●東京アプリ生活応援事業とは?
東京都は2026年2月2日から、東京アプリ生活応援事業を開始した(こちら)。
「東京アプリ」の更なる普及促進と「物価高騰など社会情勢の変化を踏まえて都民の生活をより一層応援する」目的で、マイナンバーカードを持つ15歳以上の都内在住者(住民登録者)を対象に、NFC対応スマートフォンに東京アプリとデジタル認証アプリ(デジタル庁が提供するアプリ)をダウンロードし、マイナンバーカードで本人確認して申し込むと、11,000ポイント(1pt=1円)受け取れる、というものだ。
マイナンバーカードの所持に加えスマホが必須であり、タブレットやパソコンでは利用できない。このポイントは、自治体施設で使えるチケットや、いくつかの民間決済事業者のポイントなどと交換して使用できるとなっている。
●東京アプリと「東京アプリ生活応援事業」
東京アプリそのものは、2025年2月17日から「社会的意義のある活動への参加者にポイントを付与するサービス」が利用開始している。
2025年秋頃を目途に、マイナンバーカードによる本人確認機能の実装を契機として、将来的に都の様々な手続やサービスとの連携を可能とする東京アプリを活用して多くの都民と都政をつなげるキャンペーンを展開する予定とされていた(東京都報道発表資料 2025年2月17日)。
2025年4月25日には都デジタルサービス局が「「東京都公式アプリ(東京アプリ)」について ~都民と共に創るアプリ~」を公表し、2025年11月28日には、マイナンバーカードを利用した本人確認機能等の導入に向けて 都民参加型の最終検証を開始し、実施にいたっている(こちら)。

東京アプリの主な機能として、「「東京都公式アプリ(東京アプリ)」について」では、マイナンバーカードでの本人確認によりひとつのIDで、行政手続のオンライン、AIによる行政手続サポート、給付金の申請・受領、都政への提案・アンケート、社会的意義のある活動にポイント付与、個人あてのお知らせ機能、災害時の活用、その他機能を追加していくとしている。
もともと「つながるキャンペーン」として一人7000ポイントを付与する予定にしていたが、東京アプリ生活応援事業として都の12月補正予算で450億円を計上して4000ポイントを上乗せした。
●東京アプリについての都議会質疑
昨年2025年2月17日から開始した東京アプリについては、2025年3月3日の都議会総務委員会で質疑が行われている。そのなかから東京アプリの理解を補足する質疑をピックアップする。
自民党の増山委員からの「つながるキャンペーン」の実施目的は、東京アプリを浸透させるためなのか、もしくは物価高騰対策なのかとの質問に対して、都はアプリの利用を広げていくためと答えている。また対象を15歳以上とした理由については「将来的に様々な手続で活用することを目指しており、行政手続を単独で行える年齢である十五歳以上の都民を対象」としたと答えている。
つまりアプリ普及を目的とした7000ポイント付与に、今回「生活応援」としての4000ポイントが追加されたということになる。
立憲の藤井委員からの、マイナンバーカードにより本人認証、本人確認を行うこととした理由の質問には、将来的に個人に最適化された情報発信や様々な行政手続を簡便に行えるようにしていく予定であり、本人確認にマイナンバーカードを活用することで書類による手続が不要でオンラインで確認が完了すること、国の公的個人認証サービス機能を利用するため安全で確実に本人確認を行うことが説明されている。
公明党の古城委員からの、多くの人に利用してもらうために「本人確認についてマイナンバーカードに加えて、他の代替手段も考えるべき」の求めに対しては、オンラインによる本人確認の方法を複数検討した結果「利便性や効率性に加え、個人情報管理の安全性、なりすまし防止の観点から、マイナンバーによる本人確認機能を実装する」ことにしたとの答弁がされ、代替手段の予定はない。
共産党の池川委員からの、そもそも社会的意義のある活動や利便性の向上を目的としたアプリが、なぜポイントで誘導しないとダウンロードされないと考えているかの質問には、他自治体を参考にしたとの説明しかなかった。またスマホ保有率が70代で64.4%、80歳以上では28.5%の現状で、スマホがない人は対象外かの質問には、区市町村のスマホ相談会への支援の拡充に加え、スマホを持たない高齢者の購入助成を検討するという答弁だった。
結局マイナンバーカードもスマホも持たない都民は対象外ということだ。
ミライ会議の田の上委員からの、東京アプリは都民以外も利用できるか、都民のみがキャンペーンの利益を享受できるかの質問には、アプリの利用は都民に限定されず、つながるキャンペーンではいったん民間決済事業者のポイントと交換するとどこでも使えるようになると答弁。共産党の池川委員からは、それでは都内事業者への支援に役立たないとの指摘もされていた。
●各地でマイナカードのポイント事業に批判
昨年12月に成立した国の補正予算で、物価高対策として自治体が使い方を決める「重点支援地方交付金」2兆円が決まった(こちら)。それを受けて各自治体で様々な生活者支援メニューを検討しているが、いくつかの自治体でマイナンバーカードを利用したポイント事業が批判を受けていることが報じられている。
京都市では、スマホに専用アプリをダウンロードしてマイナカードで本人確認することにより5000円のポイントを給付する。市長は普及率の低いマイナカードの取得促進も狙いとしている(産経2025/12/22)。これに対し市議会では、マイナカードを所持しない25%の市民約35万人が給付を受けられないのは市民差別だとして再検討を求める意見が出たが、市側は制度上は一律に全市民を対象にしなければならないものではないとして、対象外となる市民への対策は検討していなかった(京都民報Web2025/12/25)。市議会では、共産党が全市民を対象とした現金給付へ変更する予算組み替え動議を出したが否決された(京都民報Web2025/12/26)。その後1月15日に、京都市民255人が平等原則に反するとして差し止め請求をしたことが報じられている(京都新聞2026/1/15)。
また仙台市では「せんだい生活応援!!ポイントキャンペーン」として、マイナンバーカードと連携したデジタル身分証アプリ『ポケットサイン』を利用して「みやぎポイント」3000円分を給付しようとしている。これに対して仙台市民オンブズマンが「市民全員が利用できず、合理的理由のない差別にあたり憲法14条(法の下の平等)に違反する」として、支出の差し止めを求める住民監査請求を行った(ミヤギテレビ2026/1/7)。これについて仙台市長は、いくつか用意している物価高対策の一つで問題はないとの認識を示しているという(tbc東北放送2026/1/21)。
●マイナカードとスマホのない都民は「排除」
東京アプリでは、当初の「つながるキャンペーン」7000ポイント付与はアプリの普及を目的としていると説明されたが、補正予算450億円で追加された4000ポイントは「生活応援」が目的であり、東京アプリ生活応援事業として実施する以上、マイナカードやスマホのない都民を「排除」するのは法の下の平等に反する。
補正予算を審議した昨年12月9日の都議会第4回定例会では、立憲民主党・ミライ会議・生活者ネットワーク・無所属の会から、直接家計を支える都民に対する支援の第一に東京アプリ生活応援事業が計上されているが、
「日々の生活に追われ手続の余裕がない人、スマートフォンやマイナンバーカードが使えない人、使わない人は除外をされてしまいます。生活応援というのであれば、さきに行った水道の基本料金の無償化のように、あまねく都民、特に困っている人が除外されない方法で実施すべき」との質問がされた。
また共産党からも、
「都が行う物価高騰対策の六割以上が、東京アプリにポイントを付与する事業です。スマホにアプリをダウンロードしてマイナンバーカードと連携しなければ、ポイントはもらえません。初めから多くの人を排除することになります。生活応援の事業として不適切です。東京アプリの450億円は、支援を必要とする人全てに届く物価高騰対策に充てるべき」
との質問がされた。
しかし都側は、出産後の家庭に対する支援を充実など他の施策も実施していると答弁しただけだった。
公明党からのスマホを持たない高齢者へのスマホ購入費補助についての質問には、都の支援により現在21自治体が事業を実施しており、他の自治体にも事業実施を強力に働きかけていくと、あくまで全都民にスマホを利用させる方向が示された。
1月16日の記者会見でも小池知事は、スマホ持ってない方は購入しないとポイントは受け取れないのか、代替手段等はないのか、との質問に「デジタルの活用によって、これまでにないスピードで支援を届けるということ。基本的にですね、東京アプリを使えないような皆様方には、その機器については3万円の補助などを含めて、そのような対応をさせていただく」と、スマホを使わない都民は排除する姿勢を強調した。
ただ報道では、ポイント支給の対象外となる14歳以下の子どもには、1万1000円の支援金を毎月5000円を支給する子育て支援「018サポート」のシステムを活用して支給する方針とのことだ。(朝日2026/1/16、日テレNEWS2026/1/16)。