「原発に死を!」 調査意見報道シリーズ

11. 朝日の奇怪記事「中性子は屋内で数分の一」総集編

1999.11.10.mail再録

 以下、わがmail「驚き桃の木:朝日11.4.夕刊報道の奇怪記事」に始まる追跡調査の経過と結果を、mailの一部通信情報省略、主要部分の再録によって、中間報告とし、総合紹介します。

 順序は逆になりますが、最初に、一応の締めとなった自称「飛び切りスクープ」を、少し増補して再録します。


中性子報道疑惑追及:データ速報1.

Sent: 1999.11.10 1:59 PM

 本日、[1999.11.10]、またもや、朝日が「建物の中」「数分の1」報道。

 もしやと思って、原子力委員会を直撃したところ、何と、手許に現地関係者による事故以後の実測報告書あり?!。

 住所氏名を告げて送付を依頼[11.18現在、送付なし]すると同時に、概略を聞きました。中性子線を発射して実測したところ、

板の場合、
5センチの厚さで、80-90%に減る。
11センチで60-70%に減る。

コンクリの場合、
10センチで60-80%に減る。
30センチで20-40%に減る。

[中性子の吸収では一番効果的な水素が含まれる]水分を聞くと、記されていない。まだ、いい加減な実測ですが、朝日報道とは、相当違いますので、[直接、]朝日の科学部に[電話して、]取材し直すよう要請しました。

 さて、以下が、ここに至るインターネット追跡調査の経過です。


驚き桃の木:朝日11.4.夕刊報道の奇怪記事

Sent: 1999.11.8 4:09 PM

 11.4.以来、私が「どこまで続く、ぬかるみぞ」と想いながらも、何人かの協力者を頼りに続けてきた「中性子の建物による遮蔽?!」問題で、次のようなmailを頂きました。唖然、愕然、私自身も、おのが甘さを自己批判せざるを得ません。

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Re: 臨界&中性子&被曝、大手メディアの遮蔽状況

Received: 1999.11.8 2:40 PM

 斉藤吉広です。

 見落とされたのでしょうが、『朝日新聞』11/4夕刊の一面トップでは、「JCO事故被ばく/敷地境界、年限度の100倍/科技庁推定:避難域外も超過」という見出しの記事の中で、

「ただ、屋内にいた場合は、こうした値の数分の一になるので、実際の被ばく線量はすぐには特定できないとしている。」

 文自体には主語はありませんが、普通に読めば、科技庁がそう言ってるという風にしか読めない書き方です。

 5日にちょうど授業で触れる機会があったので、「たぶん、屋内待避措置を合理化するための嘘です」とこの記事を紹介しておきました。

 以上。参考までに。

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 早速、朝日新聞の広報に電話をして、報道の事実を確かめました。

 広報の意見としては、「冒頭が、科学技術庁によれば、となっているから、科学技術庁関係者の言であろう」とのことでした。また、別に科学技術庁から訂正申し入れもないというのです。

 科学技術庁の広報に確かめると、わが家に送付を約束してくれて、多分、現在は郵送中の報告書には、「数分の一」という文言はないが、4日の記者会見後には、「ぶら下がり取材光景」があったので、原子力安全委員会の「先生方」から、そういう発言があったのかもしれないとの返事でした。

 これが事実とすれば、普段からの大手メディアの報道姿勢にも、基本的な欠陥があるのです。誰がしゃべったのか、誰が取材したのか、誰が書いたにか、まるで特定できないような無責任記事を載せて、偉そうに、いや、鬼畜米英の植民地風に「ジャーナリスト」だなどとジャラジャラ自称しているから、こういう非科学的な記事を平気で発表しては、気が付いても訂正もせずに居直りっぱなしになるのです。

 私の推測としては、翌日の5日朝刊に、「減衰」も「遮蔽」もなかったのは、前日の夕刊記事が社内外で問題になったので、しばらくは頭をすくめて、「人の噂も75日」、とぼけ通す作戦に出た可能性大です。しかし、困りましたね。今日は月曜日で市立図書館は休日です。協力者には、11.4.夕刊の記事点検を頼むとしても、やはり、明日は図書館で、他紙も見て、捜査範囲を広げなくてはならなくなりました。

 mailを利用させていただいた皆様には、低いところからで恐縮ですが、まとめて御礼申し上げます。

 取り急ぎ以上。


臨界事故分析:データまちまちの恐怖

Sent: 1999.11.9 10:35 AM

 1999.11.8.日経夕刊によると、原子力安全委員会が「健康管理検討委員会」を設置し、事故以後の住民の「行動と居場所について屋外、屋内の別を聞くほか、屋内の場合は建物が鉄筋か木造か、JCO東海事務所側の窓が開いていたかなどについて調べる」そうです。非常に政治的な腐臭が漂います。

 試みに平凡社『世界大百科事典』の「中性子」を見ると、貫通力が強いとしか記されていません。これが特徴なのに、1999.11.4.朝日夕刊(実物入手)には、「屋内にいた場合は」「数分の一」となっています。1999.11.4.7:00.NHK報道は「一部遮蔽」の主旨のようです。ところが、昨晩の『クローズアップ現代』では、あまり「遮蔽」を強調しませんでした。

 この問題は、「屋内退避」の指示の誤りの明確化と、将来的には「原発の危険性」の認識のために、非常に重要と考えますので、私は、関係各所に、正確なデータの要求を開始しました。どれだけの厚さの木材や鉄筋コンクリが、どれだけ「中性子を遮蔽」するのか、正確なデータを発表しないまま、適当にごまかされたり、またまたデタラメな報道が罷り通るのを、許してはならないと、考えます。

 私は、科学技術庁広報はもとより、日経の宅配講読者として、日経の臨界担当者に直接、データ報道を申し入れました。朝日にも、「数分の一」とした根拠を求めます。皆様も、いかがでしょうか。

 以上。


中性子「屋内で数分の1」に朝日が回答?

Sent: 1999.11.9 7:49 PM

 1999.11.4.科技庁が報告した東海村臨界事故の「放射能漏れ」再現シミュレーションの報道に関して、朝日新聞に質問し、回答を得ましたので、次に並べて紹介します。


朝日新聞社 御中

 拝啓、貴社発行『朝日新聞』1999.11.4.夕刊トップ記事では、「科技庁によると、……」の文脈の中で、「被ばく線量」に関して、「屋内にいた場合は、こうした値の数分の一になる」となっていますが、当の科技庁に問い合わせたところ、そのような数字は発表していないし、もともと、民家の「屋内」に関するデータは、持ち合わせていないとの回答でした。

 つきましては、上記「数分の一」の根拠、出典を、明示して頂きたく、広報の担当者のご指示に従い、ファックスにて、ご質問申し上げる次第です。

 ことは急を要すると愚考しており、『朝日新聞』の発行部数とは雲泥の差ではありますが、当方の情報発信にも、真剣な期待を寄せている読者が約千名はおりますので、何卒、可及的速やかに、ご調査の上、ご回答頂きたく、伏して、お願い致します。以上。

1999.11.9.Web週刊誌『憎まれ愚痴』編集長・木村愛二


'99-11-09 18:06コウホウシッ

[木村愛二注:この最後のッは、一年ほど前に別件で回答を得た時に気付き、ご注意申し上げたのですが、直さなかったようです]

P.1

週刊誌「憎まれ愚痴」編集長・木村愛二様

1999年11月9日 朝日新聞社広報室

 ご質問に以下のようにお答えします。

 屋内にいた場合の中性子線の影響について、放射線の専門家の間では、一般的な数字として「木造なら半分程度」「コンクリートなら10分の1」程度としています。過去の核実験の際のデータやコンクリートの遮蔽効果を調べる実験などに基づく値とされます。今回の事故でも被ばく線の推定値が30一100ミリシーベルトとされる人たちの被ばく線量が実測値では6.4~15ミリシーベルトであるなど、建物等の遮蔽効果がみてとれます。ただし、個々の建物の遮蔽効果については形状、材質などによって違ってきます。

 以上、よろしくお願いします。


 以上ですが、再度、電話で、「放射能の専門家とは誰か、出典の資料名は……」と、何度聞いても、教えてくれません。なぜ、教えてくれないのでしょうか。朝日新聞は、小学生が論文を書くために質問したりすると、とてもとても親切に教えてくれるとの噂ですが、この噂は間違いなのでしょうか。

 私が、原子力資料情報室に聞いたところでは、中性子を有効に吸収するのは水素で、原子力関係施設では、水が大量に使われている。普通の民家の壁では、ほとんど吸収されないはずだが、そういうデータはないとのことでした。科学技術庁も、かなり調べて、つまり、私のNTTへの支払いが心配になるほど待たされて、やはり、建物の中性子吸収に関するデータはないと答えました。

 もしも、朝日がいう「過去の核実験の際のデータやコンクリートの遮蔽効果を調べる実験などに基づく値」を、ご存じの方が、いらっしゃったら、ぜひ教えて下さい。

 以上。


中性子線問題:防衛庁経由・放影研HP発見!

Sent: 1999.11.10 11:30 AM

 多分、麻薬犬と細胞融合の疑いのある木村愛二です。

 本日1999.11.10.日経にて、成田空港で麻薬犬が尻尾を立て、取り引き禁止の「亀」発見!警察官が「驚き顔」とのニュースに接しました。

 さて、これも本日、amlMLにて、後に紹介する青木さんのmailを拝見。「自衛隊」の単語に、わが尻尾が立って、防衛庁の研究所に辿り着き、朝日報道の「中性子が屋内で半分」を伝えたところ、言下に「朝日はいい加減ですからね」、そして、「中性子は基本的に防ぎようがないというのが常識」、下記の「放射能影響研究所」HPから、さらにリンクあり、と教えてもらいました。一応、覗いてみたのですが、それらしいページはないのです。それでも、さらに調べれば、材料があるかもしれませんので、皆様にも、お知らせします。

http://www.rerf.or.jp/nihongo/experhp/rerfhomj.htm

 以下、amlMLの方には重複になりますが、青木さんのmailを、一部通信情報以外、全文再録します。[ここでは省略あり]

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Re: 中性子「屋内で数分の1」に朝日が回答?

Received: 1999.11.10 9:22 AM

From: Aoki Masahiko,

 自衛隊でさえ中性子線に対する防御機材がないから勘弁してと、遠巻きにしたというくらい「考慮外」の中性子線攻撃に対しては文献も少ないのかもしれません。

On Tue, 9 Nov 99 19:49:45 +0900>>1999年11月9日>>朝日新聞社広報室

「ご質問に以下のようにお答えします。

 屋内にいた場合の中性子線の影響について、放射線の専門家の間では、一般的な数字として『木造なら半分程度』『コンクリートなら10分の1』程度としています。」

 厚さを言わないと意味ないでしょうね。

「過去の核実験の際のデータやコンクリートの遮蔽効果を調べる実験などに基づく値とされます。」

 今回の事故でも被ばく線の推定値が30一100ミリシーベルトとされる人たちの被ばく線量が実測値では6.4~15ミリシーベルトであるなど、建物等の遮蔽効果がみてとれます。

 ただし、個々の建物の遮蔽効果については形状、材質などによって違ってきます。

 以下は手元にある『核戦争と放射線』(ジョセフ・ロートブラット著、東京大学出版会1982年)からの引用です。

 一方,中性子線とガンマ線の防護は,はるかに難しい.というのは,中性子線とガンマ線には有限な飛程がないからである.理論的には,その強度はどこまでいってもゼロになることはないが,実際上無視しうる程度に減弱する.減弱の程度は,線源と身体の間にある物質の厚さに左右される.物質を透過する放射線の強度は,近似的に,厚さが増すに従って指数関数的に減弱する.したがって,物質の種類を指定すれば,放射線の強度をある割合たとえばもともとの強さの1/10に減弱させる物質の厚さをきめることができる.

 たとえば,11cm厚の鉄がガンマ線の強度を1/10に減弱させるので>あれば,22cm厚の鉄は1/100に,また33cmの鉄は1/1000に減弱させるであろう.

 表24には,3種類の放射線についていくつかの物質の1/10価層が示されている。

[中略]この表では、例えば18センチ厚の木材があれば中性子線の強さは10分の1になるということです。

[中略]軽量枠組構造の木造家屋では,初期放射線に対する防護効果はごくわずかなものにすぎない。

[中略]上表の数字がどのようにして得られたのかについての記述はありません(実験値なのでしょう)。著者のオリジナルな研究なのか、他の文献からの引用かも分かりません。著者のロートブラット氏は執筆当時ロンドン大学教授。マンハッタン計画の参加者。後パグウオッシュ運動に参加。

 この本の執筆は今から20年近くも前であることに注意してください。最新のデータをお持ちのかたは訂正してください。

************青木雅彦 btree@pop06.odn.ne.jp**************

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 以上で再録終わり。