- Log in to post comments
サイバースパイ・サイバー攻撃法の成立に際しての訴え
――通信情報協定を結ばず通信の秘密遵守とサイバー戦争に加担しない取組みを――
2025年5月16日にサイバースパイ・サイバー攻撃法(以下本法律と呼ぶ)[注]が成立しました。本法律には数多くの問題があることをこれまで幾度となく指摘をしてきました。この声明では、これまで出してきた声明を踏まえて、とくに、政府への通信情報の提供に関わる皆さんに訴えます。
本法律の成立によって、政府は通信事業者等との間で協定を結び、私たち利用者の通信情報を取得することが可能になりました。その結果として、協定を結んだ事業者の利用者の通信の秘密は保護されなくなります。しかも、通信情報は日本政府だけでなく、外国の政府に提供することも合法化されています。この結果として様々な深刻な問題が生じることになります。
協定を結んだ通信事業者などを利用した場合、新聞やテレビなどの報道機関の取材関連情報、弁護士が依頼者等との間で行う通信、野党議員の通信、さまざまな市民運動、労働運動などの社会運動の通信、これらがもはや政府に対しては秘匿できなくなります。こうした活動をしている企業、団体、個人は、早急に契約先が協定を結んでいるかどうかを確認し、協定の有無が確認できない場合も含めて、協定を締結している可能性のある通信事業者であるとみなして、契約先の変更など必要な措置をとるべきです。
通信事業者が、政府との通信情報提供の協定を結ぶことは「通信の秘密」を守るべき通信事業者の本来の使命を放棄することでしかありません。通信事業者は政府との協定を結ぶべきではありません。また、通信事業者は、協定を結んでいないことを自社の個人情報の取り扱い規約やサービス規約に明記すべきです。私たちは、この点の明記がない場合は、政府と協定を結んでいる事業者とみなさざるをえません。
政府との協定締結を予定している通信事業者等に改めて訴えます。協定は結ばないでください。すでに協定を結んだ場合は、出来る限り早急に協定を破棄してください。皆さんが通信事業者として果たすべき責務の第一は、ユーザーの通信の秘密を第三者から防御することのはずです。この第三者には自国の政府も含まれることをあらためて想起するよう強く訴えます。
[注]正式名称は、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案 及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」(以下サイバースパイ・サイバー攻撃法案。略称として能動的サイバー防御法案、ネット監視・サイバー先制攻撃法案などと呼ばれている法律になります。
2025年5月17日
JCA-NET 理事会
関連する声明など
政府への通信情報提供システムはサイバー攻撃に対する脆弱な仕組みの導入にしかならない――改めてサイバースパイ・サイバー攻撃法案の廃案を訴える(2025年5月12日)
JCA-NET声明: サイバースパイ・サイバー攻撃法案の廃案を改めて訴えます――参議院における審議入りを目前にしてインターネットにおけるコミュニケーションの権利団体として―― 2025年4月20日
(共同声明)サイバースパイ・サイバー攻撃法案(サイバー安全保障関連法案)の廃案を要求します―サイバー戦争ではなくサイバー領域の平和を 2025年3月7日
(共同声明)能動的サイバー防御と関連する法改正に反対します―サイバー戦争ではなくサイバー領域の平和を 2023年10月20日