あらためて「天皇制はいらない!」の声を 「皇族確保策」の与野党協議が再開

中嶋啓明

「安定的な皇位継承」を目的に、皇族確保策を巡って衆参両院の各党各派の代表者が協議する全体会議が4月15日、衆院議長の公邸で開かれた。会議は1年ぶりだという。

会議には、両院の全13党・会派が参加。政府の有識者会議の報告書をめぐって議論した。共産党は書記局長の小池晃が「女性天皇を認めることは憲法の条項と精神に照らし合理性を持つ。女系天皇についても同じ理由から認められるべきだ」と述べたという(16日付『赤旗』)。「転向」は苛烈な弾圧によってのみ、強いられるものではないのだと、再認識させられる。

メディアでは五月雨式に前触れ記事が相次いでいた。当日はさぞや鬱陶しい報道が展開されているのだろうと、身構えながら新聞各紙を開いて驚いた。
特に『朝日新聞』。

一面トップに「皇室典範改正『今国会中に』/衆院議長、皇族数確保巡り/中道に見解要求、1カ月めど」との4段見出しが躍っていた。

『産経新聞』でさえ、本記が載っているのは2面の総合面。タイトルは「皇室典範改正『今国会中』/中道に党見解集約要請/衆院議長」で3段の大きさだ。

1年ぶりとはいえ、いくら陛下の「朝日」でもやり過ぎだろうとウンザリしながら斜め読みした。リードは言う。

衆参正副議長は終了後に会見し、森英介衆院議長が、今国会中の皇室典範改正をめざす考えを表明した。ただ各党の意見の隔たりは大きく、今後の協議が難航する可能性もある。

『朝日』は、この本記のほか、2面の総合面に「皇室の未来 意見隔たり」と題したサイド企画の「時時刻刻」を載せ、「各党の意見の隔たり」を詳述している。

『読売新聞』は1面の本記のほかに、「皇位継承策 集約へ前進/中道見解まとめ 猶予1か月」や「『状況 待ったなし』宮内庁焦り/『養子』案 課題指摘の声も」などと掲げたサイド記事を3面にデカデカと配した。

これに対し『産経』は、先の本記1本。在京“主要”紙の中で、『産経』は唯一、男系男子継承を主張するメディアだ。全体会議の議論の土台になっている有識者会議の報告書は、男系継承維持のための方策にかなりの重きを置いている。『産経』の紙面構成は、“余裕”の表れなのかもしれない。

『産経』は翌17日、社説「主張」に取り上げ、「政府報告書が示す、皇統を守ることにつながる方策への賛同が全体会議で大勢になっていることを歓迎する。報告書提出から4年3カ月になる。今国会で必ず皇室典範を改正したい」と強調。「旧宮家を排斥し、一般男性の皇族は認めよという女系論、女性宮家論は滑稽だ。到底容認できない」と言い募った。

とすれば逆に、『朝日』や『読売』など他紙の扱いは、“危機感”の表れか。

『読売』は16日の社説で「女性・女系を排除せず論じよ」と訴えた。

昨年5月、女性・女系天皇容認を訴える社としての提言を打ち出し、紙面で大展開した読売新聞だ。

「男系男子に固執するあまり、皇室が国民の思いからかけ離れてしまっては本末転倒だ」「各党は報告書の2案にとらわれてはならない」との社説の主張には、焦りさえにじんでいるように感じる。

社説は「天皇の地位は『国民の総意に基づく』と定める憲法の趣旨を忘れてはならない」と言うが、防衛・安全保障政策を中心に改憲機運の醸成を率先して先導、先導してきた読売新聞社だ。ご都合主義というほかない。

『毎日』も社説で「女性の身分保持へ結論を」と訴え、男系継承の維持策を牽制しながら、女性・女系天皇容認に道を開く方向へ議論を誘導している。

『朝日』は他紙に先駆けて、全体会議当日の15日に社説を掲げた。

「『総意』見いだす熟議を」と題し、「数の力による拙速な進行に陥らず、幅広い意見に丁寧に耳を傾ける整理を期待したい」と、上から目線の結論で締めるが、「将来の女性・女系天皇を排除するために養子案を急ごうとするのであれば本末転倒である」「今世紀の政権や有識者の間でも極めて懐疑的にみられてきた養子案への急傾斜が『国民の総意』を得られるのか」などと、数に任せて男系案をゴリ押ししかねない自民・維新連立政権への不信感、危機感が露わだ。

戦争国家体制の整備を、強権的、独裁的に前のめりに進める高市右翼反動政権だ。『朝日』『毎日』など“リベラル”気取りのメディアはもちろん、『読売』まで含めた女性・女系天皇容認派の危機感はよく分かる。

雑誌メディアなどでは、こうした政界での動きを牽制してか、愛子天皇への期待を誘導、煽動する記事が噴出している。

「愛子さまに見た『天皇の資質』/今上天皇のご学友が決意の直言」(『週刊現代』5月11日号)、「『愛子天皇を見たい』/迷わぬ決意 母とともに福島30時間」(『女性セブン』4月30日号)、「愛子さまに感じる『皇室の真髄』/被災地『福島』を初訪問」(『週刊新潮』4月16日号)等々等々……。

女性天皇キャンペーンは、これまで何度も繰り返されてきた。女性天皇歓迎気運を盛り上げようと、メディアが総出でキャンペーンを貼るたびに、男系派は崖っぷちに追い詰められていくように見え、女性・女系天皇論こそ、生き残りをかけた天皇制の再編強化策だと、警戒を強めてきた。だが、伝統主義、神権主義右翼勢力の往生際の悪さは予想を超えていた。日本社会の深層に染み付いた反動性を甘くみていたようだ。

高市政権の動向や国会内の勢力図をみると、停滞していた典範「改正」をめぐる状況は、急激に進展するかもしれない。

男系であれ、女系であれ、天皇制の生き残り策をもくろむだけの政界の動き。それをさも大ごとのように論じて世論を喚起、誘導しようと画策するメディアの報道。そんなものに左右されるわけにはいかない。

あらためて「天皇制はいらない!」の声を強めていきたい。

*初出:「今月の天皇報道」『月刊靖国・天皇制問題情報センター通信 』 no.224,2026.5.15

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