堀 新『13歳からの天皇制─憲法の仕組みに照らして考えよう』

堀 新『13歳からの天皇制──憲法の仕組みに照らして考えよう』かもがわ出版(2020年)

ずいぶん長いあいだ「憲法」から遠ざかってきた気がする。ほんとに久しぶりの「憲法」だ。著者の堀先生はとてもやさしい日本語で「憲法」の話をされる。各巻頭のページには堀先生のイラストがおかれているが、これも親しみがもてるタッチなのだ。著者紹介には、1963年生まれ、(株)東芝で人事・労務部門に勤務した後、2006年司法試験合格。2008年弁護士登録、とある。生え抜きの法律学者の文章でないのは経歴のせいかも。

堀さんは「30代くらいまでは、皇室は日本の重要な伝統だと普通に考えて、天皇制を強く支持する心情を抱く人間の一人でした。」とか。それが天皇制を問題に思うようになったのは、現天皇が皇太子のときに小和田雅子さんと結婚し、彼女がその環境に馴染むために苦労していることを知ってからだという。その後司法試験勉強中に、身分制度である天皇制と「個人の尊厳の原理が憲法の中心におかれている」こととがまったく異質なものであることを知った…とあります。

このことをこの書の前提に置いて、私は読んでみた。10の章を立て、大日本帝国憲法と日本国憲法を併記して、どうであったか、どう変わったか、何が消え、何が加わったか、などを判りやすい文で比較提示している。大日本帝国憲法が廃止されてから既に70年以上経っている。この併記がどれほどの効果や意味をもつのか私にはちょっとわからないが。

憲法が改訂されたとき、まず、つくられた案ではGHQの許可は下りず、すぐ提示された案にさしかえられ、現行憲法が発布された。当時、「天皇制」は廃止になると私は子ども心に推理したものだったが、そうはならなかった。大人たちの説明では、日本人の深奥に根付いた天皇制の強さをGHQは利用して、共産主義の防波堤にする作戦である、と。廃止の絶好の機会を逃し残ってしまった天皇制は、いまも厳然と存在している。でも、同時に第九条の戦争放棄の条項も存在しているのだ。重い重い貴重な条項で、うっかり手離してはならない。そのためにこそ「反改憲」運動を続けてきた。

現実には私のように極端に結論に走る人ばかりではない。そういう人のために、特に天皇について持たれやすい疑問を抜き出し、10項目にわけて、帝国憲法からの流れと、その違いを指摘しつつ解説していく、という寸法になっている。なかには「そうなのか」の部分もあり、頑固な「反天」者に役立つ考え方や史実もある。(凌)

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