少し前のことになってしまったが３月下旬、たまたまNHKで、高校生たちがロシア大使館の前で抗議行動をしたというニュースを見て呆然とした。
NHKのニュースはこちら
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220321/k10013543611000.html
昨年、２０２１年５月に、イスラエル大使館に向けて抗議行動をしたときのことを思い出し、あまりの扱いの違いに呆然としたのだ。当時、イスラエルはパレスチナに空爆を繰り返し学校や病院を破壊し子どもを含む多数の市民を殺害していた。しかしテレビでは少し報道されるだけだったし、イスラエルが経済制裁を受けたわけでもなかった。何十年にもわたって同様のことを繰り返しているのに。
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今年３月のロシア大使館へのデモで高校生たちは、ロシア大使館の郵便ポストまで警察官に優しく案内してもらっていたが、昨年５月のイスラエル大使館へのデモは本当に警察がひどかった。２００人近く集まっていたと思うが、デモ参加者たちは既に地下鉄の入り口から誘導されて狭い公園に押し込められ、一度に行進を許されたのは２０人ほどだったため、長い時間にわたって何度も整列してデモを繰り返さなければならなかった。主催者はおとなしく警察に従っていたが、噂によると、デモをなるべく小さく見せかけるためとのことだった。イスラエル大使館に至る道は大通りの手前で巨大バリケードで封鎖されており、デモ隊は、大使館から何十メートルも離れた交差点の片隅に囲い込まれ、しかも大使館方向ではなく、反対側にあるコンビニに向かって抗議の声をあげるという間抜けなことをさせられたのだった。もちろん、大手メディアの取材は皆無だった。
イスラエルとロシアで、報道のしかたからデモの弾圧まで、なぜこんなにも扱いが違うのか。何を今さらと思われるかもしれないが、理由を確認しておきたい。
１ イスラエルと日本の関係
安倍政権のあいだに、日本はイスラエルに急接近し、セキュリティ関連品を輸入したりしていることは周知のとおりだ。またイスラエルは、「自由と民主主義」を騙る米国の支持を長年受け、ペテン師バイデンによれば「自由主義陣営」の仲間なのだという。日本もその仲間なのらしい。友好国へのデモは小さく見せかけて弾圧するのが政府や警察の方針なのだろう。
２ レイシズム
ウクライナは日本から見るとヨーロッパにあり(旧ソ連圏をヨーロッパではないと感じる人が世界には多くいる)、ウクライナ人は日本語でいうところの所謂「白人」だ。世界で優勢な文化は「白人」の文化なので、文学や映画などを通じて日本文化圏の人たちも御多分に洩れず「白人」に自己同一化しやすくできている。ウクライナはクラシック音楽やバレエが有名で憬れもある。白人であるウクライナ人がひどい目に合っているとなると一斉に同情が集まる。一方、パレスチナ人を含むアラブ人は米国主導で「テロリスト」のレッテルを貼られており、一般市民がひどい目に合っていてもそれほど注目を集めない。長い間、理不尽な攻撃にさらされているのは米国を始めとする「自由と民主主義」の国のせいであるのにもかかわらず、紛争地だからしかたがない、というような冷たい視線もある。さらに日本の警察は米国の真似をしてムスリムにテロリストのレッテル貼りをしているので弾圧がひどいのはその理由もある。
一般市民もメディアも警察も政府も、パレスチナには最低限の注意しか払わないが、ウクライナには大騒ぎ。米国や日本の右翼政治家たちはそれに乗じて有利に立ち回っている。
天皇制に関係ない話ですみません。デモつながりで言えば、岩波ホールの前で、反天と正反対の考えをお持ちの方々が、のんびりと楽しくデモをされている姿を見たときの衝撃を思い出すと言えばわかっていただけるでしょうか。
※この文章の仕上げをしているときに、アルジャジーラの記者シェリーン・アブ・アクレさんがヨルダン川西岸の難民キャンプでイスラエル軍による急襲作戦を取材中にイスラエル軍に殺害されたというニュースが入った。さすがのNHKもちらっとだが報道していた。
BBCの記事はこちら https://www.bbc.com/japanese/61434582
世界の耳目がロシアに集まっているさなかにこんな悪事を働いていたとは。イスラエルは本当に許せない。こちらの本をお勧めする。
イラン・パぺ『パレスチナの民族浄化』
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-60350-1.html
（ダニエル・ジャック）
