タイの改革派人気政党の前進党、裁判で敗訴し解散の可能性

要約・翻訳:編集部

東南アジア特派員 ジョナサン・ヘッド(Jonathan Head)

BBCニュース(アジア)2024/01/31
https://www.bbc.com/news/world-asia-68151262

昨年の選挙で最多得票を獲得したタイの改革派政党が、その政策のひとつを違憲とする裁判所の判決を受け、解党する可能性が出てきた。前進党は政権を担っていないが、選挙公約である王室名誉毀損法の改正を、タイの裁判所が憲法違反と判断したのだ。こうした不敬罪は、政治批判を封じ込めるために使われることが多くなっていると活動家たちは言う。党のリーダーたち全員が政治活動から追放される可能性も出ている。

ピタ・リムジャロエンラット党首はハーバード大卒の若い政治家で、2023年の選挙で過半数の票を獲得したときには、軍部と連携するエリートたちからタイの王制に対する重大な脅威と見られていた。ピタの政党は進歩的なアジェンダを掲げて選挙戦を展開し、議論の分かれる不敬罪の改正を公約に掲げたが、支持の多くは他の改革案に対するものだった。選挙結果に反し、ピタの首相就任への努力は、選挙で選ばれたわけではない上院によって阻止され、最終的には他の政党による連立政権が成立した。

先週、ピタは、彼の国会議員の資格剥奪を狙った別の訴訟を乗り切った。しかし、彼とその政党は、水曜日に行われた2件目の重要な裁判に勝つことはできなかった。憲法裁判所は、前進党とその指導者たちが、国王を国家元首とするタイの民主的な政治体制の転覆を求めるに等しい「行動を示した」と判決を下したのだ。そして、不敬罪法の廃止を主張するいかなる行為や意見の表明も、媒体を問わず停止するよう命じた。また、「合法的な立法措置」以外の方法による法の改正も禁止した。つまり、国会を通じて法律を改正することは可能かもしれないが、公開討論やソーシャルメディアでの議論は許されないということだ。

この判決は直ちに罰則を科すものではないが、前進党の解散と、その指導者たちの数年間の政治活動禁止を正当化するために用いられると広く予想されている。タイではこれまでにも、より薄っぺらな口実で政党が解散させられ、指導者が政界から追放されたことが何度もあった。いつもこれが、裁判所への請願の真の目的なのだと考えているタイ人もいる。

政治活動家のパヌサヤ・シティジラワッタナクンはBBCに「前進党は不敬罪を改正したかっただけで、私たちが提案したような王制改革は望んでいなかった」と語る。選挙キャンペーンで前進党は、法律の完全廃止を求める活動家の要求を遠ざけ、改正だけを求めたのだ。前進党は、通常の刑法の一部である法律を精査するのは選挙で選ばれた議会の正当な役割だと主張していた。タイの不敬罪法はすでに2度、大幅に改正されている。

しかし依然として、裁判所への請願は王制批判に対して使われる強力な弾圧手段だと活動家たちは言う。今月初め、バンコクに住む30歳の男性が、タイの王制を批判した罪で懲役50年の判決を言い渡された。そして2020年11月以降、260人以上がこの法律に基づいて起訴されている。この法律は、とりわけ王制を標的にした2020年の民主化デモ以来、より頻繁に使用されている。4年前、前進党(ムーブ・フォワード)の前身である未来党(フューチャー・フォワード)という政党も、選挙で予想外の好成績を収めた後に解散させられた。憲法裁判所によるこの措置は、学生主導の数ヶ月にわたる抗議行動を引き起こし、国王の権力抑制という前代未聞の要求も出された。

そして2021年11月、裁判所はパヌサヤを含む3人の代表的な活動家(2020年の数ヶ月に及ぶ抗議行動中に王制の改革を訴えた)が「立憲君主制を転覆させる隠れた意図」を持っているとの判決を下し、活動停止を命じた。それ以来、3人とも複数の刑事責任を問われている。この抗議活動の他の指導者たちの多くも、不敬罪に基づく罪と戦っており、何年も刑務所に収監される可能性がある。

こうした状況の中で、今回、若者たちが通りに出てくることはないだろう、とパヌサヤは考えている。彼女は言う。「誰も何もしようとしない。若者たちは指導者たちが刑務所に入れられるのを見て、リスクを知っているからだ。人々は以前よりも恐れているとしか思えない。今、私たちが見ているのは暗い道だけ。出口はない」。

BBCの同趣旨の日本語記事が以下にあります
https://www.bbc.com/japanese/68163239

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