないネットリーフレットの活用を

 共通番号いらないネットでは、政府が9月までを「申請促進強化期間」としていることに対して、6月にいらない ! マイナンバーカード街頭キャンペーンに取り組むことを呼びかけている。キャンペーンに向けて、マイナンバーカードの危険性を訴えるリーフレットNo11を発行した(こちらを参照)。
 なお過去のリーフレットでも、マイナンバーカードの危険性を指摘している(過去のリーフ全てはこちらを参照)。
▼リーフNo10(2021年9月発行)こちら
 P2 成立したデジタル監視法はこんなに危険!
    マイナンバーカードが監視のカードに
 P4 今後も健康保険証はそのまま使えます。マイナンバーカードは不要です。
▼リーフNo9(2021年2月発行)こちら
 P2 デジタル庁で国民総背番号制化するマイナンバー制度
    銀行口座と国家資格のマイナンバー管理
    危険なマイナンバーカードのスマホ搭載
 P3 個人情報の保護から個人データの利活用の推進へ
    個人情報を保護するマイナポータルを民間への個人情報の提供に利用
    狙われる教育・医療健康の個人情報
▼リーフNo8(2020年4月発行)こちら
 P2 マイナンバーカードはこんなに危ない!!
    落としても大丈夫?
     マイナンバーの漏えいは防げない!
    なりすまし詐欺はできない?
     すでに他人の不正取得や偽造が発生!
    個人情報は盗まれない?
     紛失・盗難で個人情報が丸見えに!
    住民サービスのためのカード?
     常時携帯させて住民管理に利用!
 P3 手続き面倒・効果不明・将来危険のマイナポイントはNO!
 P4 マイナンバーカードの申請は義務ではない!
▼リーフNo7(2019年9月発行)こちら
 マイナンバーカードはこんなに危険 政府の強引な普及方針をはね返そう! 

デジタル国会で何が議論され
 何が議論されなかったのか

学習会 7.17(土)13:30~

 2021年5月12日に成立したデジタル改革法の、国会審議を検証する学習会を7月17日に行います。法案を受けて、9月1日のデジタル庁発足・デジタル社会形成基本法施行を見据えた動きも具体化してきました。多岐にわたる法案により何が変わるのか、不十分だったとはいえ国会審議での解明と活用できる質疑を探り、今後の運動の進め方を討論します。
 学習会の案内はこちらをごらんください。

●日時●2021年7月17日(土)13時30分〜 16時30分
●会場● ふれあい貸し会議室渋谷No30 »Map
渋谷区渋谷2-22-7 渋谷新生ビル 803号室
●報告●原田富弘さん(共通番号いらないネット)
●主催●共通番号いらないネット
●会場費・資料代など●500円
●メモ●どなたでも参加できます。オンラインでも参加できます。
 会場参加は予約不要です。
 オンライン参加の方は事前に予約をしてください。予約方法は »こちら に。

  学習会記録(2021.7.20追記)
(1) 報告部分 映像(youtube)1時間32分 こちら
(2) 質疑部分 映像(youtube)1時間16分 こちら

↓学習会資料(68頁、左上の矢印で頁がめくれます)
    ダウンロードは こちら から(PDF 6.2MB)

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210109 「デジタル庁構想のデータ戦略の重要性について」資料(宮崎さん分)

デジタル庁構想では、これまで以上にデータの利活用
のための「データ戦略」が重視されています。デジタルガバメント
閣僚会議にもとに「データ戦略タスクフォース」というワーキング
グループが設置され、第1次とりまとめが昨年12月に出されました。
今回はその中の人・法人・自然などの最も基本的なデータについて
共有化を図るための基本的なデータベースである「ベース・レジストリ」
を材料にその構想について検討しました。

宮崎俊郎さんのレジメ ↓

引用している、『ベース・レジストリ・ロードマップ(案)』は、以下をクリック。
ベース・レジストリ・ロードマップ(案) 資料1(別紙)

「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」学習会開催

 2020年12月11日、デジタル・ガバメント閣僚会議のマイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループが、第6回会合で報告「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」をまとめました。
 その内容は「骨太の方針2020」がマイナンバー制度を「国民が安心して簡単に利用する視点で十分に構築されてこなかった」と認めたことを受けて、「普及」や「利用拡大」でなくデジタル庁のもとで「抜本的な改善」と称する再構築をしようとするものです。

●J-LISを国の管理機関にして「国民総背番号制」に

 たとえば、地方公共団体が共同で運営してきた「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」を、新たに国と地方の共同団体の管理に変え、デジタル庁と総務省で共管し、デジタル大臣と総務大臣が目標設定・計画認可し、改善措置命令に違反するとJ-LIS理事長を解任するなど、事実上、国管理化しようとしています。
 J-LISは住基ネットの全国センターやマイナンバーの生成、マイナンバーカードの交付システム、(10万円の定額給付金のトラブルで有名になった)公的個人認証(電子証明書)、そして全住民の最新の住民データを保管する「中間サーバープラットフォーム」を設置するなど、マイナンバー関連の個人情報を一手に管理しています。
 かつて国会で住基ネットを新設する住基法改正が審議された際に、当時の小渕首相は、住基ネットは地方公共団体共同のシステムで国が管理するシステムではなく、したがって国民に付した番号のもとに国があらゆる個人情報を一元的に収集管理するという国民総背番号制とは異なる、と答弁していました(1999年6月10日衆議院地方行政委員会)
 国管理化されれば、まさに国民総背番号制度です。

●官民で個人情報の共有を一気に拡大

 マイナンバー制度の目的である情報連携についても、 低調な情報提供ネットワークシステムの利用の徹底を迫るだけでなく、社会保障・税・災害という3分野以外での利用に広げ、「情報連携に係るアーキテクチャーの抜本的見直し」など制度の作り替えをしようとしています。
 さらにもともとはマイナンバーで管理・提供されている自分の情報を確認するという個人情報保護のために作られたマイナポータルを、逆にマイナンバーで管理する個人情報を民間などに提供する仕組みとして利用し、デジタル政府・デジタル社会における個人、官、民をつなぐ「情報ハブ」にしようとしています。

●電子証明書を使った「脱法マイナンバー

 昨年12月16日の日経新聞がマイナンバー制度を使った小中学生の成績・履歴データ化の管理を報じて、学校の成績がマイナンバー制度で管理されて一生ついてまわるのかと話題になりました。今回の「報告」に「学習者のID とマイナンバーカードとの紐付け等、転校時等の教育データの持ち運び等の方策」も入っています。
 この管理に利用されるのがマイナンバーカードに内蔵の電子証明書です。電子申請などに使われる電子証明書を、その本来の目的と異なり、電子証明書の発行番号(シリアル番号)を個人を識別特定するIDとして利用し学習者のIDとひも付けて管理しようとするものです。今回の「報告」では、さまざまなデータとのひも付けを計画しています。
 マイナンバー制度をつくるためにまとめられた「社会保障・税番号大綱」 (47頁) では、 電子証明書のシリアル番号について住民票コードと同様の告知要求制限を設けるなど保護措置を検討することになっていましたが、保護措置も講じられないまま、政府は規制の多いマイナンバーのかわりに 「民間も含めて幅広く利用が可能」などと「脱法マイナンバー」として利用を広げようとしています。

● 1月18日からの国会で一挙に法改正目論む

 このようなマイナンバー制度の再構築が、デジタル庁やデータ戦略などと一体となって、1月18日からの国会に法案提出されようとしています。

 共通番号いらないネットでは、この急な「抜本改善」の動きについて、1月9日に緊急に学習会を行いました。以下は、学習会の資料です。
 学習会の様子はYouTubeで見ることができます(ここをクリック)。

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11/21 集会資料
2020.11.21なんでもデジタル庁ですすめていいの? ナンバー制度の際限なき拡大に反対する集会

<a href=”https://www.homepage-tukurikata.com/hp/link.html“>集会の案内URLは、以下です。</a> 2、3日中に、簡単な報告をアップします。

以下、pdf が2枚あるものは、サムネイルの方をクリックすると、大きく開きます(DLも可能)。1枚のものは、その場で開きます。

報告者

●1)報告 宮崎俊郎:デジタル庁構想下のマイナンバー制度の拡大に反対する

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●2)報告 吉田章:医療のデジタル化の狙いは何か

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●3)報告 外山喜久男:教育のデジタル化の狙いは何か 

●4)報告 原田富弘:自治体の個人情報保護条例の共通ルール化


● 4)学習会資料:自治体の個人情報保護条例の共通ルール化

●5)報告 井上和彦:訴訟の進行状況

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10月24日学習会資料
「マイナンバーと銀行口座の紐付け」は何を狙っているのか

 2020年10月24日、共通番号いらないネットは、「「マイナンバーと銀行口座の紐付け」は何を狙っているのか」の学習会を行いました。

  共通番号いらないネット事務局の原田富弘さんより、議論の素材として「預貯金口座へのマイナンバー付番論議の経過と状況」 を説明し、つづいてコメンテーターの山崎秀和さん(共通番号制を考える会・静岡)から「マイナンバー制度と口座番号の紐付け義務化 その狙いを明らかにし、法律の成立を阻止するために」のコメントをいただき、検討しました。

 以下、当日の資料です。また共通番号いらないネットのyoutubeチャンネルに 、当日の様子がアップされています。あわせてご覧ください。

一番上の「201024_Harada_Shiryou」が、原田富弘さん(共通番号いらないネット事務局)

続く5本が、山崎秀和さん(共通番号制を考える会・静岡)の資料です。

サムネイルの方をクリックすると、ファイルが開きます。