「これがシオニスト・モデルだ」残虐行為プロパガンダは、イスラエルのパレスチナに対するジェノサイドのもうひとつの武器だ

先に紹介した「(APC ウェビナー)パレスチナ人フェミニストの声 ―残虐行為プロパガンダとジェンダー化される偽情報」について、GenderIT.orgのサイトにウエビナーの報告記事が掲載されました。以下はその翻訳です。


「これがシオニスト・モデルだ」残虐行為プロパガンダは、イスラエルのパレスチナに対するジェノサイドのもうひとつの武器だ

2024年4月3日

著者 Hija Kamran
Hija Kamran(彼女)はAPCの女性の権利プログラム( Women's Rights Programme、WRP)のGenderITエディター兼コンテンツコーディネーターである。彼女はデジタルの権利の提唱者であり、10年以上にわたってグローバル・サウスにおける重要な政策と人権提言活動の経験をAPCとWRPの活動に生かしている。


GenderITのためにWard Zaraaが描いたイラスト。

「イスラエルはそのプロパガンダを通じて、パレスチナ人の魂を破壊し、人間としての私たちを破壊しようと狙っている」。これは、3月14日にNoor、Take Back The Tech(TBTT)、GenderITが主催したウェビナー「パレスチナ人フェミニストの声:残虐行為プロパガンダとジェンダー偽情報」の講演者の言葉である。このディスカッションでは、ガザと西岸地区におけるパレスチナ人に対する非人道的な殺戮とジェノサイドの中で、イスラエルが世界中の1400万人以上のパレスチナ人一人ひとりを標的として用いている残虐プロパガンダとジェンダー化された偽情報を武器として使用していることが議論された。人権活動家、学者、研究者、コンテンツ制作者など、6人のパレスチナ人フェミニスト活動家は、インターネット上でのイスラエルによる残虐なプロパガンダをどのように経験し、それに一貫して異議を唱え続けてきたことを共有し、パレスチナの歴史と数十年にわたる入植者による植民地支配と土地の強奪を浮き彫りにした。

司会はNoorのパレスチナ人研究者であるIslam Al Khatibが務め、GenderITの編集者であるHija Kamranが共同進行役を務めた。このウェビナーは、ソーシャルメディア・プラットフォームや人工知能のような先進テクノロジーが、イスラエルのプロパガンダ機関によって武器化されることによって世界中のパレスチナ人、特にパレスチナ人女性に与えられる影響を探ることを目的とした。

ディスカッションの中で、ビルジート大学の修士課程に在籍し、イスラエルによる暴力を直接体験したことのあるFairouz Salamehは、「私たちは、イスラエルのプロパガンダがどのように機能しているかを理解する必要があります。プロパガンダはメディアだけにとどまらず、(むしろ)抑圧を通じて個人レベルにも及んでいます。彼らはパレスチナ文化における女性であることの意味を知っているからこそ、女性を恐怖に陥れるのです」と語った。彼女は、イスラエル占領軍(IOF)の男性新兵が身体検査で女性を威嚇するのも、その戦略のひとつだと付け加えた。「これがシオニスト・モデルなのです」と述べた。

パレスチナ人やパレスチナ解放のために立ち上がる人々を恐怖に陥れることは、世界史上最悪のジェノサイドのひとつを実行しているシオニストの暴力戦略のひとつである。そして、この歴史を見れば、あらゆる暴力の場合と同様に、ジェンダー化された身体がコミュニティ全体を抑圧する道具となることは極めて明らかである。西岸地区のビルジート大学の博士課程に在籍するOrouba Othmanは、ウェビナーの中で、「暴力の武器としての性暴力は、植民地支配の歴史を通して存在してきました」と述べた。彼女は、パレスチナ人を家から追い出すためのイスラエルの武器としてレイプが使用された1948年のナクバがそうであったと話す。選択肢は、家を手放すか、その家の女性がレイプされるかだったのである。同じことが現在のジェノサイドでも起こっており、イスラエルによる性暴力はさまざまな形で現れ、抑圧されている人々の人間性を奪うことを目的としたオンライン・プロパガンダに組み込まれている。

メディアにとどまらず、(むしろ)抑圧を通じて個人レベルにも及んでいる。彼らはパレスチナ文化における女性であることの意味を知っているからこそ、女性を恐怖に陥れているのだ

Oroubaは、イスラエルはパレスチナ女性の身体を「アクセス可能なもの」とみなしており、まるで「彼女たちの身体を侵害する権利がある」かのようだと語った。自分たちが攻撃し、殺害し、家を爆破した直後にパレスチナ人女性の下着を手にしているイスラエル軍兵士の写真やビデオに言及し、彼女はこう付け加えた。「パレスチナ人女性のプロパガンダと非人間化は、デジタルメディアを通じて常態化されているのです」。

ジェノサイドによる影響

ジェノサイドが続くなか、この暴力のジェンダー化の影響はもはや推測の域を超えており、むしろ私たちの目の前で起こっていることだ。Oroubaは、妊娠中のパレスチナ人女性を射殺することは、2人のパレスチナ人を殺すことを意味すると述べたIOF兵士のコメントに言及している。イスラエルは過去6ヶ月間で3万人以上の男性、女性、子どもを殺害してきただけでなく、特に胎児を標的にしたいと考えており、これはパレスチナ消滅が入植者である植民地国家イスラエルにとっての必須の戦略であることを反映している。さらに、パレスチナの研究者、芸術家、活動家、作家であるShahd Abusalama博士は、イスラエルがガザのすべての病院を空爆したため、医療を受ける場所も、安全に出産できる場所もなく、重要な時期に適切な医療が受けられず、辛い思いをしている妊婦が少なくとも5万人はいると語っている。これは、生理用ナプキンのような必要な備品や 基本的な設備、あるいは単に生理用品を洗濯するための水へのアクセ スがイスラエルによって破壊されたことによる。 これは、ジェンダーの暴力であるが、ジェノサイドの他の深刻な影響と比較しても、考慮されないことが非常に多い。

もちろん、住宅地に投下された爆弾の影響は、心理的、肉体的、社会的、精神的、生理的など、生き残ったすべての人に長く続く。友人や家族を失い、手足を失い、家や 財産を失い、安全や安心の感覚を失い、持ち物を失い......これらすべてを克服するには、たとえ克服できたとしても、何世代も何世代もかかるだろう。

しかし、これがすべてではない。イスラエルのアジェンダはパレスチナ人の殺害だけではない。侵略者がジャーナリストや救援機関を攻撃することを禁じている戦争やジェノサイドに関するあらゆる国際法や条約を超越している。イスラエルの戦略は、そのジェノサイドのアジェンダと行動に沿わない者は誰でも、無条件に攻撃することである。2024年3月21日現在、少なくとも95人のジャーナリストやメディア関係者を殺害し、その暴力的な攻撃の犠牲者や生存者を支援する援助労働者を一貫して締め出している。

企業が偽情報を通じてパレスチナ人の非人間化にいかに加担しているかを探ることは重要だ

3月14日のウェビナーは、イスラエルの暴力と、それが私たちの目の前で行っているジェノサイドについて世界に向けてたゆまぬ啓蒙活動を続けているパレスチナの女性人権擁護者・活動家が中心となって開催された。彼女たちは、自分たちやその人々を一貫して失望させてきた世界に対して何の恩義もないにもかかわらず、このような労力を捧げている。結果として、彼らはオフラインでもオンラインでも暴力的な攻撃に直面し、ソーシャルメディア上では企業の検閲を受けてきた。ほとんどの発言者は、ハイテク企業によってソーシャル・メディアのアカウントをシャドー・バン[投稿の拡散を意図的に抑制する技術のこと:訳注]されたり、削除されたりしていると繰り返し報告している。こうした検閲は、他の発言者が経験した直接的な身体的暴力に比べれば、軽微なものかもしれない。発言者の一人は、IOFに逮捕され、監禁状態でその暴力にさらされ、2023年12月の[人質]交換交渉の一環として釈放された経験をもつ。別の発言者は、イスラエルの爆撃の結果、ガザで22人以上の家族を失っている。

パレスチナ人が直面する暴力は極めて複雑で、彼らの生活のあらゆる側面に影響を及ぼしている。発言者たちは、祖国パレスチナにいる愛する人たちの安全に関する絶え間ない不安を共有しているが、彼らはまた、ソーシャルメディア企業の偏見に満ちた曖昧な方針の標的にもなっている。ソーシャルメディア企業は歴史的に入植者の植民地主義者に味方し、パレスチナ人やパレスチナ解放を支持する人たちを沈黙させてきた。何十億ドルも自由に使える西側帝国主義の機械全体が彼女たちや人々に敵対して動いている中で、パレスチナの女性人権擁護者たちが世界中で他の人々の権利のために闘っている一方で、いったい誰が彼女たちの権利のために闘っているのだろうか?

メディアが加担している

デジタルの権利の擁護者であり、技術政策の専門家であるMarwa Fataftaは、ガザでインターネットが遮断され、情報の流れがストップしているため、パレスチナ人のデジタルの権利が常に侵害されていると指摘する。彼女は、イスラエルはその暴力を常態化させるために、標的を絞ったソーシャルメディア広告に数百万ドルを費やしていると言う。「人道に対する罪を正当化するための組織的な偽情報――例えば赤ん坊の首をはねたり、イスラエル人女性に対するレイプや性的暴行の疑惑など――の使用」は、いずれもイスラエルによるパレスチナ人に対する残虐行為を正当化するためのものだ。 このような偽情報が暴かれた場合、メディアによる報道ははるかに少なくなる。彼女は、テクノロジー企業は広告収入を通じてこの偽情報から利益を得ているため、パレスチナ人の非人間化と暴力、そしてイスラエルによるジェノサイドに加担していることを強調する。ソーシャルメディア企業は、イスラエルのプロパガンダを増幅する一方で、そのプラットフォーム上でのパレスチナ人や親パレスチナ人の声を繰り返し黙殺してきた。Marwaは言う。「偽情報を通じて、企業がいかにパレスチナ人の非人間化に加担しているかを追求することは重要なことなのです」。

ストーリーテラーであり、イスラエルの暴力についてコミュニティを教育するInstagram上でのコンテンツクリエイターで最も活動的なの一人、Jenan Matariは、Marwaに同意し、こう付け加える。「私たちは、米国の主要な新聞で、その土地の先住民を野蛮人呼ばわりし白人女性を攻撃する記事を目にすることがあります。これは、植民地支配者がその土地を征服するために行う非人間化戦術なのです。私たちは、こうしたことが米国で黒人に対して起こっているのを目の当たりにしているし、パレスチナでもパレスチナ人男性に対して同じことが起こっています。アラブ世界をジャングルと比較したジャーナリストのトム・フリードマンの『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事を人種差別的だと指摘して、Jenanは、西側メディアでは一貫してアラブ人やイスラム教徒の人間性を奪い、このようなやり方で同意の捏造を続けていると付け加えた。同じように同意の捏造は、ムスリム・アラブ女性を無力で絶望的な存在、つまりいつも涙を流し、自分たちや自分たちの民族が受けている暴力に激怒することもなく、周囲の男たちからの救済を待つ存在として描き、ここではしばしば西欧の人物が『救世主』の役割を担っている、といった描き方にもみられる。

イスラエルの学校で教えられているプロパガンダも同様で、彼らは占領や、イスラエルが存在する何世紀も前から存在し続けている土地の歴史について教えない

「これらすべてがつながっていることを理解することが重要です」。 Jenanによれば、西洋の植民地支配者が先住民に対して行った虐殺や暴力について、教育システムが言及するのを目にすることはないだろう、それは最初からこの暴力について若い世代に気づかせないようにするための意図的なものだからだ、という。「イスラエルの学校で教えられているプロパガンダでも同じで、彼らは占領や、イスラエルが存在する何世紀も前から存在する土地の歴史について教えないのです」。

彼女は言う。「ベトナム戦争やホロコーストのような過去の人権侵害に言及するとき、私たちはしばしば『どうして私たちはそれを許してしまったのか』と問います。私たちは今、その言い訳を使うことはできないのです。すべては私たちの目の前で起こっていることであり、私たちがそれを放置しているのです」。

Jenanは、このような(メディアの)システムは私たちをコントロールするためにあり、私たちはコのコントロールを取り戻すことが可能だと理解することが重要だと言う。「私たちには、フォロワー数に関係なく、できる方法で(自由なパレスチナの)大義のために自分の役割を果たす責任があります」。

パレスチナはフェミニストの問題である

パレスチナのフェミニストでありジェンダー研究者であるFidaa Zaaninは、ウェビナーの中で次のように主張した。 「人々は、これはイスラム恐怖症だと言います。私はそうは思いません。これはパレスチナの解放に反対する動きなのです」。彼女はまた、パレスチナの女性に対する暴力に沈黙している国際的なフェミニストたちのコミュニティに対しても声を大にして、もし国際社会の共犯関係が存在しなければ、このような事態は避けられたはずだと言う。

Fidaaは、女性や子どもだけでなく、男性も大量に殺されているパレスチナ人に対する暴力について、フェミニストたちはもっと早くから語るべきだったと言う。この暴力は2023年10月に始まったのではなく、過去75年にわたって続いているのだ。

Abusalama博士は、自分の家族が底知れぬ暴力にさらされており、一度の攻撃で22人以上の家族がイスラエルによって殺害されたこと、またガザにいる家族が毎日命の危険にさらされていることを話してくれた。彼女は言う。「女性や子どもに重点を置くことは、敵の残酷さ、悪意、非人道性、そして私たちが直面している敵のジェノサイド能力を映し出すものではありますが、私たちの素晴らしい男性たちの殺害を常態化させてはなりません」。彼女は、このような人権のヒエラルキーは1948年のイスラエル建国から始まったと指摘する。「世界人権宣言(UDHR)の最初の行には、すべての人々が尊厳を持つ権利があると書かれているが、同じ年にパレスチナの人々への虐殺とナクバが起こっていたのです」と延べ、「その直後、私たちの人間性を救い、二度とホロコーストが起こらないようにするための新しい法律や新しい世界が形作られ、"二度と繰り返さない "というスローガンが繰り返されました。しかし、私たちは75年前から、パレスチナ人が虐殺され、あらゆる意味で人間性を奪われているのを目の当たりにしてきたのです」。

最後に、Fidaa Zaaninは、私たちはこの暴力に責任を負うすべての人に説明責任を求め、暴力を止めさせなければならないことを強調した。「ジェノサイドから利益を得た企業、政治家、メディア・プラットフォームを野放しにはできません。彼らは何事もなかったかのように振る舞うことはできないのです!あなた方は責任を負うべきなのです」。

“THIS IS A ZIONIST MODEL”: ATROCITIES PROPAGANDA IS ANOTHER WEAPON IN ISRAEL’S GENOCIDE KIT AGAINST PALESTINE
https://www.genderit.org/feminist-talk/zionist-model-atrocities-propaga…