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「ミサイル避難CM」に4億円近い税金 「恐怖心すりこむ」安倍政権の思惑

2017/07/18(火) 17:10

地面に伏せるのがミサイルから身を守る対策なのか──「弾道ミサイル」落下時に取るべき行動を伝える広告を日本政府が6月23日から全国一斉にテレビや新聞などで流している。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射実験を想定していることは明らかだ。4億円近い税金をつぎ込むことに批判があがっている。

たしかに北朝鮮は昨年以降、35発のミサイルを発射した。しかし、Jアラート(全国瞬時警報システム)を通じて警報が出されたのは、昨年2月、沖縄県のはるか上空を通過したときだけ。つまり、それ以外は、政府も飛来の可能性はないと判断していることになる。

広告業界に詳しい本間龍さんはこう批判する。「内閣府の政府広報予算は年間約80億円なので、今回の4億円という支出は特別に過大な金額ではありません。政府にとってはマスコミへのいつものアメ(懐柔策)のつもりでしょうが。地方局の社内から『不安をあおる広告をなぜやるのか』と危惧する声があがっています。『本当にミサイルが来るのか』という問い合わせが視聴者からあったようです。しかも広告を流し始めたのが都議選の告示日(6月23日)ですから、なぜこのタイミングなのかという疑問も出ています」。

内閣府政府広報室によると、テレビ広告(約1億3000万円)は6月23日~7月6日まで全国43局で放映した。ミサイルが日本に落下する可能性がある場合、「Jアラート」を通じて、屋外スピーカーなどから国民保護サイレンと緊急情報が流れることを紹介し、

〈屋外にいる場合、頑丈な建物や地下に避難してください〉〈近くに建物がない場合、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守ってください〉〈屋内にいる場合、窓から離れるか、窓のない部屋に移動してください〉

などと呼びかけている。

広告どおりの行動を実際に行なう避難訓練すらすでに実施され、今後、全国でも予定されている。

新聞広告(約1億3000万円)は6月23日~25日の期間に全国70紙に掲載。インターネット広告(Yahoo!JAPANブランドパネル、約8000万円)は6月26日~7月9日に掲載される。

【広告批判ないマスコミ】

そもそも北朝鮮がミサイルを使って日本に先制攻撃することがありうるのか。ルポライターの鎌田慧さんはこう話す。

「北朝鮮の一連の行動を支持はしませんが、北朝鮮の最優先課題はいまの国家体制の維持です。米国本土を攻撃する能力を北朝鮮は持っていませんが、かりに米国を攻撃した場合、その何十倍もの報復を受け、国家指導者が殺害される。日本への先制攻撃も同様にありえません。ミサイル攻撃をいうなら、原発をどうするのか」

では、なぜこんな“むだガネ”を使うのだろうか。

「人間は残念ながら恐怖に弱い。仮想敵をつかって国民に恐怖心をすりこみ、支配を強化し、軍事予算増大につなげる手法は、旧ソ連の脅威をあおった時代から連綿とつづけられ、いまでは国防費は5兆円を突破しました。中国も仮想敵ですが、貿易関係が深まり、また米中が接近するなかで脅威をあおりにくい。このため、北朝鮮の脅威を強調することで、安倍晋三政権への求心力を高め、“憲法改悪”への地ならしを進めています。しかし、北朝鮮の脅威を取り除くには、地道でも平和外交を進めるしかありません。国家崩壊を目指せば、国内外にどれほど多くの犠牲がでるかは明らかなのですから。韓国はすでに舵をきりました」(鎌田慧さん)

気になるのは、この広告を正面から批判する新聞記事が『しんぶん赤旗』(6月23日)ぐらいしかないことだ。『朝日新聞』(同日朝刊)は〈非常事態時の行動をテレビCMで広報するのは異例だ〉と書く程度。『読売新聞』は、6月21日と24日の2回にわたって、政府の主張をなぞるような記事を掲載した。広告(カネ)をもらっているから批判しづらいというのであれば、こんな情けないことはないだろう。

(伊田浩之・編集部、7月7日号)

自民党、都議選で惨敗 下村都連会長は自身の加計疑惑否定できず

2017/07/18(火) 13:01

7月2日、厳しい表情で開票状況を見る下村都連会長(3日、辞任の意向を表明)。(撮影/横田一)

東京都議会選挙(7月2日投開票)で自民党が歴史的敗北をする一方、「都民ファーストの会」が圧勝。

自民党本部で2日20時から開票を見届けていた都連会長の下村博文・幹事長代行(元文部科学大臣)は、敗因について「国政の問題が都議選に影響した」と述べたが、自らの加計問題の『週刊文春』(7月6日号)の記事については「加計学園から献金はもらっていない。選挙妨害だ。法的な手段を考えている」と反論した。

同誌記事で注目されたのが、板橋区(定数5)。下村氏の元秘書が3人立候補、自民公認の河野雄紀氏と松田康将氏が共に落選、都民ファーストから立候補した平慶翔氏が当選したが、下村氏は『文春』発売当日の6月29日の会見で平氏が同誌にリークした可能性を指摘。平氏が秘書時代に使い込みをした上にパソコンを持ち出したことを認めた署名入りの上申書までを配布したのだ。

しかし、平氏は「上申書は偽造文書」「リークもしていない」と反論(同誌も平氏からのリークを否定)、両者の間で法廷闘争に発展するのは必至の情勢だ。

「もし偽造文書なら『下村氏は選挙中にガセ情報を流して平氏を落選させようとした』という公職選挙法違反の疑いが出てくるが、本物ならば、平氏がウソをついたことになり、同じ罪に問われかねない。自民党と都民ファーストの全面対決となるのは確実」(永田町ウォッチャー)

実際、翌30日の会見でも小池百合子都知事(都民ファースト代表。当時。)は、対決姿勢を鮮明にした。「『文春』の報道、下村氏の元秘書が(都民ファーストの)候補になっていますが、下村氏は会見で『(『文春』に)リークをした』と言っているが、実際はどうなのか」と聞くと、小池知事はこう答えた。

「私は存じませんし、下村さんもしっかりと説明されるのだろうと思います。(加計問題の本質にかかわることではないかとの問いに)加計問題も、やはりお友達でずっとやってこられたことの問題で、『権力が集中することによって歪みが出てくる』という一つの表れだと思います」

“内部告発者”の信頼を貶めることで「利益供与を受けた下村氏が、文科大臣時代に加計学園ありきの道筋を作ったのではないか」という疑惑解明の本筋から目を逸らす手法にも見え、前川喜平・前文科事務次官の告発のときと二重写しにもなる。

【問われる説明責任】

愛媛県今治市の情報公開文書(出張記録)によると、今治市企画課長と課長補佐は2015年4月2日、「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のために内閣府などに足を運んだが、直前になって官邸訪問が決定、15時から16時半まで打ち合わせをした。一方、同じ時間帯の15時35分から安倍首相は下村文科大臣(当時)と面談しているのだ(首相動静より)。「首相と文科大臣の面談に今治市職員が同席、加計学園ありきに向けた相談をしたのではないか」と疑われても仕方がない根拠があるのだ。

野党の追及に安倍政権は「確認はできない」と答えるだけで、文書を出していない。そこで、下村氏の会見で「内閣府から全然資料が出ていない。第三者による検証、閉会中審査や臨時国会を開いて説明責任を果たす考えはあるのか。“(今回の『文春』記事で)疑惑は深まった”と国民は受け取ると思うが」と聞くと、下村氏は「(『文春』が)疑惑が深まるような書き方をされているので、きちんと説明をさせていただいた」と答えた。

下村氏は「『文春』の記事は選挙妨害」と強調しているが、加計学園側が関連企業や関係職員らにパーティ券購入を呼び掛けたことを否定する根拠を示していない。「加計グループからの献金に応える形で、加計ありきになるよう働きかけをした」という疑惑は拭い去られたとは言い難いのだ。

今治市の7000ページ以上の公開文書に対して、政府の情報公開は皆無に等しいが、こうした隠蔽体質(説明責任不足)も都議選惨敗の一因になったのは確実。安倍政権の今後の対応が注目される。

(横田一・ジャーナリスト、7月7日号)

清い水と汚れた水(小室等)

2017/07/17(月) 15:20

「僕はテレビを観る人達に知って貰いたい/芸能史の暗い影を/それを求めた観客の貧しさを/健全娯楽をつくる前に/娯楽というものの/淫靡な素性を見極めなければ/無意味であることを。

☆(中略)

僕は昭和八年に生れた。/十二才の時には/戦禍の廃墟に立っていた。/日本の伝統が灰になっていた。/二十才の時にテレビ放送が始まり/僕はそこで働くようになった。/テレビは飢えた豚のように/あらゆる文化・芸能を/その胃袋の中におさめようとする。/その現場から/芸の伝統を解きほぐし/一九六九年 昭和四十四年の時点で/テレビが芸能史をどのように受けとめたか/この本はその体験的なエッセイであり/テレビスタジオからの報告でもある。」

永六輔さんが物した力作『芸人たちの芸能史~河原乞食から人間国宝まで』(番町書房)のまえがきの一節だ。そしてあとがきで、かさねて言う。

「日本の芸能史が賤民への差別が根底となり、そこから生れ育ってきた背景のあることは書いて来た通りである。この素性の後めたさを、歴史の中でどう受けついで行くかが僕達の明日の芸能を決めてゆくことになる。世界を例にとった場合でも芸能ならびに芸人が同じ差別で育っている例は多い。多くの大衆歌曲、ブルース、タンゴ、サンバ、ボサノヴァといったものがスラムから発生していることでもわかる。ジャズにしたってギャングと売春婦に育てられた。ここでも芸人とやくざと女郎は一身同体なのである。」

つまり、すばらしい芸人たちは決して清い水の中に生まれ育った連中ではない。清廉潔白などではないのだ。悪党がいいと言っているのではない。しかし、善人では、悪党よりも始末が悪いのだ。

たとえば、関東大震災の中、ちょっとした流言飛語で朝鮮人虐殺を犯してしまえる善人・一般人の脆さ。戦争末期、特攻隊に志願し、残念ながら自爆攻撃をしてしまえた“純な”青少年たちの脆さ。

翻って、そのような脆さに立ち向かえるとしたら、それは汚れた泥水で育った芸人たちだと、永さんは言いたかったのだと思う。

そこでわれら永六輔の下に集まった者たち、佐久間順平、竹田裕美子、李政美、伊藤多喜雄、こむろゆい、小室等、オオタスセリ、松元ヒロ、きたやまおさむ、中山千夏、矢崎泰久の面々。せめてその名を「永六輔とその一味」と名乗り、七月六日、成城ホールに集い、六輔お頭一周忌とするのだ。

それはそれとして、国会や霞ヶ関に棲息する連中って、一体どんな水で育ってきたのだろうか。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、6月30日号)

「シェア」は、一体化ではなく分断化(浜矩子)

2017/07/17(月) 13:10

新約聖書の中に次のくだりがある。「パンは一つだから、わたしたちは大勢でも一つの体です。皆が一つのパンを分けて食べるからです。」(使徒パウロのコリントの教会への第一の手紙10.17)幼い頃から繰り返し聞き、そして読んでいるお馴染みの一節だ。

ところが、先週のミサでこの箇所が朗読された時、思いもよらぬイメージが閃いた。なるほど、これがホントのシェアだな。そう感じたのである。

ご承知の通り、最近の世の中、シェアがはやる。シェアハウス。ライドシェア。政府が規制緩和対応で躍起になっている民泊もまた、シェアビジネスだ。これらを総称してシェアリング・エコノミーなどという言い方も出現している。このシェアリング・エコノミーの拡大を、いかにしてGDP(国内総生産)統計に反映させるか。日本のGDPを少しでも大きく膨らませたい安倍政権が、この辺りでも血眼になっている。

シェアリング・エコノミーと、聖パウロがいう「大勢でも一つの体。一つのパンを分けて食べるから。」におけるシェアはどう違うか。シェアハウスで一つ屋根の下に住んでいる人々は、大勢でも一つの体だといえるか。ライドシェアで自動車に相乗りしている人々は、大勢でも一体化しているか。民泊の宿主とお客さんは、どこまで一体感を味わうか。

聖パウロの手紙とシェアリング・エコノミーの違いは、分かち合いと分け合いの違いだ。筆者にはそう思える。互いに分かち合う者たちは、一つのものをみんなで共有している。どこまでが自分のもので、どこからが他者のものかは、分かち合いにおいて判然としない。これに対して、分け合いは、まさに、どこまでが自分のものでどこからが他者のものかを仕切る作業だ。一体化ではない。分断化だ。

「分け前」という言葉がある。これも、英語でいえばシェアだ。押し込み強盗に入った泥棒たちが、それぞれ自分たちの分け前を要求する。少しでも、自分の取り分を多くしようとして、分捕り合戦を繰り広げる。そこには、分かち合いの精神は微塵もない。

ライドシェアしている時、たまたま相乗りすることになってしまった乗客たちは、車中の空間の中で、それぞれの分け前を確保して、互いに気配を消している。車中の空間を共有して一体化しているわけではない。

シェアハウスの中でいざこざが起きる。怖い事件が起きる。それはなぜか。そこに分け合いがあっても、分かち合いがないからだろう。大勢がバラバラのまま、一つ家の空間を切り分けて住んでいる。下手をすれば、せめぎ合いと摩擦の温床だ。

シェアには、市場占有率の意味もある。この場合のシェアは、奪い合いの対象だ。シェア争いに分かち合いが入り込む余地はない。

聖パウロが描くシェアの世界からは、一つのパンを分かち合うもの同士の思いやりが伝わってくる。思いやりはすなわちケアだ。シェアを分け合いから分かち合いに昇華させるには、そこにケアがなければならない。かくして、目指すべきは、ケアリングシェア・エコノミーである。

(はま のりこ・エコノミスト。6月30日号)

おばあさんが「辺野古」に抵抗する理由(黒島美奈子)

2017/07/16(日) 16:37

今年は慰霊の日(6月23日)をはさみ、沖縄にとっていくつかの節目を迎えた。一つは、大田昌秀元沖縄県知事の死去だ。慰霊の日の11日前、自らの誕生日に息を引き取った。

1925年、沖縄県の離島・久米島生まれ。45年鉄血勤皇隊に動員され、沖縄戦のむごたらしさと、軍隊の本性を目の当たりにした。大学教員として沖縄戦研究の第一人者となった大田さんは、90年の沖縄県知事選で初当選。復帰後初の県知事・屋良朝苗以来の革新県政誕生で、県民から基地問題の解決を託された。2期務めた後の知事選で敗れ、2001年に参議院議員に初当選も、07年には政界を引退。その後は「沖縄国際平和研究所」を設立し、沖縄戦の資料収集や出版にあたった。

終生を沖縄戦の教訓と共に過ごした1人で、常に基地問題の中心にいた。地元紙の記者として何度も話を聞いた。話し始めると2~3時間は当たり前。話の最後は山と積まれた沖縄戦の資料を指して「まだ知られていない戦争の真実がここにある。すべてを伝えたい」と締めくくった。

その大田さんが一度だけ「(女性の)君が取材すべきはぼくじゃない」と取材を“拒否”したことがある。09年衆院選で民主党(当時)が圧勝し、戦後初とも言える政権交代が実現したころだった。

「辺野古に行きなさい。あそこで座り込みを続けているのは男じゃない。おばあさんだ。彼女たちの話こそ聞くべきなんだ」

名護市辺野古の座り込み抗議は04年、新基地建設のアセスメント(環境影響評価)作業を止めようと始まった。当初は県内各地から応援の参加者が訪れたが、しだいに訪問者は少なくなり、メディアも同じだった。人もまばらになった海岸で、座り続けたのは辺野古のお年寄りたちだ。中でも女性の姿は途切れることがなかった。

「たんめーやはるさーんかい、んじゃーてぃち」(おじいさんは畑仕事に行っているから)。座り込む理由を聞くと大抵「おじいさんの代わりにいる」とそっけない返事だった。そして、隣にいる市民団体メンバーを指し「話はあの人に聞きなさい」と言って、自らは語ろうとしなかった。

基地問題が長引くにつれ辺野古集落の住民は分断を深めた。そんな状況に心を痛めながらも、沖縄戦の記憶が彼女らを新基地建設反対へ駆り立てたことは容易に想像できる。しかし、それだけだったのか。大田さんの言葉を反芻するうち、私は今、おばあさんの静かな抵抗の背景に別の理由を考えるようになっている。

今年「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク会議」が結成20年の節目を迎え、慰霊の日をはさんで沖縄で国際会議を開いた。基地問題について米軍駐留国の女性たちが情報交換するネットワーク。フィリピン、グアム、ハワイ、プエルトリコ、韓国そして沖縄。参加したどの駐留国も、基地を取り巻く歓楽街の存在と性暴力という共通した問題を抱えていた。

キャンプ・シュワブを抱える辺野古も、かつて歓楽街としてにぎわった。米兵たちが町へ繰り出し酒を飲む。そうした中での女性への振る舞いは想像に難くない。歓楽街だったころを「景気が良かった」と懐かしむ男性とは別の記憶が、辺野古のおばあさんたちにはあったに違いない。

(くろしま みなこ・『沖縄タイムス』記者。6月30日)

女性差別撤廃条約選択議定書の批准請願を潰した維新の浅田均参院議員

2017/07/14(金) 12:53

女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める請願は、参議院では2001年以降、18国会で20件が採択されてきた。ところが、審査を行なう参議院外交防衛委員会理事会で、日本維新の会の浅田均議員が「保留」を強く主張したため、採択されなかった。

選択議定書は、権利侵害を受けた個人や集団が直接通報することを認めるもので、すでに109カ国が批准している。しかし、受理には厳しい要件があるため、批准して活用するメリットより、批准しないことで差別撤廃に消極的な姿勢を示してしまうデメリットが大きいとされている。

請願採択は全会一致が原則であり、審査を行なう外交防衛委員会理事会では、01年以降、選挙等で保留となった以外は全て採択されてきた。採択の翌02年の外交防衛委員会では、自民党の武見敬三委員長(当時)が、「参議院は国民の請願権を最大限尊重する趣旨から請願審査を特に重視している」と前置きし、外務省に検討終了の目途や条約の国会提出時期について説明を求める異例の事態となった。

今回、浅田議員は「保留」の理由として、「サンフランシスコ市で問題になっている『慰安婦』像の設置を応援することになりかねない」と述べたが、これは全くの言いがかりだ。選択議定書について理解していないことも露呈した。

野党の筆頭理事である民進党の大野元裕議員は、「これまで参議院では全会一致で採択してきた。一貫性もある。説明責任もある」と、採択を求めた。共産党の井上哲士議員も「選択議定書は個々の問題に触れるものではなく、『慰安婦』像設置とは関係がない」と指摘した。他の野党議員からも、「保留」に異論が相次いだが、浅田議員は一歩も譲らず、自民党も了承した。

全会一致を盾に、事実に基づかない理由で採択を阻み、参議院の採択の経緯や、請願権を踏みにじる維新に批判の声が上がっている。

(坂本洋子・ジャーナリスト、6月30日号)

茨城県内で市議に“懲罰的”「電話番」をさせるいじめ騒動?

2017/07/13(木) 13:22

茨城県南のA市市議会で、男性市議に科せられた「電話番」の真相究明を求める陳情をめぐり、「人権侵害の懲罰」「懲罰ではない」「懲罰で身柄を拘束するなら犯罪だ。警察に告発しろ」などと、陳情者、当の男性市議、発言を許された傍聴人らで珍妙なバトルが繰り広げられた。

事の発端は昨年10月の臨時市議会。臨時会は、前年度の政務活動費約2万2000円の処理が不適切だったとし、市に全額を返還した男性市議に対する辞職勧告決議案を全会一致で可決した。だが、男性市議には、すでに、議員控室に待機し、電話の応対をする「電話番」が命じられていた。

誰が男性市議に「電話番」を命じたのか。当時、議会周辺では「会派代表者会議で決めた」「議会事務局が議長に申し入れた」などなど噂が飛び交った。

終日、議員控室で待機する姿に、マスコミ関係者が議会に即刻中止を申し入れたほど。結局、男性市議は約2週間、身柄を拘束され行動の自由を奪われていた。この間、議員控室にかかってきた電話はわずかに6、7本。男性市議も、さぞかし退屈だったのではなかろうか。

百条委員会を設置し「電話番」真相究明を求めた陳情の審議では、発言を求めた当の本人が「議会事務局長に要請されたが(電話番を)懲罰とは思っていない」と陳述。発言を求められた議会事務局長、議長も、ともに、電話番を「要請」したことは認めつつ「拘束とは思っていない」と口をそろえた。

結局、「電話番は懲罰」とする陳情は、議会運営委員会で不採択となり、真相はやぶの中に。陳情者は「いじめともとられかねない行為を二度と繰り返さぬよう、百条委で真相の究明を求めた。バケツを持たせ廊下に立たせるのも懲罰。この議会は、誰も『電話番』を懲罰と思っていなかった。残念です」と話していた。

(木曽義治・フリーライター、6月30日号)

大阪高裁が在日女性へのヘイトスピーチをはじめて複合差別と認定

2017/07/12(水) 16:44

ヘイトスピーチで精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人でライターの李信恵さん(45歳)が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と桜井誠・元会長に550万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6月19日、大阪高裁であった。池田光宏裁判長は在特会側に77万円の支払いを命じた一審の大阪地裁判決を支持したうえで、ヘイトスピーチが人種差別と女性差別との「複合差別」に当たると初めて認定した。

判決によると、桜井元会長は2013~14年、神戸市内の街頭宣伝で取材に来ていた李さんに対し「朝鮮人のババア」「反日記者」と攻撃したのをはじめ、ネット上で李さんの容姿や人格を貶める発言を繰り返した。原告側はこれらのヘイトスピーチが人種差別撤廃条約や女性差別撤廃条約に抵触する人権侵害であると訴えた。一審判決は人種差別撤廃条約の趣旨に反するとしたものの女性差別には触れなかった。高裁判決は「名誉毀損や侮辱は原告が女性であることに着目し、容姿などを貶める表現を用いており、女性差別との複合差別に当たる」と述べた。

複合差別の概念は、在日朝鮮人やアイヌ民族、被差別部落などマイノリティに対するヘイトスピーチのなかでも特に女性が標的として狙われやすいことから、国連の人権機関が属性差別と女性差別が重なる「マイノリティ女性」の問題として重視している。国連女性差別撤廃委員会は昨年3月、日本政府の報告書を審査する最終見解のなかで、日本社会のマイノリティ女性の人権状況に懸念を示し、複合的差別を禁止する包括的な法の制定や人権状況を監視する独立機関の設置を勧告した。しかも日本政府は勧告に対応した措置について2年以内に情報提供するよう求められた。だが政府の対応の動きは見られず、今回の高裁判決がマイノリティ女性の複合差別を認めたことの意義は大きい。

(平野次郎・フリーライター、6月30日号)

中山義隆・石垣市長に不正出張とマンション“購入”疑惑

2017/07/11(火) 19:07

防衛省が陸上自衛隊の配備をもくろむ南西諸島の1つ沖縄・石垣島。2015年に配備計画が正式発表されて以降も全容は明らかにされていないが、中山義隆市長は昨年12月、突如として事実上の配備“受け入れ”を表明した。この中山氏をめぐり、不正な出張やマンション“購入”など疑惑が相次ぎ浮上している。

市民が情報開示請求し、石垣市が公開した中山市長の出張費についての資料。不自然な墨塗りが目立つ。(撮影/『週刊金曜日』取材班)

石垣市で農業に従事する男性は昨年10月5日、墨塗りにされた2枚の資料(写真参照)を市から受け取り当惑した。「平成28年度一般会計当初予算(歳出)内示書」と題された資料は約90項目が墨塗りで、かろうじて「秘書費」「旅費」「普通旅費」「3,405」(編注、340万5000円)などの文字が読める。男性は昨年9月21日、中山義隆石垣市長が初当選した2010年から現在までの出張日程の内訳や費用などについて、市に開示請求をした。ところが、出張費に係るとされる資料が墨塗りで出されたのだ。出張日程については14枚に、目的などの一覧が記されていた。

地元紙『八重山毎日新聞』の「市長日程」をもとに本誌取材班が調べたところ、昨年1月から7月までに出張は最低でも30回、宿泊日数はさらに増えることがわかった。現地では中山氏の“出張過多”に批判がある。こうした背景から男性は開示請求を行なった。
「当然開示されるべき資料のはずなのに墨塗りで、『これは一体、何なのか』と驚きました。しかも10年からの内訳を請求したのに、昨年(平成28年)度の資料のみというズサンな対応だった」(男性)。

全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は、「墨塗り資料は公務員の公務に関する情報であり、基本的に不開示にする理由はない」と指摘する。

条例無視で“情報隠蔽”か

6月11日の住民説明会後、取材に応じる中山義隆石垣市長。(提供/猪股哲)

男性は今年1月4日、正確な情報の開示を求めて「情報公開に係る審査請求書」を市側に提出した。だが半年近くも明確な反応がないことから、6月6日には市の情報公開及び個人情報保護審査会に対し、結果を公表するよう「意見書」を提出している。市を取材すると、「近々、審査会を開く考えはある」(総務部総務課法制係担当者)とした。同担当によると、出張費の文書を墨塗りにしたのは「秘書係」だという。

通常、市民から審査請求が出された場合には、該当者は審査会に意見を求める(諮問する)必要がある。石垣市情報公開条例にも「諮問しなければならない」と定められている。しかし、市の同担当は、「審査会に対して中山市長からの諮問はない」とした。前出の新海弁護士は、「市長は第三者委員会に意見を求める義務があり、諮問をしていないのは大問題。条例を無視、またはあえて諮問を遅らせているのなら、情報隠蔽の疑いを持たれても仕方ない」と話した。

出張日程も曖昧だ。昨年10月に公開された出張一覧とは別に、市側は今年5月末、13年からの出張日程と費用に関する約150枚の資料を男性に突然公開した。だが男性は「昨年度の出張について、昨年10月の出張一覧にないものが今年5月末の資料にはあったり、その逆もある。不備が多く正確な資料でない」としている。

秘書係(企画部企画政策課)の棚原輝幸係長にこれを問うと、「取材への回答は差し控えるよう、市の顧問弁護士のほうから言われています」とした。市の顧問弁護士とは、「弁護士法人那覇綜合」(所在地は沖縄・那覇)所属の伊東幸太朗氏で、この法律事務所は自民党の宮﨑政久衆院議員が代表を務めている。同事務所に電話をしたが、校了日の6月20日までに連絡が付かなかった。

選挙中にマンション購入?

中山氏の疑惑はほかにもある。中山氏が本人名義で14年と15年に “購入”したとされる高級分譲マンション2部屋についてだ。契約の成立時期に不自然な点がある。

市が公開する「石垣市長資産等報告書」によると、中山氏は東京・東日本橋と那覇市内にマンションの一室を所有している。

登記を調べると、14年2月26日に売買された東日本橋の「コノエ東日本橋」の建物は、「コノエ・プレミアシリーズ」と呼ばれるアパグループの高級マンションで、アパホーム株式会社が所有者とある。15年10月18日に売買された那覇市内の「RYU:X TOWER The EAST」は、大和ハウス工業株式会社やオリックス不動産株式会社などが所有者だ。

アパグループは13年11月下旬に石垣島にホテルをオープン。大和ハウス工業は06年頃に同市内の米原地区でリゾート化を企てたが、住民らの反対などで計画は進んでいない。オリックスはレンタカーなどの業種に参入して久しく、いずれも島の経済に関わりがある。

マンションを“購入”した時期について、地元関係者はこう語る。

「14年に実施された石垣市長選挙の告示日は2月23日。投開票日は3月2日でした。もっとも忙しく、おそらく資金も必要な選挙期間中の26日に、マンションを購入するなんて不自然です。さらに、15年11月26日に防衛省の若宮健嗣副大臣が市を訪れ、陸上自衛隊配備を中山市長に正式に打診したという事実がある。第2のマンション購入はその直前です」

これまでの中山氏の資産はどうか。給与所得、貸付金、借入金など、いずれも目立った変動は確認できなかった。前出の新海弁護士は「少なくとも“贈与”の疑惑はもたれる」とし、「市長は経緯を説明する必要がある」とした。中山氏本人にも取材を試みたが、棚原係長は「プライベートなことなので取材は受けていない」とした。

自衛隊駐屯地、候補地近接の4集落は激怒

中山氏が事実上の“受け入れ”を表明した陸自配備計画に対しては、現地から疑問や怒りの声が噴出している。

防衛省は6月11日、約4万8000人の市民を対象とする住民説明会を開催した。しかし参加者は200人ほど。場外では説明会のボイコットを訴える住民がおり、場内では参加者から指摘された問題点に、担当職員が「仮定の話に答えるのは難しい」などと回答をはぐらかす場面もあった。

15年11月26日、若宮防衛副大臣は石垣市を訪れて中山氏と面会。このとき、配備候補地を平得大俣(ひらえおおまた)地区とした。第2次世界大戦の前後を通じて、沖縄本島や四国、台湾など各地から移住してきた人々が、汗と血と涙を流し切り拓いた一帯である。候補地に近接する4つの集落は当初から「配備反対」を表明してきた。だが各集落代表と面談をしてから受け入れについて決めるとしていた中山氏は、これを反故にして事実上の“受け入れ”を表明したのだ。

今年5月17日に突然、防衛省は駐屯地の図面を発表した。弾薬庫4棟のほか射撃場などの危険な施設が描かれるが、民家との距離は1本の道路を隔てただけだ。各集落の代表らは6月6日の会見で、行政側を猛批判した。ある住民はこう説明する。

「市民対象の説明会が告知される以前に、防衛省は各集落での説明会を予定していました。しかしその打診は代表者への電話だけ。私たちは趣旨や日程調整を文書でしてほしいと伝えたが、その後連絡はなかった」

候補地に近い嵩田(たけだ)地区で生まれ育った花谷史郎さん(35歳、農業)は、計画の白紙撤回を求める1人だ。駐屯地の騒音や照明、汚染水などが人体や作物に与える影響を危惧する。景観破壊や交通量の激増なども不安材料だ。花谷さんはこう語る。

「このあたりの農村は後継者も育ち、行政の補助に依存してこなかった。穏やかな風景も自慢です。沖縄での本格的なパイナップル生産もこの一帯から始まった。今はマンゴーやゴーヤー栽培なども盛んです。私たちの聖地。軍事基地は不要です」

(『週刊金曜日』取材班、6月23日号を一部修正)

JASRACは突然やってくる 強権的手口に音楽教室側が怒りの集団提訴

2017/07/11(火) 12:30

東京・渋谷にあるJASRACの本部(右から2番目の建物)。(撮影/馬杉峰子)

音楽教室と日本音楽著作権協会(JASRAC)の対立は、ついに法廷闘争に至った。ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所が中心となり設立した「音楽教育を守る会」(以下、守る会)の15団体249社は6月20日、音楽教室でのレッスンには著作権法に定める演奏権は及ばないとして、JASRACに徴収権はないことを確認するための訴訟を東京地裁に提起した。

両者の主張は法解釈の食い違いだ。著作権法は「公衆」に聞かせることを目的とした演奏権は著作者にあると定める。JASRACは音楽教室には不特定多数の受講生がいて「教室は公衆」と主張。音楽教室から年間受講料の2・5%を使用料として来年1月から徴収すると宣言。6月7日、文化庁に使用料規程を届け出た。これに対して守る会は「音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない」と、真っ向から対立する。

今年に入って激化したように見える両者の対立だが、現場の音楽講師はこう見る。

「JASRACの主張を黙って聞いていたら、奪われるばかり。音楽教室が存続できなくなるという危機感がある」

その強硬な徴収ぶりが長年積もり積もって追い詰められた結果だと、愛知県在住の経歴30年の女性講師は言う。大手音楽教室からスタートして10年後に独立。現在は数カ所の教室を経営し、小学校低学年を中心に教えている。

「最初は楽譜を買っていないという指摘だった。10年以上昔は、発表会でも楽譜をコピーして使うことも。これは決してほめられたことではないが、こういう状況に前触れなく突然、JASRACが音楽教室に査察のように入ってきて、著作権使用料を支払っていないと、賠償金をとっていった」

今も語り継がれているという手口はこうだ。

【要求は執拗で強権 美容院のBGMも!】

「発表会が近づいてきているのに、楽譜が売れないのはおかしい。教室のコピー機のコピー枚数を開示しろというわけです。それで発表会前にコピー枚数が異常に増えていることを根拠に、大手の音楽教室は複数年分で1000万円単位の解決金を支払うことになった。その時、閉鎖に追い込まれた教室もあり、講師もそれで仕事を失った」

現状では音楽教室の、こうした複製の不払いは解消された。JASRACに対して著作権物使用料として、楽譜作成価格(販売価格)の10%を支払うように改めたからだ。しかし、その後もJASRACの追及は続いた。

「音楽教室に通う子どもたちは、まず自分の好きな曲を演奏したいと思って通ってくる。その成果を大好きな家族に見せたい。この感動がないと続かない。この子どもたちの“やる気”の前に立ちふさがるのがJASRACです」

彼らの請求は突然やってくる。

「どこで知るのかわからないけど、発表会で演奏した曲の演奏が、許可した楽譜どおりではないと言い出した。音楽教室が使用料を払っているのは楽譜どおりの楽曲。これをアレンジして演奏するのであれば、新たに著作権者に許可を取り、さらに著作権使用料は従来どおり払えというのです」

譜面どおりにしか演奏できないことは、致命的なことだという。

「音楽教室は今流行の曲を弾きたいと思う子どものレベルに応じて講師がアレンジして何とか演奏させ、音楽の楽しさを実感してもらうのが仕事。しかし、そのために譜面を起こして許可をとることは現実的には不可能です。結局、子どもの好きな曲を大人の事情で演奏させられなくなる」

JASRACの強権ぶりは、今年6月13日、美容院325店舗にBGMの使用料を求めて一斉調停を起こしたことにも現れている。

「今回のことにしたって、いずれまた請求対象を広げてくる。何かにつけ理由をつけて使用料を請求する彼らに、もう譲歩する気はないというのが正直なところです」(前述の音楽教室講師)

未来の音楽ファンは、どちらを支持するだろうか。

(中島みなみ・ジャーナリスト、6月30日号)

加計学園問題が暴露した“ミニ独立政府”(佐々木実)

2017/07/10(月) 18:11

加計学園の獣医学部新設問題はいまだ事実が解明されていない。現時点でいえるのは、「国家戦略特区」という制度がなければ、この問題は起こりえなかったということである。

前文部科学省事務次官の前川喜平氏は「手記」(『文藝春秋』7月号)で、昨年8月下旬に木曽功氏が事務次官室を訪ねてきたことが「最初の出来事」だったと記している。文科省OBの木曽氏は加計学園が運営する千葉科学大学の学長をつとめる一方で、安倍政権の「内閣官房参与」の肩書きを持っていた。

「国家戦略特区制度を利用して、愛媛の今治に獣医学部を新設する話、早く進めてくれ」。文科省の後輩でもある前川次官にそう要請して、木曽氏は次のような言葉を口にしたという。

「文科省は国家戦略特区諮問会議が決定したことに従えばよい」

文科省次官への木曽氏の忠告は、加計学園問題の基本構図を示唆すると同時に、特区制度の核心をついている。国家戦略特区制度は、安倍政権が生み出した「規制緩和」の強力な推進機関である。発案者は竹中平蔵氏だ。

小泉純一郎政権の閣僚として「構造改革」の司令塔役を果たした実績をもつ竹中氏は、安倍政権の産業競争力会議(現在は「未来投資会議」)で特区制度を提唱した際、「アベノミクス特区」と呼びながら、推進主体となる諮問会議の肝を解説している。

「アベノミクス特区については、これまでと次元の違う特区であり、まず第一に総理主導の特区であるということ。そして第二に、特区大臣が国を代表し、そこに地方の首長や民間が集まって三者統合本部をつくって、そこが、さながらミニ独立政府のようにしっかりとした権限を持ってやっていく、これがキーポイント」(2013年4月17日の議事録)

安倍政権は竹中提案をまる吞みし、早くも2013年12月に国家戦略特別区域法が成立、国家戦略特区諮問会議を経済財政諮問会議などと同様、内閣府の重要政策会議と位置づけた。総理大臣を長とする極めて格の高い会議で、この法律により、「ミニ独立政府」構想は現実化した。竹中氏は独立政府の主要閣僚、すなわち諮問会議の民間議員に就任している。

加計学園問題では、「総理のご意向」と記された文科省の内部文書が問題となっている。留意すべきは、安倍総理大臣が「政府の総理」と「ミニ独立政府の総理」、ふたつの顔をもつことだ。

「岩盤規制改革をスピード感をもって進めるよう、常々指示してきた」と繰り返す安倍総理は、「腹心の友」が理事長をつとめる加計学園の獣医学部新設を特区諮問会議が認めたことがあたかも規制緩和行政の成果であるかのように強弁している。

だが、明らかになった事実だけ並べても、「国民のために既得権益を死守する官僚と闘う」という諮問会議の表看板は実態とかけ離れている。「総理」が横車を押せば押すほど、「ミニ独立政府」は白日のもとにさらされ、むしろ特区諮問会議の素性のいかがわしさが際立ってくる。加計学園の功績は、日本のなかに国民が関知できない奇怪な独立政府が存在することを知らしめたことにこそある。

(ささき みのる・ジャーナリスト。6月23日号)

築地市場移転問題、都議選のために持論曲げた小池都知事の次の一手は

2017/07/10(月) 12:32

築地市場で冷凍マグロの尾肉を見るなどして「目利き」をする仲卸業者。(撮影/永尾俊彦)

「築地は守る。豊洲は活かす」

6月20日、東京都の小池百合子知事は、「中央卸売市場を築地(中央区)から豊洲(江東区)に移し、豊洲は冷凍冷蔵・加工などの機能を充実させる。築地は5年後をめどに築地ブランドを活かした再開発をし、市場機能を持たせ、築地に戻りたい業者は支援もする」という基本方針を発表した。

東京都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長は、中央卸売市場を豊洲に移すとした点などおおむね評価した。ただ、「市場本来の機能が2カ所同時並行で行なえるとは到底思えない」と述べた。

また、仲卸業者の酒井衛さんも、「都議選で敵を作りたくないんだろうが、市場人は魚のある所に行くしかない。築地と豊洲と両方使うなんてありえない」と話した。

卸売市場に詳しい浅沼進元東京海洋大学大学院教授はこう指摘する。

「農林水産省の卸売市場整備基本方針(2016年)に、産直などが増えて卸売市場経由率が低下していることなどから中央卸売市場の新設は行なわないと明記されています。だから、国が認可する中央卸売市場を豊洲に移したら築地は中央卸売市場にはできないので、都道府県が認可する地方卸売市場にするのかもしれませんが、冷凍庫などに莫大な費用をかけて豊洲に移転した卸売業者が5年後に築地に戻るとは考えられません。仲卸の一部は戻るかもしれませんが、それはもはや卸売市場ではなく、単なる『売場』で、市場機能はありません」

【移転で失われる目利き能力】

この「市場機能」とは、卸が集めた魚や野菜などを仲卸が経験を活かして評価(目利き)し、セリによって値段を決める機能だ。

この点は、20日の会見で小池知事も「築地ブランドの核をなすのが仲卸の方々の目利き力、まさにブランドの宝の部分」との認識を示した。

だが、食料流通学が専門の三国英実広島大学名誉教授はこう話す。「いったん豊洲に移ったら5年後に戻っても築地ブランドは滅びます。『目利き』能力は、豊洲市場への移転に伴う仲卸業者の縮小・再編により失われるし、豊洲市場の本質は大手スーパーなどのための物流センターですから、仲卸の目利きの力は不要となります」

仲卸の和知幹夫さんは、「設備投資や引っ越し費用などのために借金して豊洲に行っても『毒の埋まってる豊洲の品物は買わないよ』とお客がつかなきゃ潰れる店が続出する」と心配する。仲卸の経営は厳しい。築地市場水産仲卸の36%が経常赤字だ(15年)。だから、東京中央市場労働組合の中澤誠執行委員長は、「築地から豊洲、5年後に築地と2回も引っ越しする体力のある仲卸は少ない。築地で営業しながら再整備すべきだ」と話す。

小池知事自身が設置した「市場問題プロジェクトチーム」(座長・小島敏郎青山学院大学教授)も「豊洲移転の場合は都の市場会計全体で年100億~150億円の赤字。他方、築地再整備は60年後では営業損益は若干の赤字だが、当年度損益は24億~26億円の黒字」と試算、築地再整備案を「経営的に健全」としているのだ。

6月11日、専門家会議(座長・平田健正放送大学和歌山学習センター所長)は、豊洲の土壌汚染について、批判や抗議が続く中、地下空間の床をコンクリートで覆うなどの追加対策を強行決定した。

これに対して、同14日、日本環境学会の畑明郎元会長らは、「汚染実態の究明を放棄した無謀な対策」などとするコメントを発表した。

同17日、小池知事は築地市場を訪ね、豊洲市場の地下水を環境基準以下にするなどの「無害化」の約束を守れなかった点をわびた。

だが、今後は専門家会議の示した追加対策を実施した上で豊洲移転と築地再整備をするとしている。

小池知事は、共著の中で築地再整備が「一番妥当」と書いている。都議選のために知事は持論を曲げ、築地だけでなく豊洲も無理やり維持する方向に舵を切った。

この決断で「築地は滅びる。豊洲も滅びる」ことになりかねない。

(永尾俊彦・ルポライター、6月30日号)

自民党が提言する少年法改定に「立法事実なし」

2017/07/07(金) 17:23

発言する須藤明氏(左)と丸山泰弘氏。6月12日、東京・文京シビックセンターで。(写真/小宮純一)

選挙権年齢を18歳以上に引き下げた公職選挙法が成立したのを受け、金田勝年法相は少年法の適用年齢についても現行の20歳未満から18歳未満に引き下げることを、法制審議会に諮問している(2017年2月)。この議論が本格化するのを前に、刑罰法令に違反した子どもを「非行少年」として、国家が強制的に再教育を行なったり、子どもの最善の利益を考えて介入する現行の少年司法を考えようという集会が6月12日、東京・文京区で開かれた。ソーシャル・ジャスティス基金主催。

集会では立正大学の丸山泰弘准教授(刑事法)が「年齢引き下げの必要性を説く自民党の提言(15年9月)は、飲酒や喫煙などの軽微事案の禁止年齢について結論を保留しており、『成人』年齢は、問題領域ごとに検討すべきといっているようなものであり、また、少年法改正の立法事実がなく矛盾している」と発言。

また、駒沢女子大学の教授で、臨床心理士として神奈川県川崎市の中学1年男子殺害事件の加害少年のうち1人の心理鑑定人を務めた須藤明氏は「適用年齢を引き下げれば子どもの成熟が促進されるだろう――という考えは幻想と言える。不遇な成育歴を持つ子どもの場合、単に反省を強いるようなアプローチをしても、内在するつらい過去が、本当の反省を阻害することが多い」として、ともに年齢引き下げには慎重な姿勢を示した。

(小宮純一・ジャーナリスト、6月23日号)

共謀罪と加計学園疑惑に国民は怒っている!(佐藤甲一)

2017/07/07(金) 16:28

30年近く政治を取材のフィールドにしてきたが、これほど「醜悪」な政治姿勢をさらけ出した政権は記憶にない。

6月18日に閉会した第193回通常国会の最終局面における政府与党の対応は、まさに国民主権という日本の民主主義のあり方を無視した、私たち国民を愚弄するもの以外の何ものでもない。安倍官邸と自民党が行なった「共謀罪」法案の成立と加計学園疑惑を絡めた今国会の会期末処理は、そうした国民の危惧が現実のものであることを、見事にさらけ出した。

森友学園問題が、安倍晋三首相の周囲にいる人物が官僚の忖度によって優遇された、という問題であったとするならば、加計学園をめぐる問題はより日本の民主主義=政治システムの存続にとって重大である。仮に安倍首相が国会答弁するように、首相自らが加計学園優遇の意向を示すことはなかったとし、かつ山本幸三内閣府特命担当大臣の説明を信じるのなら、官僚システムが政治の判断を仰ぐことなく、加計学園選定に向かって「首相の名を語って暴走」したことになる。

さらに山本大臣の説明によれば、出向中の文部官僚がスパイまがいの行為をして、確認不十分の情報を出身官庁にご注進するという、統制不在の状況に内閣府は陥っていたわけだ。本当なら、いずれも公僕たる高級官僚が、国民の利益を顧みることなく行政をほしいままにしていたことになり、もはや日本の行政システムの危機である。

即刻関係者を処分し、さらに安倍首相以下これを放置した責任をとる必要がある。担当大臣が部下の一官僚をスパイ呼ばわりしている神経を疑う。まず山本大臣は監督不行届で辞意を表明するのが相当だろう。だが、そうなってはいない。

むろん、場当たり的と見える彼らの説明をそのまま信じるほど国民は愚かではない。100歩譲って山本大臣と首相最側近の萩生田光一官房副長官の名前を取り違えてメールしたという山本大臣の説明を信じたとしても、それだけ萩生田氏の意向、つまり「安倍首相の影」が内閣府に満ち満ちており、政策の決定と遂行に影響を与えていたということになる。「語るに落ちる」とはこのことだ。加計学園選定に安倍首相の意向が働いていたのではという疑問が指摘する本質的な状況はなんら変わらないのである。

政治主導とは、政治が方向性を示し、その結果責任を政治家が負う、ということである。方向性を示すのはいい。その目的が「友人」に利益をもたらすことであり、その目的達成が容易になるように制度を設計したのではないか、という国民の疑問が沸き起こるやいなや、根拠となる文書を「怪文書」と決めつけ、証言者の人格をおとしめるような会見を行ない、かつ有力なメールが出現すれば、「スパイの勘違い」と言い放ち、責任を物言えぬ官僚に押しつけてつじつま合わせで幕引きを図る、これが佐藤栄作氏、吉田茂氏に続く、戦後第3位の在任日数となった「安倍一強政治」の行き着くところの手法である。

安倍晋三氏が「総理大臣」であるがゆえに持つ権力は「天賦」のものではない。権力は下から付託されるもの、つまりは総理大臣の権限は私たちの権利の総体であることを忘れないことだ。国民は怒っている。終わらなかった政権はないのである。

(さとう こういち・ジャーナリスト。6月23日号)

永さんのルーツ(小室等)

2017/07/06(木) 17:39

「墓参に来る人は、必ずしも檀家の人ばかりではない。故人の知己友人なども参るから、顔見知りでない人も多勢来る。三十くらいのキレイな、素人ばなれのした女性がお参りに来た。私の知らない人である。去年亡くなったある女性の墓参に来たのだが、大きな蟹のゆでたのを持っている。

『あの人、とても蟹が好きだったんですよ。蟹と来たら、ホントに目がないの。バケツに一杯くらいたべちまうんですのよ。だから今日、あたし、蟹もって来ちゃった』

いいとも、いいとも、貴方の気持なんだから、とは言ったものの、あとでなまものだから、腐ったりして、ヘンな臭いなどするようになると、ほかの人たちに悪いし、一日お供えしたら、これは片づけた方がいいだろうと思った。あくる日になって、掃除に行ったら、もう、夜のうちに、野良猫がこの蟹を引きずり下ろして、喰いちらかしたと見えて、そこら中に、蟹の鋏や甲羅や、白い肉片が散乱し、目もあてられないありさまになっていた。掃除には手がかかったが、昨日あの女性はきっと、『あなたの好きな蟹、もって来てあげたわ』と、友達の墓に供えたのだろう。やっぱり、いいなあと思った。掃除など、ちっとも苦にならなかった。」
(『街=父と子 おやじ永忠順との優雅な断絶』永六輔著、毎日新聞社)

ちっとも苦にならなかった人は当時、元浅草最尊寺住職永忠順氏で、それは永六輔さんの御父上。素人ばなれした女人、蟹を喰いちらかす野良猫。硬軟分け隔てなくよろず受け入れる下町の寺。そうか、永さんの優しさのルーツは忠順さん、あなただったんですね。

忠順さんの話、もう一つ。

相撲取りになるはずだった末の息子を亡くした中島さんの話。

「暑い夏の炎天干しの日に、中島さんは、いつものジュースのほかに、大きな氷のかたまりを、縄で結わいてブラ下げて、お参りに来た。あの氷をどうするつもりなのか。中島さんが帰ってから、お墓へ行って見たら、お墓の頭の上に、氷がのせてあった。溶けた分が水になって、何本もの糸のように、石塔を濡らしていた。夏の日盛りには、石がやけるから、お墓は手で触っても熱いくらいになる。お前暑いだろうなあ。大きな氷を持って来て、子供の墓の上にのせてやる。親の心のやるせなさに、涙が出て来た。合理主義など、こうなったら、どこへでも行ってしまへ。下町には、下町のやり方があるのだ。」(同)

下町のやり方。

平和ってここからだよね。上のほうでドンパチやるんじゃなくて、いま目の前にいる人に思いを至らせること、なんですね永さん。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、6月16日号)

〈編注〉2017年7月7日で、永六輔さんが亡くなられてから1年になります。

沖縄辺野古の米軍基地建設に対する意見広告賛同者が1万人突破へ

2017/07/06(木) 12:31

辺野古埋め立て工事の即時中止を求める意見広告が、6月3日の『琉球新報』『沖縄タイムス』『朝日新聞』各朝刊に掲載された。第8期目の今回は、賛同者数が初めて1万人を超え、2面見開き2色刷の大きな意見広告となった。艦艇が並ぶ海を背景に、普天間基地返還、辺野古新基地反対の意思を表明した全国の個人・団体の名前が掲載されている。

18日には『週刊金曜日』の協賛を得て、都内で関東報告集会が開催され、約400人が参加した。集会は上原公子氏(元国立市長)の司会で進められた。

安次富浩氏(ヘリ基地反対協議会共同代表)は、沖縄での米軍や自衛隊の動向、石材搬入と護岸工事が進む辺野古での市民の闘いの状況、工事差し止め訴訟や埋立承認の撤回など今後の展望について報告。伊波洋一氏(参議院議員)は、在日米軍による環境保護と安全のための「日本環境管理基準」を、日本政府が米軍に遵守させていないとして、外交防衛委員会で取り上げていることを説明した。

特別ゲストの李泳釆氏(恵泉女学園大学准教授)は「東アジアの平和を!韓国・文在寅政権の誕生と民主化運動30年目を迎えて」と題して講演。2016年の秋から冬にソウル市光化門前では100万人の市民参加による「キャンドル・デモ」が18回も行なわれた結果、メディアや国会議員も動き、政財界癒着で憲法を守らない大統領を罷免・弾劾裁判へと追い込んだ。30年前の民主化闘争では火炎瓶が使われたが、今は非暴力の運動へと変わり、近年の選挙では若者の高い投票率によって政治改革が成し遂げられている。朝鮮半島と日本の平和は密接にリンクしており、特に共通性の強い沖縄島(辺野古・高江)と済州島(江汀)の連帯と平和実現が東アジアの平和のために重要と語った。

李氏の講演は参加者に大きな感銘を与え、市民の大結集の重要さを改めて痛感させられた。

(花輪伸一・沖縄意見広告運動世話人、6月23日号)

「子育て安心プラン」でも、財源も保育士も目途が立たない待機児童解消問題

2017/07/05(水) 12:20

政府が6月9日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)は、経済成長を見据えた「人材への投資」に力点を置く。その柱の一つが保育所待機児童の解消と幼児教育・保育の無償化で、安倍晋三首相は具体策として保育の受け皿を約32万人分増やす「子育て安心プラン」を打ち出した。しかし、必要となる巨額の財源、担い手の確保ともにメドは立っておらず、実現への道筋はおぼつかない。

6日昼、首相官邸であった政府与党連絡会議では、1週間前に安倍首相が発表した子育て安心プランが話題に上った。公明党の井上義久幹事長が「我々も国民一人ひとりに説明できるようにしてほしい」と注文すると、首相は「国は予算確保、市区町村は土地の確保や住民の説得と、役割を分担する。国は2年で、地方は3年で達成させる」と胸を張った。

子育て安心プランは、2020年度末までの待機児童解消をうたう。18年度から3年で保育の受け皿を約22万人分増やして「待機児童ゼロ」を成し遂げ、その後2年で約10万人分を追加する。25~44歳の女性の就業率が今の約73%から80%に高まるとみて算出した数値といい、高騰した用地でも借りられるよう保育所を補助したり、幼稚園や学校の空き教室を利用したりすることで実現を目指す。首相は発表の場に選んだ経団連のパーティで「今度こそ待機児童問題に終止符を打つ」と見得を切った。

ただ、新プランには「今の計画を3年先延ばししただけ」との批判もつきまとう。現行計画は13年4月に公表された「待機児童解消加速化プラン」。当初、40万人分の保育施設を作り、17年度末までに待機児童ゼロを達成するとしていた。ところが、急増する需要は想定を上回り続けた。受け皿の整備数を「53万人分」まで上積みしたものの、今年4月時点の待機児童は2万3700人(暫定値)に上る。新旧プラン合わせると受け皿は約85万人分増える計算だが、見通しの甘さから新プラン策定に追い込まれた側面は否めない。

東京都世田谷区で、夫と2歳の長男と暮らす30歳代の会社員の女性は4月、9カ所の保育所すべてに落ち、育児休業を延長せざるを得なかった。「『女性の活躍』を言いながら、『思っていたより女性が活躍したから保育所が足りない』と言う国はおかしい」。

【小泉進次郎氏らの「こども保険」も念頭】

待機児童の解消と幼児教育・保育の無償化には、1兆円台の財源を要する。調達手段に関し、骨太の方針は(1)財政の効率化(2)税(3)新たな社会保険――の3案を挙げ、年内に結論を得るとした。だが、毎年一千数百億円程度の社会保障費抑制に苦悶しているのが実情で、

(1)での工面は困難だ。(2)も消費税率が10%になった時の使い道まで決まっており、新たな子育て支援に回す分はない。(3)は自民党の小泉進次郎氏らが提案した「こども保険」を念頭に置くが、同党内にも強い反対論がある。首相側近は「カネの手当てはこれから考えざるを得ない」と漏らす。

仕事を探している人1人にいくつ働き口があるかを示す有効求人倍率は、保育士に限ると全国平均(4月)で1・93倍。中でも東京都は4・04倍に達し、保育所間で保育士の奪い合いも起きている。昨年秋、独立行政法人福祉医療機構が5726カ所の保育所などを対象に手がけた調査(有効回答1615施設)では、25%の施設が「保育士不足」を訴え、その2割弱では子どもの受け入れを制限していた。新プランの実現には新たに4万人程度の保育士が必要となるにもかかわらず、同機構は「少子化で今後の新卒採用は確実に厳しくなる」と指摘している。

厚生労働省の人口動態統計によると、16年に生まれた子どもの数は97万6979人。ついに100万人を割り込んだ。前出の世田谷区の女性は、ポツンと語る。

「もう保活(保育園に入るための活動)はうんざり。新プランも実現するかどうか分からない。このままなら、2人目の出産なんてとても考えられません」

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、6月23日号)

「国際機関に通報したい」 男女賃金差別訴える中国電力社員が外務省に選択議定書の批准を要望

2017/07/04(火) 10:58

6月9日、WWNと省庁の意見交換会で発言する長迫忍さん。(撮影/林美子)

「女性の地位が非常に低くて、つらい。タイムリミットはあと5年です。ぜひ5年以内に通報できるよう、批准をお願いします」

中国電力社員の長迫忍さんが、外務省の担当者らに訴えた。6月9日、賃金など職場での男女差別に取り組むワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN、大阪)が、東京で開いた各省庁との意見交換会での発言だ。

長迫さんは、職場での男女の賃金格差は違法だとして中国電力を訴えたが、2015年、最高裁で敗訴した。だが、女性差別撤廃条約に付属する選択議定書を日本政府が批准すれば、国際機関に通報して審査を求めることができる。ただし、通報できるのは差別が継続する現役の社員でいる間だけだ。長迫さんの定年は5年後に迫る。

意見交換会は、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が昨年3月に出した勧告をめぐって開かれた。女性差別撤廃条約の締約国は、数年に一度、CEDAWに条約の実施状況を報告。CEDAWが審査して総括所見(勧告)を出す。

昨年3月、日本政府に対する5回目の勧告があり、幅広い分野で改善を求める指摘があった。

その一つが個人通報制度を定めた選択議定書の批准だ。昨年3月時点で、締約国189カ国のうち106カ国が批准している。

だが日本政府は、CEDAWが何度も勧告しているにもかかわらず、いまだに議定書を批准していない。昨年2月、CEDAWによる日本審査の際には、「批准については検討中」とする日本政府代表に対し、委員から「何年検討しているのか」と追及する質問も出た。

【女性への「間接差別」だ】

長迫さんの事例は次の通りだ。中国電力の社内で、長迫さんと同学歴同期入社の事務系職員を賃金の高い方から順番に並べると、男性が高く、女性が低かった。そのデータを裁判で提出した。

だが最高裁は判決で、昇格・賃金で男女の格差はあるとしたものの、「男女が層として明確に分離していない」「男女を明確に区別していない人事考課の結果として格差が生じた」などとし、差別だと認めなかった。

「これは女性に対する間接差別です」と、長迫さんは主張する。間接差別とは、一見性別とは関係ないようだが、結果として女性に不利益になるような制度や慣行をさす。

人事考課制度も女性に不利益に働きやすいと長迫さんは指摘する。「たとえば『協調性』という評価基準では、自分の意思をはっきり主張し上司との論戦でも負けないような女性は協調性を欠くと評価されやすく、男性なら信念に基づいて行動すると評価されやすい。結果として女性に不利に働く評価項目が多く含まれている」と言う。

長迫さんは、「日本の司法では敗訴したが、条約の基準に照らしたらどういう判断になるかをぜひ知りたい。現役で働いている第1号として、個人通報制度で訴えたい」と力を込める。

意見交換会で、外務省総合外交政策局の鈴木律子首席事務官は、法務省も出席する研究会を開いて検討を進めていると回答。「CEDAWの審査の結果、国内の確定判決と異なる見解や、通報者に対する補償や損害賠償を求める見解、法改正を求める見解が出された場合にどう対応するのか、各省庁と調整する必要がある」とし、すでに批准した国の対応事例を調査していると説明した。

さらに、「一体何年検討を続けているのかというご指摘は痛いほど感じている。(長迫さんの事例も)導入の必要性に向けた説得のための題材として活用したい。導入に向けて前向きに働きかけていきたい」と述べた。

選択議定書は、自由権規約など他の人権関連の条約にもあるが、日本はすべて批准していない。

国内の人権状況に自信があるなら、政府は議定書を批准して堂々と審査を受ければいい。「女性活躍推進」をうたうなら、今まさに差別される立場におかれ、活躍の道を閉ざされている女性たちの声に耳を傾けることが先決だ。

(林美子・ジャーナリスト、6月23日号)

骨太方針は安倍政権お得意の“目くらまし”(鷲尾香一)

2017/07/03(月) 19:15

安倍晋三政権は6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(通称、骨太方針)を閣議決定した。

驚くべきは、経済・財政一体改革の進捗・推進の中において、経済・財政一体改革の着実な推進として「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、引き続き600兆円経済(GDP:国内総生産)の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す――と盛り込まれたことである。

安倍政権お得意の“目くらまし”と言わざるを得ない。

従来の財政健全化計画(経済・財政再生計画)では「国・地方を合わせた基礎的財政収支について、2020年度までに黒字化、その後、債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す」と目標が掲げられていた。

しかし、今回の骨太方針では、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化の達成と同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指すことになり、債務残高対GDP比の安定的な引き下げの重要性が増し、財政健全化の目標が厳格化したように見える。

だが、PBの黒字化達成よりも、債務残高対GDP比の安定的な引き下げの方がはるかに実現しやすい目標であり、20年度までPBの黒字化が達成できなくとも、債務残高対GDP比の安定的な引き下げは達成可能なため、政府にとっては言い逃れしやすい目標になっている。

つまり一見、財政健全化目標が厳格化したように見えて、その実、安易な達成目標が格上げされたという“目くらまし”なのだ。

「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」 は、どこまで引き下げるのか、という具体的な数値が明示されておらず、引き下げが実現されていれば、PBの黒字化より、はるかにハードルが低い。

たとえば内閣府の試算では、名目GDPが3%程度の平均成長率を前提とした経済再生ケースで、PBの黒字化は25年度までかかる見通しとなり、財政目標には到達しない。しかし、PBの黒字化に届かない状態においても、債務残高対GDP比の引き下げは続く。

もともと名目GDP600兆円の経済目標は、名目GDPで3.45%の成長が継続することを前提としているが、名目GDPで3%以上の成長、物価変動などを除く実質GDPで2%以上の成長が続けば、債務残高対GDP比は低下する。

もっとも16年度の実質GDP成長率が1.6%にとどまっており、“より達成しやすい財政健全化目標”の「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」すら、現状では、達成が困難な状況だ。

しかし、ここにも“抜け道”がある。政府の公表している債務残高はその含める債務の範囲によって定義が複数存在し、今回の目標対象となる「債務残高」について具体的に定義はなされていない。その定義次第では、GDP成長率が低成長で「債務残高対GDP比の低下」は達成可能なのだ。

そして、もっとも警戒しなければならないのは、PBの黒字化よりも達成可能な目標ができたことにより、財政規律が緩む可能性があることだ。つまり、財政拡張路線へと変更するための“目くらまし”だ。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。6月16日号)

小池百合子より舛添要一がマシな一点(佐高信)

2017/07/03(月) 19:08

『産経新聞』ソウル支局長(当時)の黒田勝弘と彼の地で会ったのは2005年の3月だった。

韓国のテレビに出て、
「独島は韓国のものですが、竹島は日本の領土です」
と悪びれることなく言うらしい黒田に私は好感を持った。

その黒田が客員論説委員となって2016年3月26日付の『産経』の連載コラムに次のように書いたという。

「ソウルの日本人学校は1972年に創立された。当初は都心の雑居ビルを借りた塾のような学校だった。80年に漢江の南の街はずれに畑地を購入し、運動場や体育館もある、ちゃんとした学校になった。(中略)それから30年後の2010年、学校が老朽化したため建て直しを機に移転した。(中略)新しい学校用地はソウル市が元の学校の土地と交換する形で提供してくれた。元の地域は地価が高騰していたため、差額で最先端の新校舎も建てられた。最初の土地購入は韓国政府のお世話になっている」

よく、これが載ったなと思うような『産経』のこのコラムを秀逸として引いているのは前都知事の舛添要一である。『都知事失格』(小学館)に舛添はこれを引き、そして黒田の次の結びも引用する。

「最近、東京の韓国人学校の移転先に都立高校跡地を提供する計画に反対、批判の声が出ているとの記事が本紙に出ていたが、こうした反対はまずい。ソウル日本人学校もお世話になっているのだから、ちゃんと実現してほしい」

デタラメな飛行のコウモリ・公明党

舛添がこのコラムを「干天の慈雨」として読んだのは、舛添が2016年3月16日に韓国人学校への用地貸与の方針を発表してから、嫌韓派からの猛烈なバッシングを受けたからだった。

右翼の街宣車などが都庁だけでなく、舛添の自宅にまで押しかけ、
「売国奴、国辱外交をやめろ!」
と大音量の拡声器でがなりたてた。最大で車両17台を連ねてやってきたこともあり、特に自宅周辺の住民には大変な迷惑をかけたという。

舛添が北京やソウルを訪問して展開した都市外交が気に入らなかったわけだが、特に元都知事の石原慎太郎のシンパは「親中派、親韓派の知事を排除せよ」と息まいたとか。

問題なのは石原と小池が、この点では一致することである。都知事になって小池が最初にやったのは、韓国人学校への援助反対の急先鋒、野田数(のだ・かずさ)を特別秘書に任命したことだった。野田は、小池が「都民ファーストの会」の代表になるまで、そのかわりを務めていた男である。

私は舛添を弁護するつもりはない。しかし、ヘイトスピーチがはびこる中で、韓国人学校への用地貸与を進めようとしたことは重要だろう。

舛添は前記の黒田のコラムを引用した後にこう書く。
「小池百合子知事は、この計画を白紙に戻すことを決めて韓国側にもその旨が伝えられたという。日韓関係を改善する一歩だったのに残念でならない」

この小池と公明党は都議選で手を組んだ。コウモリはまっすぐには飛べないトリだが、コウモリ党の公明党もデタラメな飛行を繰り返している。

『都知事失格』で舛添は、その公明党の裏切りを批判する。「与党として支援してきた私を弊履のごとく捨てた」というのだが、それは自業自得の側面もあるだろう。裏切り常習の公明党に乗っかってきたからである。いまさら泣き言を並べても仕方がない。

今度、「東京・生活者ネットワーク」も小池と手を結んだが、舛添が小池よりマシな一点は無視してもいいのか。私は多大の疑問を持っている。見逃してはいけないポイントだと思うからである。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、6月16日号)

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