集会:戦争から逃げる 兵役拒否を考える報告

戦時下の現在を考える講座 加藤匡通

兵役拒否は犯罪視され続けてきた。近代国民国家の戦争を考えれば当然ではある。それでも良心的兵役拒否者たちの運動によって、兵役拒否は多くの国で権利として認められ、徴兵制の中に組み込まれるようになったが、戦争が行われている状況下で兵役を拒否することがどれだけ困難なことであるのかは、現在のロシアとウクライナの兵役についての報道でうかがい知ることが出来る。

私たちのいるこの国では、敗戦以降兵役に関する議論自体が消えたものの、それ以前には兵役拒否の制度化など夢想すら出来なかった。この国には極少数の良心的兵役拒否者と膨大な徴兵忌避者がいて、中でも非合法で忌避した者(合法的に忌避出来た時期もあった)に対しては戦後の反戦平和運動の中でさえ、「生命を惜しむ卑怯な行為」と貶められてきた。だから私たちは身近にいたのかもしれない徴兵忌避者の顔も名前も知らず今に至っている。

ロシア・ウクライナ戦争をめぐって反戦運動が割れている。そこで焦点になっているのは、国家が「国民」を兵士として動員することを正当化出来るのか、なのだと思う。集会主催者は正当化出来ないと考えている。それを鮮烈に問うているのが兵役拒否者たちだ。だがそうした問題意識は「ウクライナ祖国防衛戦争」を支持する人たちには伝わらず、私たちは「プーチンの味方」と呼ばれている。

お話をお願いした三上真理子さんは研究の中心が兵役拒否で、しかも茨城の事例を調べている。今回のために詳細なレジュメが用意され、この国のみならず世界的な兵役拒否の流れや、新聞や統計から見える茨城県内の兵役忌避者について話された。レジュメそのままに行けばロシアとウクライナの兵役拒否の現状にまで進んだと思われるが残念ながら時間切れとなった。会場での議論では、今のこの国で兵役拒否の制度化を論ずる意味があるのかといった疑問や兵役拒否が制度化されることの限界などが指摘された。だが主催者と大きく考えの違う人たちはおらず、現在の反戦運動の争点を明確化、深化できなかったのは残念である。

集会は2月25日、土浦の県南生涯学習センターで行われた。参加は20名。

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