4月13日、韓国の最高裁にあたる大法院が画期的な判決を出しました。Googleが韓国国内でどのような個人情報を収集し、これを米国の情報機関に提供してきたのかについて、韓国の活動家達がGoogleを相手に情報公開を求めて提訴していました。Google側は、この提訴に対して米国内の法律を理由に、開示を拒否し、裁判でも一審、二審とも原告敗訴でしたが、大法院が逆転勝訴の判決を出しました。以下は、裁判を提訴した団体(経済正義実践市民連合、国際アムネスティ韓国支部、進歩ネットワークセンター、共に生きる市民行動)からの判決を歓迎する論評の日本語訳です。

先ごろも、漏洩された米国防総省の機密文書のなかに韓国での盗聴の事実が明らかにされており、声明でも「米国情報捜査機関の全世界を対象とした無分別な監視が続いているのではないかと懸念される」と述べられています。Googleは日本においてもサービスを提供していますが、米国の情報機関との連携がどのようになっているのかは不明です。日韓の間では市民運動、社会運動の連携が活発ですから、韓国側だけでなく日本側の情報を米国情報機関がどのように把握しているのかという問題は、日韓をまたがる人権の問題であり、私たちとしても重大な関心をもち、具体的な防衛策をとることにも取り組む必要あると思います。今回の裁判の勝利を心より歓迎します。(JCA-NET理事、小倉利丸)

追記:大韓民国法院のサイトに「判決」と「報道資料/言論報道解明」がpdfファイルで公開されています。
▼大法"グーグル、第三者に渡した韓国利用者情報内訳公開" - 言論報道判決
https://www.scourt.go.kr/portal/news/NewsViewAction.work?currentPage=&s…
▼大法院宣告2017ダ219232損害賠償(其)事件に関する報道資料 - 報道資料
https://www.scourt.go.kr/portal/news/NewsViewAction.work?currentPage=&s…
「判決」と「報道資料」の抄訳を下記の声明の後ろに掲載しました。井上和彦さんから翻訳の提供をいただきました。ありがとうございます。

[論評]Googleに対する個人情報閲覧権訴訟の最高裁判決を歓迎する

By mana2022 2023/04/13

[論評]Googleに対する個人情報閲覧権訴訟大法院判決を歓迎する

By mana2022 2023/04/13

多国籍企業に対する個人情報閲覧権を認定した大法院判決を歓迎する!
インターネット企業を通じた情報機関の無分別な査察から利用者の権利を保護しなければ

今日(2023年4月13日)、大法院は、韓国の人権活動家らがGoogleを相手に個人情報及びサービス利用内訳の第三者提供現況を提供すべきことを請求した事案で、原告の閲覧権を保障せよという判決を下した(大法院2023年4月13日宣告 2017ダ219232判決)。 私たちは、多国籍企業であるグーグルに対する韓国利用者の個人情報閲覧権を認定した大法院の判決を歓迎する。特に、今回の最高裁判決は、1、2審で「米国法令で非公開義務があると規定した事項については公開する義務がない」としたことを覆し、外国法令があるにもかかわらず、非公開にしなければならない正当な事由がないか、非公開事由が消滅した場合には、該当情報を閲覧、提供しなければならないとした。グーグルは、大法院判決に基づき、韓国の人権活動家たちのイーメール等の個人情報を米国の情報捜査機関に提供したことがあるかどうか及びその内訳を提供しなければならない。

今回の訴訟は、2013年6月、エドワード・スノーデン氏の暴露により、Googleが米国家安全保障局(NSA)のプリズム(PRISM)システムを通じて海外利用者の個人情報を米当局に提供し、これを通じてNSAが善良な市民らの個人情報まで大量に収集、分析していることが知れわたったことがきっかけとなった。経済正義実践市民連合、国際アムネスティ韓国支部、進歩ネットワークセンター、ともにする市民行動所属の人権活動家6名は、Googleに自身らの個人情報をNSA等の第三者に提供した内訳を閲覧、提供することを要求したが、Googleは具体的な答弁を提供せず、よって訴訟を提起することになった。

今回の判決の最も大きな意義は、Googleのような多国籍企業をして利用者/消費者の権利を保障するまでした点である。全世界的にサービスを提供するインターネット企業が約款で本社所在地(外国)に専属的裁判管轄合意をするのが一般的だが、このような場合にも国内にいる利用者が、消費者として権利侵害が問題となる場合、国内法院に該当海外事業者を相手に訴えを提訴することができるという点を明確にしたものである。

また、準拠法合意にもかかわらず、強行規定であるわが国の「旧情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」第30条第2項、4項により、情報主体の閲覧権等の権利を保護され得ると判断した。Googleのようなグローバルビッグテックが各国の個人情報保護法制に基づいて利用者の個人情報の権利を保護しなければならないということは、すでに国際的な規範となっている。

国内法人であるGoogle Koreaもまた情報主体の個人情報閲覧権を保障すべき責任があるとした。海外事業者が国内支社/事務所と内部的にどのような関係設定をしたとしても、外形上実質的に国内支社/事務所が海外事業者のサービス提供に関与していれば、国内支社/事務所に対する直接的な権利行使も可能であることを明らかにしたのだ。これもまた国内利用者らの権利保護及び改善に肯定的な影響を及ぼし得る。一方、すでに国内個人情報保護法及び情報通信網法等では、一定規模以上の海外事業者に対して国内代理人を置くように義務化している。

特に、今回の大法院判決で注目すべき点は、1、2審と異なり、外国の法令で個人情報の提供内訳に対する非公開義務を付与しているとしても、これが韓国法上、義務履行を拒絶する無条件的根拠になることはないと判決した。外国の法令が大韓民国の憲法と法律に合致するか、個人情報保護の必要性に比べ、該当外国法令を尊重しなければならない必要性が著しく優越しているか、該当外国法令による実質的に〔原文ママ〕非公開義務を負担するかなどを総合的に考慮しなければならないということだ。これは、これまで海外事業者が外国の法令に基づき、韓国法上の保護措置や韓国法に基づく利用者の権利行使に応じなかったことが、外国の法令が韓国の法より優位に立つ結果になり得るという点を考慮したものとみられ、韓国法院が韓国でサービスを利用する利用者の権益保護のため実質的に外国の法令に基づく義務を審査することができることを明らかにしたものである。

さらに、外国法令に基づく非公開義務が認定されるとしても、国内利用者の個人情報提供内訳公開要請に対し、その項目として具体的に特定して制限あるいは拒絶事由を通知しなければならず、非公開事由が終了した場合には、国内利用者の個人情報提供内訳公開要請に応じなければならないという点まではっきりと明らかにしたことは大きな意味がある。海外事業者が外国法令の存在を理由に包括的に国内利用者の個人情報関連閲覧、提供要請を拒絶していたことが許容されることなく、韓国法院がこれを具体的に審理し、利用者の権利が実現され得る余地を開いてくれたのである。

今回の大法院判決により、今後、国内利用者の権利行使について、海外事業者が外国法令を根拠に応じない場合、該当外国法令の違憲、違法、適正性の有無、国内利用者の権利保護との均衡等を総合的に考慮した法院の権利救済が可能になるものとみられる。 これにより、海外事業者の国内利用者らに対するサービス提供及び国内利用者らに対する権利保障に実質的な変化があることを期待する。

最近、米国機密文書の流出及び韓国に対する盗聴の論難を見ると、この訴訟の契機になっていた米国情報捜査機関の全世界を対象とした無分別な監視が持続しているのではないかと憂慮される。今回の訴訟は、無分別なインターネット監視に対応する利用者の抵抗としての意味があり、私たちは今後も世界の人権団体とともに連帯して対応していくだろう。

2023年4月13日

経済正義実践市民連合、国際アムネスティ韓国支部、進歩ネットワークセンター、ともにする市民行動
出典:https://act.jinbo.net/wp/47228/
韓国語の声明を機械翻訳(DeepL)で日本語に訳したものです。不正確なところがあるかもしれません。お気づきになった方がおられれば、toshi@jca.apc.org までご連絡ください。(4月18日改訳)

謝辞:当初の翻訳について訳文の不備をご指摘いただき改訳しました。ご指摘いただいた皆様、ありがとうございます。


判決書

本判決書は、判決書インターネット閲覧サイトから閲覧・出力されました。本
判決書を利用し、事件関係人の名誉や生活の平穏を害する行為は関連法令によ
り禁止されています。非実名処理日付け:2023-04-13

大法院
第三部
判決

事件 2017ダ219232 損害賠償(其)等

原告、上告人兼被上告人
1.A
2.B
3.C
4.D
原告、被上告人
5.E
6.F
原告ら訴訟代理人 法務法人 イゴン 担当弁護士 ヤン・ホンソク
被告、被上告人兼上告人
1.G会社[変更前商号:H会社]
2.I有限会社
被告ら訴訟代理人 弁護士 クォン・オゴン、キム・ヨンサン、イ・サンユン

原審判決 ソウル高等法院 2017年2月16日 宣告 2015ナ2065729 判決

判決宣告 2023年4月13日

主文

原審判決の原告A、B敗訴部分のうち、被告G会社に対する部分を破棄し、こ
の部分の事件をソウル高等法院に差し戻す。

原告A、Bの被告I有限会社に対する上告、原告C、Dの被告らに対する上告、
被告G会社の原告A、Bに対する上告及び被告I有限会社の原告らに対する上
告をすべて棄却する。

上告費用のうち、原告C、Dと被告G会社との間に生じた部分は原告C、Dが
負担し、原告A、B、C、Dと被告I有限会社との間に生じた部分は各自負担
し、原告E、Fと被告I有限会社との間に生じた部分は被告I有限会社が負担す
る。

理由

上告理由を判断する。〔※以下、項目の見出しのみ訳出〕

1.この事件の専属的裁判管轄合意の有効当否について

2.消費者契約に対するこの事件の専属的裁判管轄合意の効力について

3.消費者契約に対する準拠法合意の効力等について

4.旧情報通信網法上の閲覧・提供要求に対する拒絶・制限の可否及びその範
  囲等について

5.旧情報通信網法上の個人情報と情報通信サービス提供者の範囲等について

6.被告Iに対する慰謝料の認定当否について

7.原告C、Dの残りの上告理由について

8.破棄の範囲(原告A、Bの敗訴部分のうち被告Gに対する部分)

9.結論


大法院 2017ダ219232 損害賠償(其)事件報道資料

                  大法院公報研究官室(02-3480-1451)

大法院3部(主審大法官ノ・ヂョンヒ)は、グーグルサービス利用者である原
告らが被告グーグルインコーポレイテッド(以下「被告グーグル」)、被告グー
グルコリア有限会社(以下「被告グーグルコリア」)を相手に個人情報及びサー
ビス利用内訳の第三者提供現況公開及び公開拒否に対する慰謝料名目の損害賠
償を請求した事案において、

(1) 原告1、2が被告グーグルと締結したグーグルサービス利用契約は旧国際
司法第27条第1項第1号に基づく消費者契約であるため、上記原告らが大韓
民国に被告グーグルに対する訴えを提起したことは、専属的裁判管轄合意にも
かかわらず適法であり(旧国際司法第27条第4項)、

(2) 上記原告らは準拠法合意にもかかわらず、強行規定であるわが国の「旧情
報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」第30条第2項、4項の保護
を受けることができ(旧国際司法第27条第1項)、

(3) 旧情報通信網法に基づく利用者の閲覧・提供要求権(第30条第2項)は、
憲法上、個人情報自己決定権を具体化したものとして内在的限界があるため、
情報通信サービス提供者等は正当な事由がある場合には、その閲覧・提供を制
限するか拒絶することができ、特に外国法令が非公開義務を付与する場合には、
そのような外国法令の内容も正当な事由の有無を判断するにおいて考慮できる
としながらも、

(4) そのような外国法令の存在だけで正当な事由を認定することはできず、該
当外国法令に基づく非公開義務が大韓民国の憲法、法律等の内容と趣旨に合致
するのか、個人情報を保護する必要性が〔原文ママ〕比べてその外国法令を尊
重する必要性が著しく優越しているのか、該当法令で要求する非公開要件が充
足され実質的に非公開義務を負担しているのかなどを総合的に考慮しなければ
ならないとし、

(5) さらに、正当な理由が認定される場合にも、情報通信サービス提供者等は、
その項目を具体的に特定して制限・拒絶しなければならず、特に国家安保、犯
罪捜査等の事由で外国の捜査機関等に情報を提供したとしても、そのような事
由がすでに終了するなどで上記情報収集の目的にこれ以上妨害にならない限り、
利用者に該当情報の提供事実を閲覧・提供しなければならないとし、

これと異なり「米国法令で非公開義務があることで規定した事項については被
告グーグルがその情報の提供現況を原告1、2に公開する義務がない」とした
原審判決には、関連法理を誤解して必要な審理を尽くさなかった過ちがあると
して、原審判決を一部破棄差し戻し(原告1、2の被告グーグルに対する敗訴
部分)した(大法院 2023年4月13日宣告 2017ダ219232判決)。

〔※以下、項目の見出しのみ訳出〕

1.事件の概要

2.訴訟の経過

  ■第一審:原告ら一部勝

  ■原審:原告ら一部勝

  ■原告ら及び被告ら各敗訴部分について上告

3.大法院の判断

 ア:争点

  ■この事件の専属的裁判管轄合意の有効当否

  ■旧国際司法第27条の消費者契約に対する専属的裁判管轄合意の効力

  ■上記消費者契約に対する準拠法合意の効力

  ■旧情報通信網法上の閲覧・提供要求を拒絶するか制限することができる
   のかの可否及びその範囲

  ■非公開義務を付与する外国法令が存在する場合に正当な事由を判断する
   基準及びこのとき情報通信サービス提供者等が取らなければならない措
   置

 イ:判決結果

 ウ:判断根拠

4.判決の意義

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(訳者:井上和彦)