マイナ保険証を押し付けるな!健康保険証をなくすな!! (11)

 共通番号いらないネットは、2026年1月17日に「マイナンバー制度10年を問う集会」を開催する。
 マイナンバー制度は、2016年1月に利用とマイナンバーカードの交付を開始した。共通番号いらないネットは、共通番号(マイナンバー)を廃止に追い込んでいくことを目指す市民・議員・研究者・医師・弁護士などの緩やかなネットワークとして、2015年2月から活動をはじめた。
 開始当初、マイナンバー制度推進一色だった世論も、様々な問題に取り組む中で私たちの訴えは徐々に受け止められるようになってきた。その結果、自民党政権がマイナンバー制度推進の要として2019年に決定した「2022年度末にマイナンバーカード全住民所持」の方針は、2023年3月の交付率が67%に終わり失敗した。マイナ保険証は、健康保険証を廃止するという医療を人質にした強引な普及策にもかかわらず、利用率は3割台に低迷している。
 いまマイナンバー制度はデジタル庁のもとで変貌しつつある。また所持は義務ではないマイナンバーカードを、本人確認書類として提示を求める動きが広がっている。この10年をふりかえり、今後の取り組みを話し合う。

マイナンバー制度10年を問う集会
●日時●2026年1月17日(土)14時
●会場●文京区民センター 3階 3-A会議室
  東京都文京区本郷4-15-14
  都営地下鉄大江戸線・三田線春日駅A2出口
●主催●共通番号いらないネット
●参加費・資料代など●500円
詳しくはこちら

 2024年12月1日に交付を終了した健康保険証は、2025年12月1日に最長1年間の利用可能期間が終了した。
 マイナ保険証のトラブルが続き、健康保険証を使い続けたいという多くの声があるにもかかわらず、厚労省は健康保険証を廃止すればマイナ保険証の利用率は向上するという姿勢だった(2025.10.30厚労省ヒアリング回答)。
 しかし健康保険証の利用終了を控えた2025年11月のマイナ保険証利用率は39.24%にとどまり、前月から2.1%増加しただけだった(厚労省サイト)。一方マイナ保険証の利用登録解除申請は、厚労省も保険者もほとんど宣伝せずマスコミも報じなかったが、1年間で23万件を越えた(厚労省サイトから集計)。
 健康保険証を使い続けたいという民意を受け止めて、厚労省は健康保険証の利用継続を決断すべきだ。

 ところが厚労省は、2025年12月18日の社会保障審議会医療保険部会で、奇妙な提案をしている(資料2)。いままで毎月、マイナ保険証の利用率をサイトに公表してきたが、これは「オンライン資格確認件数ベース利用率(マイナ保険証利用件数 ÷ オンライン資格確認利用件数)」で、これからは「レセプト件数ベース利用率(マイナ保険証利用人数 ÷ レセプトの発行件数)」に変更するという。
 2025年11月のマイナ保険証利用率が39.24%というのは「オンライン資格確認件数ベース利用率」だが、「レセプト件数ベース利用率」では10月の利用率が47.26%になるという。数字が異なる理由として「オンライン資格確認件数ベース利用率」では「これまでの慣行に沿って月初の受診時のみマイナ保険証の提示を求めていた場合には月初以外の利用件数は計上されない」と説明している。しかし厚労省はマイナ保険証では受診のたびに提示することを求めており、毎回提示しないこともあるというこの説明には疑問がある。

社会保障審議会医療保険部会(2025年12月18日)資料2

 レセプトとは医療機関が保険者に診療報酬を請求する書類で、請求手続が終わって初めて集計可能となるため、利用率は受診月から2か月遅れの数字になる。つまり2026年1月には利用率が公表されず、2月に2025年12月分利用率が公表されるが、その数字は従来の利用率を10%くらい上回ったものになる。この数字だけ見れば、健康保険証の利用が終了したらマイナ保険証の利用が急増した印象を受ける
 「レセプト件数ベース利用率」も、資料としては従来から随時公表されていた。ただ毎月の公表方法を変えると、一見、利用率が急増したように見える。なかなか利用率が伸びないので、統計操作によって印象を変えようとしているのではないか。変更理由は「従来の保険証からマイナ保険証への切り替えを迎えた中で、数値の迅速性ではなく患者の利用実態により近い数字となるよう」(資料2)にするためと説明されているが、説得力はない。
 統計は同じ方法で継続することで、傾向を判断することができる。「レセプト件数ベース利用率」の公表もいいが、少なくとも従来の「オンライン資格確認件数ベース利用率」の公表も継続して行うべきだ。

 保団連(全国保険医団体連合会)は、2025年11月27日、2025年8月以降のマイナ保険証利用状況についての実態調査の中間報告を公表した(こちら参照)。9580医療機関から回答を得た結果、表示される資格情報の誤りや氏名の●表示、顔認証カードリーダーなどのトラブルが、7割の医療機関から回答された。電子証明書の有効期限切れも多く、その結果窓口で10割自己負担になることが増加している。そして正しい表示がされない場合、多くは健康保険証により確認している実態が変わっていない。

2025年11月27日公表の中間報告より

 最近、この保団連の調査に対して「一部の団体の意見だ」などと調査結果を軽視する議論がある。しかし厚労省が2025年12月19日の中医協(中央社会保険医療協議会)に報告(「総-2個別事項について(その18)医療DX」)した「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の結果(下図)をみても、多くの医療機関が登録情報の不備やシステム障害、電子証明書の有効期限切れなどに悩まされ負担を感じていることが明らかになっている。
 正確な資格情報を迅速に表示するというマイナ保険証の導入理由を達成できないのに、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行するなどと言えるのだろうか。

「総-2個別事項について(その18)医療DX」18頁

 厚労省は健康保険証の利用終了を前に、2025年11月12日、「マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行について」を医療関係団体に通知した。その中で12月以降の健康保険証廃止に伴う医療機関の混乱対策として、下記のように、健康保険証を有効期限が切れても2026年3月まで医療機関で利用可能とすることを通知した。
 健康保険法には規定のない超法規的な措置だ。しかも医療関係団体だけに通知して、一般には公表していない。場当たり的な取り繕い対応を続けるのではなく、健康保険証廃止強行の無理を認めて、利用を継続すべきだ。

(2)移行期における暫定的な取扱い
 12 月2日以降、期限切れに気がつかずに健康保険証を引き続き持参してしまった患者や、保険者から通知された「資格情報のお知らせ」のみを持参する患者については、保険証等単体で有効なものとして取り扱うものではありませんが、加入している保険者によらず、保険給付を受ける資格を確認した上で適切に受診が行われるよう、被保険者番号等によりオンライン資格確認等システムに照会するなどした上で、3割等の一定の負担割合を求めてレセプト請求を行うこととする運用は、暫定的な対応として差し支えないと考えます。こうした対応は令和8年3月末までの暫定的な対応であり、次回以降の受診時にはマイナ保険証か資格確認書を必ず持参いただくよう呼びかけて下さい。

 また2025年12月18日の社会保障審議会医療保険部会では、2026年7月まで後期高齢者(75歳以上)全員にマイナ保険証の有無にかかわらず資格確認書を一律に職権交付している扱いの、2026年8月以降の見直しを提案している(下図参照)。提案では85歳以上は全員一律の職権交付を継続するが、75~84歳はマイナ保険証を利用していなければ職権交付を継続するが、利用実績があると資格確認書の職権交付は打ち切る(申請すれば交付も可能)。

社会保障審議会医療保険部会(2025年12月18日)資料2

 資格確認書は、法令では「電子資格確認(=マイナ保険証)を受けることができない状況にあるとき」に申請により交付されることになっており、法の附則で「当分の間」は保険者(市区町村や健保組合、協会けんぽ、共済組合など)が必要があると認めるときは、職権で(=申請なく)交付することができるとなっている。
 「電子資格確認を受けることができない状況」として、厚労省はマイナンバーカードの紛失や更新中、介護が必要な高齢者や子どもなどマイナンバーカードを取得していない者など、かぎられた場合を例示していた。健康保険証廃止を記者会見で発表した河野元デジタル大臣は、紛失など稀な事情でマイナンバーカードを持てない場合だ、と説明していた。
 それが2023年春に「ひも付け誤り」が大きな社会問題になったことを受けて、2023年8月8日にマイナンバー情報総点検本部の「政策パッケージ」(14頁)により、「当分の間」、マイナ保険証を保有していない方全てに申請によらず交付すること、有効期間を5年以内とすること、マイナ保険証の利用登録解除を可能にすることになった。これは法令に根拠のない、政策的な方針であり、「当分の間」がいつまで続くかは不明だ。
 さらに2024年9月26日には2025年夏までの暫定的運用として、後期高齢者にはマイナ保険証があっても資格確認書を交付することを通知し、さらに2025年4月3日の社会保障審議会医療保険部会資料1で、2026年7月末までマイナ保険証の有無にかかわらず後期高齢者には全員一律に資格確認書を交付することを明らかにしていた。
 このように「資格確認書」は、厚労省の考えだけで扱いが変わる不安定な制度だ。当面はマイナ保険証と資格確認書が併用されているが、保険者に被保険者全員への交付義務が法令で規定されていた健康保険証とは違う。安心して保険診療を受けられるようにするためには、健康保険証の存続が必要だ。

 2025年12月2日にいらないネットは「健康保険証の廃止に抗議し、利用継続を求める声明」を発表した。今後もマイナ保険証の押し付けに反対して、マイナ保険証以外の医療保険資格の確認手段と併用できるようにすることを求めて運動を続けていく。

   (ダウンロードはこちらから)