本サイトでも呼びかけた、国家による「慰霊・追悼」を許すな!8.15反「靖国」行動は、8月12日の「顕在化する〈自衛隊と戦争神社〉」と題する集会と、8.15反「靖国」デモの連続行動として取り組むこととなった。今年1月の自衛隊員による靖国神社集団参拝問題は、8.15行動にダイレクトに関わる課題であり、必然的にこのテーマが選ばれた。この問題については、実行委として2月に講義の声明を出しているが、自衛隊と靖国神社の関係が顕在化している(させられている)現状について、再度問題提起していこうということでもあった。
集会では、山口県の牧師である小畑太作さんを講師に迎え、〈自衛隊と戦争神社〉の関係について、その実態や分析などを聞き、考える場を作ることができた。
小畑さんは、山口で取り組まれている県知事による護国神社参拝に対する住民訴訟の経緯から始まり、自衛隊と靖国神社・護国神社の関係や、なぜこれら戦争神社を自衛隊が必要とするのか、等々について淡々と語り続けた。その靖国・護国神社が教育の場にまで介入している実態なども紹介。この社会がとんでもない方向に着々と動いていること、そういった現実を見せられ危機感がつのるのだった。
しかし一方で、裁判で闘うことの意義について語り、あるいは訴訟の柱ともなっている政教分離原則が戦争への道を回避し、人権侵害の防止としてある、だから大変ではあるが裁判を始めた、と語る小畑さんの話に、力を得た人たちは多かったはずである(小畑さんの講演の全文は本サイトに掲載されている。ぜひ一読をおすすめしたい。https://www.jca.apc.org/hanten-journal/?p=4939)。
集会は「8.15行動宣言」を読み上げて終了。75名の参加者だった。
8.15反「靖国」デモは大きなトラブルもなく、炎天下を無事最後まで歩き通した。ここ数年でデモ妨害のために集まる右翼の数は激減した。警察の数もその分減ってほしいが、その確認はできていない。ただ警察は相変わらず、デモ参加者にうるさく大声で指示してくるし、うんざりしながら歩くのは例年通りだった。デモには暑い中で150名弱の参加者が集まり、無事終了した。
それから、8月12日の集会では以下の声明も発表した。今年3月、「皇族数確保策」なるものを政府が提示し、議論が始まるかと警戒していたが、結局議論は行き詰まったまま、9月になっても動きが見えない状況が続いている。そんな中の8月12日に出した、タイミング的にはあまり緊張感のない、ある種「警鐘を鳴らす」に近い意味合いの声明である。
D子(同実行委員会)
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声明 「皇族数確保策」も「皇位継承策」もいらない
政府は今年、2021年12月に提出された「天皇の退位等に関する皇室典範特例法に対する付帯決議」に関する有識者会議報告をもとに、「皇族数確保」のための政府案を出した。
有識者会議報告では「皇族数確保」策として以下の3案が提出されていた。
①内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
②皇族に認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること
③皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること
なお、①については、婚姻後の女性皇族の配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるものとすることが考えられる、とある。
政府は以上の①②を政府案とし、③は①②で解決しない場合の予備案として残すこととしている。今年4月、自民党がこの政府2案を受け入れ、その後各派が見解を出し、議論が始まった。
当然ながら、女性皇族の婚姻後も皇族の身分を保持する案に付帯された、配偶者や子への差別的な扱いや、1947年に皇統譜から抜けて「国民」身分となっている旧宮家の男系男子を皇族に復帰させるという、「門地による差別」以外の何ものでもない案には批判も多く、準備されていた与野党協議は2回目で行き詰まった。そして衆参両院正副議長による意見調整も失敗し、現在に至っている。
政府案のもととなる報告を出した有識者会議発足の目的は、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について検討する、というものであり、この報告自体が目的から大きくずれたものになっていた。有識者会議は皇位継承問題は議論しなくてよい、との判断であったのだ。
私たちは、「安定的な皇位継承の確保」や女性宮家創設を望むわけではまったくないが、天皇の言葉一つで進められたデタラメな法律「天皇退位特例法」の制定やその場しのぎの「付帯決議」、そしてその決議を自ら反故にし、さらに到底納得できない案を提示してくる政府は、厳しく批判されるべきである。
また、議論の過程には「静謐な環境」が必要であると繰り返し伝えくるが、議論が割れたり反対意見が出る事態を外に見せないよう秘密裏に決めてしまおうという話である。これは法律の改正あるいは新しい法案づくりの過程であって、隠蔽どころか、広く開かれた議会の下で議論されるべきである。しかも政府案の詳細について、具体的なことは何も知らされないままであり、男系男子主義、血の論理に凝り固まった政府案自体の問題も大きく、批判されるべきことは多い。
しかし、そもそも今、このような課題に時間とエネルギーと金を使えるような政治情勢ではない。政府が直面する逼迫した課題は山積している。破綻した福祉行政や教育行政、悲惨な格差・貧困社会、自然災害と人的災害に苦しむ人々、多くの人々が訴える反戦・反基地・反軍拡とその声を無視し続ける政府、敗戦から現在まで放置し続けてきた過去の植民地主義・侵略戦争の被害者への謝罪と補償等々、政府が優先的に取り組まなくてはならない課題は数知れない。皇族確保や皇位継承問題よりも優先されるべき課題は多すぎるほどあるのだ。それらよりも優先される天皇制など、この社会にとって有害無益でしかない。
私たちには皇族数確保も皇位継承者もいらない。天皇制の廃止こそを求め、これからも声を上げ続けていく。
2024年8月12日
国家による「慰霊・追悼」を許すな! 8.15反「靖国」行動実行委員会