反靖国~その過去・現在・未来~(3)

土方美雄

遊就館とは、一体、どんなところなのか?

遊就館の展示に関しては、辻子実さんが、その著書『靖国の闇にようこそ 靖国神社・遊就館 非公式ガイドブック』(社会評論社、2007年)の中で、展示室毎に、詳しく解説している。入手可能であれば、それを読んでいただくのが、一番、よいが、この連載でも、その概要を、説明しておくことにする。

まずは、「靖国参拝は戦争讃美ではない!」という、副題がついた、靖国支持者による『日本人なら知っておくべき靖国神社』(綜合図書、2016年)からの、引用。

「遊就館は、『御祭神の遺徳を尊び、また、古来の武具などを展示する施設』として、陸軍卿・山形有朋などが構想。イタリア人雇教師カペレッティーの設計により、イタリア古城式で建てられ、明治一五年(1882)2月25日に開館した。
 館名は、中国の古典『荀子』の『君子は居るに必ず郷を撰び、遊ぶに必ず士に就く』から『遊』『就』の字が選ばれ名付けられた。そこには『国のため尊い命を捧げられた英霊のご遺徳に触れ、学んで欲しい』という願いが込められている」。「遊就館では、幕末以降の、学校では教えてもらえなかった日本の近代史を学ぶことができる。これに対し、『戦争を美化する施設だ』などとの批判もあるが、遊就館の展示は、資料としても貴重で、日本の近代史を学ぶには有益なものが非常に多い」。

一応は、一般向けガイドブックの体裁をとっているので、批判があることも記しているが、「学校では教えてもらえなかった日本の近代史」とは、よくいったもので、この本の前書きでは、「靖国神社を語ることは、決してタブーではない。近代日本の歴史を理解し、日本の誇りを取り戻す」云々と、ハッキリ、その編集意図が、書かれている。

辻子さんは、前述した本の中で、「展示解説は、天皇の命令で行った戦争はすべて正しい、で一貫しています。/日本軍が、侵略した国々の人たちの考え方や、日本軍が、アジアの国々から資源や食料を奪ったことは説明されていません。/アジア・太平洋戦争も、日本はガマンしたけれど、アメリカを始めとしたイジメがひどいので、ガマンできなくて始めた自存自衛戦争だ、という姿勢です。(中略)展示解説は、靖国神社の考え方に合った資料だけを選択展示しています」と、「近代日本の歴史を理解し、日本の誇りを取り戻す」という、歪んだ歴史観に基づく、同館の展示を、バッサリ、切って捨てている。

それは、文字通り、かつての皇国史観そのものであり、日本の侵略戦争の美化・讃美にほかならないものである。

もちろん、どんなに歪んだ歴史観であれ、それを信じるのは、靖国神社と、その信奉者たちの「自由」かも、しれない。しかし、国は、今もなお、その靖国神社の公的な復活(国家護持、公式参拝)を、機会あれば、企んでいるのである。これは決して、許せることではない。まさに、ウクライナはネオ・ナチで、それを利用して、欧米はロシアを滅ぼそうとしている、ウクライナへの侵攻は、ロシアを守るための自衛戦争だと強弁する、プーチンの論理と戦争を、決して、許すことが出来ないのと、まったく、同じである(あッ、話、脱線しましたね、ゴメン)。

遊就館は、戦後、GHQによって、社屋接収され、民間企業に貸し出された。借りたのは、誰あろう、あの大燈籠を、靖国神社に奉納した、富国生命(現在のフコク生命)である。フコク生命は、1986年に、同施設を、靖国神社に返還して、遊就館は再び、開館することになった、その後、全面改修を経て、今日に至っている。

私は、その遊就館には、何度も、足を運んでいる。その時の感想を、前述の『反靖国論集』(新地平社、1987年)の座談会の中で、こう語っている。

土方 「遊就館」(東京招魂社から靖国神社に改称された時に設立された国立の軍事博物館で、戦後は富国生命が本社ビルとして借りる形で温存され、最近再び開館された。戦没者の手紙や特攻兵器をはじめとする兵器などを展示)が再建されたので、見にいったんです。そうしたら、動員された老人たちや見るからに右翼っていうような人たちはほとんどいなくて、ごく普通の中・高生がものすごく来ているんですね。そして遺書なんか読んで感動して涙ぐんでいる。僕なんかが見ると、戦争讃美の記念品の群れって感じで吐気がするようなものばかりなんだけれど、それに感動しているのには、正直いって驚いた。靖国的なものが拡大・浸透されつつあるとつくづく思いますね。
天野 「(天皇)位60年キャンペーン」だって、基本的には若者むけだよね。
芥川 何の情報も与えられていなくて、そういうものだけ見せられれば、「昔の人は頑張ったんだ」っていうところで感動させられてしまうよね。
天野 「死に直面している」という緊張感も手伝うしね。
高橋 靖国神社はハトバスのコースだし、修学旅行に遊就館見学がなっているのではないか。

 えッと、非常に、長くなりました(汗)。以下、続く・・・です。 

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