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岩国基地は「米軍のハブ空港化」

2018/01/11(木) 17:27

質疑に応答する田村順玄市議(右)と福田護弁護士。(写真/星徹)

神奈川県横須賀市で12月9日、「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」の総会記念講演「原子力空母ロナルド・レーガンの艦載機が厚木から岩国へ移駐」が行なわれ、約50人が参加した。

米海軍横須賀基地を母港とする空母の艦載機は、これまで同厚木基地(大和市・綾瀬市)に駐留していた。米国との協議を経た日本政府は10年少し前、この艦載機を米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)に移駐させる方針を示し、着々と準備を進めてきた。そして今年の夏以降、約60機のうち半数強がすでに移駐している。

岩国市の田村順玄市議会議員(リベラル岩国)は講演で、「米軍が岩国基地を自由に使える体制ができつつある」とし、同基地が「米軍のハブ空港化」しつつあることに懸念を示した。

岩国基地では米軍機が急増し、周辺地域の騒音は激しくなりつつある。しかし、岩国市の財政は米軍再編交付金等にどっぷり浸かり、基地依存から抜け出せない状態だという。

続いて、第5次厚木基地爆音訴訟の福田護弁護団長は、「厚木基地周辺は住宅地が密集し、騒音への住民の怒りは広がっている」と語った。しかし、空母艦載機が岩国基地に移駐することについて、「在日米軍の機能が増大しつつある」とし、「騒音状態が改善するとはそう簡単に考えられない」と述べた。

(星徹・ルポライター、12月15日号)

加害者家族の支援考えるセミナーを開催 性犯罪の捉え方に地域差

2018/01/09(火) 17:04

人権擁護の対象に「犯罪加害者の家族」も、と訴える阿部恭子氏。(撮影/小宮純一)

犯罪加害者の家族を対象とした相談や同行支援を行なう組織を、全国で初めてNPO法人として設立したWorld Open Heart(阿部恭子理事長、仙台市)が毎年、人権週間に行なっているセミナーが12月7日、東京・新宿区であった。

2008年の組織立ち上げ以来、条例違反から強かんに至るまで約300件(再犯、冤罪含む)の性犯罪加害者の家族からの相談に応じてきたという阿部さんが講師を務めた。

「事件が報じられるたびに、親の育て方、教育がなっていないからだ――という議論が起きるが、WOH(前掲)は仮に加害者を過去に虐待していた保護者でも支援対象とする」と強調した。

また、性犯罪が厳罰化された今年の刑法改正については「全国からの相談に乗っていると、ジェンダーやセクシャリティなどの考え方には触れたこともない男尊女卑の文化が、依然として日常生活に根付いている地方がある。被害に遭った女性が短いスカートを穿いていたからだ、と話す加害者の親もいる。性犯罪に対する意識の地域間格差は大きく、その意味でも厳罰化は当然だろう」と述べた。

これまでの活動を通じた実感として「性犯罪の加害者を駆り立てているのは依存症というより劣等感だと思う」とも。「ごく普通に日常生活を送っていても、実は自分に自信がない。そういう自己否定の感情を弱者への性暴力で埋めようとする。自己を保つための暴力で、弁護士からの勾留中の働き掛けが重要だ」(阿部氏)

同会は加害者家族会を仙台、東京、大阪で開いているが、性犯罪グループの場合は、親と配偶者に分けて開催する。家族間の関係性が異なるからだという。阿部氏は「特に子どもは絶対にケアと支援が必要。『保護者やきょうだいが犯した犯罪に巻き込まれた子ども』という捉え方を各分野で共有すべきだ」と提言した。

(小宮純一・ジャーナリスト、12月15日号)

「12・7障がい者 辺野古のつどい」に全国から集結 市民運動に障がい者の視点を

2018/01/05(金) 17:03

沖縄・辺野古。障がい者が「すみません」と繰り返さないですむ社会を。(撮影/冨田きよむ)

「戦争が起こると一番先にやっかい者あつかいにされるのは障がい者」(後述する集会のチラシより)――それは数々の戦争や紛争で実証されつくしてきた。

12月3~9日の国際障害者週間に日程を合わせて、7日、沖縄県名護市辺野古・キャンプ・シュワブゲート前で「障がい者 辺野古のつどい」が開催された(主催・同実行委員会)。開会の午前11時のはるか前から県内はもとより、長野、滋賀、兵庫、愛媛各県などから車いすの障がい者ら約150人が続々と辺野古に集結した。

「障がい者がデモなどで声を上げるたびに、『車いすの乞食』、『めくらの乞食』と、街宣車に揶揄されてきた悔しさをどこにもっていけばいいのか悩み続けました」と、実行委共同代表の門屋和子さん。障がい者が市民運動に参加するとき、足手まといになるのではないかとの怖れが常に付きまとう。

同実行委共同代表の成田正雄さんは、「反戦運動の中に障がい者の声がない。命の重みを語る運動の中でともすると障がい者が顧みられてこなかった。今回の集いは、障がい者自らが主体となって命の重さを守る戦いの始まりだと言える」と、集会で叫んだ。

神戸で、脳性麻痺で車いす生活を送る大島秀夫さんは「三里塚のデモの時、途中で疲れ果てて止まってしまったら見捨てられたことが忘れられない。市民運動の中にこそしっかりと障がい者の視点がなければならない。だから辺野古に来て自分で声を上げたかった」と、障がい者としての口惜しさと平和に対する強い思いを話した。

家を一歩出た瞬間から「すみません」と繰り返して生きる障がい者が、大変な労力と体力を使って辺野古に集結した。障がい者が「すみません」と繰り返さなくても生きていける社会は外国の基地などない社会だと参加者は口々に主張した。

(冨田きよむ・フォトジャーナリスト、12月15日号)

森友で財務省がまた“嘘” ごみ撤去費用10分の1だった

2017/12/27(水) 11:57

地下埋設物処分費「84,372,643円」と明記されている近畿財務局の算定書。(撮影/片岡伸行)

ごみ撤去費用は8億円超どころか8437万円にすぎなかった――。学校法人森友学園(大阪市)への大阪府豊中市内の国有地売却を「適正」と言い続けている財務省の“嘘”がまた一つバレた。

12月7日に開かれた文科委員会・内閣委員会連合審査会で、森ゆうこ参議院議員(自由党)が示したのは、別の学校法人が同じ国有地8770平方メートルの購入を申し出た際に近畿財務局が作成した2012年7月20日付の「評価調書」。そこでは地下埋設物の処分費用は「8437万2643円」と算定されていた。この学校法人は「7億円前後で購入したい」と申し出ていたが、価格が折り合わず、購入を断念した経緯がある。

しかし、その翌年に森友学園が同じ土地の購入を申し出ると、近畿財務局は特例で10年間での貸付契約を締結(15年5月)。その後、「新たな地下埋設物」の撤去費用として8億1900万円を値引きし、1億3400万円で売却した(16年6月)。しかも、10年分割払いという特例だった。この間、14年12月には安倍晋三首相の妻・昭恵氏が森友学園の建設する小学校の名誉校長就任を了承し、財務省もこれを把握していた。

同じ敷地のごみ撤去費用がわずか4年で10倍になるはずがなく、会計検査院も11月22日の報告書で、8億円値引きの「算定根拠が不十分」と指摘していた。しかも、通常は、不動産鑑定書→審査調書→評価調書→予定価格調書という流れで販売価格を決定するところ、別の学校法人には作成していた「評価調書」を森友学園に対しては「失念」して作成せず。それでも財務省は「売却価格は適正」と言い張る。もはや見苦しい限りだ。

財務省にこの事実を認めさせた森議員は「良心的な事務方は、『完全に詰み』と言っている。森友、加計、詩織さん準強姦事件は国家私物化3点セット。安倍首相が辞めるまで徹底的にやる」と話す。

(片岡伸行・編集部、12月15日号)

『人民新聞』編集長が不当な勾留に抗議 「口座は私が管理しており無実」

2017/12/26(火) 10:48

抗議集会で発言する下地真樹さん、12月8日、大阪ドーンセンター。(撮影/浅野健一)

兵庫県警に「詐欺」容疑で逮捕され、生田署に勾留中の山田洋一『人民新聞』編集長の勾留理由開示裁判が12月8日、神戸地裁(毛受裕介裁判官)で行なわれた。山田さんは接見禁止になっており、逮捕から18日間、弁護人以外に会えておらず、傍聴席の支援者約80人の拍手と激励の声援に右手を挙げて「元気です」と応じた。

弁護団(主任・高木甫弁護士)は裁判官に「山田さんがどうやって証拠を隠滅するというのか具体的に説明を」「新聞社代表の山田さんが読者を見放して逃亡する可能性があるのか」と質問した。裁判官は「捜査中であり、答えない」と回答を拒否。傍聴人は「何のための勾留理由裁判か」などと激しく抗議、一人が退廷命令を受けた。

山田さんは約20分の意見陳述で「私の口座とカードは私の完全な管理下にあり、他人に渡した事実はなく無実だ。50人の警察官を動員しての逮捕、捜索は違法だ。公安警察は6月から捜査を始め、逮捕前に口座の調べなどを終えている。私が証拠隠滅のしようもない。刑事も私に聞くことがなくなって困っている」と述べた。また「逮捕で衣服をすべて奪われ、全裸にされた。名前ではなく番号で呼ばれ、事細かな指示規則を強制され、抗議すると懲罰房に監禁される。署内の移動の時にも、手錠・腰縄をされる」と非人間的な処遇を批判した。山田さんの発言に大きな拍手がたびたび上がった。

『人民新聞』の園良太編集部員、木村真・豊中市議らは裁判前に、神戸地検の髙﨑秀雄検事正と福井幸一検事へ宛てた「不起訴と即時釈放を求める要求書」を提出した。

同日、午後7時から大阪市内で緊急抗議集会が開かれ、約100人が参加。下地真樹阪南大学准教授は「人民新聞の読者を増やすことが、弾圧をはねのける闘いへの大きな力になる」と訴えた。

地検は11日、「被害者」の存在しないこの事件で起訴を強行した。

(浅野健一・ジャーナリスト、12月15日号)

トランプの北朝鮮政策で危機にさらされる日本だが首相の対応に自民党内は楽観

2017/12/25(月) 17:00

都民の危険にも小池都知事との連携が見えない玉木希望代表。(撮影/横田一)

トランプ米国大統領に近いとされる共和党の重鎮、グラハム上院議員の発言が日本にも波紋を広げている。「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との戦争になれば韓国や日本などで100万人規模の犠牲が出かねない」というCNNテレビでの質問に、「大統領は(日本や韓国の北東アジア)地域より米国を選ぶ」と答え、「北朝鮮のICBM級核ミサイルの完成前に米国は、日本に100万人規模の死者が出る恐れがあっても軍事オプションに踏み切る」とのトランプ政権の方針を語ったのだ。

しかも日韓が“捨て石(盾)”となる「米国本土防衛作戦(軍事オプション)」は、既に米国内にかなり浸透、可能性がさらに高まっているとの見方がある。

「『12月開戦説』への備えはどうする?」と銘打ったネットテレビの「みのもんたのよるバズ!」(9日放送)で明治大学の海野素央教授は、共和党支持者へのヒアリングで「申し訳ない。米国本土優先で日本が犠牲になる」と謝罪された話を紹介。トランプ政権の支持率低迷、イスラエルのエルサレム首都認定への国際的批判が重なって、「局面打開のために北朝鮮攻撃に傾きかねない」と分析した。

にもかかわらず、安倍首相は「米国第一・日本国民二の次」としか見えない属国的対応を続けている。「北朝鮮問題で日米は100%共にある」と繰り返すだけで、「韓国の事前同意なき軍事オプションは許さない」と米国に物申す文在寅大統領とは対照的なのだ。

それでも首相批判は自民党からは聞こえてこない。野党議員のパーティで中谷元・元防衛大臣を直撃、軍事オプションへの安倍首相の対応について「拒否するのか」と聞いたが、「そうならないようにやっています」という楽観論しか返ってこなかった。

トランプ大統領にNOと言う覚悟を問われても無回答だったのに「晋三・ドナルド関係は世界一」と称賛した山本一太参議院議員(先週号で紹介)と二重写しになったのは言うまでもない。

【希望と都知事の連携は?】

野党はどうか。「先制攻撃は国際法違反。認められない」と指摘した枝野幸男・立憲民主党代表は安倍首相の対米従属ぶりを批判したが、大塚耕平・民進党代表もグラハム上院議員の発言について、安倍首相に「米国は『自国の利益を犠牲にしてでも他国、たとえば日本の利益を守る国だ』と思っているのか」と聞いても明確に答えなかったと指摘した上で、「(米国第一で日本国民二の次の)不安を国民が持つのはあり得る話なので、(安倍首相)自身の考え方を可能な範囲で述べる努力を求めたい」(7日の会見)と述べた。

玉木雄一郎・希望の党代表にも5日の会見でグラハム上院議員の発言について聞くと、前回(11月26日)の会見と同様、「アメリカとすべて同じ行動をすることは結果として日本にのみ被害が及ぶ可能性があるし、わが国の国益に反する場合があるので慎重な対応が必要だと思っている」と日米の違いを強調したが、前代表の小池百合子都知事(希望特別顧問)と行動を起こすことには消極的。「死者100万人規模」という被害想定を受けて「都民の命を守る」という立場から小池都知事が玉木代表と一緒に「先制攻撃容認反対」などと官邸に申入れをする考えについて聞いたが、「特に話はしていない」と答え、小池氏との今後の面談についても明言を避けた。都政と国政から安倍政権を問い質す、希望の党に格好のテーマと捉えていなかったようなのだ。

米国軍事オプションを当然とする意見も元防衛官僚から出ている。徳地秀士・元防衛審議官は10月30日、北朝鮮問題のシンポジウムで「『我々はアメリカの軍事行動を回避することを考えないといけない』ということがそもそも良くないのだろうと思う」「アメリカが軍事行動をした時に韓国も日本もそれをサポートする。本当に日本も韓国も国際社会も全体が覚悟をしている強い姿勢を見せることが大事だ」と発言していた。

今後、野党がどこまで連携して、安倍政権の米国の軍事オプション追認を阻止できるのかが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、12月15日号)

森友・加計学園問題、国民訴訟制度を創設せよ(宇都宮健児)

2017/12/24(日) 07:30

大阪府豊中市の国有地が、ごみ撤去費用として約8億円を差し引いて学校法人森友学園に売却された問題で、会計検査院は11月22日、国が見積もったごみの処分量が過大であり「値引き額の根拠が不十分で、土地売却額算定の際の慎重な検討を欠いていた」とする検査結果報告を参議院議長に提出し公表した。

ごみの量は、国有地処分を担当する財務省の近畿財務局からの依頼で、土地を所有する国土交通省大阪航空局が試算したのであるが、財務省の佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)は国会答弁で、森友学園への国有地売却は適正な価格であったと繰り返してきた。

森友学園を巡っては、安倍晋三首相の妻の昭恵氏が小学校の名誉校長に就いていたことから、行政側が忖度して値引きにつながったのではないかとの疑いが浮上し、国会では野党から昭恵氏の証人喚問の要求がなされたが、安倍首相は、昭恵氏の関与を否定し、与党も昭恵氏の証人喚問を拒否し続けてきている。

森友学園の問題に関しては、市民団体が、背任容疑や公用文書等毀棄容疑、証拠隠滅容疑などで、佐川宣寿前理財局長や美並義人近畿財務局長などを東京地検に刑事告発しており、今後の捜査の行方をしっかりと監視していく必要がある。

ところで、地方自治法においては、普通地方公共団体の住民が、その財務行為の違法性をチェックし、損害を回復するために、違法な財務行為の差止め、損害賠償、不当利得返還などを求める「住民訴訟」が認められている。

ところが、普通地方公共団体以上に多額の税金が支出されている国については、違法な財務行為が明らかになっても、国民がこれを正す訴訟は認められておらず、そのため違法な財務行為が発覚しても、国の損害は放置される事態となっている。このような事態は、普通地方公共団体と比べて明らかに正義に反する。

国における財務行為の適法性の確保は国民にとってきわめて重要であり、法治主義・財政民主主義の観点や司法による行政の適法性確保の必要性の観点から、国レベルの住民訴訟制度の創設が求められている。

日本弁護士連合会や全国市民オンブズマン連絡会議は、このような観点から国民訴訟制度すなわち公金検査請求訴訟制度の創設を提案している。

具体的には、国民は、会計検査院に対し、国の財務行為について、これを特定し、その違法性、損害を指摘して検査を行なうように求めることができるものとし、会計検査院は、検査を行なった結果、違法な財務行為があると判断した場合には、関係者に対し、損害回復等の必要な措置を勧告するものとする。国民からの検査請求に対して、会計検査院が勧告措置をとらない場合、あるいはその勧告措置が十分なものではないとして納得できない場合には、国などを被告として必要な措置をとるよう請求する訴訟を提起することができる制度である。

森友・加計学園疑惑が大きな社会問題になっている今こそ、政府、国会は、国民訴訟制度の創設に着手すべきである。

(うつのみや けんじ・弁護士、12月8日号)

貧困ビジネス施設での入居女性虐殺に抗議――「野宿者なめるな」渋谷でデモ

2017/12/23(土) 15:02

参加者は、ダンボール製のさまざまなプラカードでアピールした。(撮影/金浦蜜鷹)

NPO法人「さくら福祉推進協会」が運営する無料低額宿泊所に入居していた女性が施設長に殺害されるという8月28日の事件を受け、11月27日、野宿者や関係者が東京・渋谷で抗議デモをした。無料低額宿泊所とは、生活困窮者に宿や食事などを提供する施設のことで、利用者の9割以上が生活保護を受給しており、貧困ビジネスの温床となっている。

主催「宮下公園ねる会議」、共催「ノラ」「渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合(のじれん)」で行なわれた「野宿者をなめるな!生きる力を奪うな! さくらグリーンハウス殺人事件を許さない 渋谷区抗議デモ」には、約30~40人が参加した。参加者は「劣悪施設へ送るな、渋谷区」「女性野宿者を狙うな」と抗議の声を上げ、「野宿の生活、貧困者の権利」などと沿道の人々に訴えた。

主催者によれば、渋谷区生活福祉課からも同NPOが運営する施設を含む貧困ビジネスに野宿者らが送り込まれたことがあり、その劣悪な環境はよく知られているという。また行政は、そのような施設への入所と引き換えに、野宿生活を断念させるよう圧力をかけているとのことだ。法律上、生活保護はアパート入居などの居宅保護が原則だが、同課は保護費に収まる近隣物件の不足に加え、野宿者は住民票を持たないので契約が難しいことを挙げて弁解している。

主催スタッフの小川てつオさんは、虐殺事件を被告人の資質だけに還元してはならないとした上で、「福祉の先進性を宣伝している渋谷区は、『さくら』同様の貧困ビジネスを現在も野宿者に使用させている。野宿者をくいものにする業者と公園などからの排除を優先する行政が結託している状態だ。今後は、東京都や国に対しても強く責任を追及する」と語った。

詳細は、主催者側のブログ(URL http://minnanokouenn.blogspot.jp/)で閲覧できる。

(安井あきら・ライター、12月8日号)

女性を結婚・出産に追い込む危険な企業子宝率~セクハラパワハラが心配!?~(斉藤 正美)

2017/12/22(金) 17:22

安倍政権が2013年から膨大な国の予算を投入し、都道府県で進めてきた婚活支援。この「官製婚活」の中で、複数の自治体が重宝する「企業子宝率」という公的な統計指標がある。子を「宝」と謳うこの指標は、結婚・出産の圧力になっているばかりでなく、指標として大きな問題を抱えている。そのカラクリを徹底取材した。

2017年、富山県が行なった「子宝モデル企業」の表彰式。壇上には満面の笑みで、男性ばかりがズラリ……。(撮影/斉藤正美)

2017年2月22日。富山市内にある立派な会場で、金屏風のひな壇に石井隆一富山県知事を囲んで居並ぶスーツ姿の管理職男性6人が表彰状を広げて晴れやかに記念撮影していた。看板には「富山県子宝モデル企業表彰式」などとある。子育て支援環境に優れているという触れ込みの「企業子宝率」が昨年度高かった企業を表彰する式なのだが、男性ばかりの式が、この指標の本質を示唆していた。同日は、県内表彰企業6社の社員など約100人が会場を訪れた。

華やかにスポットライトが当たる壇上を管理職男性たちが足を広げて陣取る傍ら、女性社員たちは後方に座り、帰りもそそくさと無言で去っていった。「企業子宝率」の考案者である渥美由喜氏は表彰式後、「イクボス(部下の、仕事と育児の両立を支援する上司)が増え、県内企業が活性化していきますように」と、表彰された管理職男性たちにエールを送った。一体、誰のための仕事と子育ての両立支援なのだろうか。

政府も後押し

「企業子宝率」は、従業員(男女問わず)が企業在職中にもつことが見込まれる子どもの数である。通常、出生率調査は女性のみが対象だが、渥美氏は、企業の子育てしやすさを指標化するには「男女ともに対象」とした方がよいとしている。各自治体は、希望する企業に社員の子どもの数などを調べてもらい、「企業子宝率」を導きだし、富山のように、上位企業を表彰したりもする。

現在、福井や静岡、鳥取、富山、青森県の五つの地方自治体で使われ、政府の白書や審議会資料などでしばしば紹介されるほどだ。使用年数は、最長7年の福井県から2年の青森、富山県まで幅がある。

地方自治体がこうした指標を活用し、結婚・出産を奨励するのは、安倍首相が15年に提唱したアベノミクスの経済政策、新三本の矢による国民「希望出生率1・8」(国民の希望が叶った場合の出生率)の閣議決定(16年)の影響が少なくない。既婚者も独身者も平均2人以上の子どもを希望するという10年当時の調査が根拠だ。

この数値目標を含む人口政策について、厚生労働省の施設等機関である国立社会保障・人口問題研究所の阿藤誠名誉所長は『学術の動向』(日本学術協力財団)17年8月号掲載の論文「日本の少子化と少子化対策」の中で、「先進諸国では例外的であり、日本では1941年の人口政策確立要綱以来である」と警告を発している。人口政策確立要綱とは、「婚姻年齢(24・3歳)を3年早くし、出生数平均を5人とする」という戦中の出産奨励策だ。

阿藤名誉所長は、安倍首相の数値目標設定について、「一歩間違えると、自治体レベルで個人(とりわけ女性)に対する結婚・出産圧力として働き」、「妊娠・出産に関わる女性の自己決定権に抵触する恐れがある」とも指摘している。「企業子宝率」はいわば、国の数値目標を自治体レベルに落としたもので、女性にとってはより切実な結婚・出産圧力となっている。

政府が白書や審議会資料などで「企業子宝率」を紹介していることについて、内閣府の見解を聞くと、「企業の子育て支援環境を図る指標」と肯定的に指標の意義を捉えていた。審議会では、「企業の子育て支援を促す取組」の例として紹介しているという。政府は、「企業子宝率」を使用する自治体に内閣府の地域少子化対策重点推進(強化)交付金をばら撒いており、山梨県(13~14年補正)、静岡県(14年補正)、三重県(13~14年補正)、鳥取県(13・16年補正)、佐賀県(13年補正)に交付金を投入したとも回答した。

「公共性を欠く指標」

「企業子宝率」がこのように重宝されることには大きな問題がある。第一に、阿藤名誉所長も指摘している通り、結婚・出産の圧力になる。第二に、職場で調査をかけられる社員、とりわけ、同性愛者、子どものいない人、もちたいがもてない人、不妊治療中の人などさまざまな個人事情を伴う社員にとってプライバシーの侵害、セクハラ、パワハラになりかねない。

第三に、こうした懸念があるにもかかわらず、渥美氏が自身の「知的財産」であることを理由に、算出方法の全貌を公開していないことだ。「日経ビジネスオンライン」15年3月9日付記事によると、「企業子宝率」は最終的に渥美氏が「(数値の)補正を行う」ことで導き出されるというが、非科学的な「補正」があったとしても、それを専門的に検証しようがない。

東京大学大学院の北田暁大教授(社会学)は、「およそ科学的とは言い難い作成プロセスで公共性を欠く指標を地方自治体が使うことが問題だ」と指摘する。「『知的財産』だから計算方法を公開せず、保護の対象にせよなんて検証のしようもない。データ改竄、恣意的解釈以前の、科学としての最低限度のマナーを満たしていない」と批判した。

「企業子宝率」調査を行なってきた全国10の自治体及び1一般社団法人(両方を団体とする)を対象に、筆者と本誌が7月から11月に、使用状況(図参照)や調査手法の妥当性などの見解を尋ねたところ(大津市は無回答、一般社団法人は岐阜県経営者協会)、「渥美氏の意向」(4団体)や「知的財産だから」(3団体)などの理由で自治体も計算方法を公開していない。

「知財登録は検討中」

富山県議の火爪弘子氏。プライバシー侵害の観点から「企業子宝率」調査の中止を求めているが、富山県は来年度も予算を確保する意向という。(提供/火爪弘子)

だがそもそも、「企業子宝率」は知的財産登録すらされていないことがこのたび明らかになった。富山県議会の火爪弘子議員(共産党)が9月の同議会経営常任委員会で、厳しく追及すると、県側は、知的財産登録がされていないと答弁したのだ。本誌も渥美氏本人に確認すると、11月22日付で「知財登録するかどうかは検討中」との回答があり、現在は登録されていないことを認めた。しかしながら、計算方法は公開しないという。

総務省統計局は、統計法第2条3項にもとづき、「企業子宝率」は公的統計とみなされるとしている。しかし計算方法公開などの透明性の確保は、国レベルで行なう統計調査に対してしか義務付けされておらず、自治体での調査は県条例の定めるところによる。ある行政法の専門家は、「自治体も国にならって、統計の作成方法を公開させるなどのガイドラインを作成する必要がある」としている。

また、プライバシー侵害の懸念も払拭できていない。筆者と本誌の調査では、各自治体は「趣旨説明、注意喚起」(富山、静岡、鳥取)、「個人名を表記しない」(青森、山梨)という方法でプライバシーへの配慮をしていると回答した。

だが、『仕事と家族』(中公新書、15年)などの著書がある立命館大学の筒井淳也教授(家族社会学、計量社会学)は、「社員のプライバシーに踏み込む調査になるので、調査拒否に関する方針がちゃんと企業の調査担当者に伝えられているかが問題になる。そもそもこういった調査を実施すること自体、社会調査倫理上、問題なしとは言いがたい」と危惧する。

「男性9割」の企業を表彰

さらに、「企業子宝率」の高い企業が本当に子育てしやすい職場環境であるかどうかについても疑問点が多い。富山県の「子宝モデル企業表彰式」当日、「企業子宝率」が高いと表彰された2社が子育て支援策などについての事例を発表したが、驚いたのは、2社とも男性従業員が約9割を占めていた。このうちの1社である県内の電力会社は、「イクボス宣言」をしているというが、役職者に占める女性比率はわずか1・8%である。

筒井教授は、「男性の多い企業で子宝率が高くなるのは、本末転倒というより、むしろ指標の趣旨にそった結果。日本では、まだまだ男性の終身雇用的な働き方を推進する企業で『出生率』が高く、そういった企業では女性は出産を機に退職している可能性もある。出生率の高さと女性のアクティブさは別問題」と指摘。「先進国では、女性の活発な経済活動がみられる国で出生率が高いという傾向。日本では依然として女性の就業と出生率がトレード・オフ(両立しない関係)になっていることが問題だ。したがって、現状の課題(性別分業を前提としないと子どもを持ちにくい)をこの指標で解決、というわけにはいかない」とした。

富山の3月県議会で井加田まり議員(社民党)が「子宝モデル企業」普及の意義を問うた際には、石井知事は、買いものした生ものを帰宅するまで社内に置けるよう冷蔵庫を備えた企業の取り組みを称賛するなど、本質からズレた回答をした。県予算ではなく、民間が自助努力で少子化を改善せよとの本音が吐露された形だ。

「男性従業員の割合が高い企業の子宝率も、子育てしやすい職場環境を示している」と考えるか、との筆者と本誌の問いに対しては、現在使用中の5自治体のうち4自治体は、「どちらとも言えない」などと懐疑的だった。

出産奨励の動きが活発化

「多子化推進プロジェクト」を宣伝する日本賢人会議所のホームページ。写真は、当時一億総活躍担当大臣だった加藤勝信厚労相に提言を渡す場面。

一方、「企業子宝率」を取り巻き不穏な動きが活発化している。人工妊娠中絶に反対する活動家を呼ぶセミナーや、「多子化」に向けた政策提言等をする日本賢人会議所という民間団体が、「子宝」という発想を奨励し、出産を後押しする提言を政府関係者に提出したのだ。

同会議所は、橋本龍太郎元首相の妻、橋本久美子氏が会長だ。16年に「多子化」社会の実現に向け、(1)企業子宝率の考え方をベースにした「子宝ファンド」の提案、(2)母体保護法の見直し(「又は経済的理由により」の文言を精査) ――を含む提言をまとめている。ホームページには、提言を16年12月に加藤勝信一億総活躍担当大臣(当時)に提出し、17年1月に内閣府子ども・子育て本部の角田リサ少子化対策担当参事官と意見交換したと報告(写真)されている(内閣府も事実を認めている)。

この「子宝」という発想を奨励し、人工妊娠中絶の禁止を視野に入れた「産めよ、殖やせよ」提案は、一方で石川県加賀市をはじめとする「生命尊重の日」条例制定の動きがあることに鑑みれば、戦時の政策の再来とも言える危険な動きである。今後これが政策展開につながらないか、しっかりとウォッチすると同時に、出産についての国家の数値目標の下、地方自治体が個人のライフスタイルの管理に入り込んでいく「企業子宝率」の危うさに警鐘を鳴らしていく必要がある。

(さいとう まさみ・富山大学非常勤講師。12月8日号)

安倍首相と黒田日銀総裁のほころび(鷲尾香一)

2017/12/21(木) 17:20

「最大の理由は、携帯電話の通信料が大幅に下がったこと」

黒田東彦日銀総裁は、10月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、17年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通しを7月時点の1.1%上昇から0.8%上昇に下方修正した理由について、こう述べている。

黒田総裁は就任時から開始した“異次元の金融緩和”の目標に消費者物価の2%上昇を掲げているが、達成時期について先送りを繰り返し、現在は「2019年度頃になる可能性が高い」とコメントしている。

確かに、総務省が12月1日発表した10月の全国消費者物価指数によると、携帯電話の通信料は前年同月比5.2%下落し、25カ月連続の下落となっている。

だが、この携帯電話料金の引き下げは、2015年9月に黒田総裁の後ろ盾である安倍晋三首相が、経済財政諮問会議で携帯電話料金の負担軽減策検討を指示したことに端を発している。

指示を受けた当時の高市早苗総務相が有識者会議を設置、同年12月に利用量の少ないユーザー向け料金の導入や格安スマートフォンを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)との競争を促進すべきだと提案した。これを受けた大手携帯電話各社が料金値下げに踏み切ったという経緯がある。

当時、安倍首相の携帯電話料金の引き下げ検討指示に対して、黒田総裁は、「消費者の選択の余地を拡大し、実質所得を増やすことは、長い目でみて、物価を好循環の下で2%に向けて引き上げていく面でもプラスになる」と支持する発言をしている。

しかし、携帯電話料金の引き下げによる肝心のプラス効果は、いまだに現れておらず、むしろ、後ろ盾でもあり、盟友でもある安倍首相の携帯電話料金の値下げが、「消費者物価が上昇しない理由」に使われ、その阻害要因にされてしまった。

さらに、黒田総裁が消費者物価の阻害理由として挙げたのが、スーパーなどの値下げ合戦とインターネット通販の普及だった。

黒田総裁が目指す消費者物価2%上昇が、デフレ経済からの脱却からの象徴だとすれば、スーパーの値下げ合戦や、その利便性、低価格ゆえに普及が拡大しているインターネット通販などは、「消費者の選択の余地が拡大している一方で、実質所得が増加していない」ことの結果でもあろう。

折しも、GDP(国内総生産)が7四半期連続で前期比プラス成長となり、2019年1月には戦後最長で73カ月続いた「いざなみ景気」を追い越す可能性が出てきた。これを受け、政府では“デフレ経済脱却宣言”を行なうべきとの声まで出始めている。

確かに、デフレ脱却を判断するための重要な四つの指標と言われる(1)GDPデフレーター(2)単位労働コスト(3)GDPの需給ギャップは、いずれもプラスに浮上して推移している。しかし、肝心の消費者物価指数はプラスではあるものの、黒田総裁が目標とする2%にはほど遠いのが実態だ。

この状況でデフレ経済脱却宣言が行なわれれば、安倍首相の盟友である黒田総裁の立場は微妙なものになろう。そこには、政府と日銀の綻びが見え隠れする。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。12月8日号)

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