ICJでの南アフリカの冒頭弁論

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(日本語仮訳PDF)

ICJでの南アフリカの冒頭弁論

International Court of Justice CR 2024/1
YEAR 2024
Public sitting held on Thursday 11 January 2024, at 10 a.m., at the Peace Palace
President Donoghue presiding,
In the case concerning Application of the Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide in the Gaza Strip (South Africa v. Israel)
VERBATIM RECORD

Vusimuzi Madonsela (p.17):Niikura
Renald Lamola (p.18-21) :Niikura
Adila Hassim (p.21-31): Ookuma
T. Ngcukaitobi (p. 31-42): Miwa
Pro. John Dugand (p.42-48): Niikura→Ookura
Prof. Max du Plessis (p.46-56) : Sasaki
Blinne Ni Ghralaigh (p.56-73) : Ina
Baughan Lowe (p. 73-82): Ookuma
Vusimuzi Madonsela (p.82-85): Niikura

マドンセーラMadonsela氏
1.裁判長、裁判官の皆さん、本日、南アフリカ共和国を代表して法廷に出席することは私にとって名誉なことであり、光栄に存じます。
2.本件について、暫定措置の指示を求める南アフリカの請求を聴取するために、可及的すみやかな日程で聴聞手続きを開いていただいたことに対して感謝を申し上げます。
3.私どもの申立てにおいて、南アフリカは、1948年以来のイスラエルの植民地化が、パレスチナ人民を系統的かつ強制的に追い出し、移住させ、分散させるものであり、彼らの国際的に承認されかつ譲渡すことのできない自決の権利を意図的に否定し、かつまた、いまではイスラエル国である彼らの村や町に難民として帰還する彼らの国際的に承認されている権利(1)を意図的に否定するものであって、このようなイスラエルの植民地化を通じて、パレスチナ人民に対してNakba(ナクバ)が行われていることを認識してきました(2)。
4.私たちはまた、グリーン・ラインの両側で支配を樹立し、パレスチナ人民をアパルトヘイトに従属させようとする目的を持ち、かつ、そのように維持されている差別的な法、政策及び実行の組織的な制度をイスラエルがとっていることにとりわけ留意しております。広範かつ系統的な人権侵害が数十年にもわたって不処罰のまま放置されていることは、イスラエルを大胆にさせ、パレスチナにおける国際犯罪の再発と拡大強化をもたらしました(3)。
5.まず冒頭に、南アフリカは、イスラエル国(以下、「イスラエル」という)によるジェノサイドの行為および不作為が、1948年以来のパレスチナ人民に対して行われてきた違法行為の「連続体の一部を不可避的に形成している」と認識しています。本件申立ては、イスラエルのジェノサイドの行為及び不作為が、ガザ地区に課された75年にわたるアパルトヘイト、56年にわたる支配および16年にわたる包囲――包囲そのものも国連パレスチナ難民救済事業機関ガザ事案所長によって「もの言わぬ人殺し」と記述されてきたもの――のより広い文脈の中に位置づけるものです(4)。
6.人種差別撤廃委員会(以下、CERDという)が12月21日に警告しているように、パレスチナ人に向けたヘイト・スピーチや人間性を否定する言説」は「ガザ地区における人道に対する犯罪を防止するイスラエル及びその他の当事国の義務について深刻な懸念」を生じさせています(5)。この警告の後も継続して警告が発せられており、これには、ガザにおける「ジェノサイドを防止するために動員する国際的システムの失敗」に関する37名の国連特別報告者による警告も含まれています(6)。
7.今日、私たちとともに、パレスチナ国の代表、人権の分野で活動しているパレスチナ人がこの法廷に参加しており、ほんの数日前にもガザにいたガザの住民も含まれています。この人たちは、かろうじてガザを脱出した幸運な人たちであり、彼らの将来やまだガザにおられる彼らの仲間であるパレスチナ人の将来は、本裁判所が本件においてなす決定によって左右されるのです。
8.本裁判所の許可を得て、南アフリカ共和国の司法大臣ロナルド・ラモーラ氏Ronald Lamolaを呼び、南アフリカの実体的冒頭の主張をします。
裁判長:発言を感謝します。南アフリカ共和国の司法及び行刑役務担当大臣の発言を求めます。
ラモーラLamola氏
冒頭発言
1. ありがとうございます。裁判長、裁判官の皆さん、この特別な事件について南アフリカ共和国を代表して、皆さまの面前に立つことは私にとって名誉なことです。「私たちの手をパレスチナの人々に向け幾マイルも超えてさし伸ばす、それは私たちが全く同じ人類の一部であることを完全に知っているからこそのこと。」これは、私たちの初代大統領ネルソン・マンデラの言葉です(7)。この精神において、南アフリカは、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約(以下、「本条約」という)に1998年に加盟しました(8)。
2.このような気持ちで、私たちは本法廷に臨んでいます。本条約の締約国として、これはパレスチナおよびイスラエルの人々に等しく負っている誓約であります。
3.すでに述べたように、パレスチナおよびイスラエルにおける暴力と破壊は、2023年10月7日に始まったわけではありません。パレスチナ人は、2023年10月6日に、76年も続いて系統的な暴力と破壊を経験したところであり、2023年10月7日以降は毎日これを経験しています。ガザ地区では、少なくとも2005年以来、イスラエルは、空域、領海、地上交通、水、電気および民用インフラ(9)、ならびに主要な統治機能に対する支配を継続してきました(10)。ガザへの空路及び海路の出入りは、イスラエルが2か所のみの出入り口を支配することによって、厳格に禁止されています。ガザ地区に対するイスラエルによる実効的な支配が継続していることを踏まえると、ガザは、国際社会から見れば、イスラエルによる戦争による占領のもとにあるとみなされています(11)。
4.南アフリカは、ハマース及びその他のパレスチナの武装集団による民間人を標的にすることや2023年10月7日における人質支配を明確に非難し、最新では2023年12月21日付のイスラエルに対する口上書において、再度明確に、この非難表明を記録にとどめています。
5.そのうえで、一国の領域に対する武力攻撃はそれがいかに深刻なものであっても、またたとえ残虐犯罪を含むものであったとしても、本条約に対する違反を、法の問題として、あるいはモラルの問題として正当化する根拠とはなりえないのです。2023年10月7日の攻撃に対するイスラエルの対応は、この一線を越えており、本条約違反に当たります。
6.このような証拠に照らし、かつ。本条約第1条に含まれるように、私たちがジェノサイドを防止するためにできることをなすべき私たちの義務に照らして、南アフリカ政府は、本件に着手したのであります。
7.南アフリカは、ジェノサイド条約締約国が意図したように、提出された事実と提出物を慎重かつ客観的に検討した上で問題を解決するために、イスラエルが本件事案に関与した事実を歓迎します。
8.本聴聞手続は、本裁判所に暫定措置の指示を求める南アフリカの請求に関するものであり、必然的に焦点は狭く特定の問題に絞られています。「天空の弧は長く、常に正義の方向に向けられている」というマルティン・ルーサー・キングの言葉を思い出します。
9.南アフリカの主張は、6名からなる法律顧問団、すなわちDr. Adila Hassim、Mr. Tembeka Ngcukaitobi、Professor John Dugard、Ms Blinne Ni Ghárlaigh、Mr Max du Plessis及び Professor Vaughan Loweのチームによって提起されます。
(1)Dr Adila Hassin、上席顧問、ジェノサイド行為のリスクとジェノサイド行為の永続的な脆弱性について概要を述べます。
(2)Mr Tembeka Ngcukaitobi、上席顧問、イスラエルのジェノサイドの故意について検討します。
(3)Professor John Dugard、上席顧問、裁判管轄のさしあたっての存在について検討します。
(4)Professor Max du Plessis、上席顧問、現在脅威にさらされているさまざまな権利について議論します。
(5)Ms Blinne Ni Ghárlaigh、勅撰弁護士、緊急状態及び潜在的回復不能な損害の議論を紹介します。そして
(6)Professor Vaughan Lowe、勅撰弁護士、暫定措置について弁論します。
10.裁判長、Dr Hassimを呼ぶように求めます。ありがとうございます。
裁判長:Lamolaさん、ありがとうございます。Ms Adila Hassimさんの発言を求めます。発言ください。

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