〈反天チャット〉①

食えない「天皇誕生日記者会見」

                           (記者会見全文はコチラ→

●イメージづくりとしての誕生日記者会見

:2月23日、天皇誕生日の記者会見が報道されていたけど、天皇像を創出する機会になっていることを再認識したね

:質問に応える内容はすごく網羅的だよね

:網羅的と言っても、あれはきちんと選んでいるよ

:メディアが求める言葉を、宮内庁が忖度して、ナルヒトにしゃべらせてるといった面もある

:天皇に何を語らせるか。政府やメディアの意思があるけど、同時にそれに乗っかって語る天皇の別の意思もある…

:象徴天皇制のイメージづくりにとても重要なものとなっている。自然災害については毎年必ず触れる。被害者だけでなく、救援や支援にあたった人も含めて

:コロナのエッセンシャルワーカーへの「ご配慮」とか

:ボランティア精神についてはよく褒めちぎっている。政府やマスメディアが喜ぶ話だわ

:それからオリンピック。沖縄も入ってた。気候変動問題も入ってるよ

:そうした気配り、「気配りしています」といったアピールがこの会見のキモだね

:「上皇陛下が以前に述べておられた、天皇は、伝統的に、国民と苦楽を共にするという精神的な立場に立っておられた、というお言葉です」の実践か? あまりにおこがましいわね

:「皇室の在り方や活動の基本は、国民の幸せを常に願って、国民と苦楽を共にすることだと思います」的な、表現は明仁そのもの

:美智子の「皇室は祈りでありたい」てやつだね

:「願って」「祈って」「信じております」を連呼する天皇。この期待、いわば「臣民への付託」を忖度して裏切るなよという圧力でもある

:うまいと思ったのは、細かなところ(誰もが忘れていること)を盛り込む手法。たとえば、「トルコで起きた震災(1911年)に日本から支援活動のために赴いていた宮崎淳さんが、余震により残念ながら現地で亡くなりました」「50年前の札幌冬季オリンピックでの、70メートル級スキージャンプで金メダルを取った笠谷幸生選手の健闘をたたえて笠谷選手を肩車した、ノルウェーのインゴルフ・モルク選手の姿」とか。こういうのは、美智子が得意? としていたよね

:ああ、お前たちのことちゃんと見てるよというアピール

:調べているよね

●都合のいい「歴代天皇」持ち出し、伝統の継承をアピール

:これは徳仁の特徴だと思うけど、過去の天皇にも言及して「歴代の天皇は、人々と社会を案じつつ、国の平和と国民の安寧のために祈るお気持ちを常にお持ちであったことを改めて実感しました」と、自ら継承した明仁路線を、あたかも歴代の天皇の一貫した路線のように吹聴している

:「歴代天皇は云々」話は嘘っぱちだけどね。要するに歴代天皇の美化でしょ

:というよりも、自分に都合のいいところを持ち出してきて、「天皇はもともとそうだった」と継承していることをでっち上げる。「京都の醍醐寺では、後奈良天皇の般若心経を拝見し、奥書に『私は民の父母として、徳を行き渡らせることができず心を痛めている』旨の天皇の思いが記されていました」と、都合のいいところを強調して

『尋常小学国史絵図』より後奈良天皇

:さもこうでしたという、見てきたような皇国史観。見てきたのは「写経」だけなのに。そのお経の奥付に、たまたま「国民のため」といった綺麗事があったから拾ってきた感じ。会見にも出てきた後奈良天皇の絵。写経に息がかからないために覆面瓠(ふくめんこ)というマスクを付けている。当時の疫病と飢饉の犠牲者のために、諸国の一宮に『般若心経』を奉納したそう。ナルヒトはそんな天皇に自分を重ね合わせているよね

:いずれにしろ歴代天皇が民や社会の安寧を祈っていたなんて嘘っぱち

:まあ、でも歴代天皇はけっこう写経してたんだね。やっばり皇室の宗教は神道じゃなくて、仏教だ(笑)。近代化の過程で、仏教的儀式を神道に再翻訳して、西洋からの翻訳文化も含めて、過去からの歴史的遺産であるかのように偽装してるんだよなあ。むりくり歴代天皇にコジツケて

:写経だの祈りだの、民のためなんてまじで嘘だし

:あんたそればっかりだね(笑)

:お経書いてれば心も落ち着くし、時間つぶしにもなるし。やることなかったんじゃない? 特に武家に権力奪われて、島流しにされた時代あたりから

:「武ではなく文である学問を大切にされてきたことも、天皇の歴史を考えるときに大切なこと」とも言っている。「武を大切にした」天皇もいっぱいいるけどね

:「道義や礼儀も含めた意味での学問」とかもあるけど、その内実は私たちには迷惑な話ばかりだと思うよ

:で、写経は「公務」だったのか?(笑)

:公務じゃないだろ(笑)。お習字の練習

:写経は自分の今後を案じて念じながらやっていたのではないの? 自分のために

:ほんと、それもあったと思う。書道の練習と、死んだあとの成仏。だから自分のためでもある。仏様あんじょうよろしく的な。で、「その思いと共に皇位を受け継いでこられた、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、研鑽を積みつつ、国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての務めを果たすべく、なお一層努めてまいりたいと思っています」なんて言ってる。象徴なんて始まったの戦後なのに、無理やり過去の天皇と、自分たちを重ねあわせてる

:天皇にとっては「自分のため」=「公務」ということかな(笑)

:「歴代天皇」の件は、天皇の側から「これを質問してね」とあらかじめ指示があったものでしょ。調べてなきゃ、アドリブでこんなには語れないし

:なんで写経で盛り上がるかね…(笑)

●SNS、報道への牽制

:私が気になったのはやはり徳仁の(これは明仁も同じだけど)、何かを促す語り口。こうであることを願う、とか。実際はそうして欲しいと促しているわけで。ボランティア奨励などもそうだけど、政府が出している見解を天皇が代弁する構図だよね

:SNSへの言及もあるけど、かなり上から目線で、なに説教してるのかい! と思ったよ

:「週刊誌報道やインターネット上の書き込みについては、人々が自分の意見や考えを自由に表現できる権利は、憲法が保障する基本的人権として、誰もが尊重すべきものですし、人々が自由で多様な意見を述べる社会をつくっていくことは大切なことと思います。その中にあって、一般論になりますが、他者に対して意見を表明する際には、時に、その人の心や立場を傷つけることもあるということを常に心にとどめておく必要があると思います。他者の置かれた状況にも想像力を働かせ、異なる立場にあったり、異なる考えを持つ人々にも配慮し、尊重し合える寛容な社会が築かれていくことを願っております」ってくだりね

:やんわりとした言論統制

:表現の自由に触れながら、基本的には報道やSNSに釘を刺しているね

:実際、SNSはひどい。だけど、ここでは「一般論」という申し訳をはさんで、遠回りに暗にネット規制や法整備を促すことに繋がる話としてある。人間天皇としての親しみやすさを出しつつ、自分の意思なのか国家の意思なのかわからない言論を垂れ流しているわけでさあ、よく機能している

●「沖縄の地と沖縄の皆さんに心を寄せていきたい」!?

:沖縄に触れているあたりではどう?

:今年は「復帰」50年てことで沖縄への目配りはしてる。これも明仁からの流れ

:ここでも「上皇」だね

:「私は、幼少の頃より、沖縄に深い思いを寄せておられる上皇上皇后両陛下より、沖縄についていろいろなことを伺ってまいりました」

:いったい何を学んできたのか

:「昨年夏の東京オリンピックで金メダルを取った沖縄出身の喜友名諒選手の空手の演技を見ながら」とここでも細かな(あざとい)気配り

蓼:「また、子供の頃から、毎年、6月23日の沖縄慰霊の日には、黙祷を捧ささげていました」と祈ってますアピール

:天皇家にとってはやはり沖縄戦は痛恨事だった

:だから、裕仁はとうに済んでしまっている天皇だけど、いまの天皇制にとって重大な問題につながるので触れるわけにはいかない。1947年の天皇メッセージなどとんでもない。語らないという政治の典型

:そのうち、雅子が美智子同様に、琉歌詠みだすのでは? 天皇家の文化的搾取。「そして、これからも、多くの人が沖縄の歴史や文化を学び、沖縄への理解を深めていくことを願っています」とあるけど、自分たち同様に、国民にも沖縄に思いを寄せ、「復帰」50年の節目に沖縄をクローズアップしろよ、沖縄も日本の一部だぞ、的な上から目線を感じる

:でも天皇は、たぶん「ヤマトの国民」よりは、本当に沖縄のことを考えている。沖縄の人のことではなく、領土として失ったこと、露骨に捨て石にしてしまったこと。万世一系の天皇としては、これはやっぱり失政だったと自覚がある

:目の上のたんこぶ、考えざるを得ないよね。何をどう語り語らないか、それが公式の記憶や歴史になっていくところがあるので、慎重に言葉を選んで語っていると思う。結果はひどいものだけど

:火炎瓶投げられた後ろめたさ。つまり、「ヤマトの国民」は騙せても、沖縄はそう簡単に包摂できないぞ、というひそかな懸念を感じる

:へたをすると自分の存在意義にもかかわる。それで必死に明仁は沖縄を重視した。実質的には、沖縄は従属・差別下に置き続けられているのだが、象徴としては「本当に思いを寄せてまっせ」ということをアピールしないといけないと思っている

:うまく触れず、うまく言わず、「寄り添い」「交流」「思いを馳せ」「学びました」と体面をつくろう姑息さ

:それが象徴の役割、と

:うまいということなのか?

:ふむ、そういうことかな(笑)。で、誕生日会見には「基地」の文字はないよね。すくなくともここ10年くらいは

:米軍の話しもない

:そう、それは語れないのさ。慰霊と追悼はするけど、基地のことは語れないよね。裕仁が招いた事態なのだから。瀬畑源は、「国民統合の『周縁』にいる人たちを再統合する役割」を、明仁は皇太子時代から意識的に担ってきたと書いている。で、沖縄には「本土」に反発する人が多く「国民統合の周縁にある」と。そして明仁は「その沖縄の人たちを『日本国民』として国家の中に統合する役割を、結果的に果たしてきた」と。この指摘はなるほどと思う

:徳仁は「本土復帰から50年の節目となる今年、私自身も、今まで沖縄がたどってきた道のりを今一度見つめ直し、沖縄の地と沖縄の皆さんに心を寄せていきたいと思います」と語っている。見つめ直すのはお前たちがたどってきた道のり、だろ!

:雅子バッシングや眞子バッシング相手なら、「相手をいたわる想像力をもって」とやんわり上からなだめられる。理想的皇室像にふさわしくない皇族へのバッシングであると確信してるから。でも露骨な天皇制反対、周縁のまつろわぬ民、沖縄の核心問題には触れられないタブーなのか

:地上戦については昔から触れている。これは明仁・美智子ゆずりの論点だから

:だけど、なぜ地上戦になったのか、なぜ捨て石とされたのかなどはNG。『もう一度戦果を上げてから」はどの口が言ったんだ

:そう。日本軍にも米軍にも基地にも触れないわけで、そのあたりが「芸」

●天皇家の人びとへの言及

:あとは愛子成年と、眞子問題。「納采の儀などは秋篠宮家の判断で、また、朝見の儀などについては、私の判断で執り行わないこととなりました」と、しっかり、秋篠と自分で役割分担したことを明言してるのが印象的だった

:「私の判断」ってすごいね

:皇室の自立性を明確にするという意思を感じるよね

:皇室の話はこの記者会見でないと話せないことじゃないかな

:たしかに他に話す機会はないわ

:抽象的な「象徴としての役割」と、妻や子どももある生身の人間としての自分の話を、うまく使い分けている。災害への言及とか、全体的に明仁の創作した象徴天皇制路線の継承で、心配しています、頑張ってますね的な話だけでは、何を言うか想像がつくからそのうち飽きられる。まったく「絵空事」にもなりかねない。そこに、個人的な、子どもの成長・進学・結婚話を混ぜる。同じ人間としての「国民」の関心事で一番、興味を引きつけることでもある

:家族の話でも明仁の話はよくでてくるが、裕仁の話はさすがにできない

:そうそう、お祖父ちゃんなんだから、いろんな思い出あるはずなのにね。歴代天皇のなかにも出てこない

:宮内庁記者会との事前「調整」とか検閲で、うまく調整されるんだな

:歴史上もっとも「国民」に支持された天皇・明仁路線は外れない。そこに徳仁的な何かが加えられるかも知れないが……

:いや、上皇、上皇后というエピソード的な登場は目立つ。ただ、すでに亡くなった人みたいな思い出感だけど

:そう、済んじゃった人的な扱い。公務がなくても、悠仁はとりあえず語られるけど、明仁美智子は現役としては語られない

:でもやっぱり、美智子が先生なんだよ。これからのことは、美智子に相談するのだと

:ほ〜

:だけど一大関心事である皇位継承問題には触れられない。政治だよね

:「古代の壬申の乱や中世の南北朝の内乱など皇位継承の行方が課題となった様々な出来事」ってのが、微妙におもしろかったり

:しかし、皇位継承について、彼らはホントのところはどう思ってるんだろうね。愛子を天皇にさせたい?

:現実的に愛子が天皇になることは諦めてると思うけど、将来的には女性に天皇の道も開きたいと思っているはず

:去年の発言では、制度にかかわることは申し上げませんみたいなことを言っているよ

:「ご質問において言及されたようなヨーロッパの王室などにおける状況はよく承知しています。しかし,昨年も申し上げたとおり,制度に関わる事項について,私から言及することは控えたいと思います」

:表立って言える立場にはない、ということはポーズとしても出しておかなくてはまずいでしょ。で、このテーマは長くなるよ。続ける?

:いや、もうお腹いっぱい。ごちそうさまです

:食えないネタでごちそうさまか。ゲ〜ッ 

カテゴリー: 反天チャット パーマリンク