秋篠宮家バッシングがWEB署名にも広がる--悠仁の推薦入試枠での東大進学反対や秋篠宮のDNA鑑定を求める署名

鉄火場宏

娘・眞子の結婚相手に関連する問題から急速に拡大した秋篠宮家に対する週刊誌によるバッシングが、この8月からはWEB署名運動としても展開されるようになった。WEB上では、以前から秋篠宮家をターゲットとした批判や誹謗中傷を展開するサイトやYouTubeチャンネルはいくつか存在したが、そうしたものはその性格上、一方的に情報発信をするだけであった(登録者数やフォロワー等の数で関心を集めているかどうかの度合いは一定判断できるが、それは必ずしも内容に対する支持の表明というわけではない)。しかし最近始まったWEB署名サイトを利用して署名を呼びかける手法は、当然にも、その内容に賛同する人々の存在を「数」として、直接的に提示することになった。

8月上旬に、「change.org」という署名サイトにて、「赤門ネットワーク」と称する団体が、「悠仁様が東大の推薦入試を悪用し、将来の天皇として『特別扱い』で入学されることは、象徴天皇制を根底から揺るがすこととなるため反対します」という署名を開始した。「赤門ネットワーク」は、その署名呼びかけページによれば、東大を卒業した博士号をもつ数人のメンバーからなるという。

内容は、秋篠宮の子供である悠仁(次の次の天皇になる)が、彼の入学のために特別につくられた推薦枠を利用することで一般入試を回避して、東大農学部に進学することは、皇室という特権によって、他の受験生の努力をないがしろにすることになり、「国民に寄り添う」という象徴天皇としてのあるべき姿に反している(したがって反対する)、というものだ。

赤門ネットワークの主張は、この東大推薦入試進学の問題だけでなく、悠仁の中学時代の作文が「盗作」であり、これによって受賞した賞(北九州市立文学館主催の「第12回子どもノンフィクション文学賞」で佳作)により、お茶の水女子大付属中学校・高校と筑波大付属中学校・高校の提携校制度(彼らの主張は、この提携校制度自体が悠仁の進学のためにつくられたという)を利用して、進学校である筑波大付属高校に進学することができた、などの主張で、将来の天皇に相応しくない、というものだ。

この署名には、2週間程度で12,547筆の賛同が寄せられた。

しかしこの署名(運動)は、サイト運営側による、署名内容にある表現(悠仁を「ズル仁」と呼んだり、ヒトラーに準えたり等)の修正や事実確認(根拠の提示)などが要求され、赤門ネットワークもそれに対応しようと文言等の修正に応じる姿勢を示したが、結果として文言の修正が出来ず、8月21日をもって、署名は中止された(その後もしばらく署名ページは閲覧できたが、9月6日には完全に消されてしまった)。

赤門ネットワークは、その後の9月3日からは、「Voice」という別の署名サイト上で、同趣旨の署名を開始(再開)した(ここでも最初は「悠仁様が東大〜」と名指ししていたが、途中からは「ある皇族が東大〜」と変更された)。署名の内容(理由説明)はさらに詳細になり、4万字近い文字数で、悠仁と紀子に対する批判(誹謗中傷)を展開している。この署名は現在も進行中で、12月15日(東大の推薦入試の面接日)までを期限としている。10月4日現在の署名者数は6,926筆。

これとは別に、赤門ネットワークの最初の署名が中止に追い込まれたのを受けて、赤門ネットワークの署名再開以前に、トンプソン真理子(文筆家。社会活動家。アメリカ・ワシントン州在住)なる人物が、「Voice」で、「悠仁様が東大の推薦入試を悪用し、将来の天皇として『特別扱い』で入学されることは、真面目に受験勉強している学生たちのやる気をなくさせ、国民が皇室を尊敬できなくなり、最終的には象徴天皇制の存在自体を揺るがすこととなるため、強く反対します」との宮内庁宛の署名を始めた。これは9月30日に予定通り終了して、署名者数は7,151筆であった。

一方で、これらの署名に対抗する署名も始められた。

「change.org」で8月29日に「親王殿下の健やかな成長を願う 平民の会」が、「【親王殿下、お待ちしております】悠仁様の東京大学進学を応援する署名活動」を開始した。10月4日現在で、賛同者は42名。

もうひとつ、やはり「change.org」で9月2日から、「悠仁様への不当な批判に対して反論し、悠仁様の「学ぶ権利」の保護を求めます」という署名が、長月史と名のる人物により始められた。主旨は、「悠仁殿下への不当な批判に対して反論する。悠仁殿下の『学ぶ権利』の保護を支持する」の2点。こちらは10月4日現在で、賛同者は34名である。

最初の「悠仁東大推薦入学反対」署名が、短期間で1万2000筆を超える署名を集めたことで、週刊誌メディアだけではなく、TVニュースや新聞記事でもこの署名に言及された。これはこれまでのWEBサイトやYouTubeにおける秋篠宮家に対するバッシングに対するものとは、大きく違ったマスメディアの対応である。短時間でこれほど多くの意思表明がなされたことをマスメディアも無視できなかったのであろう。

さらに9月28日には赤門ネットワークが別の署名を開始した。それが「皇位継承に関する全ての議論の前に、(秋篠宮)殿下が本当に上皇様の実子であるか否かを証明するためのDNA鑑定がなされることを要望致します」である。これまでもネット等では言われていたことであるが、秋篠宮が、実は、美智子の妹とその夫(元昭和電工専務取締役の安西孝之)の子供であるという「都市伝説」に、さらに紀子の父親である川島辰彦の「陰謀」により、川島家が、「皇統を簒奪しようとしてる」との、まあ「荒唐無稽」な疑惑に基づいて、秋篠宮のDNA鑑定を求めるものである(詳細は現在も表示されている。サイト:https://voice.charity/events/2707を参照)。

こちらは12月15日まで継続するとされている。10月4日現在の署名者数は、9,264名である。

最初の署名が、運営側の意向(権力から圧力を受けた可能性は十分に考えられる)によって中止・閉鎖されたことを見ると、こうした署名サイトを利用した「主張」の展開が今後どの程度可能であるかはわからないが、一方的な主張を垂れ流すだけよりも、多くの賛同を集めることができれば、署名(運動)はかなりの影響力を持つものになる可能性もあるだろう。

そうした中で、10月2日に、「『アクセスできなくなってる』--皇室関連の“フェイクニュースサイト”が突然の一斉閉鎖で騒然」という『女性自身』のWEBニュースが流れた(https://jisin.jp/koushitsu/2377528/?rf=2#google_vignette)。

そこには、

「ネット上で皇室関連を題材にしたサイト『菊ノ紋ニュース』をはじめ、『菊のカーテン』『皇室新聞』といった複数のサイトが、9月下旬までに一斉に閉鎖されたのです」(皇室担当記者)

「最近は秋篠宮家に関する明らかなフェイクニュースを多数配信しており、一部では問題視されていました。ただ今回、一斉に閉鎖されたので何らかのトラブルが起こり、閉鎖を余儀なくされた可能性もあるのではないでしょうか」(前出・皇室担当記者)

とある。

今年の誕生日(9月11日)コメントで、紀子は、ネット上でのバッシングに対して、「私たち家族がこうした状況に直面したときには、心穏やかに過ごすことが難しく、思い悩むことがあります」と回答している。

宮内庁は9月30日、2025年度予算の概算要求にあたり、広報の充実として3400万円を計上している。主には人員の増員(3名)のために使われるとするが、金額の多さに、すでに批判の声も上がっている。

以前(2023年1月)、本サイトに書いた文章(「『虚構』の存在のイメージ戦略:宮内庁が情報発信力強化へ」2023.01.06、https://www.jca.apc.org/hanten-journal/?p=2440)を改めて想起したい。

相手を傷つけることのみを目的とした「誹謗中傷」はネットやSNSに溢れている。たとえ皇室という公に属する人間に対してであったとしてもそれは許されることではない。しかし、ほぼすべての人間が、こうした「誹謗中傷」に泣き寝入りするしかない現状で、天皇・皇族は、不十分であるとはいえ、HPでの反論ができたし、秋篠宮は、記者会見で問題化することで、国を動かして今回のように予算(税金)をつけての対策をもたらすことができるのだ。天皇・皇族はそうした特別の地位に居る。そしてそこで行われるであろう対策は、これまで以上の発信情報の操作であり、いずれは、批判言論の抑圧につながるものになることは目に見えている。

天皇は、「皇孫(天照大神の子孫)」「万世一系」という「虚構」の上に築かれている。秋篠宮は、「あることないこと」で「誹謗中傷」されていることに怒りを表しているが、彼を含む天皇(家)の存在自体が、「あることないこと」の結晶なのだ。天皇(家)にとっては、自分たちに都合の良い「あることないこと」と不都合で不愉快な「あることないこと」があるにすぎない。

ネット社会で、天皇制にとって都合のいい「あることないこと」を選別し発信する、その強化のための予算が組まれたということである。

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