京都・主基田抜き穂の儀違憲訴訟

永井美由紀(京都・主基田抜穂の儀違憲訴訟団事務局)

現在、京都地裁で「京都・主基田抜き穂の儀違憲訴訟」が闘われている。

ことのはじめは、2019年5月13日の新聞報道「皇居・宮中三殿で13日に行われた『斎田点定の儀』で、天皇陛下の皇位継承に伴う重要祭祀『大嘗祭』の際に使うコメを育てるための『斎田』のうち、主基(すき)地方は京都府に決定」から。

「ほっとくわけにはいかないね」と、まずは「天皇代替わりに伴う違憲行為を監視する有志の会」として14名が名前を連ねて、7月30日に西脇京都府知事宛に、「府知事や府職員に即位・大嘗祭にかかわる諸儀式に関与させたり、公金を支出するなどの違法行為をしないよう厳重に注意してください」「国(宮内省)などから関与の要請があっても、憲法遵守の観点からこれを断るよう行動してください」との要請文を提出。

9月27日に南丹市で行われた「斎田抜穂の儀」に参加した西脇知事に対して抗議するとともに、11月14日の大嘗宮の儀に関与することがないよう要請する文書を、10月14日に送付した。

翌年8月21日住民監査請求を提出したが、10月5日に「請求は認められない」との判断が出された(住民監査請求のため京都府に住所がある者による請求)。

いよいよ裁判へ
2020年11 月4日、京都府知事らの以下の①~③の各行事への参列・出張に対する給与及び旅費の支給は違法な公金支出であるとして、西脇隆俊京都府知事を被告に、損害賠償請求を求める裁判を提訴した(住民訴訟のため、原告は住民監査請求人のみ)。

①2019年9月27日、南丹市で行われた「主基田抜穂の儀」への京都府知事、京都府農林水産部長の参列。
② 2019年10月15日、「主基田」で収穫された新穀献納の儀に参列するため京都府東京事務所長が東京事務所(会館)から皇居に出張。
③ 2019年11月14日、15日に行われた大嘗宮の儀及び16日の大饗の儀(悠紀殿供餞の儀と主基田供餞の儀)に参列するため、京都府知事は京都から出張。

第1回口頭弁論は翌年2021年2月9日に開かれ、今年2022年7月25日までに7回の口頭弁論が開かれた。訴状で「京都府知事らが一連の儀式に参列したことは政教分離原則違反であり、これらの行為に対する公金支出は違憲違法である」と主張し、以下のように準備書面で違法性について明らかにしてきた。

準備書面1:斎田点定の儀、斎田抜穂前一日大祓、主基田抜穂の儀について、写真や式次第によって政教分離違反であることを明らかにした。
準備書面2:新穀献納の儀、大嘗宮の儀、大饗の儀について、写真や式次第によって政教分離違反であることを明らかにした。
準備書面3:歴史的変遷とその意義・特質について、高木博志京都大学教授の著書等を参照して論じ、大嘗祭が新天皇が天照大神の神威を受けて天皇としての権威と聖性を獲得するという宗教儀式であること、斎田に点定された地域の知事の参列が不可欠の要素となっている服属儀礼であることを明らかにした。
準備書面4:主権の所在、天皇の地位及び政教分離を中心にして帝国憲法と日本国憲法を比較した上で、帝国憲法下での大嘗祭と比較して日本国憲法下で行われた各儀式の意義をその実態に基づいて確認し、各儀式等が国民主権原理及び政教分離規定に違反することを論じた。

被告からは、準備書面1~4に対して、準備書面4で以下の反論がなされている。
① 帝国憲法下の大嘗祭が服属儀礼であったことは認めたうえで、「伝統的儀式というものは、古来の方式などを踏襲していても、それが有する意味については時代とともに変化し得るものである」と本件大嘗祭が服属儀式であることは認めず。
② 本件儀式が宗教儀式であると認めた上で、前回大嘗祭関連の最高裁判決も認定しているように本件儀式への参加は「社会的儀礼」である。

被告準備書面4に対しては原告準備書面5で、横田耕一意見書等を踏まえ、日本国憲法下での大嘗祭も帝国憲法下と同様服属儀礼としての性質が払拭されていないこと、大嘗祭及び各儀式への参列及び公金支出は日本国憲法を構想する際に前提となった政教分離原則に反すること、大嘗祭への京都府知事らの参列及び公金支出は4つの最高裁大法廷判決が示した目的効果基準や総合判断の枠組みによっても政教分離規定(憲法20条1項後段、20条3項、89条)に反することを論じた。

第8回口頭弁論(2022年11月7日)までに、原告からは、佐々木弘通論文を踏まえ、日本国憲法が国家機関たる象徴としての天皇と宗教との結びつきやかかわり合いを一切否定し、天皇の宗教活動は私的領域に限定されていることを論じる第6準備書面を提出し、被告からは原告第5準備書面に対する反論が提出される。その後は原告第6準備書面に対する被告の反論、原告の再反論が予定されている。

裁判の資料は以下のURLへ。
http://noyasukuni.g2.xrea.com/sukidensosyo/cyottomatta.html
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