鯨が増え過ぎて生態系を破壊する「反捕鯨」の大嘘(その10)

環境保護運動の育成は「新道徳武装」CIA謀略だった!

子供の罵声を唆すオーストラリア反捕鯨運動に「白豪主義」伏流を見る

2001.1

 国際捕鯨委員会(IWC)の加盟国には、アメリカは当然のことだが、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドが入っている。この4ヵ国に、時にはカナダが加わったりするが、これらの英語使用国だけをまとめれば、すぐに「国際世論」を主張するのが、アメリカの常套手段である。IWCは、アメリカの謀略機関に等しいのである。

 梅崎義人著『動物保護運動の虚像/その源流と真の狙い』(p.86)によると、1982年に捕鯨禁止の「モラトリアム」を採択した当時の加盟国は39ヵ国だが、その中に、日本人が国名すら知らないカリブ海の島国、セントルシア、セントビンセント、ベリーズ、アンティグア・バブーダなどを含めて、英連邦加盟国が12ヵ国も加わっている。

アングロ・サクソン連合による強引な国際世論デッチ上げ

 しかも、1972年にIWCの科学委員会が「モラトリアム」を拒否した当時の加盟国は、14ヵ国だったのに、科学委員会を出し抜くために、アメリカの勧告で「関心のあるすべての国」にまで参加資格を広げて39ヵ国にまで増やし、総会決議で「モラトリアム」の採決を狙ったというのである。いわゆるアングロ・サクソン連合による強引な国際世論デッチ上げ作戦が見え見えである。

 日本は、諸国家連合(国連の正しい訳)におけるアメリカの投票機械と評されているが、IWCは、その種のアメリカ傀儡組織の実に醜い典型である。

 私は、これらのアングロ・サクソン連合の弱い環として、太平洋の国、オーストラリアとニュージーランドを、まず撃つべきであると考える。オーストラリアには、いまだに、「白豪主義」の伏流が潜んでいる。以下の記事にも、その伏流の表面化が見られる。

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『産経新聞』(2000.7.26)

クジラと人類/共生は可能だ

反捕鯨国との不毛な論争

論説委員・荻原征三郎

「さっさとトウキョウに帰れ」

 第52回国際捕鯨委員会(IWC)年次総会は今月初めオーストラリアのアデレードで開かれたが、現地からのテレビ画像に映った日本代表への怒号シーンだ。反捕鯨団体がIWC総会の会場前で繰り広げる「クジラを救え」キャンペーンはいまに始まったことでない。

 かつて日本代表団は赤いペンキをかけられたこともあった。その屈辱的経験からすると「静かになった」そうだが、アデレードで日本代表を取り巻いた一群には子供たちの姿が目立った。ニュージーランドやアメリカとともに反捕鯨国の強硬派に属するオーストラリアがどんな思惑で子供たちを前面に出しているのかは知るよしもないが、まだあどけなさを残す子供たちが一国を代表するメンバーの耳元で罵声をあげる姿にはおぞましささえ感じた。

 オーストラリアが今回の総会をアデレードに招請したのは政治的効果を計算してのことといわれる。南太平洋から捕鯨を締め出す鯨類サンクチュアリ(聖地)をニユージーランドとともに提案してきたが、自国で開く総会で賛成票を増やし反捕鯨運動の広がりを世界にアピールするねらいがあったとされる。

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 IWCの規約では重要案件は出席の4分の3以上の賛成が必要だ。今年新たにギニアが加盟しメンバーは41ヵ国、うち6ヵ国は分担金末納などで投票権が停止されているため、最大35の票がどう分かれるかがポイントになる。

 日本の票読みは賛成21、反対10、浮動票5前後だった。賛成が上回るものの4分の3以上には達せず、可決・成立はありえない。ただこの種の提案はこれからも続くことが容易に想像されるこどから、初めての採決で賛否がどのような比率になるかが注目された。  結果は賛成18、反対11、棄権4だったが、予想外のことも起きた。

 棄権票の4ヵ国はロシア、アイルランド、オマーン、韓国だが、事前の読みでは棄権に回ると思われていたカリブ諸国のドミニカが反対票を投じ、棄権すると思われていたソロモン諸島は投票当日に急きょ帰国してしまった。  この2国にはそれぞれ複雑な事情があったのだ。

 アメリカの影響力を強く受けるカリブ海に位置するドミニカだが、日本からも漁業振興などで支援を受けており態度を鮮明にすることは得策でない。そんな判断から棄権するものと思われていた。ところが予想に反して反対票を入れたことで「日本が票を買った」との批判まででたという。

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 現実的な国際政治の波にほんろうされる小国ならではの苦しい立場が投票行動に表れたといえよう。責任を問われて漁業担当大巨が辞任したという後日談も伝わってきた。

 ソロモンはオーストラリアやニュージーランドを中心とする南太平洋諸国会議(SPF)に他の島しょ国とともに加盟している。政治、経済両面で反捕鯨国のオーストラリアやニュージーランドの動向を無視することはできない。

 一方で海洋国として持続的に海洋資源を利用しようという捕鯨擁護派の立場も理解できる。また日本が最大の援助国でもある。双方の顔を立て棄権とみられていたが、投票直前に本国から帰国命令が出た。突然のボイコットには「オーストラリアあたりからかなり強い圧力があったようだ」との観測がもっぱらだ。

「ソロモンの帰国は予想外だったが、事前の票読みより反対票が増えたことは評価していい」。今回から日本代表になった森本稔氏はこう分析する。

 日本は、調査捕鯨の結果などからクジラ資源は確実に増えており、節度を守って捕鯨を再開しても資源は維持できると科学的データを示し主張している。

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 むしろ最近はクジラの増え過ぎを懸念する調査結果も報告されている。日本鯨類研究所の試算では、世界のクジラが1年間に食べるえさは少なくとも2億8千万トンから5億トンという。人間の漁獲量9千万トンの3倍から6倍も捕食していることになる。「一つの生物種をその生態系における役割を無視して完全に保護すると、生態系のバランスまでもが破壊される」と日本鯨類研究所は警告する。えさ不足が原因とみられるクジラの餓死が増えているとの報告もある。

 クジラの生息数を維持しながら持続的に利用する、つまり乱獲を防ぎながら一定数の捕鯨を認めることこそ海洋資源のバランスを守ることにつながる……これが商業捕鯨再開を求める日本など捕鯨国の主張だ。

 森本代表は「海の幸に依存する島しょ国などの捕鯨に対する理解が着実に深まってきた」と手ごたえを感じているようだ。  とはいえ、かつて鯨油を不凍液として利用するためだけにクジラを乱獲し、種の維持すら危ぶむ状況にまで追い込んだ国々が「その反省から1頭たりとも捕獲してはならない」たどとさかしらげに唱える限り、捕鯨の是非をめぐる不毛な論争に終止符を打つことは期待できない。

 2年後の54回総会はかつて捕鯨基地として栄えた下関で開かれることが決まった。捕鯨が長い歴史にはぐくまれてきた日本の豊かな食文化であることを節度ある行動で訴えようではないか。

(おぎわら・せいざぶろう)

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(その11)日本政府が捕鯨再開で敗戦後56年の対米従属外交の壁を破れるか否か
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