(訳者前書き)以下はイスラエルのHaaretzのサイトの論評を訳したものです。(訳者 としまる)
(haaretz)ガザの戦争犯罪は、ネタニヤフだけを非難すればいいという問題ではない。沈黙を守ってきたイスラエル人も同罪だ
ハニン・マジャドリ
2025年1月16日
停戦を目前にしており、イスラエルはその成果を誇示している。ガザ地区の破壊、何千人もの罪のない市民の殺害、そしてヒロシマを彷彿とさせる爆撃である。イスラエル軍兵士は今では世界の一部で最も嫌われる者たちになっており、その次に嫌われているのがイスラエルの民間人だ。海外では、イスラエル人は 「ジェノサイダー 」や 「赤ん坊殺し 」と呼ばれている。そして、これらの「成果」の後に、一年前に署名することができたはずの合意に達し、やっとイスラエル人もパレスチナ人も多くの苦しみを免れることができたように見える。
いつものことだが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相だけを非難する人々がいる。しかし、この非難の図式は単純ではなく、見かけよりもはるかに問題の多いものだということを私たちは皆知っている。なぜなら、問題は首相に留まらないからだ。ほとんどすべての人が問題なのだ。問題なのは、人々であり、「基盤」であり、このシステムなのだ。イスラエルを世界から孤立させたのは一人の人間のせいではなく、ネタニヤフ首相よりずっと以前から続いているポリシーなのだ。
ネタニヤフ首相のせいにするのは都合がいい話で、これによってイスラエルの社会や文化は責任から免れることになる。イスラエルが戦争犯罪、不正、人権侵害の長い歴史を持っていることは、長年イスラエルの動向を追ってきた人なら誰でも知っている。アムネスティ・インターナショナルが2022年2月に発表したイスラエルが占領地やイスラエル国内でパレスチナ人に対するアパルトヘイトを行っていると非難した報告書に対して、この国の人権擁護者たちがどのように反応したかを私は今でも覚えている。この報告書に反論した者の一人は、この報告書に対して「腹に一発くらわす」と語った。
そして、国際的な専門家たちがイスラエルはジェノサイドの罪を犯していると結論づけたとき、イスラエル人はジェノサイドに関心を示さなかった。むしろ、イスラエルが世界でどう受け止められるているのかにしか関心を払わなかった。イスラエルのイメージがどのように傷つくか、兵役後のバックパッカー旅行の儀式や政治家の豪華な遊興旅行にどんな影響があるか、しか関心がなかったのである。大規模な死、甚大な破壊、恒久的なトラウマ、これらすべては、イスラエルの自己イメージに影響を与えやすい風景、単なる背景でしかない。
イスラエルの犯罪に完全に加担している自由民主主義者たちが、この現実から距離を置く才能には驚かされる。彼らに言わせれば、ストーリーはこういうことになる。 最初に右翼が現れ、次に入植者が現れ、それから過激派入植者と彼らの暴力について議論するようになった。その後、 イタマール・ベン・グヴィールとベザレル・スモトリッチがやってきて、今度はまたネタニヤフ首相がやってきて、またベン・グヴィールとスモトリッチがやってきている。それに、ガザ空爆を楽しんでいる様子を記録している兵士が何人もいるのだから、どうしようもない。いずれにせよ、こうしたことは私たちの問題ではない、というわけだ。
イスラエルの極右国家安全保障大臣イタマール・ベン・グヴィール(中央)は、2025年1月16日木曜日、エルサレムの事務所で、イスラエルがガザ停戦を承認すれば辞任するとメディアに声明を発表した。
戦争期間中、イスラエルのリベラル派が、実際に起きた残虐行為や軍の残忍な行動を前にしても耳を貸さず沈黙し、右派政党に投票した人々と同じように犯罪に加担していること、残虐行為が彼らの目と鼻の先で起きていることを理解しようとしなかったことは、イスラエルの "賢明な陣営 "の最悪の瞬間として記憶されるだろう。
しかし、世界は「ネタニヤフ」と「イスラエル人」を区別しない。「ベン・グヴィールとスモトリッチ」と「リベラル派」の区別もない。世界から見れば、ガザで起きていること、イスラエルがガザでどのように軍事行動しているのかということは、ネタニヤフを政権に選び、彼に無益な戦争を続けさせているイスラエルだからこそ起きていることなのだ。
したがって、沈黙を守った人々、他人の子どもを殺すために子どもを送り込み、戦争終結を要求しなかった人々もまた、責任を負っているのだ。多くのイスラエル人が銃撃を好み、そして自分たちのイメージを嘆くとき、それはイメージの問題ではなくモラルの問題なのだ。ブラジルやインド、 オランダで兵士が 逮捕され始めている事実をネタニヤフ首相のせいにしても意味がない。彼ではなく、あなたが悪いのだ。
https://www.haaretz.com/opinion/2025-01-16/ty-article-opinion/.premium/…