“Journalism” 2022年4月(朝日新聞社) 特集:皇室は持続可能か

近藤和子(批評家)

朝日新聞社の雑誌「Journalism」2022年4月号が皇室特集「皇室は持続可能か」を組んでいます。興味深い内容なので、少し紹介します。

高森明勅論文「安定的な皇位継承を目指すなら『女性・女系天皇』容認しかない」。憲法で規定された皇位継承を具体的に定めた皇室典範そのものに「構造的欠陥」ありと。

それは、正妻以外の女性から生まれた非嫡出子や非嫡系の子孫にも皇位継承資格を認めるという、古代から明治の皇室典範にいたるまで一貫して続いてきた制度を、全面的に排除したことだとします(同誌p. 5)。

「直系も傍系も、その男系の血筋なるものは、側室制度を前提とした非嫡出・非嫡系による継承可能性によってこそ、かろうじて支えられてきたという現実がある(歴代天皇の半数近くは非嫡出・非嫡系による継承であり、世襲親王家で嫡出子が継承したケースはわずか3割ほど)(同上)。だから、女性・女系天皇容認を、と。

所功論文「現実的な皇室典範改正が必要 男系男子を優先し、女性天皇も容認」は、男系派にも配慮した、現実的な女性天皇容認論です。

岩井克己論文「男系軽症という大原則は安易に崩すべきではない」は、「個人的には、例外なく連綿と続いてきた皇位の継承原則の重みを考慮すれば、ぎりぎりまで大切に維持するのが望ましいと思います(同誌、p. 19)、と主張します。彼は言います。「現在の皇位継承の危機が生じたのは、皇室に女のお子様ばかり9人も続」いたためだと。

かれらには、人間の性別は男性の性決定遺伝子にあるという科学的知識もないらしい!

反天ジャーナル的には、渡辺治さんの「憲法理念から離れた象徴天皇 主権者の責任・自覚あいまいに」に注目すべき。「平成」で加速した憲法からの乖離という分析には説得力があります。かれは「象徴天皇の君主化」に警鐘を鳴らし、「平成流」はなぜ問題か、と問い、「今後の天皇制はどうあるべきか?」と問題提起をします。

なお、瀬畑源「上皇后・皇后・秋篠宮妃 婚約はこうして決まった 皇室会議の議事録全文」とその解説は非常に興味深いものです。男性皇族の結婚相手にはどのような女性が適切かと綿々と綴られています。優生思想に満ち溢れているのも驚き。眞子さん騒動も肯かされる資料です。

しかし、筆者は全員がおっさんばかりで、皇室の危機を叫ぶのも「おっさん」ばかりか!?

(2022・4・30記)

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