読売グループ新総帥《小林与三次》研究(1-2)

電網木村書店 Web無料公開 2017.4.1

第一章《旧内務省の幻影》

「警察新聞」が世界にのびる「全国紙」へ発展する恐怖

2 一応は“注意”された小林社長

 一九七五年の春闘では、春闘共闘と民放労連による、郵政省交渉が行なわれた。放送国民要求にもとづき、新聞=民放系列支配の違法性を追求したものである。独占禁止法との関係についての質問に担当係官は、キー局間の競争がはげしいことを理由にあげ、事態を糊塗しようとした。

 だが、その後、小林社長にたいして、電話による注意が五月一三日に行なわれた事実が明らかになった。また、その二年前つまり一九七三年にも、STV(札幌テレビ)再免許に際して、系列局支配に関する注意または勧告が行なわれていることも確かめられており、関係者の言によると、「何度もいわれている」とのことであった。そして、日本テレビの会社側は、組合の追求にたいして、「注意」の事実を認めた。いまだ、郵政省の注意もしくは勧告の全貌は明らかになっていないが、法文上の問題点は、つぎのようなものである。

 まず、放送関係法は、「放送法」と「電波法」にまたがっている。これが法律であり、電波法にもとづく省令として、「放送局の開設の根本的基準」がある。この基準の中心は技術的なものであり、わずかに第九条(放送の並日及)に、つぎの趣旨がのべられている。

「第九条……その局を開設することが放送の公正且つ能率的な普及に役立つものでなければならない」

 この条文を具体化したものが、通達であり、「一般放送事業者に対する根本基準第九条の適用の方針」とよばれている。ここでは、全国的な単一組織体であるNHKの他に、民間放送局の設置を認めることの意義がくわしく説かれている。その一部分はすでに招介したが、他にも「各地域社会における各種の大衆情報手段(マスメディア)の所有および支配が、放送局の免許によって特定の者に集中することを避ける」、などとうたわれている。また、新聞社が民間放送局の経営を支配することに関しても、貴重な電波の利用方法として「不経済・非能率的」という考え方ながら、否定されている。「経営支配」の判断の規準は「審査要領」でつぎの三点が定められている。

 一の者(注:いちのもの)が他の放送局の ――

 (1) 議決権の総数の一〇分の一をこえて所有すること。

 (2) 役員(監査機関を除く。以下同じ。)の総数の五分の一をこえて兼ねること。

 (3) 代表権・常勤の役員を兼ねること。

 以上のような法的問題点は、このような形で、『放送レポート』('5・8)にも、取り上げられていたのだ。


3 “読売進駐軍”の違法パワーにバックアップ