Tembeka Ngcukaitobiさんの弁論

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(日本語仮訳PDF)
虐殺の意図

1. 裁判長閣下、列席判事の皆さま、南アフリカを代表して法廷に出廷できることを光栄に存じます。私はイスラエルの大量虐殺の意図について陳述いたします。
2. 現段階では、裁判所は、入手可能な証拠から導き出される唯一の推論がジェノサイド的であると判断し、暫定措置を命じる必要はありません。むしろ、破壊の意図の有無の評価は、「本案審査の段階においてのみ、裁判所が行うことができる」ものであります(70)。申し立てられた行為の中には、ジェノサイド以外の残虐行為に相当するものもあるかもしれませんが、ジェノサイドの少なくとも見込みのある行為としての認定を排除するものではありません。
3. 裁判長閣下、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルの虐殺的レトリックに注意をむけているのは、南アフリカだけではありません。15人の国連特別報告者と21人の国連作業部会メンバーが、ガザで起きていることは「現在進行中のジェノサイド」、そして「占領下にあるパレスチナの人々を破壊する」というあからさまな意図を反映していると警告しております(71)。

行動から認められる[ジェノサイドの]意図

4. イスラエルはガザのパレスチナ人に対して大量虐殺の意図を持っています。
5. それはハシームさん(SC)が述べたように、イスラエルが行ってきた軍事攻撃の方法から明らかです。それは、ガザの住民を大量に移住させ(72)、殺され続ける地域に刈り集めて(73)、「緩慢な死につながる」状況を意図的に作り出すという、体系的な性格と形態をもつものであります。
6. そこではまた現在私たちが目の当たりにしているように、一般家庭の家屋や民間インフラを標的にし(74)、ガザの広大な地域を荒廃させ(75)、男たち、女たち、そして子どもたちがいるところを爆撃し、砲撃し、狙撃し(76)、医療インフラを破壊し、人道支援へのアクセスを不自由にするという明確な行動パターンもあります。ガザのパレスチナ人口の1%が体系的に殺戮され、10月7日以降、ガザ住民の40人に1人が負傷しています(77)。この2つの要素だけでも、ガザに住むパレスチナ人の全部または一部に対するイスラエルのジェノサイドの意図を証明することができます。
7. しかしながら、第三に、この事案には極めて異常な特徴があります。それはすなわち、イスラエルの政治指導者、軍司令官、公職に就いている人物が、系統的で明確な言葉で大量殺戮の意図を宣言していること、そしてこれらの声明が、ガザでパレスチナ人とガザの物理的インフラの破壊に従事する現場の兵士によって繰り返されていることであります。
8. 次に、この第三の要素を示します。

(指導者や軍高官によるジェノサイド的言論に認められる意図)
9. イスラエルの特別な大量虐殺の意図は、「敵」は実際にはハマスの軍事部門だけでなく、ハマス一般でもなく、ガザのパレスチナ人の生活の中に組み込まれているのだという信念に根ざしております。
10. 10月7日、ベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相はテレビ演説で、ガザへの戦争を宣言し、イスラエルは「これまでテロリストが浸透してきた地域コミュニティの一掃」を開始し、敵が支払うべき「前例のない代償」を警告しました(78)。

11. ガザには230万人以上のパレスチナ人がおります。イスラエルはガザを統制支配する占領権力であり、出入国とガザ内部での移動を統制しています(79)。そしてネタニヤフ首相は、イスラエル国防軍、ひいてはガザのパレスチナ人に対する全般的な指揮命令を行使しているのです。

12. ネタニヤフ首相は2023年10月28日、ガザ侵攻を控えたイスラエル軍に対する演説の中で、兵士たちに「アマレクがあなたたちにしたことを思い起こせ」と呼びかけました(80)。これは、聖書で神がサウルに命じた、アマレク人と呼ばれる集団全体を報復的に滅ぼせ、「男たちや女たち、子どもや幼子、牛や羊、ラクダやロバを殺せ」という命令を指しています(81)。アマレクに対する大量虐殺の呼びかけは、口先だけのものではありませんでした。ネタニヤフ首相は2023年11月3日、イスラエル軍への書簡でもこの言葉を繰り返しています(82)。裁判長閣下、首相のその言葉をそのままお聞きください。
13. イスラエルの議会であるクネセットの副議長は、地球上からガザ地区を消し去ることを要求しました(83)。
14. 国防軍もこれに同意しています。10月9日、ヨアヴ・ギャラン国防相は軍隊に「状況報告」を行い、イスラエルが「ガザを完全に包囲」しているので、「電気も食料も水も燃料もなくなるだろう」と述べました。イスラエルは「人間のケダモノと戦っている」のだから、「すべてが閉鎖される」だろうと述べたのです(84)。ガザの境界にいる部隊に向かって、彼は「すべての行動制限は解かれた」、「ガザが以前のように戻ってはならない。われわれはあらゆるものを排除する……どんな場所にも征く」(85)と指令したのであります。総てのものを排除する、どんな場所にも征く、何の拘束もなく、と。
15. 「人間のケダモノ」の壊滅というテーマは、2023年10月9日、イスラエル軍の政府活動調整官(COGAT)が、「ハマースとガザの住民」に向けた演説でも繰り返し述べられています。彼は、ハマースがISISになったと述べ、「ガザの住民はそれにおののく代わりにそれを祝っている」と述べ(86)、「人間のケダモノはそれに相応しい扱いを受けるのだ」と結論しています。「イスラエルはガザを完全に封鎖し、電気も水もなく、ただ被害を与えるだけだ。お前たちは地獄を望んだ、お前たちは地獄を見ることになるだろう」(87)。ハマースも市民も等し並みに有罪宣告されているのです。
16. イスラエルの内閣内でも、このような見方が広く浸透しています。イスラエル・カッツ・エネルギー・インフラ相は、「子ども殺しと虐殺の民はこうなるのだ」として、水と燃料の提供を拒否するよう求めました(88)。これはいささかの曖昧さもなく、ガザのパレスチナ人に死の状況を作り出すことを意味しています。
餓死や脱水症状でゆっくり死んでいくか、爆弾攻撃や狙撃ですぐに死ぬか、です。しかし、それでも死ぬのです。実際、アミチャイ・エリヤフ文化遺産相は、イスラエルは「ガザの住民のために、死ぬよりももっと苦しい方法を見つけなければならない」と述べています(89)。どちらも軍の指揮官ではないというのは答えになりません。彼らはイスラエル政府の閣僚であり、国会で投票し、国の政策をつくる立場にあるのです。
17. ガザを破壊するという意図は、国家の最高レベルにおいても育まれています。アイザック・ヘルツォグ大統領は、ガザの全住民に責任がある、「民間人は気づいていない、関与していないという言い繕いは絶対に真実ではない 。我々は彼らの背骨を叩き割るまで戦うでありましょう」とまずもって述べて、ガザに向けられた爆弾に署名する人々の仲間入りをしました。その後、大統領やその他の人々がこの演説を無色なものにしようと試みましたが、しかし彼の言葉の刺々しさは変わっていません。それは、ハマースの行動に責任があるとして、すべてのパレスチナ人に汚名(タール)をかけることでありました。のみならず以下に示すように、政府内で国の政策がどのように理解されているかにも影響を及ぼしています。
18. 国家安全保障大臣は、ハマスと民間人に同等の責任があるという大統領の発言を繰り返しています。2023年11月10日、彼はテレビのインタビューで、「ハマスが壊滅させられるべきだと言うとき、それはハマースを祝福する人たち、支援する人たち、キャンディを配る人たちをも意味します、彼らはみなテロリストであり、彼らもまた壊滅させられるべきです」と述べています(90)。
19. これらは破壊命令です。また破壊できないものは傷つけるという命令であります。これらの発言を、イスラエルが中立的に解釈したり後になって合理化したり、再解釈する余地はありません。これらの発言は国家の指揮を執る者によってなされているのです。彼らは国家の方針を伝えたのです。単純なことであります。もしこれらの発言が意図されたものでなければ、そのような発言はなされなかったでしょう。

兵士による大量虐殺的な発言に認められる[ジェノサイドの]意図

20. これらの発言の背後にあるジェノサイドの意図は、現場のイスラエル軍兵士にとって曖昧なものではありません。実際、それは彼ら兵士の行動と目的を方向づけています。
21. 2023年12月7日、イスラエル軍兵士たちは、「アマレクがあなたたちにしたことを思い出せ」という首相のメッセージをジェノサイド的なものとして理解していることを証明しています。彼らが踊りながら歌う姿はジャーナリストに記録されています: 「我々は、我らのモットーを知っている:[アマレクに]無縁の者はない……」、「アマレクの種を根絶やしにする」という戒律に従っている(91)。首相の「アマレク」の呼びかけは、兵士たちが子どもたちを含む民間人の殺害を正当化するために使われています。彼らは、首相の扇動的な言葉を繰り返す兵士たちなのです。
22. ガザにいるイスラエル軍兵士たちは、11月に「奴らの村が燃えますように、ガザが消し去られますように」と踊り、唱え、歌う姿を撮影されています(92)。ある兵士は、シュジャイヤで50棟以上の家屋を爆発させる様子を録画しています(93): 現在、兵士たちの間では、ガザの市民に対する残虐行為を撮影するスナッフ・ビデオが流行しています。ある兵士は、シュジャイヤで「私たちはカーン・ユネスとこの家をすべて破壊する」、「あなたのため、あなたが私たちにしてくれたすべてのことのために、この家を爆破する」(94)。これらは、兵士たちが彼らに対する命令を実行に移したものです。
23. 軍の指揮官たちも同じ考えです。イスラエル軍のヤイル・ベン・ダヴィッド司令官は、軍は「ベイト・ハヌーンで行い、シモンとレビがナブルスで行ったように、そこで行った」と述べ、「ガザ全体がベイト・ハヌーンに似るべきだ」と述べている(95)。
24. イスラエル軍兵士のイーシャイ・シャレフは、アル・アズハル大学の跡地を背景に、「昔々、ガザには大学があったが、実際には“人殺しと人間のケダモノのための学校”」というキャプションをつけたビデオを公開しました(96)。
25. 兵士たちは明らかに、ガザでのパレスチナ人の生活破壊が国の政策として明文化されているがために、このような言葉や自分たちの行動は受け入れられると考えています。
26. 政治と軍の高官たちは、ガザ(97)への地上侵攻に先立ち、95歳のイスラエル軍予備役エズラ・ヤチン(1948年のパレスチナ人に対するデイル・ヤシン虐殺の退役軍人)を非難することなく激励し、兵士たちに話をさせました。
イスラエル軍の軍服に身を包み、イスラエル軍の公用車で移動しながら、彼はいつもながらの思いを述べています:
「勝利の女神となり、奴らをやっつけろ。そして誰も残してはならない。
彼らの記憶を消し去れ。彼らの家族も、母親も、子どもたちも消し去ってしまえ。このケダモノたちはもう生かしておけない。もし近所にアラブ人がいたら、待つことなく奴の家に行って撃ち殺せ.我々は侵略したいのだ。以前とは違って、侵入して目の前のものを破壊し、家々を破壊し、その次のものを破壊したいのだ。全軍で、完全に破壊し、侵入し、破壊する。おわかりのように、私たちはこれまでけっして夢にも思わなかったことを目撃することになるのだ。奴らに爆弾を落とし、消し去ってしまえ」(98)。
27. 最近2024年1月7日、ある兵士のビデオがネット上に投稿され、軍隊がヒルベット・アフザの村全体を破壊したと自慢しています。彼は、2週間にわたり、村を爆撃するために懸命に働き、任務を遂行したと述べています(99)。
28. 上級政治家たちの発言に意味がなかったという指摘は、ましてやその意味がガザの兵士たちに理解されなかったという指摘は、何の価値もないでしょう。ガザにおける破壊の規模、一般家庭の家や一般市民を大量に標的にしたこと、戦争が「子どもたちに対する戦争」であること(100)、これらすべてが、ジェノサイドの意図が理解され、実践されていることを明らかにしています。
29. 明確に示された意図、それはパレスチナの人々の生活のあらゆる面での破壊にあります。

ジェノサイドの公然扇動に示された意図

30. ジェノサイドのレトリックは、イスラエルの国会クネセットの中でも一般的であります。MKともよばれるクネセットの議員は繰り返し、は繰り返し、ガザを「全滅させる」(101)、「平らにする」(102)、「侵食する」(103)、そして「......そのすべての住民に......殺到する」と呼びかけています。そのすべての住民に」(104)。彼らは、「無関係な」ガザ市民を「気の毒に思う」人を非難し、「[ハマースに]無縁な者などいない」(105)、「ガザに罪のない人などいない」(106)、「女性や子どもの殺した者たちをガザ市民から切り離すべきではない」(107)、「ガザの子どもたちが自ら招いたことだ」(108)、「そこにいるすべての人に唯一の判決 死刑の判決を下すべきだ」(109)と繰り返し主張しました。ついには議員たちは「空から」「容赦なく」爆撃することを求め(110)、中には「終末の日」とよばれる核兵器の使用(111)、そして1948年のナクバを上回るナクバをを主張する者もいるのです(112)。
31. ネタニヤフ首相のジェノサイド演説は、市民社会の一部にも浸透しています。ある有名な歌手は、ネタニヤフ首相のアマレクへの言及を繰り返し、「ガザはアマレクの種ごと一掃され、破壊されなければならない...、私たちはガザの全部を絶対に破壊しなければならないし、そこにいる者総てを完全に一掃しなければならない」(113)と述べたて、また他の者は、「ガザを消し去り、一人の人間も残してはならない」と訴えているのです(114)。ジャーナリストやコメンテーターは、「女たちは敵、赤ん坊は敵...、妊婦は敵」(115)、「ガザ地区を屠殺場に変え」(116)、「我が軍の兵士は出くわした家屋をすべて取り壊す」ことが必要(117)とアナウンスしてきました 。
32. このような虐殺扇動にたいする非難、防止、処罰をイスラエル政府が意図的にしなかったこと、それ自体がジェノサイド条約の重大な違反を構成するのであります。裁判長閣下、私たちは、条約第1条において、イスラエルが「ジェノサイドは、平時であれ戦時であれ、国際法上の犯罪である」ことを確認し、そのように「防止し、処罰する」ことを約束したことを想起すべきです。政府によるこのような言論の防止、非難、処罰と怠ったことは、イスラエル社会におけるジェノサイド的なレトリックとパレスチナの人々を極度の危険に晒す常態化させる結果となりました。リクード党のモシェ・サーダ議員も言っているように、政府の弁護士たちは、ガザのパレスチナ人は滅ぼさなければならないという彼の見解を共有しています: 「どこへ行っても、奴らを殺せと言われる。キブツでは、彼らは破壊せよと言う。政治的な問題で私と議論してきた国選弁護人の友人たちは、私にこう言った......『すべてのガザ人を破壊する必要があるのは明らかだ』と」(118)。

破壊の認識

33. イスラエルは、パレスチナ人の生活とインフラを破壊していることを認識しています。このことを知りながらも、イスラエルはガザでの軍事活動を維持し、実際に強化しているのです。
34. 完全な認識に関しては、10月7日の翌週、非政府組織と国連は、ガザにおける「前例のない」人道的危機を警告しました(119)。国連は、「人道支援チームと物資が、困っている何十万人もの人々に即時かつ安全に届くようにしなければならない」と述べています(120)。イスラエルは最初から(121)、水、食料、電気、生存に必要なものを奪っていることを知っていました(122)。「総てのものが封鎖されている」イスラエルはそう言っています(123)。「イスラエルは、前例のない砲撃(124)の中で、パレスチナ人から医療や負傷の治療、食糧や水、その他の生存に必要なものを奪っていることを知っていました。そのため、WHOはこう言っています: 「私たちは持続的で、規模を拡大した、保護された人道的活動を膝をついてお願いするものです」と述べ、「意思決定をする、あるいは意思決定者に影響を与える状況にあるすべての人々に、この人間的大惨事に対処するための人道的空間を与えてください」と訴えました(125)。
35. このようなことを知っているにもかかわらず、イスラエルは生存に不可欠なインフラ、すなわち水と衛生のインフラ(126)、ソーラーパネル(127)、パン屋、製粉所、農作物を標的にし続けているのです(128)。病院を爆撃し、医療システムを壊滅させているのです(129)。援助活動家や国連のインフラも標的にしているのです(130)。ガザが「死と絶望」の場所になったのは、イスラエルの政策によるものなのです(131)。

結論

36. 結論を申し上げます。裁判長閣下、重大な残虐行為の煽動者の多くは、自分たちは誤解されている、自分たちが言ったことは意味を取り違えられている、自分たちの言葉は文脈から外れて受け取られていると抗議してきました。一体どこの国家が大量殺戮の意図を自認するようなことがあるでしょうか。しかし、この事件の特徴は、そのような言葉が語られなかったことではなく、イスラエルの国家のあらゆる領域でジェノサイド的な言論が反復され繰り返されたことであります。
37. 私どもは当法廷が、ジェノサイドを扇動した人たち、すなわち、首相、大統領、国防大臣、国家安全保障大臣、エネルギー・インフラ大臣、国会のメンバー、陸軍高官たち、歩兵たちの身分および権限に注視するようお願いいたします。ジェノサイド的な発言は、それゆえに片隅にあるのではなく、国家政策の真髄に具体化されているのであります。
38. 破壊するという意図は、現場の兵士たちにも明確に理解されています。また イスラエル社会の一部にもそれは十分に理解されています。[イスラエル]政府は、パレスチナ人を飢えさせるという「約束」を反故にして、ガザへの援助を許可しているという批判に直面しているのです(132)。イスラエル政府関係者が、自分たちの言ったことを本心から言っていなかった、あるいは、兵士や一般市民はイスラエル政府関係者の言ったことが何を意味するのかを十分に理解していなかったといういかなる指摘も、当法廷は却下すべきであります。
ジェノサイドの意図の証拠は単に身の毛もよだつものであるだけでなく、同時にまた圧倒的かつまた議論の余地のないものであります。
39. 裁判長閣下、裁判管轄権に関して、ジョン・デュガート氏の喚問をお願いいたします。
(裁判長:ングクカイトビ氏にお礼を申し上げます。)

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