帰還船の来る港への移動が始まった。僕等は収容所では最后の組だった。妹を産んだばかりの母の身体を気づかって、父がそれを希望したのだ。僕は友達に別れを告げるのに忙しかった。友達は毎日へっていくのだった。ある朝、しばらく会わなかったチビが、息せききって駆けこんできた。タバコの空箱のメンコを持てるだけ手にしていた。
「みんなゴミダメに捨ててっちゃうんだ。まだ沢山あるよ。」
僕は黙ってそれを受け取った。チビは無邪気に緊張して言葉を続けた。
「僕はこれからトラックに乗るんだよ。チカラさんは何処にいるの。」
チビは何も知らされていなかったのだ。僕はそのことに気づくと、なおさら黙らざるを得なかった。しかしチビはひるまなかった。
「僕はね、クリークに落っこった時、チカラさんに助けてもらったんだって。お礼を言っていきたいんだ。」
僕はやっとの思いで口を開いた。
「チカラさんはいまよそに行ってるんだ。」
そして重々しくつけ加えた。
「チビ、お前も立派な大人になるように、って言ってたぜ。」