●厚労省、健康保険証の暫定運用を7月末で終了
厚労大臣はマイナ保険証の利用が広がらないために行っていた、利用期限が切れた健康保険証でも保険診療が受けられる暫定的な対応を、2026年7月末で終了することを6月30日の記者会見で明らかにした。6月22日には関係機関に「健康保険証の有効期限終了に伴う今後の医療機関等の受診時の対応について」を通知している。
「期限切れの保険証等を持参した際にこれまでどおりの窓口負担で受診できるとする暫定措置については、既にお示ししているとおり、7月末とした期限を更に延長することは考えていません。・・・国民の皆様におかれては、医療機関等の受診時にはマイナ保険証か資格確認書をご持参いただくようお願いしたいと思います。」(上野大臣会見概要 令和8年6月30日)
8月以降はマイナ保険証か資格確認書を持参しなければ、窓口でいったん10割の支払いを求められる。マイナ保険証を利用したくない場合は、原則として7月中にマイナ保険証の利用登録解除の申請をして、資格確認書を受け取るようにする必要がある。
また8月以降は、現在マイナ保険証の有無に関わらず資格確認書が一斉交付されている75歳~84歳の後期高齢者についても、保険者により違いはあるが申請しないと資格確認書が交付されない場合があるので、注意が必要だ。
●いまだ利用が広がらないマイナ保険証

2025年12月に健康保険証の利用が終了が終了し「マイナ保険証を基本とする仕組み」に移行したことになっている。しかし厚労省公表値の推移をみても、右図のように今年になってもマイナ保険証の利用率は低迷している。
従来公表していた「オンライン資格確認件数ベース」の利用率では、4月や6月に利用率が減少するなど一進一退状態。厚労省が今年1月から利用率として宣伝している新方式(レセプト件数ベース利用率)でも、毎月1%程度増加しているだけだ。
健康保険証なら面倒な手続きなく受け取れ、医療機関の窓口に出せば保険診療が受けられた。しかしマイナ保険証はマイナカードを取得・更新して利用登録をしないと受け取れず、医療機関窓口では顔認証をしたり暗証番号を打ち込んだりしないと受診もできない。マイナカードや電子証明書の更新を忘れると、窓口で10割支払いを求められる。しかも保険資格が正しく表示されないトラブルは解消されていない(こちら参照)。個人情報の扱われ方も心配だ。できるだけ使いたくない、と思うのは当然だ。
当面健康保険証の代わりに使用できる「資格確認書」があるが、複雑化する制度に理解が追いつかず、健康保険証を持参するケースが続いたため、厚労省は今年3月まで期限切れの健康保険証でも保険診療を認める「移行期における暫定的な取扱い」を行った(こちら参照)。
しかしそれでもマイナ保険証の利用は広がらず、さらに今年7月まで「暫定的な取扱い」を延長していた(こちら参照)。その扱いが7月末で終了し、今後はマイナ保険証か資格確認書を使用する必要がある。
●マイナ保険証を登録解除して資格確認書を
当分の間、マイナ保険証を持っていなければ、資格確認書が申請不要で送られてくることになっている。しかしマイナ保険証を利用登録していると資格確認書は送付されないため、利用登録解除の申請をする必要がある。
利用登録解除の手続きは、加入している保険者(健保組合、協会けんぽ、共済組合、市区町村等)で用意している申請書に記入して出せばよく、いままでにすでに全国で約27万人が手続きをしている。
なおマイナ保険証を持っていても、施設に入所しているなどマイナ保険証の利用が困難な場合には、加入先の保険者に申請をすれば、資格確認書の交付も受けることができる。
また渋谷区や世田谷区では、マイナ保険証の保有の有無に関わらず、すべての国保加入者に資格確認書を一斉に送付しているので安心だ。杉並区は2026年1月の区議会で、渋谷区や世田谷区のように国保加入者に資格確認書を一斉送付することを求める陳情が採択されたが(こちら参照)、区側は被用者保険の方との公平性の担保や他自治体及び後期高齢者医療制度とのバランス等の課題をあげて、引き続き慎重に検討していくと、民意を受け止めない答弁をしている(杉並区議会令和8年第1回定例会2/12)。
●75~84歳の後期高齢者の扱いが変わる
75歳以上の後期高齢者医療の加入者については、マイナ保険証の保有の有無に関わらず、資格確認書を全員一律に申請によらず交付する扱いがとられてきた。
しかし厚労省は2026年8月からは、85歳以上については引き続き全員一律に交付するものの、75~84歳については全員一律の交付を見直す。

図のように、「マイナ保険証を直近1年間において6回以上利用し、かつ直近3か月における利用実績あり」の場合はマイナ保険証を、それ以外は従来どおり資格確認書を交付するという取扱いを、2025年12月18日の社保審医療保険部会で提案した。
しかしこのやり方では、マイナ保険証の利用実績に応じて資格確認書の交付方法を変えなければならず、対応困難な後期高齢者医療広域連合からは強い不満が出された。そのため厚労省は2026年2月12日の医療保険部会で、「マイナ保険証利用促進の観点から」74歳以下の年齢層と同様の取り扱い、つまりマイナ保険証を持っている人には資格確認書を送らない扱いにしてもよい、という方針を示した。ただマイナ保険証を持っていても、申請により資格確認書の交付も可能とされている。
各地の広域連合により扱いに違いが出ることが予想される。医療機関窓口でも新たなトラブルの原因になる。大阪府の後期高齢者医療広域連合は、混乱を避けるために有効期限が切れる8月以降も後期高齢者全員に自動交付することを決定したと報じられている(こちら参照)。
資格確認書があれば、(当面は)だれでも安心して医療を受けることができる。
不便を強いたり混乱を招くようなマイナ保険証の利用を押しつけはやめて、資格確認書を申請なく一斉交付して、マイナ保険証を使うか資格確認書を使うかは患者に任せることがなぜできないのか。



























