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恐怖のシミュレーション:2000年問題と原発

西暦2000年の最重要課題は原発

それも年明け即座に、日本で重大な問題が起こっている。

 コンピューター2000年問題が論議されているが、それが一番重大な影響をもつのは、原発なのだ。

 原発にはたくさんのコンピューターやマイコンチップが使われている。それが西暦2000年1月1日に誤作動すれば、どのような惨事が起こるかは、想像に難くない。

 現在世界にある原発は433基、そのうち52基が日本国内にある。しかも、日本の原発は最新式のものであるため、手動で停止可能な部分がきわめて少ないのだ。

 最悪のシナリオを防ぐには、今年と来年の変わり目に、世界中の原発の操業を一時停止し、冷却装置が止まらないようにバックアップ電源を確保することが必要である。

 核施設を持ち、初めに2000年を迎える国は日本だ。アメリカは14時間、ヨーロッパは8時間の時差があり、日本の様子を見てからアクションが取れる。

 9月にベルリンでG8諸国による2000年問題サミットが開催される。そこでエネルギー部門を担当するのが日本だ。それに間に合うよう、市民その他の力を合わせて国際的世論を作っていく運動として、WASH(世界原子力安全休暇)(http://www.kisnet.or.jp/wash/)が立ち上げられた。WASHは、米国の核と環境の問題の専門家メアリ・オールソンさんの提言に従い、今年と来年の変わり目に、原発の操業を一時停止すること、そして、冷却装置が止まらないようにバックアップ電源を確保すること、そして全ての核弾頭を外すことを、全世界に求めていく。

 以下は、7月3日にY2K市民フォーラム(Y2K市民ネットワーク主催)で行われたメアリー・オールソンさんの講演の記録である。

■メアリー・オールソンさんについて

 原子力情報資料サービス(NIRS ワシントンDC)コンピュータ2000年問題プロジェクトコーディネーターとして放射性廃棄物と健康被害の問題を専門としているオールソンさんは、元来生物学と科学史を専攻した学者であり、生物医学研究者としてイエール大学医学部に勤務中、ラボで被曝し、その職を断念したという経歴をもっている。

 現在、NIRS勤務のかたわら、アメリカ先住民とともに、先住民居住地への放射性物質廃棄に反対する運動に取り組み、また日本の核廃棄物をオーストラリア原住民居住区に投棄するPangeaプロジェクトへの反対運動にも取り組んでいる。]

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 コンピューター2000年(Y2K)問題には様々あり、その重要度は千差万別です。私たちは優先順位を付けなければなりません。

 環境・資源問題に取り組んでいる米国の民間科学者団体「憂慮する科学者連盟(Union of Concerned Scientists=UCS)」は、原発とY2Kの問題に非常な危機感を持っています。

 Y2K問題で原発事故が起きたらどうなるでしょう?

 メリーランド州にある原発一基が事故を起こしたことを想定した米国エネルギー省の試算によれば、

 事故から1年以内の死亡者は5,600人、

 放射能によるガンの発病者は23,000人、

 損害額は90億ドル(1982年のドル為替レートに換算)だと言います。

 全世界には433基の原発があります。103基が米国、52基が日本にあります。

 Y2Kは同日内に全ての原発に影響を及ぼす可能性があるのです。このような事態は歴史上初めてのことです。私は全ての原発に事故が起きると言うのではありません(勿論、一つの事故も起きないことにこした事はありません)。Y2Kによって問題が引き起こされる可能性はどの原発にもあるというのです。

 UCSはさらに原発の稼動停止をしても、Y2K問題においては安全であるとは言えないのではないかという問題も提起しています。

 米エネルギー省の別の報告書を引用して、UCSは、ワシントンDCに近いメリーランド州で操業停止から3年経った原発に事故が発生した場合にどうなるかを報告しています。それによれば、

 事故発生1年以内に29人の死亡者、

 35,000人以上のガンによる死亡者、

 1860億ドルの損害 (1997)が発生するというのです。

 Y2K問題に関しては、稼働中か否かをとわず、原発の問題が最優先事項です。

 原発というものは、そもそも危険性の高いものですが、Y2K問題はすべての原子炉に対し、同日に降りかかってくるのです。

 事故が起きた場合の影響は世界的規模です。これはチェルノブイリの経験からわかることです。

 原発にはたくさんのコンピューターと埋め込みチップが使われています。

 ニューハンプシャー州にあるシーブルック原発では1000個所以上も問題が発見されました。米国の原発はコンピューターシステムで稼動していますが、同時に手動システムも保持されています。それでも問題はあるのです。

 日本における原発問題はもっと深刻です。最新の技術が多く使われていて、手動システムが既にないからです。世界で原発に手動バックアップシステムがないのは日本だけです。従ってY2Kで2000年1月1日に最大の危険にさらされるのは、日本でしょう。

 Y2K問題を理解するには、原発のしくみを知る必要があるので、少し説明します。

 原子炉とは、原子を分裂させて熱を作る容器です。ここで放出された熱を使って水を沸騰させ、タービンを回す仕掛けになっています。我々が最終的に必要としているのはこの熱なのですが、ウラン原子が分裂する時、他の物質も生成されます。

 中性子ができ、それで原子炉を稼動させ続けます。さらにこの中性子を定常状態に保つ為に、中性子の作られる数及び活動に制限を加えなければいけません。さもなければ、原子炉は原子爆弾のようになってしまいます。原子炉とは、自動車のギアがニュートラルに入っている状態のように、原爆にギアを付けたような装置なのです。

 さらには、熱と中性子の他に、今まで存在していなかった核分裂の副産物もできます。これは、ウラン燃料に比べて、100万倍も放射性が強いものです。原子炉とは放射性物質製造機でもあるわけです。

 Y2K問題に対処するには、はっきりとした安全基準と対策がなければなりません。

 米国では、安全基準も検査指針もありません。第三者の機関による検証もありません。

 ところが米国原子力規制委員会では、規制を設けるどころか、世紀の変わり目には通常のライセンスがなくても稼動することができるという例外条項を作ろうとさえしています。本来なすべきことは、まさにこの逆です。Y2Kに向けて、規制管理は緩めるのではなくて、より厳しくしなければなりません。

 私は米国に帰国すると、原子力の見張りをするという重要な仕事があります。

 コンピューターのみで稼動されている原子炉が存在する日本の皆さんにも大きな仕事があります。

 原子炉のY2K問題には、3つのタイプがあります。

 1つ目は、コンピューター又はデジタル・コンポーネントの誤作動による直接的な被害です。米国では手動システムがあるので、恐らく大丈夫ですが、日本ではそうは言えません。核反応炉を発電機や送電線を含む発電システム全体から切り離すためのシステムには手動制御装置がありますが、核反応炉の定常状態を保つためのシステムはデジタルしかありませんから、それが故障すれば、直接に原子炉事故が起こります。

 さらに日本の特殊な問題があります。今年11月プルトニウムを使う原発が操業を開始します。この原発の操業は延期しなければなりません。Y2K問題の実態が不明瞭であるこの時期に、新規の原発プログラムを稼動させるのは、無思慮なことです。プルトニウムの原子炉内での反応はウランと異なりますから、原発事業者は新しく別の問題を抱えることになります。米国エネルギー省は最近、プルトニウム原発の方が、事故が起きた場合、ウラン原発よりガン発症率が高いと発表しました。プルトニウム原発は、Y2Kによる事故の可能性も、その結果起こる被害も増大させるのです。

 第2の問題は、Y2Kによるコンピューターの誤作動が他の原因と結びついた場合です。例えば、コンピューターが間違ったデータを出し、原子炉運転者がそのデータにもとづいて措置をとり、この不適切な処置が原発事故を引き起こすという場合です。

 例えば、米国では安全防御自動ドアなどのセキュリティ・システムにコンピュータが使われています。コンピューターの誤作動により、ドアがロックされれば、発電所の作業員たちはドアから出られなくなります。これはバージニア州のサリー原発で実際に起きた事故です。火災用のスプリンクラーが安全防御自動ドアのショートを起こし、ロックされてしまったのです。この事故で作業員4人が出られなくなり、水蒸気爆発により死亡しました。

 来年の正月に、この種の事故が起きる可能性があるのです。

 このような事態を防ぐには、ドアがロックされないように、硬くて重いものを置くのも手だと思います。Y2K問題は、私たちに創造的思考を要求するものです。

 もう一つ問題が起こりそうなのは、モニター用のコンピューターです。誤作動で間違ったデータが出てくるかもしれません。

 この間違ったデータを元に作業員が何らかの操作を行なえば、20年前にスリーマイル島で実際起きたような事故につながる可能性があります。

 スリーマイル原発事故のときは、その夜、原子炉に小さな事故があり、作業員がコンピューターのデータが間違っていたのに、メーターのデータの点検をしなかったため、原子炉の水漏れに気づきませんでした。そこで緊急炉心冷却装置のバックアップ機能を停止させてしまいました。その結果、原子炉の燃料が露出し、2時間以内に炉心の3分の1がメルトダウンを起こしたのです。

 ですから、原子炉は熱を出すということを認識するのが大事です。燃料に冷却水が届かなくなれば、2、3時間で原子炉はメルトダウンを起こすからです。

 Y2K問題を考えるに当たり、この事は非常に重要な教訓です。

 間違ったデータと作業員の誤った対処が、大事故につながるのです。

 Y2K問題を軽く見てはなりません。

 さらに私がY2K問題に関して一番懸念しているのは、原子炉には外部電力が必要であるという事実をほとんどの人が知らないことです。原発は自家発電しないのです。原子炉を冷却するには、ポンプが24時間稼動していなければならず、これには外部から電力を取る必要があるのです。

 何かの理由で停電が起きた場合に備え、ディーゼル発電機がバックアップ電力として設置されていますが、ディーゼル発電機は信頼性が低いのです(90%しかありません)。

 これは、ある日のうちに、全米200のディーゼル発電機のうち、20機が問題を起こす可能性があるということです。

 去年一年間だけでも、外部電力とディーゼル電力の供給が両方ストップしてしまうという事態が、2機の原発で発生しました。このような事態をステーションブラックアウト(発電所の停電)と言います。

 もしステーションブラックアウトが起きたら、2時間以内に原子炉はメルトダウンを起こします。

 一つは米国、一つはスコットランドにあったこれらの原発は、ありがたいことに2基ともほどなく電源を回復することができました。ただし、スコットランドの方はかなり深刻で、あと20分でメルトダウンという事態にまでなり、救急車や消防車が出動、バックアップ電源が回復するまで警告ベルが鳴り続けたのです。大惨事が起こらなかったのは、ほんとうに幸運でした。このような事例を見てもわかるとおり、来年1月1日に向けて、もっと我々は手段を講じるべきです。

 というのも、Y2Kで最も論議されていることのひとつは、送電網に損傷が生じ、停電が起こる可能性だからです。

 そこで私たちは、すべての原子力発電所にディーゼル発電機をさらにバックアップする電力を設置することを要求しています。

 これは理想的には水力、地熱、風力などの再生可能エネルギーを使うべきです。燃料を使わないで済むからです。冷却装置用のポンプを動かすだけのものですから、たいした電力使用量ではありません。Y2Kで長期の停電が起こるという最悪のシナリオを想定すれば、原子炉には5年間冷却を続けられるバックアップ電力が必要になります。しかし、現在、米国も日本もディーゼル発電の持続日数はたった一週間です。

 原子力産業界の人々は、再生可能エネルギーというものを好まないので、私たちは再生可能エネルギーの代替案として、より供給が安定していて効率的な天然ガス・タービンや、燃料電池も提案しています。

 このような事は、私たちの力でなんとかできることです。不可能なことではありませんし、たった1基の原発の事故に比べてさえ、ずっと安く済むのです。

 ディーゼル発電を使うのは、停電時間は短いという想定に立っているからです。

 しかし、Y2Kでは、停電がどのくらい長引くか分かりません。ディーゼル発電で60日分は少なくとも必要です。

 ホワイトハウスは、停電期間3週間という想定で対処しようとしています。

 原発にはまた、使用済み使用済み燃料プールもあります。米国では使用済み燃料もすべて原子炉内にプールされるのです。日本はそうではありませんが。

 この使用済み燃料プールにも大変な量の熱があるのです。米国では、停電が長くて一日しか続かないという想定に立っているので、この使用済み燃料プールのための冷却装置はディーゼル発電のバックアップがありません。

 でも、この使用済み燃料プール自体も沸騰することがあります。特に原子炉に新たに燃料が足されて、炉心からプールに大量の熱が移ってきたときには。この状態になると、プールは24時間以内に沸騰してしまいます。このプールというのはふたのないやかんのようなもので、冷却水はすぐに蒸発してしまいます。使用済み燃料プールは原子炉と異なり、格納容器に入っていません。もし、使用済み燃料プールでメルトダウンが起きれば、原子炉がメルトダウンした時に比べ、長期で50%、ガン発症率が増大します。

 では、まとめに入りましょう。

 私たちにはY2Kに対処する安全基準が必要です。

 この安全基準は高いレベルのものでなくてはなりません。

 安直な方法はありません。

 すべての原発が検査されるようにしなければなりません。

 また、原子炉を止めても問題を先延ばしするだけで、解決にはならないという事実を知っていなければなりません。

 そうは言っても、原子炉をY2Kに備えて停止させれば、この2000年1月1日という大変不安な日における作業員の仕事がより単純になりますし、安全の度合いは著しく高くなります。

 原発の調査や検査の結果については、第三者による検証が必要です。

 年末の週末には、原子炉を停止させなければなりません。

 繰り返しますが、これは、問題を解決するのではありませんが、単純化することができます。原子炉作業員は、冷却装置の作業に集中することができ、時間的な余裕もできるわけです。

 原子炉作業員の訓練も必要です。

 そしてバックアップ電力が必要です。原発というのは一度稼動されれば、その熱は5年間なくならないからです。

 原子炉を永久に停止させたとしても、5年間も冷却し続けなければなりません。(初めの1年間の熱の低下は急速ではありますが。)

 ステーションブラックアウトが起こった場合、日本の原子炉は12時間しかメルトダウンまでの時間がありません。バックアップ電力の追加がどうしても必要です。

 事故が発生すれば、900億から2000億ドルがかかると見積もられています。また、多くの人命が失われ、永久的な環境破壊が起こります。

 原発関連会社が新聞広告を出しているのを見ますが、その予算をバックアップシステムの設置に充てて欲しいと私は思います。

 この状況は私たちが生み出したものです。私たちの優れた知性が原発を作り、コンピューターを作りました。Y2Kとは私たちの知性が生み出した問題と言えます。ですから私たちの知性で解決されうる問題でもあるのです。ただ、現在この問題に対処するのに必要なのは知性だけではありません。これは私たちの心の問題でもあります。このような事態が生じたのは、私たちが、心を置き去りにして行動してきたからなのです。

 地球が私たちの母であるというのは、古くからの格言です。1970年に最初にこの故郷を宇宙空間から見たとき、私たちは地球が私たちの子どもでもあると思うようになりました。私たちは高度な知性と、さらには愛情深い心を持って、私たちの家である地球を、そしてお互いを守らなければなりません。1999年に、これ以上に真剣に取り組まねばならない問題はありません。

 翻訳:竹野内真理/萩谷 良

 以上。

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