山本直好(ノー!ハプサ(NO!合祀)事務局)
『靖国神社「韓国人」合祀経緯・合祀者名簿の真相調査』(韓国・日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会編)が2007年に韓国で公表された。その日本語版が強制動員真相究明ネットワークやノー!ハプサの協力の下で2021年に完成し、発刊の運びとなった。2007年に日本では国立国会図書館が「新編靖国神社問題資料集」を公表したが、行政内部の資料が乏しい上、朝鮮人・台湾人・沖縄などの戦没者の合祀に関わる資料が極端に少なく、戦後の靖国神社合祀の全体像はなお不明なところが多い。
本調査報告の特徴は何と言っても、日本政府から提供された戦没者記録を直接調査し、靖国神社合祀の実態解明に踏み込んでいることである。特に生存者合祀の問題は重大である。2007年現在、靖国神社が合祀した韓国人2万1181人のうち、13人が生存しており、47人が戦後に死亡したことが明らかになった。このうち軍人として強制徴用されたのは8人で、軍属は52人だった。軍別では、陸軍所属が10人で、残りは海軍所属だった。
ノー!ハプサ第1次訴訟の原告には「生きていた英霊」である金希鍾(キム・ヒジョン)さんも名を連ね、靖国神社に対して合祀の取り消しを求めていたが、靖国神社は「生存確認」の通知をするだけで「霊璽簿」からの削除には頑なに応じなかった。日本人も含めた全合祀者のうち相当数が生きて帰還しながら「戦没者」と認定され、本人や家族が知らないうちに靖国神社に情報提供され、「英霊」として合祀されたままとなっていることは疑いようがない。情報公開制度を利用した私たちの調査でも、二重合祀や別人の合祀など誤った合祀が横行していた実態が明らかになっており、「霊璽簿」は間違いだらけだ。
日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会は韓国の国家機関であり、日本政府や靖国神社に質問状を送り、公式回答を得ていることも本調査報告の特徴だ。その中には日本政府から靖国神社に情報提供された朝鮮人関係の「祭神名票」の年度ごとの提供数もある。参考として「留守名簿」「海軍軍属名簿」の実物の画像も掲載されており、靖国神社合祀事務の実態に迫る貴重な調査報告となっている。朝鮮人のみならず、「援発3025通知」に基づく戦後の靖国神社合祀の実態を学ぶ入門書としても最適である。
本書は一般の書店では取り扱っていない。ノー!ハプサ事務局で、1冊500円、送料370円(レターパック)で販売している。注文は必要冊数、送付先を明記の上、FAX:03-5241-9906又はEメール:nohapsa(アットマーク)yahoo.co.jpまでお願いしたい。