茨城県の外国人密告制度を許すな!

加藤匡通(戦時下の現在を考える講座)

茨城県知事大井川和彦は全国で初めて知事として救急車有料化を行った人物である。緊急性のない利用に対しては7000円だかが請求される。するとどうなるかと言うと、「痛い痛い」と呻く人の横で「この症状は救急車呼んで大丈夫ですか?」と電話することになるのだ。

思い付きを突然発表して周囲を振り回し、パワハラを行うことでも知られていて、死者も何人か出ているところから「西の斎藤、東の大井川」と呼ばれている。とは言え残念ながら兵庫県知事ほどの知名度はない。

その知事が「不法就労」の外国人労働者「通報報奨金制度」を行うと発表した。字面の通り、密告に対して金を払う制度である。おそらく大井川知事は筋金入りの差別主義者ではない。流行ってるから乗っただけだろうと思う。昨夏の参院選でパンドラの箱が開いたどころか箱自体が壊れ、差別・排外主義が社会に溢れている。希望が残っていると言えるのかは大変怪しい。だが、知事の脳内がどうであろうとこれは行政による差別の制度化だ。行政が行うべきは差別の予防や抑止であり起きてしまった差別問題の解決や被害者への救済であって、断じて差別の制度化ではない。行政が率先してそんなことを行えば事態はあっという間に悪化する。

この「通報報奨金制度」に対しては様々な団体が反対声明を出した。新聞やテレビも取り上げたがそれも当然だろう。六月の県議会に条例案を提出することになっていて、その条例案が公開された。こちらが当惑するくらいにスカスカの条例案だった。議会での質問に知事は差別を助長する意図はない、匿名の通報は受け付けない、労働者個人ではなく企業を通報の対象としていると答えた。批判を受けて当初案から変更したのだ。もちろんそんな小手先の変更で解決するものではない。そもそも、外国人だとどうやって判断するのか。「不法就労」だとどう判断するのか。いや、「不法」だから何だと言うのか。働かずにどうやって生きていけるのか!日本の狭い法の許容範囲に適合していないからといって、生きる権利を奪っていいとでも思っているのか!(僕は正直言って、この制度を批判する人々もまず最初に「不法就労は問題だが」と断ってから話を始めることに腹を立てている)。

知事一人が問題であるかのように書いてきたが、県庁の中に知事に同調している者がいることも確認されている。庁舎内で取材に応じているやり取りをたまたま聞いた人がいて、あまりにひどい内容にその場で抗議してsnsに上げ、抗議文も出したかと思う。抗議いているのは左翼ばかりだとか、議会で質問した議員の中傷も口にしていたそうだ。権力者に追随している面もあるだろうが、県庁も社会の縮図なのでこんな社会であればこういった反応が出てこない方が不思議なのかもしれない。

……いやいや、たとえ本音だとしても、県職員がこんなことを取材に対して話しては駄目なのだ。行政が建前で社会を、制度を作らなくてどうするのか。差別のない社会を目指すと言わなくてどうするのか。

抗議行動も展開されている。県庁に近い水戸駅前では何度もスタンディングが行われ、県庁に対しては牛久入管収容所問題を考える会が抗議申し入れをしている。

僕たちも戦時下の現在を考える講座として声明を出したが(文末)、やはり具体的に何かをするべきだろうと考え、新年度初日の4月1日に県庁一周の「不法就労通報報奨金制度に反対するデモ」を行った。戦時下が主催で茨城不安定労働組合が共催となっている。しかし平日昼間、しかも当日は本降りの雨もあって参加は主催込みで四名だった。これが僕たちの実力なのだろうが、残念である。ただマスコミの取材が複数あり、珍しくテレビカメラまで来ていた。この件はそれだけ注目されてはいるのだろう。

4月下旬になって、6月議会をすっ飛ばして「通報報奨金制度」が5月から実施と発表された。パブリックコメントも抗議声明も全部無視したのだ。批判の声明を出した県弁護士会の役員就任披露のパーティーに、知事は欠席し代理も送らなかったという。安倍晋三からこのかた、意見を聞かず議論に応じず手続きをすっ飛ばして物事を決める政治家が続出しているが、その波はとうとう茨城にも及んだ。密告が奨励され、相互監視を期待する茨城県はもう目の前にある。戦時体制は急速に整いつつある。

さあどうしよう!


茨城県の外国人「通報報奨金制度」に対する抗議声明

大井川茨城県知事と茨城県は外国人に対する「通報報奨金制度」をつくるな。茨城県を相互監視の息苦しい街にするな。

今月(2月)18日、茨城県は「外国人」の「不法就労」に対する「通報報奨金制度」を来年度に創設すると発表した。様々な事情により法に沿っていない状態だからと言って単純に「不法」と判断できるのか。ましてや犯罪者扱いしていいのか。いいわけがない。

この制度は市民がほかの市民を監視し、自治体に通報する制度である。市民から通報を受けた県は担当者が調査をし、不法就労が疑われる場合は警察に通報する。警察による摘発につながった場合はもとの通報者に報奨金が支払われるという。隣人を監視し通報することを密告と呼ぶ。密告に倫理はない。隣人を気に入らないと思えば根拠なく密告するようになっていく。

まず、この制度は市民が「不法就労」している「外国人」を県に通報する制度である。市民はどうやって隣人を「外国人」と判断するのだろうか。見た目や言葉からだろうか。当たり前だが外見や言葉で国籍は分からない。市民はどうやって隣人は「不法就労」していると判断するのだろうか。当たり前だが、外見や言葉で「不法」か否かは分からない。しかし外見や言葉の印象だけで通報は出来てしまう。それは差別にほかならない。

つぎに、多くの外国人がすでに私たちの社会の一員であり隣人である。私たちの社会は数多くの外国人が様々な場所で働くことで成り立っている。彼らがいなければ私たちの社会は回らない。隣人である彼ら外国人を一方的に「不法」と決めつけて密告する制度を新設しようとしている茨城県は、私たちの社会を破壊したいのだろうか。

さらに、監視対象が特定の属性に止まらないのは歴史の教えるところだ。障害の有無、性的指向、宗教、思想と監視すべき属性は拡がっていく。その先にあるのは市民が相互に監視し合う社会だ。現在でも様々な国や地域でそれは起きているし、私たちの国も一九四五年以前はそうした社会だった。茨城県はその歴史を繰り返したいのか。

この数年で外国人差別は急速に強まった。この国で暮らす外国人は、今では怯えて暮らしている。参政党を初めとして多くの政党は差別的な政策を公然と掲げている。そうした中で茨城県が都道府県単位で初めて「外国人密告制度」を行うことの意味はとても大きい。それは、茨城県は全国に先がけて差別・排外主義に基づく街づくりを行うと宣言するに等しい。行政が率先してそんなことをすれば、社会がどうなるのかはトランプ大統領のいるアメリカを見ればわかる。それに私たちの住むこの国では、百年と少し前に民衆が外国人を虐殺した歴史を持っている。茨城県はそれを繰り返したいのか。

高市政権は民主主義を破壊し、議会を軽視した独裁と呼んで構わないような政策を急速に行いだした。大井川茨城県知事はその姿勢を見習ったのだろう。あまり知られていないが大井川知事は「西の斎藤、東の大井川」と称され、思い付きの政策を振り回し部下をパワハラによって何人も死に追いやっている人物である。都道府県レベルで初めて救急車の有料化を行い、市民の救急車利用を制限させる方向に舵を切ったことを効率化と考えるような人物である。「外国人密告制度」を思いつき、政権の意に沿い時流におもねった政策を考えついて大井川知事は小躍りしたろうが、私たちはその先にある相互監視を拒否する。虐殺も拒否する。大井川知事は茨城県を自分の王国と妄想しているかもしれないが、私たちは知事の操り人形でも臣民でもない。それとも大井川知事は自身の在任期間中、息苦しく生命の危険さえある県として全国都道府県魅力ランキングの最下位を独走する決意を固めたのだろうか。

大井川茨城県知事と茨城県は「外国人密告制度」をつくるな!差別そのものの制度をつくるな!虐殺を引き起こしかねない制度をつくるな!相互監視の息苦しい街づくりをするな!

2026年2月23日
戦時下の現在を考える講座

 

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