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最終更新: 13週 4日前

クルド人男性の症状悪化も東京入管は強制収容解かず

2017/07/03(月) 12:34

入院中のV・Aさん(右)と面会する娘。家族は15年に来日した。(撮影/織田朝日)

「このままだと死んでしまう。助けて」。トルコ・クルド人自治区出身のV・A(46歳)さんは、充血した目、青白い顔でこう訴えた。V・Aさんは統合失調症であるにもかかわらず、難民不認定処分に対する異議申し立てが棄却されたとして、3月14日に東京入国管理局(港区)に収容された。常備薬を飲めないことと収容のストレス、体に合わない薬を飲まされ体調が急激に悪化している。

親族や弁護士によると、そもそもV・Aさんが統合失調症を発症したのは、1995年に来日した後、2000年にオーバーステイで検挙され、東京・十条と茨城・牛久の入管に2年以上収容されたことが原因だ。その後病院に入院したが、薬が合わず苦しんだ。05年にはトルコに帰国したものの、クルド人を取り巻く環境の悪化から、再び13年12月に日本を訪れた。14年10月に一時的に収容を解かれる仮放免となった後は、トルコ帰国時から飲み始めた薬を服用し、体調は比較的安定していた。

しかし、3月に再び収容。5月17日には入管から家族に突然電話があり、V・Aさんを収容先から病院に強制入院させると告げられたという。家族は翌18日に入院の同意を確認された。だが病院の薬や治療が合わず、V・Aさんの体調はさらに悪化。29日に退院したが再び収容され、入管職員の監視下で体に合わない薬を飲むことを余儀なくされているという。V・Aさんは、「一番の薬は外に出ること(解放)です」と訴えた。

担当の大橋毅弁護士は、「入院をさせる時には事前に家族の同意が必要。事後の確認だったのなら、問題」と指摘する。また、「V・Aさんが病気であることを知りながら入管は収容したのに、病気に対処できていない。症状が悪化しているので今すぐ収容を解くべき」とした。しかし東京入管は、「個々の事情を考慮した結果、収容に耐えうる、大丈夫だと判断して収容している」との見解を示した。

(本誌取材班、6月23日号)

「南スーダンPKOに参加した多数の自衛隊員にPTSD発症」 元自衛官が証言

2017/06/30(金) 17:28

元自衛官らが中心となり6月1日に設立されたベテランズ・フォー・ピース・ジャパン(平和を求める元自衛官と市民の会/VFPジャパン)が9日、衆議院第一議員会館(東京都千代田区)で設立記念シンポジウム「戦場のリアルと戦争する国の経済のリアル」を開催し、約170人が参加した。

VFPの本部は米国にあり、連携組織は今回の日本の他、英国・韓国・フィリピン・ベトナムなどにもあるという。

元陸上自衛隊レンジャー隊員でVFPジャパン代表の井筒高雄氏は、「戦争という選択をしないで紛争解決を目指すという思いで、世界のVFPの仲間たちとともにこれから日本で活動していきたい」と抱負を語った。

金子勝慶應義塾大学経済学部教授は基調講演で「アベノミクスは展望のない状態に入り、日本の競争力は恐ろしい勢いで落ちている」とし、「安倍政権は産業政策にも失敗して、原発輸出と武器輸出に頼らないと生きていけないような状況に追い込まれている」と語った。そして、武器製造はラインが動き続けないと採算が取れないため、「絶えずどこかに行って戦争にコミットしないとやっていけなくなる」と警告を発した。

VFP米本部・PTSD(心的外傷後ストレス障害)被害調査グループリーダーのサム=コールマン氏は、「アフガニスタン戦争やイラク戦争などに従軍した元米兵の中にPTSDを発症するケースが多く、自殺率も高い。深刻な問題だ」と警告を発した。また、ベトナム戦争に従軍した元米兵のPTSD等生涯有病率(予測)を「男性31%、女性27%」と試算し、「これは日本の将来でしょうか」と日本の行く末を心配した。

井筒氏はこれを受け、「南スーダンで戦闘が発生した結果、PKO(国連平和維持活動)に参加していた自衛隊員多数にPTSDが発症している」と実態を語った。

(星徹・ルポライター、6月16日号)

<原発事故>指定弁護士、東電元会長らの認識を詳述

2017/06/30(金) 15:01

2011年に起きた東京電力福島第1原発の破局的事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の初公判が6月30日午前、東京地裁(永渕健一裁判長)で始まった。元会長の勝俣恒久被告(77歳)が「震災当時、津波による事故を予見するのは不可能でした」と述べるなど、3人とも無罪を主張した。

他に起訴されているのは、ともに元副社長の武黒一郎(71歳)と武藤栄(67歳)の両被告。

冒頭陳述で、検察官役の指定弁護士は、福島第一原発に敷地高さの10メートルを越える高さの津波が襲来することについて、冒頭陳述では〈被告人武藤は平成20年(2008年)6月10日、被告人武黒も遅くとも同年8月上旬には、上記計算結果を実際に認識していました。〉〈平成21年(2009年)2月11日には、当時原子力設備管理部長であったLが「もっと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて」などと発言しているのですから、被告人勝俣も上記事実を知ることができました。〉と断言。〈被告人らが、費用と労力を惜しまず、同人等に課せられた義務と責任を適切に果たしていれば、本件のような深刻な事故は起きなかったのです。〉としている。

指定弁護人による冒頭陳述の全文はこちら。

(伊田浩之・編集部)

管官房長官の陰湿人事(西川伸一)

2017/06/30(金) 14:14

外務省は森本康敬・在釜山日本総領事を6月1日付で退任させた。森本氏は昨年5月1日付の発令なので、在任は1年1カ月でしかなかった。前任者が3年、さらにその前任者が2年勤務してそのポストで定年退職している。つまり、在釜山日本総領事はノンキャリ外交官のいわば「上がり」ポストなのである。森本氏もここで定年を迎えるはずだった。

なぜそうならなかったのか。昨年12月に釜山の日本総領事館前に「慰安婦」問題を象徴する少女像が設置された。日本政府は対抗措置として、森本氏と長嶺安政駐韓大使を今年1月から4月まで一時帰国させた。その帰国中、森本氏は知人との私的な会食の際に政府の対応を批判した。それが官邸に伝わって、事実上更迭される事態となった。

ではなぜ私的な会話を官邸は知り得たのか。これについて『週刊文春』6月15日号は、「森本氏は『政権寄りの新聞社が取材メモを官邸に持ち込んだようだ』と漏らしていました」との「外務省関係者」の発言を紹介している。新聞社が政権にご注進に及ぶとは。事実ならば癒着もきわまれりだ。加えて、私的会話にまで目くじらを立てる政権の陰湿さには驚く。

菅義偉官房長官は6月1日午前の記者会見でこの人事を問われ、「(政権の対応への批判は)承知していない。通常の人事だ」と口を拭った(6月1日付『朝日新聞』夕刊)。何をもって「通常」というのか。森本氏の次のポストはまだ決まっていないではないか。

同様の強引な人事は過去にもあった。6月3日付『毎日新聞』によれば、2015年夏の総務省人事で、ある幹部の昇格を菅官房長官が「それだけは許さない」と阻止したという。この幹部には、菅氏の「手柄」であるふるさと納税創設にかかわる規制緩和に異を唱えた「前」があった。高市早苗総務大臣は面目をつぶされた。菅氏による人事介入の制度的根拠となったのが、内閣人事局である。

14年5月に内閣官房に設置された同局により、政権は各省庁の事務次官と局長・審議官級の約600人の幹部人事を一元管理することを目指した。首相に委任された官房長官が幹部候補者名簿を作り、各省の大臣は首相と官房長官と協議して、名簿登載者の中から適任者を任命する。したがって、官房長官が強い影響力を発揮できる。当時、菅氏は「公務員には省益ではなく国益を考えて活動してほしい」と語っていた(14年5月20日付『毎日新聞』夕刊)。

とはいえ、内閣人事局が発足して3年が経過したいま目立つのは、「国益を考えて活動」するのではなく、政権の意向を忖度して動く官僚たちだ。「モリカケ問題」はまさにそれを実証している。小沢一郎自由党代表は、内閣人事局は「ゴマスリ役人製造機」になっていると喝破した(3月20日付ツイート@ozawa_jimusho)。

批判的な発言は私的なものさえ封じ込め、忖度官僚を侍らせる。菅氏のいう「通常の人事」とは、この3年間でそうした人事が「通常」化したことを意味していたのか。菅氏の次の発言はその点で参考になる。「慣例のみに従って人事はやるべきではない。私は当たり前のことをやっているんです」(2月27日付『朝日新聞』)。

その代償こそ公正な行政の崩壊である。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。6月16日号)

民主主義を窒息死させる共謀罪(宇都宮健児)

2017/06/30(金) 12:35

共謀罪(テロ等準備罪)法案は、5月23日の衆院本会議で、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で可決され、現在参院で審議されている。(編注:6月15日、“異例”の中間報告により参院法務委員会での採決を省略し、参院本会議で可決・成立)

安倍晋三首相は「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて(共謀罪の)創設が不可欠だ」と強調し、共謀罪法案をあたかもテロ対策法案であるかのように説明している。

しかしながら一方で政府は、2000年11月に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するために、共謀罪法を制定する必要があると説明してきている。

国際組織犯罪防止条約は、マフィアなどによる国境を越えた麻薬取引、人身売買、マネーロンダリングなどの経済的利益を追求する組織的犯罪を取り締まることを目的とした条約である。

したがって、政府が説明しているようなテロ対策を目的とした条約ではないのである。テロ対策に関しては、日本は既に「ハイジャック防止条約」「人質行為防止条約」「爆弾テロ防止条約」「核テロリズム防止条約」など13の国際条約を批准している。

また、国際組織犯罪防止条約を批准するために、共謀罪の新設が必ず必要とされるかというとそうでもない。わが国では、内乱罪、殺人罪、強盗罪、爆発物取締罰則違反などの重大犯罪については、「予備」「準備」「陰謀」「共謀」などを処罰する制度が整っているので、新たに共謀罪を新設しなくても、国際組織犯罪防止条約を批准できるのである。

国際組織犯罪防止条約は187カ国・地域で既に批准されているが、共謀罪を新設したのはノルウェー、ブルガリアの2カ国だけである。

共謀罪は過去三度廃案となっているが、今回の法案で新たに要件として付け加えられた「組織的犯罪集団」や「準備行為」は定義があいまいであり、実質は「犯罪の合意」を処罰する法律であるという点では、これまでの共謀罪法案と変わらない。

わが国の刑事法体系は、「意思」を処罰するのではなく、法律違反の「行為」を行なったこと、すなわち「既遂」を処罰することを原則としてきている。

共謀罪法案は、法律に違反する犯罪行為を実行しなくても、話し合っただけで市民を処罰できる思想・言論の処罰法である。

「犯罪の合意」を処罰する共謀罪では、盗聴が共謀立証の重要な手段になってくる。そのため、電話、メール、ライン、市民の会話などの盗聴が行なわれ、市民の日常生活が監視される危険性がある。また、共謀立証のためいろいろな団体やグループに捜査機関がスパイを送り込んだり、協力者をつくり、共謀があったことを密告させることになりかねない。

このように共謀罪法案は、わが国において監視社会化を進め、自由な言論活動を萎縮させ民主主義社会を窒息死させる法律である。

国連のプライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏も共謀罪法案に関し、「プライバシーの権利や表現の自由を不当に制約する恐れがある」と批判している。

あまりにも問題の多い共謀罪法案は、参院で廃案にするしかない。

(うつのみや けんじ・弁護士、6月16日号)

支持率急落の自民党に攻勢をかける小池新党 都議選契機に崩れるか安倍一強

2017/06/30(金) 11:29

都議選の応援をする若狭勝衆院議員。(撮影/横田一)

小池百合子都知事の“盟友”でともに自民党を離党したばかりの若狭勝衆院議員が、「都民ファーストの会」候補者の応援演説で、情報公開を旗印にした安倍政権打倒を呼びかけ始めた。都議選(23日告示、7月2日投開票)は、情報公開に後ろ向きでゴマカシ政治のアベ自民を選ぶのか、情報公開に前向きの「都民ファーストの会」を選ぶのかの“(政権)選択選挙”と訴えているのだ。

「一方は情報公開に後ろ向き、他方は情報公開を積極的に進めるという対立軸になっている。加計学園問題は、自民党一強、安倍首相一強の下での情報公開に後ろ向きである表れなのです。『情報公開をする』ということは、いろいろなことを曝け出すことでゴマカシ政治はできなくなるのです」(17日の応援演説)。

元東京地検特捜部副部長の若狭氏は、加計学園関連の文書を見た途端、「間違いなく文科省にある」と捜査の専門家として確信した。

自民党離党前の記者会見で、「菅官房長官が『怪文書』と言っているが、そんな稚拙なことは止めて下さい」と抗議をしたのはこのためだ。加計問題での対応を自民党離党の理由の一つに挙げた若狭氏は、安倍政権打倒をこう訴えた。

「情報公開は正しい政治をするための『命』、『要』なのです。情報公開に後ろ向きの自民党が政権をやっているのは問題がある」「情報公開によって初めて都民、国民に『何が問題となっているのか』『どういうふうに考える必要があるのか』という題材を提供する一つの大きな道具、手段が情報公開なのです。今後、数年、5年、10年、20年の国政、都政のあり方を考える際に、今、どちらを選ぶのかという選択の重要な“(政権)選択選挙”と言っても過言ではない都議会選挙が始まろうとしている。今の自民党“アベ一強”の下では情報公開に消極的で国民の目線に立った政治から離れてしまう。『それはいかん』と思っていただけるのか。『このまま情報公開に後ろ向きでゴマカシ政治でいいと思うのか』という選択だと思うのです」

「非自民勢力結集による安倍政権打倒」の呼びかけといえる。都議選で「情報公開に後ろ向きのアベ自民党」を惨敗させ、次期総選挙でも同じ“旗”を掲げて自民党を政権から引きずり降ろすという近未来図を思い描いているのだ。

豊洲問題の都対応も批判

加計問題を追及しながら衆院に公文書管理法改正案を共同提出したばかりの野党4党が、この“旗”の下に結集するのは確実だ。蓮舫民進党代表は都議選で情報公開が争点化していることについて、こう答えた。

「情報公開は民主主義の要。安倍内閣はまさに隠蔽をすることが常套手段ですから、その部分では古い古い古い自民党の政治を遺伝子でお持ちの方だと思っていますので、都議会自民党とこの情報公開の部分で戦っていくのは私達も同じです」(15日の会見)

小池知事も、一貫して情報公開の重要性を訴えている。18日の立川駅前の街宣では、加計問題の文書管理の混乱ぶりに触れる一方、自民党が支えた石原都政時代の杜撰さを批判した。「(豊洲新市場の土地売買に関する)メモが(売主の)東京ガスにあったのに、都にはなかったことではいけない」(20日、豊洲移転を正式表明)。

候補者も小池知事や若狭氏の考えを共有していた。「都民ファーストの会」の幹部クラスの都議は、こう答えた。「加計学園も国家戦略特区自体は国政マターだが、『情報公開が足りない』というのは都政も国政も同じだ。加計問題は国民、都民から不信を招いていることでは、投票の参考になるのではないかと思っている」。

15日、究極の共謀罪強行採決(本会議での中間報告)で会期延長を回避した安倍政権だが、内閣支持率は急落。自民党関係者から「首相が都議選の応援に入る予定になっていたが、現場が『来なくてもいい』と判断して流れた」という声も漏れ聞こえてきた。情報公開を旗印にした非自民勢力の結集、アベ自民党打倒の気運が都議選でどこまで高まるのかが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、6月23日号)

日本の若い世代に「慰安婦」問題を伝えるための基金が発足

2017/06/29(木) 17:01

日韓「合意」以降、「慰安婦」問題に対する日韓の市民意識のギャップは広がり続けている。「合意」への抗議運動の韓国の若い世代の爆発的な広がりに比べ、日本の若者をとりまく環境は、学校教育、メディアで「慰安婦」問題はタブー視され、被害者の名誉を傷つける言説がネットを中心に繰り返されている。こうした状況を変えるため、日本の若者に学ぶ場を提供しようと、長年「慰安婦」問題解決に取り組んできた活動家、研究者、性暴力問題に取り組む弁護士らが一般社団法人「希望のたね基金」(愛称:キボタネ)を発足した。

6月9日に開かれた記者会見で代表理事の梁澄子さんは、「日本の若者が『慰安婦』問題を学び、日韓の若者交流をとおして記憶を継承していくことが性暴力のない未来への一助になれば」とその目的を語った。

理事の太田啓子さん(弁護士)は、性暴力事件に取り組んできた経験から、性暴力被害者に対する誹謗中傷が出るメンタリティは、「慰安婦」問題への反応と地続きであり、若い世代とともにその暴力性と闘いたいと述べた。

希望のたね基金は、韓国の財団法人「日本軍性奴隷制度問題解決のための正義記憶財団」と連携して活動していく。同財団は「合意」後、500余の市民団体と市民が10億ウォン(約1億円)を集め昨年6月に発足した。韓国内被害者の福祉および人権活動支援、アジアの被害者支援、真相究明と追悼事業、若者への記憶の継承と教育などを始めている。

同財団常任理事の尹美香さんが来日し、10日の記念集会では、26年にわたるサバイバーと支援者たちの闘いの歴史を当事者の肉声をまじえて紹介。「『合意』はむしろ大きな希望へ向かう礎となった」と言い切った。韓国の市民社会は変化し、社会の共通の課題として認識するようになり、何より若い世代を動かしたというのだ。

この日、福岡から参加したという20代の男性は、韓国で「慰安婦」問題に取り組む若者との交流からもっと知りたいと思い、ネットで知って駆けつけたと言う。

同基金では、講師派遣、スタディツアー、留学支援、若者による企画への助成などを行なっていく。そのための募金集めがスタートした。
URL www.kibotane.org

(岡本有佳・編集者、6月16日号)

失われた家計の利子所得は600兆円超(高橋伸彰)

2017/06/28(水) 20:45

かつて日本の企業が経済のエンジンと評されたのは、家計の預金を銀行経由で借り入れ、自己資金(キャッシュフロー)を上回る投資をして得た収入を、賃金や利子の形で家計に還元し経済の好循環をリードしたからである。

しかし、バブル崩壊以降、日本の企業は賃金を抑制して人件費を削り、キャッシュフロー以下に投資を減らし銀行への借金返済に奔走するようになった。その結果、日本の企業部門は1998年度以降フローベースで貯蓄超過に転じ、日本政策投資銀行の中村純一氏(「無借金企業の謎」)によればストックベースでも実質無借金(有利子負債を上回る現預金を保有)を含めると、日本の上場企業主要5業種(製造業、建設業、不動産業、商業、サービス業)の40%強が今や無借金経営だという。

中村氏は無借金が日本では優良企業の証しとして語られることも多いと言うが、経済思想史家のハイルブローナーは無借金を誇る経営者は「現代の地主」にすぎないと喝破する。ケインズの言う「血気(アニマルスピリット)」をもって不確実な投資に挑むわけでも、シュンペーターの言う「企業家精神(アントレプレナーシップ)」を発揮して技術革新にチャレンジするわけでもなく、人件費を削減して利益を上げ内部留保の蓄積に努める経営者など、経営者として失格だというのだ。

企業が借金を減らしたことで銀行は預金の運用に苦しみ、やむを得ず低い利回りしか期待できない公債を購入するようになった。実際、銀行の総資金利回りは全国銀行ベースで2015年度には0.96%にまで低下し、人件費などの経費率0.87%を差し引くと、預金に利子を付けるのはほとんどむずかしい状況に陥っている。

借入金利以上の利益を目指して投資を行なう(かつての?)日本企業と異なり、最初から利益を目的としない政府に資金を回しても高い利回りは期待できない。この結果、家計が得る利子所得は「国民経済計算」によれば1991年度の37.5兆円をピークに15年度では5.4兆円に減少している。

家計が保有する現預金が同期間に511兆円から920兆円に増加していることを考えれば、家計の預金利回りはバブル崩壊後の長期停滞の中で7.3%から0.6%へと10分の1以下に低下した計算になる。しかも、この利回りはデフレ脱却を目的にした日銀の金利操作によってさらに低下しつつある。

企業が生みだす付加価値の中には、人件費や営業利益と並び借入に対する支払い利息が含まれている。お金を借りて投資を行ない、利益を上げて利息を払うことは付加価値の創造でもあるからだ。この支払い利息の推移を「法人企業統計」でみると、91年度の34.6兆円から2015年度には6.6兆円に減少している。

これこそ、既述した家計が得る利子所得減少の主因にほかならない。徒(いたずら)に無借金を目指す保守的な経営で失われた家計の利子所得を、ピーク時との差額として試算すると92年度から15年度までの累計で600兆円を超える。

失われた賃金に加え、失われた利子所得もまた家計の節約志向を強めて、長引く消費停滞を引き起こしていることを見落としてはならないのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。6月9日号)

原子力機構大洗センター、改善されないずさん管理と隠蔽体質

2017/06/28(水) 15:11

原子力機構水戸事務所などが入居するビルの前で抗議活動。茨城県水戸市。(撮影/崎山勝功)

6月6日午前11時15分ごろ、日本原子力研究開発機構(原子力機構)大洗研究開発センター(茨城県大洗町)の、燃料研究棟108号室で核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業中に、核燃料物質が入ったビニール袋が破け、作業員5人が被曝した。

作業員の汚染検査で5人中3人の鼻腔内からα線(最大24ベクレル)を検出。核燃料サイクル工学研究所(同県東海村)の肺モニタで5人の肺検査の結果、50代の同機構職員の肺から「プルトニウム239が最大2万2000ベクレル検出された」という(10日には「身体の表面に残った放射性物質の影響で本来よりも高い値を計測の可能性」と発表)。

7日には作業員5人(同機構職員2人、請負労働者2人、派遣労働者1人)を放射線医学総合科学研究所(千葉市)に移送し、再除染やキレート剤を飲ませるなどの処置を行なった。12日時点で5人の健康状態は「異常なし」という。

茨城県や大洗町、水戸市など周辺8市町村の職員が7日に事故現場に立ち入り検査し「排気モニタ、モニタリングポストの値に異常がなく、環境への影響は認められない」ことを確認した。茨城県原子力安全対策課は取材に「6日から特段の異常はない」という。同課は事故原因や調査結果や再発防止策を23日までに出すよう同機構に申入書を送った。

同機構は、事故原因は「調査中」と発表。取材に対し「(報道機関の)個別の取材には応じていない。各社ともそうしている。電話取材もお断りしている」と回答を拒否した。

8日に同機構に申し入れを行なった、共産党茨城県委員会の川澄敬子・茨城町議によると「事故のあった燃料研究棟を廃止するに当たり、核燃料の入った缶の数を減らしたいために、他の缶にすき間があれば移し替えようと考えていた。(ビニール袋の)破裂は予想していなかった」と、同機構が回答したという。同センターには安全に作業を行なうためのグローブボックスがあったが、今回の作業では使われず、肺モニタ設備やキレート剤も大洗の同センターにはなかったなど、事故の際の安全対策が不十分だったという。

原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「この件に限らず、原子力機構では放射性物質のずさんな取り扱いが多い。過去に何回も問題になっているのに改善されていない」と問題視。その上で大洗町役場への情報提供が事故発生から約1時間後と遅れたことも「今回に関してもすぐに情報が発表されなかった。その辺は変わっていない」と、同機構の情報隠し体質を批判した。

【水戸市では抗議行動】

同機構水戸事務所と東海第二原発を所有する日本原子力発電茨城総合事務所が入居する「茨城県開発公社ビル」(水戸市笠原町)前で9日夕方、東海第二原発の再稼働に反対する「原電いばらき抗議アクション」の参加者ら20人が抗議活動を行なった。

抗議活動は2012年7月から毎週金曜日に行なわれており、抗議活動メンバーの玉造順一・前水戸市議は「大洗町で被曝者が出た事故は今回で3回目。原子力ムラの中で、福島の原発事故が何の教訓化もされていない」と語った。

一方、事故が起きた大洗町では、同町を舞台のアニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)(注)のファンらが大洗駅で同アニメのグッズを購入していた。同町内の土産物店員は「海水浴客に影響が出ないか心配。『ガルパン』で町が盛り上がり(東日本大震災の)津波被害から立ち直ったというのに」と、海水浴客やアニメファンらの客足が遠のくことを懸念した。同町は全国各地からアニメファンらが「聖地巡礼」名目で観光に訪れるなど、同町の経済活性化に役立っている。

玉造前市議は「茨城の県民生活にとって原子力施設はマイナスでしかない。そろそろ県民も声を上げるべきだ」と脱原発を訴えた。

(注)大洗町の高校を舞台に、戦車を用いた武道の一種「戦車道」に取り組む女子高校生らを描いたアニメ。

(崎山勝功・『常陽新聞』元記者、6月16日号)

公立学校の建設業者が抗議住民を盗撮し「事実」をでっちあげ 行政と共謀か

2017/06/27(火) 16:36

東京・杉並区高円寺に杉並区(田中良区長)が計画している小中一貫校の校舎建設計画(6階建て。総工費約80億円)に伴なって同区と区教委が開いた工事説明会で、説明者として同席していた工事事業者が、説明会に参加している住民の肖像をビデオカメラで隠し撮りしていたことがわかった。事業者は後に、その映像を証拠として、住民から妨害を受けたなどとして事実を捻じ曲げた内容で東京地裁に妨害禁止の仮処分申し立てを行ない、同地裁が認めた。

杉並区はこの「盗撮」を事実上黙認しており、了解ずみだった可能性が高い。公共工事に住民は文句を言うなと言わんばかりの暴挙に、「田中区長は独裁者になったのか」と強い疑問の声が上がっている。

共謀罪法案には威力業務妨害も対象とされているが、これが成立すれば、今回のような例も警察の捜査対象になり得る。公共工事をめぐる住民運動を弾圧する強力な「凶器」として、民間企業や役人、政治家たちに「活用」されるのは明らかだ。

隠し撮りをしていたのは昨年11月、小中一貫校工事の本体工事を約54億円で受注した白石建設(株)(北澤暖社長)の社員。契約から1カ月後の同年12月17日、予定地の高円寺中学校で開かれた工事説明会に出席したが、前方から聴衆席に向けて小型ビデオカメラを密かに向け住民らの肖像を撮影した。参加者によれば、それまでの区の説明が十分でなかったことから、説明会は時期尚早であると住民らが口々に抗議を行なった。高齢者や女性が多く、手を出すなど暴力的なことは一切なかった。

これに対して白石建設は、このとき密かに撮った映像から静止写真を切り取り、「説明会を妨害する住民」の証拠だなどとして、4月27日、妨害禁止の仮処分を申請した。静止写真には住民の名前が書き込まれていた。会場では受付名簿が用意され、参加者に氏名・住所の記載を求めていたことから、本人特定に杉並区が協力した可能性がある。

区は「隠し撮り」を知らなかったというが、発覚後の反応は奇妙。

以下、伊藤克郎営繕課施設整備担当課長取材時のやり取りだ。

(筆者)住民説明会で事業者が住民を隠し撮りしていたのは重大な問題ではないか。(伊藤課長)撮影は事業者が必要だと考えてやったのだろう。事業者のやることに区があれこれ言うことはできない。(筆者)隠し撮りに問題はないのか。(伊藤課長)答えられない。(筆者)事情聴取や注意はしたのか。(伊藤課長)簡単に聞いた。注意はしていない。――白石建設の盗撮行為をとがめる様子がないのだ。

【取材時と違う業者の説明】

白石建設の言い分も怪しい。建築許可がまだ下りていない今年1月30日、白石建設社員らは測量などの作業を行なおうと現場を訪れ、中止を求める住民10人ほどと遭遇。取材していた筆者が目撃したのは、終始穏やかなやりとりだった。

「区と話し合っている。着工は待ってほしい」。住民の1人がそう静かに説明をし、社員らは手を前に組んでおとなしく聞いている。そして納得した様子で自ら引き揚げていった。住民たちが手にしていたのは画用紙だけのプラカードで、マイクすらなかった。

同社幹部は筆者にこう説明した。「住民の人の意見を聞くのはきょうがはじめてだ。持ち帰って検討したい」。

ところが、仮処分ではこんな話に変わっている。「メンバーが西門の前にたちはだかり、作業員らの入場を妨害した。結果当日は敷地内に入場できず、作業に着手することができなかった」。

少なくともこの日に関しては、白石の「妨害」説はである。

盗撮され、妨害“犯人”に仕立て上げられた住民の1人、孝本敏子さんは言う。

「子どもから日光を奪い住民の住環境を破壊する学校の改善を求め、また、地盤調査が不十分なのに巨大校舎建設は不安だと訴えてきただけです。理不尽でも“お上”に従えということなのでしょうか。納得できません」

(三宅勝久・ジャーナリスト、6月16日号)

小池都知事が情報公開と公文書管理で安倍自民党を牽制

2017/06/27(火) 12:28

定例会見で「情報公開」を強調する小池百合子都知事。6月9日。(撮影/横田一)

野党の加計学園疑惑追及が安倍政権を直撃、東京都議選(6月23日告示、7月2日投開票)にも波及し始めた。自民党を離党した1日に「都民ファーストの会」代表となった小池百合子東京都知事は、安倍政権の情報公開が不十分と指摘、都議選を「(政策決定過程)ブラックボックス化の自民党対情報公開の小池新党」の対決構図と位置づけ、3日と4日の応援演説でも加計疑惑に触れたのだ。

有権者の反応も上々。離党前の世論調査では自民党「17%」に対して都民ファーストの会「11%」とリードを許していたが、離党後はほぼ拮抗・逆転するまでに追いついた。都議選の帰趨を決める七つの1人区で小池新党が圧勝、自民党惨敗の可能性が高まった。12日の『週刊現代』に「都民ファースト5→46議席、自民57→37議席」という予測が出たのはこのためだ。

加計疑惑をめぐる安倍政権の対応批判に手応えを感じたに違いない小池知事は、9日の定例会見でも情報公開の重要性をこう訴え、都政と国政を対比してみせた。

「今回の第2回定例議会において、一つは情報公開の条例の改正、二つ目が公文書の管理徹底の条例成立ということです。まさしくこういった点が今、国会の場においても『文書があるのないの』とか、『共有がどうなっているの』とか、そこに注目がいっているわけです。基本的に記録は残す。そして、重要な文書については、所管課限りでなく他部署が関与するダブルチェックにより廃棄するというのが、今回の公文書管理のポイントにもなっているわけです。行政である以上はしっかりと情報の管理、公文書の管理をするというのは当然の話だと思います」

【国政との挟み撃ちを図る】

「東京大改革の一丁目一番地は情報公開」とする小池都政と連動するように、民進・共産・自由・社民の4野党も9日、公文書管理法改正案を衆院に共同提出した。政府機関や独立行政法人の職員が書いた個人メモも行政文書として扱い、電子データは削除せず保存するという内容で、提出者の今井雅人衆院議員は「行政が管理しないといけない文書が破棄され、国民の権利が毀損されている」と必要性を訴えた。今井氏は民進党の加計学園疑惑調査PTの共同座長だ。

情報隠蔽のアベ自民党を国政と都政から挟み撃ちにする形となる中、小池氏は10、11日も2週連続で都内11カ所を回って応援演説。情報公開の重要性を強調しつつ、加計疑惑に触れる街宣を繰り返した。特に10日には、元文部科学大臣の下村博文自民党都連会長の地元・板橋区に駆け付けた。

「都連会長(下村元文科大臣)は文科行政に最も詳しい人だ。教育行政はどうあるべきか。このこともまず情報公開から始めなければいけない」「事務次官まで務めた人(前川喜平氏)が顔をさらして伝えている。そのためにはいかに公文書を管理するか(が重要)で、東京大改革の土台。その土台の都議会を変えなくてはならない」

小泉政権下で環境大臣を務めた小池知事は2005年の小泉郵政選挙を参考に、「(政策決定過程)ブラックボックス化の自民党イエスか、ノーか」「アベ友ファースト自民対小池新党など非自民」の“情報公開選挙”を都議選で仕掛ける可能性が高まったと言える。

「都民ファーストの会」幹事長に就任した野田数前代表も1日の総決起大会で、「(国政の)文書管理や情報公開の杜撰さを調べた上で都政で見本を示すという考えがあるのか」との質問にこう答えた。

「恐らく東京都で情報公開をさらに加速化させていくと、それは国であろうが、他の道府県であろうが、方向性としては情報公開の方向にベクトルが向かっていくのではないかと思っております」

都議選を情報隠蔽の安倍政権に「NO!」を突きつける場にする狙いと、「東京から国政(安倍政権)を変える」という意気込みがみえてくる。公文書管理法改正案を提出した野党と連動、都議選の構図がそのまま次期総選挙に持ち込まれる可能性も出てきた。小池新党は国政進出まで見据えているのではないか。

(横田一・ジャーナリスト、6月16日号)

スクープ!笹子トンネルの天井板落下事故で新事実大成建設施行の天頂部だけが波打っていた(明石昇二郎)

2017/06/23(金) 13:52

トンネル内を調査した「笹子トンネルの真相を探る会」メンバー。(撮影/明石昇二郎)

 やる気のない警察の捜査を尻目に、民間人による手弁当の調査が新事実を炙り出した。2012年12月に発生し、9人の尊い命を奪った中央自動車道「笹子トンネル天井板落下事故」。発生から4年半が過ぎた今も捜査は終結しておらず、今回判明した新事実の活用が望まれる。

中央自動車道上り線の「笹子トンネル」で天井板落下事故が発生したのは、2012年12月2日のこと。すでに4年半が経過している。同事故では、トンネルの天頂部に接着剤で固定したアンカーボルトによって吊り下げられていたコンクリート製の天井板と隔壁板が約140メートルの区間にわたって落下。走行中の車両を直撃し、9人が死亡、2人が負傷した。

被害者に落ち度はなく、事故を招いた責任は、道路管理者である中日本高速道路(NEXCO中日本)等にあることは明白だった。現に警察はNEXCO中日本に対し、業務上過失致死傷の容疑で家宅捜索を実施している。

だが、これまで誰一人として、逮捕も書類送検もされていない。いまだ「捜査中」(山梨県警本部)なのだという。

そこで、大学教授や元トンネル施工業者、そして技術士などの民間人によって結成された「笹子トンネルの真相を探る会」(真相を探る会)が4月17日、笹子トンネルの内空調査を実施。その結果、事故現場付近のトンネルが沈下していたことを突き止めた。

測定費用は10万円

真相を探る会が着目したのは、天井板落下事故が発生する以前に繰り返し発生していた「天井板への接触事故」だ。

08年6月に発生していた天井板接触事故では、高さ4・95メートルのコンテナ車が高さ4・7メートルのトンネルを通過した際、約3キロメートルにわたって天井板に擦過痕をつけたとされていた。これが事実だとすると、そのコンテナ車はそもそもトンネルに侵入することができない。

なぜ、こんなことが起きたのか。しかも、この天井板接触事故が起きた区間(約3キロメートル)は、天井板の落下区間(約140メートル)を含んでいる。さらには、05年9月のトンネル点検で発見されていた天井板の損傷全49カ所のうち、なんと42カ所までが天井板の落下区間とその直近で見つかっていたのだ。真相を探る会では、天井板を吊り下げていたトンネル自体が沈下してきているのではないかと考えた。

図1 トンネル内空計測で測定した「長さ」。(提供/「真相を探る会」)

この仮説の下、4月17日の笹子トンネル内空調査では、実際に笹子トンネルを車で走り、天頂部の沈下具合を測定。使用したのは10メートル先の距離を1ミリメートルの誤差で測定できるライカ社製レーザー距離計「DISTO D2」3台。これと自前のノートパソコンを連動させ、測定費用を10万円以内に収めることができた(図1参照)。

天井板は波打っていた

笹子トンネルでは送気と排気のため、落下した天井板の上を空気が通る構造になっていた。天頂部から吊るされた隔壁板を境にして、片方がトンネル内にたまる自動車の排気ガスを吸い出す排煙用の道(排気ダクト)。もう片方が新鮮な空気を送り込むための道だった。

同トンネルには大きさの異なるS、M、Lの3種類の掘削断面がある。路面から天井板までの高さ4・7メートルはどこも一定で、その代わり、一番大きなL断面では天頂部から天井板までの長さが5メートル以上になっていた。

今回の実地調査により判明したのは、天井板の落下が発生した区間(L断面)の「路面から天頂部までの高さ」が一定でなかったことだ。真相を探る会では、「トンネルの一部で沈下が起きているとみて間違いないだろう」と判断した。

図2 大月側と甲府側の「L断面」比較。○をつけた箇所でトンネルの天頂部が際立って下がっているとみられる。(提供/「真相を探る会」)

図2に示すように、問題のなかった甲府寄りのL断面は大変滑らかに施工されているのと比べ、事故が起きた大月寄りの天頂部はデコボコして波打っていた。となれば、その天頂部から吊り下げられていた天井板も一緒に波打っていたことになる。天井板接触事故が頻繁に起きていたのはまさにこの区間(約420メートル)であり、天井板が落下した区間(約140メートル)を丸々含んでいる。

もうひとつ、判明したことがある。天井板落下とトンネル内の「非常駐車帯」との関係だ。

大月寄りのL断面に入ってしばらく走ると非常駐車帯の「A―3」(長さ32メートル)がある。そして、このA―3を通過してすぐのところで、42カ所の天井板損傷が集中発生していた。

非常駐車帯のA―3部分は、一番大きなL断面よりもさらに巨大な掘削断面になっていた。掘削断面積はL断面が123・1平方メートルであるのに対し、A―3部分は171・5平方メートル。これに伴い、打設するコンクリートの厚みも増し、L断面では55センチメートルなのが、A―3部分では1メートル近い90センチメートルにもなっている。このような施工区間は笹子トンネル上下線の中でもここだけだ。

この非常駐車帯に関し、会計検査院が1976年11月、気になる指摘をしていた。同院の調査により、笹子トンネル上部のコンクリートの厚さが不足する等の施工不良が見つかり、設計よりも強度が低くなっていたことが判明。全国各地で同時期に行なわれた調査では、コンクリートの厚みが半分の量しかなかったところや、コンクリートと土の間に1メートルほどの隙間が空いていたところもあったのだという。

同院では、笹子トンネルのどの箇所でどのような施工不良が見つかったのか、詳細を明らかにしていないが、問題が見つかった箇所について、設計上の覆工コンクリートの巻き厚が「55㎝から90㎝」だと具体的に記述していた。「55㎝」は笹子トンネルのL断面、「90㎝」はA―3非常駐車帯の設計とピッタリ符合する。

施工不良の原因は「監督及び検査が適切でなかったため」と結論づけられていた。指摘を受け、当時の道路管理者である日本道路公団は補強工事を行なったとされる。それでも、トンネルの天頂部は波打ち、天井板落下事故は起きた。

同トンネルの施工には、大成建設、大林組、飛島建設、前田建設工業の大手ゼネコン4社が関わっており、天井板落下事故が起きた区間を請け負っていたのは大成建設である。トンネル天頂部の施工がデコボコしていたのは、大成建設が担当していたところだけ。他のゼネコンが施工した天頂部では目立った「波打ち」は見つからなかった。

そこで、大成建設にコメントを求めたところ、
「(真相を探る会は)刑事告発をされていることですので、当社からのコメントは控えさせていただきます」(同社広報室)
とのことだった。

16年に刑事告発していた同会は、4年半が過ぎても立件しない天井板落下事故の捜査を指揮監督する立場にある最高検察庁の「監察指導部」に対し、今回の測定結果を無償で提供。迅速に立件するよう促した。

調査を立案した、真相を探る会メンバーの西山豊・大阪経済大学教授は語る。
「忘れてならないのは、国内8000万ドライバーすべてに崩落に遭う危険があったということ。再発防止のためには、徹底した科学的な原因究明が必要です」

(あかし しょうじろう・ルポライター、2017年6月2日号)

“公害の原点”水俣病の裁判で「画期的」な判決

2017/06/23(金) 11:27

「判決は画期的」と喜ぶ大川一夫弁護士。大阪市北区。(撮影/粟野仁雄)

公害被害者が行政裁判で賠償金を得たことを理由に加害企業が補償協定を結ばないのは不当だ、として水俣病患者の2人の遺族が原因企業チッソに対して補償を受ける地位の確認を求めていた裁判。

大阪地裁の北川清裁判長は5月18日、「確定判決を得たことを患者に不利に解釈するのは相当とは言えない。賠償後に対象外とするのは協定の趣旨に反する」として原告の訴えを認めた。患者が国や自治体相手の裁判で勝訴していることを逆手に取って救済を拒否する企業を指弾した注目すべき判決である。患者の男性は2007年に、女性は13年に死去している。

補償協定は1973年に認定患者と、当時の三木武夫環境庁長官などの仲介によりチッソとの間で結ばれた。最低でも1600万円の一時金や医療費、年金などが支給され、締結後に患者認定された人にも適用するとされた。しかし2人は患者認定されず、水俣市などから関西に移住した患者たちが国と熊本県を訴えた「水俣病関西訴訟」に参加。04年に最高裁で勝訴が確定し1人650万円の補償を受けた。死後に熊本県から患者認定されたが、チッソ側は「関西訴訟で全損害が補償されており、解決済み」として2人が協定に参加することを拒否してきた。

今回の判決で北川裁判長は補償協定について「チッソが甚大な被害をもたらした反省から損害賠償として認められる程度を超えた救済を行なうと定めたと解すべき」とした。原告代理人の大川一夫弁護士は「同様の訴訟で敗訴した件もあったが、補償協定の趣旨をしっかり捉えた画期的な判決」と評価する。

水俣湾に有機水銀を垂れ流した化学会社のチッソは事業部門を子会社へ移し、チッソ(株)は補償業務を専門にする。チッソは5月31日、判決を不服として控訴した。水俣病の公式命名から今年で60年。「公害の原点」は終わらない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、6月9日号)

尊属殺人罪を復活したいのか?(佐高信)

2017/06/22(木) 19:11

前略 櫻井よしこ殿

「教育勅語は、後に天皇一人に対する忠誠心として利用されてしまったために、悪しき帝国主義の神髄を表すものだと思われています。たしかに『朕思うに』で始まるのですからそうした側面は否めませんが、内容を読んでみれば、両親に孝行しなさいとか、兄弟、夫婦は相和しなさい、友達同士で信じあいなさいといった、本当に基本的だけれども、現代の日本人が忘れてしまっているような素晴らしい心得が書かれています」

あなたは、小林節教授に不可とされた『憲法とはなにか』で、こう言っていますが、それで、教育勅語を幼稚園児に暗唱させる森友学園に講演に行ったのですね。安倍昭恵や曽野綾子、そして百田尚樹も講演したという森友学園ならぬ安倍友学園の前理事長、籠池泰典について、あなたはいま、どう考えていますか。あなたが熱烈に応援する安倍晋三と同じく、クルリと評価を変えたのでしょうか。

あなたは教育勅語の「両親に孝行しなさい」は「現代の日本人が忘れてしまっているような素晴らしい心得」だと簡単に言いますが、尊属殺人罪というのは知っていますか。

尊属殺重罪は違憲という判決

教育勅語の親孝行は尊属殺重罪に裏打ちされ、国民は天皇の赤子だから天皇に忠義を尽くせという教えに収斂されていました。それが多くの悲劇を生んだことを知らないから、あなたは能天気に教育勅語バンザイと言うのでしょう。

ここに谷口優子という弁護士が書いた『尊属殺人罪が消えた日』(筑摩書房)という本があります。

1968年10月7日付の新聞に「不倫な父娘関係の清算 事実上の夫を絞殺」とセンセーショナルな見出しが躍りました。そして次のように事件が要約されています。

「Y市の市営住宅で五日夜、戸籍上は親子関係にありながら事実上は夫婦関係にあった娘が実父を絞め殺すという猟奇的な事件が起った。今から十五年前に父親が実の娘を手ごめにして、夫婦関係を結んだことに端を発し、それまでの正妻が家出、一家が離散するというのろわれた家系で、父親と加害者の娘との間には三人の子どもまであるという常識では考えられない生活をしていた」

刑法200条の尊属殺人罪は「死刑又ハ無期懲役」で、執行猶予は付けられない重罪でした。しかし、親殺しはこの例のようによくよくのことです。ところが、大日本帝国憲法下に制定された刑法は家族国家のイデオロギーから義理を含めて親殺しを、他の殺人罪より重くしていました。

これに対して、この事件を担当した弁護士の大貫大八さんは、尊属殺重罪は日本国憲法14条の法の下の平等に違反すると訴えます。

一審はその主張が認められましたが、高裁で引っくり返り、最高裁に持ち込まれます。

途中で大貫大八さんが亡くなり、弁護は息子の正一さんが引き継ぎました。そして、1973年4月4日、最高裁は尊属殺重罪は違憲という画期的な判決を下します。

「尊属に対する尊重や報恩という自然的情愛ないし普遍的倫理の維持尊重の観点からは尊属殺人を普通殺人より重く罰することは不合理ではないが、刑法二〇〇条が尊属殺の法定を死刑・無期に限定している点において甚しく不合理であり、憲法一四条に違反する」

これが判決理由でした。私は最近、尊属殺重罪がこの年まで生きていたことを知って衝撃を受けました。あるいは、あなたはこれを復活させたいと思うのでしょうか。戦争中の娘身売りも大変な“親孝行”ですが、徳義を説くより、そんな社会にしないことが大切なのではありませんか。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、6月9日号)

釜山総領事の更迭にみる「共謀罪」の片鱗(西谷玲)

2017/06/22(木) 18:48

国会は6月18日の会期末を控えて、最終盤に入った。加計学園の獣医学部新設問題など解明すべきことはたくさんあるが、7月2日に東京都議選があることに加え、そして政府は種々の問題を解明したくないのであろうから、大幅延長は望むべくもない。

その限られた会期末までの期間の中で、政府が何としても成立させようとしているのが「共謀罪」法案である。政府の答弁は安定せず、大臣と官僚の言うことが違い、いったいこの法案が通ったら、どうなるのかよくわからない。捜査権が乱用され、監視社会を招く懸念は一向にぬぐえない。

「安倍政権むかつく。秘密結社つくって革命だ」。筆者が実際に最近送ったメールの一節である。こんなメールだって、問題にされかねないのである。

安倍晋三首相に近いある幹部級の官僚にそう言ったところ、「運用次第ですよね」とこともなげに答えた。ほら、やはりそうなるじゃないですか、と言うと、「すべての法律はそういうものだから」。なるほど、そういうものだろう。だから、人権ができるだけ侵害されないように配慮することが重要なのだ。今の法案審議の中では、政府からその姿勢は見られない。

そんな中、ある人事のニュースが流れた。新聞もテレビもごく小さい扱いだった。何かと言うと、韓国・釜山の総領事が6月1日付で交代するというのである。昨年6月に着任したばかりであって、通常、外交官や官僚の人事というのは2年が一つの単位だから、1年で交代というのは異例である。

新聞によっては理由を報じていないところもあったが、数紙には書いてあった。それによると、前総領事は、昨年12月に釜山の日本総領事館の前に少女像が設置された後、一時帰国した。この間、知人との私的な会食で政府の対応を批判したことを首相官邸サイドが問題にしたというのである。

記事にはさらっと書いてあったが(書いてあるだけましだが)、これ、よく考えてみると恐ろしい事態である、私的な会合での会話が問題にされての更迭である。

つまり、その場にいた誰かが、「あいつがこんなことを言っていた」と流し、政府がそれをキャッチしたわけである。共謀罪が通ったら、この種のことが多くなる、というか、国家権力の元で行なわれないとも限らない。おちおち国家の悪口を言えない。すでにその萌芽は見られるのだ。

また、最近の別の記事。2013年、特定秘密保護法が通った。その後、同法の運用をチェックする独立公文書管理監が、防衛省や経済産業省の特定秘密を含む文書の廃棄を「妥当」と判断したそうである。今年5月の管理監の報告書で明らかになった。

このまま文書が廃棄されると、何が特定秘密なのかわからないままである。一体どういう政策がどのように政府内で検討されて意思決定されていったのか検証できず、闇の中に消えていってしまうかもしれないのである。これは、法案の審議段階から指摘されていた。いざ法律が施行されて、本当にその通りになっているのである。

共謀罪だって、だから「ほらやはりあの時言った通り、心配した通りになったじゃないか」となりかねないのである。その時に後悔したとしても、あまりに代償は大きい。すでにその片鱗はあるのだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト、6月9日号)

共謀罪成立阻止に集会相次ぐ 元創価学会員らも学会・公明党を批判

2017/06/22(木) 17:29

共謀罪は6月15日、参議院本会議で可決・成立したが、反対の声が大きく広がった。

5月31日に東京・日比谷野外音楽堂で開かれた共謀罪法案成立阻止集会には、会場を埋め尽くす4700人が参加。民進党を代表して挨拶に立った山尾志桜里衆議院議員は検察官時代に、警察に市民の捜査を依頼し、「もし犯罪者でなかったら申しわけないという躊躇があった」とする体験を披露。「しかし安倍晋三首相は国会で、『共謀罪によって捜査機関の躊躇をなくす』と断言した。権力が躊躇をなくしたら、国民は自由を奪われる」と述べ、「一人ひとりがやるべきことを最後までやり抜いたら、必ず廃案にできる」と呼びかけた。

一方で、共謀罪反対の気運は確実に広がっている。5月29日には、環境・開発・人権・平和などの分野で活動している23のNGO・市民団体が、共謀罪法案に対する反対声明を発表。31日には、東京都内で「『共謀罪』反対・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会」が開かれ、約300人が参加。各自がそれぞれの信仰に立ち、戦前に宗教が治安維持法で弾圧された過去を忘れず、共謀罪反対の意思を表明するとの趣旨で開かれたもの。集会では元創価学会の信者3人が発言に立ち、権力に迎合するだけの創価学会・公明党を厳しく批判し、大きな拍手を浴びた。

また、日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は5日、東京都内で開いた記者会見で、世界の作家らでつくる国際ペンのジェニファー・クレメント会長が、共謀罪法案反対の声明を出したと発表した。

会期末が近づくにつれ、国会周辺ではさまざまな抗議行動が計画された。今後は全国的にどこまで反対の声を広げていくかが、共謀罪法廃止への大きなカギとなっている。

(成澤宗男・編集部、6月9日号を修正・加筆)

絶滅危惧種の宝庫がリニア新幹線建設で犠牲になる!?

2017/06/21(水) 11:55

町職員が示した退職届(複写)。既に住所が記され、日付や名前を記入するだけだ。(撮影/井澤宏明)

リニア中央新幹線の建設工事で掘り出される残土の処分場候補地の一つに、絶滅の恐れのあるハナノキなどの希少植物が群生している岐阜県御嵩町の山林が挙がっている。町の生物環境アドバイザーを務める住民が、候補地の環境保全策についてリニアを建設するJR東海に問い合わせたところ、町から退職届を示され署名するよう求められていたことが分かった。

候補地になっているのは、リニアのトンネル出入口予定地に近い同町美佐野の山林。町有地が含まれ、かつては周辺と同じようにゴルフ場が計画されていた。町は県を通じ候補地に名乗りを上げ、JR東海が環境調査を行なっている。

住民らの調査で周辺では、ハナノキの成木80本、幼木と稚樹400本以上を確認。ミカワバイケイソウ、シデコブシなどの希少植物のほか、ミゾゴイやサシバなどの希少鳥類も目撃されている。

調査に携わり、町から生物環境アドバイザーや希少野生生物保護監視員を委嘱されている篭橋まゆみさん(62歳)はJR東海の求めに応じて、現地の自然環境の情報を提供。今年3月、環境調査の進捗状況や報告会の予定についてJR東海に電話で問い合わせた。

ところが4月21日、町職員から公民館に呼ばれ「直接、JR東海に問い合わせたのはルール違反だ」として、「今後、リニアに一切関わらないように。もしできなければ、アドバイザーと監視員を続けてもらっては困る。どうしますか」と迫られたという。

「自由を奪われてまで続ける役職ではない」と篭橋さんが答えると、あらかじめ町が用意していた退職届にサインを求められた。

町は取材に対し、退職届を示して署名を求めたことを認め、その理由について、「アドバイザー、監視員である以上、組織の一員としての行動をとることはご承知であると思っていたが、そうではなかったため、注意させていただいた」と説明。一方で、「当方から『辞めてほしい』との発言は一切していない」と弁明している。

篭橋さんは、「候補地は絶滅危惧種の宝庫で、残土で埋めていいような場所ではない。(それでも処分場にするというのなら)植物を移植するなどの保全策を1日も早く話し合うべきなのに」と訴える。

【環境モデル都市指定だが】

ハナノキはカエデの仲間の落葉高木。「氷河期の生き残り」として知られ、岐阜、長野、愛知3県のごく限られた地域に自生する日本固有種だ。住宅やゴルフ場開発などで生育に適した里山の低湿地が減少、環境省のレッドリストで絶滅の危険が増大している「絶滅危惧2類」に指定されている。春に赤い花を咲かせ、秋は紅葉する。中津川市に最大の群落があるが、リニア岐阜県駅へのアクセス道路となる濃飛横断自動車道が計画され、日本自然保護協会や日本生態学会が知事に再考を求めている。

国立研究開発法人森林総合研究所の菊地賢主任研究員(42歳、樹木分子遺伝研究領域)は処分場候補地一帯について、「ハナノキが広範囲に生育し、比較的自然度の高い状態が維持されている。保全上、重要な地域だ」と評価する。

町では1996年、産業廃棄物処分場建設を巡り当時の柳川喜郎町長が襲撃され翌年、建設の是非を問う住民投票を行なった。その経験から環境問題への住民の意識が高く、町独自の希少野生生物保護条例を制定しレッドデータブックを作成。2013年には国の環境モデル都市に指定された。

それだけに篭橋さんは「町の素晴らしい自然を少しでもいい状態で残したいと、懸命にやってきたのに」と悔しさを隠しきれない。

隣の可児市では2003年、高速道路工事で出た残土に含まれていた黄鉄鉱による水質汚染で稲作を中止する被害が起きており、御嵩町でもリニア残土で河川が汚染される恐れが指摘されている。

リニアは品川―名古屋間の9割近くが地底を走るため、東京ドーム約45杯分、5680万立方メートルの残土が発生する。JR東海は受け入れ先の多くが決まらないまま工事を進めており、沿線各地で不安の声が上がっている。

(井澤宏明・ジャーナリスト、6月9日号)

豊洲移転問題、盛り土をやめた東京都が掘った墓穴

2017/06/20(火) 18:29

豊洲市場の地下空間を視察する東京都の議員団。(2017年2月25日、撮影/永尾俊彦)

東京都は5月25日、築地市場(中央区)で行なった表層土壌の汚染調査で、111カ所のうち30カ所から環境基準を上回る5種類の有害物質が検出されたと発表した。

最大で鉛が環境基準の4・3倍、ヒ素2・8倍、水銀1・8倍、フッ素1・5倍、六価クロム1・4倍だった。環境基準を超えた個所数は、ヒ素が20カ所であり、他は1~6カ所だった。今後は10メートルまでの土壌と地下水を調査し、11月までに発表する。

今回の結果について、豊洲市場(江東区)の土壌汚染対策を検討している専門家会議の平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は、1カ所から検出された水銀について、「常温でも揮発する物質で、表層での検出は重く受け止めるべきだ」との見解を発表した。

これに対し、日本環境学会の畑明郎元会長は、「築地で水銀が検出されたのは1カ所で、1・8倍と低い。豊洲は水銀の場合、9カ所で最大24倍です」と指摘する。豊洲では、土壌汚染対策前は土壌から最高4万3000倍のベンゼンが検出され、全4122カ所の調査カ所のうち土壌または地下水が環境基準を超えたのは1475カ所(約36%)。畑元会長は、「豊洲の汚染は高濃度で広域的だが築地は局所的で質・量ともに軽微。再整備の際に処理すればよい」と述べた。

また、築地市場用地にはかつて米軍のクリーニング工場、ガソリンスタンドなどがあった。これについて畑元会長は、「それらの施設はベンゼンの汚染源となりえるが、ベンゼンは揮発性で、土壌中に残留しているものは少ないでしょう。一方、豊洲のベンゼンはガス工場操業由来のコールタールなどに含まれていたので土壌や地下水中に残留したのです」とコメントした。

【盛土なしでガス上昇】

小池百合子都知事は、築地の汚染について「コンクリートやアスファルトで覆われており、土壌汚染対策法などの法令上の問題もない」と繰り返し、述べている。

しかし、元大阪市長の橋下徹氏は、「コンクリートで土壌が覆われて地下水を利用しないのは豊洲も同じ。築地がその理由で安全だということは豊洲も安全なんですよね?」とブログに書いている。

豊洲と築地の決定的な違いとして、各務裕史元岡山県農林水産総合センター農業研究所副所長は「地下空間」をあげる。

平田座長は、今年1月14日の専門家会議で、豊洲市場は「環境基準の100倍のベンゼンを含む地下水があっても(建物の)地上に揮発する量は大気の環境基準以下なので問題ない」旨述べた。

だが、各務氏は「(平田発言は)4・5メートルの盛土が前提で、盛土がないと地下空間でベンゼンは気化するので私の試算では環境基準の7万5000倍に濃縮されます」と指摘する。

都は、日水コン(本社東京・野村喜一社長)に委託して盛土がない場合、コンクリートの劣化でひびや亀裂から地下空間のベンゼンが建物1階に侵入する場合のリスク評価を行なっていた(本誌4月7日号で報告)。その結果、10万人に1人の発がん確率に抑えるには、地下水を環境基準の11倍に抑える必要があるとしていた。

だが、各務氏はこの日水コンの計算の前提は砕石を盛土とみなしてガスが拡散しにくい土壌の値を適用するなど現実離れしていると批判。現実的モデルで計算すると、地下水位がAP(荒川工事基準面)2・5メートルの場合、環境基準の10分の1未満の管理が必要だと判明した。

だが、50センチでも盛土があれば地下からのガス上昇が強く抑制され、環境基準の42倍の地下水でも平田座長の評価法に従えば地上は安全だった。各務氏は「盛土の力を再認識しました」という。

築地と豊洲の決定的な違いは、汚染を濃縮する地下空間なのだ。都は独断で盛土をやめ、自ら豊洲の安全性を損なう墓穴を掘った。

各務氏、畑元会長らは安全性評価などについて平田座長に5月29日に公開質問状を出し、2週間以内の回答を求めている。

(永尾俊彦・ルポライター、6月9日号)

牛久入管が「痛い」と泣き叫ぶベトナム人を“見殺し”(『週刊金曜日』取材班)

2017/06/20(火) 15:19

グエンさんが収容されていた牛久入管。(撮影/『週刊金曜日』取材班)

「痛い痛いと泣き叫ぶ彼を入管は見殺しにしました」――。茨城県牛久市にある法務省入国管理局の東日本入国管理センター(通称・牛久入管収容所)の被収容者は、こう訴えたという。3月末、40代のベトナム人男性が牛久入管収容所の独房で死亡した。男性は死後も放置された可能性が高い。関係者の話を総合すると、入管の対応はあまりに非人道的だ。6月20日の「世界難民の日」に合わせて記事を配信する。

泡を吹いて医務室へ

牛久駅からバスで約30分、林の中の道を進んだ先に牛久入管収容所はひっそりとたたずんでいる。この収容所の独房で、ベトナム人男性Nguyen The Huan(グエン・ザ・フン)さんは死亡した。被収容者や支援団体関係者によると、グエンさんはインドシナ難民として28年前に来日。昨年11月に名古屋入管(愛知)に収容された後、品川入管(東京)を経て、3月15日に牛久収容所に移された。

グエンさんと同室(4人部屋)だった男性によると、「15日にきたときは元気だった。普通にごはんを食べて、タバコを吸っていた」という。しかし17日20時ごろ、様子は一変。「グエンさんは2段ベッドの上で横になっていましたが、急にガガガガと口から変な音が出てきたんです。寝て夢を見ているんだと思い、『起きて、起きて』と言いました。でも起きなくて、見ると口から泡を吹いていた。変な音は泡を吹く音だったんです。起こそうとしましたが、目は開かない。おしっこも漏らしていました」

同室だった男性は急いで担当職員を呼び、職員4人と同室の被収容者3人でグエンさんをシーツごと下ろした。グエンさんは収容所内の医務室に運ばれたが、そこから外部病院には運ばれず、翌18日夕方に独房ブロックの一室に移された。

グエンさんと同じインドシナ難民で、同じブロックの三つ隣の独房だった男性は、「18日にきてからグエンさんはずっと寝込んでいて、ごはんも食べていなかった」と話す。収容所は毎日9時半から11時半、13時から16時半まで部屋のドアが開放され、被収容者は共有フロアに出てシャワーや洗濯をしたり、電話をしたり、同じブロックの他の被収容者と交流したりするなどできる。

男性は19日に様子を見に行ったが、グエンさんは「頭と首と胸が痛い」と言い寝ていた。額を触ると高熱があった。職員を呼んだが、職員は氷枕を持ってくるだけの対応だったという。

21日昼、グエンさんはフロアに出てきたが、「痛い」「我慢できない」と、頭、首、胸の激しい痛みを訴えた。そのうち動けなくなり、フロアの卓球台に横になった。だが職員は誰も来なかったので、みなで「医者に見せてほしい」と監視カメラに向かい頼んだ。

その後、グエンさんは収容所内の医務室に連れて行ってもらえたが、レントゲン撮影をし、痛み止めや湿布を渡されただけだったという。

22日夜には、グエンさんは「痛い、痛い」と叫び声をあげて痛みを訴えた。男性は職員を呼んだが、職員は「静かにしろ」「うるさい」などと言い放ったという。グエンさんはその後、休養室に移されたが、やはり外部病院には運ばれず、翌23日朝に独房に再び戻された。

同日も、グエンさんは寝込んでいた。24日朝10時半ごろ、男性の部屋にグエンさんがきて少し会話をしたが、グエンさんはすぐ部屋に戻った。その後の11時から20時ごろまでの長時間にわたり、グエンさんは継続的に「痛い、痛い」と泣き叫ぶほどの苦しみを見せた。しかし、その間、職員は一人もこなかったという。

遺体に心臓マッサージか

20時ごろ、急にグエンさんの叫び声などがなくなった。収容所では毎日22時ごろに職員が灰皿のゴミを回収にくる。この日も職員が「灰皿ちょうだい」とグエンさんの独房にやってきた。通常、被収容者が食器口から灰皿を渡すが、グエンさんは何の反応もしていないようだった。

15分後、職員が他の職員数人とグエンさんの独房に再びやってきて、ドアを開け部屋の中に入った。だがその次の瞬間、職員らは慌ただしく部屋から出てきてドアを閉め、その場を去っていった。

日付が変わった25日1時ごろ、数人の職員がグエンさんの部屋に再び入っていった。部屋からはAED(自動体外式除細動器)の機械の音が漏れ聞こえてきた。しかし、職員がグエンさんに声掛けしている様子はなかったという。そのうち救急隊員もきて、グエンさんはストレッチャーでフロアに出された。

男性が食器口からのぞくと、グエンさんは、両腕を胸のあたりで曲げ、片足が斜め上に上がった状態で固まっていた。救急隊員が腕を引っ張って伸ばそうとしたが、硬直していてピクリとも動かなかった。男性は「死後硬直している」と思った。それでも救急隊員はグエンさんの胸に注射をし、心臓マッサージをほどこした。そして目の反応を確認し、死亡の診断がされたという。

男性はこう話す。「ずっと痛いと訴えていたのに、外の病院に連れて行ってもらえず、グエンさんは死んでしまった。本当にかわいそう。担当職員は私たちの言うことを『嘘の病気』と思うみたいです。グエンさんは、叫び声が聞こえなくなった24日20時ごろに死んだと思います。22時ごろに職員がグエンさんの部屋に入ってすぐ出たのは、グエンさんが死んでいたから逃げたんじゃないでしょうか」

男性はC型肝炎と肝硬変を患っているが、収容所の医師からは「ここに治る薬はない。外に出てから治しなさい」と言われたという。「この中にいる限り、人間の扱いは受けられない。こんなところで死にたくない」(同男性)

「詐病が多い」との偏見

入管側は、グエンさんの死因はくも膜下出血で、死亡時刻は25日2時20分ごろ、死亡の確認場所は病院だとしている。北村晃彦所長(4月より清水洋樹氏が新所長に)は発表時、「現時点で処遇に問題はなかった」とコメントした。

これに対して港町診療所(横浜市)の山村淳平医師は、「グエンさんが24日にこれまでにない強い痛みを訴えていたようなので、このとき、くも膜下出血の診断と緊急手術がなされれば助かった可能性はある」との見解だ。24日22時ごろにグエンさんの死亡を職員が発見していたとすると、その時点で救急車を呼んでいないことにも大きな問題があるとした。グエンさんが医務室に行ったときのことについては、「胸のレントゲン写真と心電図検査、血圧測定、胸の聴診、身体の触診をする必要があったと考えられる」と指摘した。

牛久入管に確認すると、3月末に法務省に検証チームが設けられて現在調査中のため、詳細は答えられないとした。調査チームについて、「死亡事案だから、一応、すべて調べる必要があるじゃないですか」という言いぶりで説明した。

しかし支援者によると、現在までのところ、被収容者への聞き取りがなされた様子はないという。牛久入管はまた、24日22時ごろに職員がグエンさんの死亡を確認していたのではないかとの質問には、「そうした事実は把握していない」と答えた。

入管収容所の医療については以前から多くの問題が指摘されている。「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表は、「収容所生活のストレスで、病気が悪化したり、薬が効かなくなったりする人をたくさん見てきた」と話す。収容所に常勤医師はいない。とくに3月は18日から20日が連休で、17日17時から21日13時まで医師は不在だった。同会は入管に、常勤医師の早急な確保、職員への人権教育の徹底、外部病院への柔軟な通院を認めることなどを求める申し入れをした。被収容者が外部病院に通院できるケースはごくわずかで、通院できても腰縄に手錠という非人道的な扱いを受ける。

同会によると、「(グエンさんは)早くここから出たいから病気であると嘘を言っている」などと職員が話していたとの被収容者からの告発もあった。グエンさんと同ブロックだった男性も、同会会員に手紙で、この惨状を真っ先に訴えていた(手紙は、同会ホームページに全文掲載されている→http://www011.upp.so-net.ne.jp/ushikunokai/)。山村医師が入手した資料よると、牛久収容所は2010年から12年にかけての毎年の業務概況書で、「詐病やささいな疾病により診断を要求するものが多い」と記していた。

同所では10年に日系ブラジル人と韓国人が自殺。14年3月にはイラン人とカメルーン人が相次いで“病死”している。低待遇に加え、差別意識と偏見が悲劇を招いていることは間違いない。

(2017年6月16日号を一部修正)

自民批判の小池都知事の思惑 加計学園問題は都議選で争点化へ

2017/06/20(火) 11:16

都議選の応援で加計問題に触れる小池百合子都知事。6月4日。(撮影/横田一)

加計問題で“安倍政権包囲網”ができつつある。「都民ファーストの会」代表の小池百合子東京都知事や、維新法律政策顧問だった橋下徹前大阪市長までもが政府与党の対応を批判し始めたのだ。

民進党は加計学園疑惑追及チームの会合を6月2日にも開き、「官邸の最高レベルが言っていること」などと記された文部科学省内のメールを公表。複数の文科省職員の宛先が示されて件名には「概要共有」とあり、内閣府が文科省に早期の開学を促す文書「打合せ概要」も添付されていた。そこには、「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短スケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」と記載されていた。

座長の今井雅人衆院議員が文科省に尋ねたが、「出所不明の文書なのでコメントは控える」と調査に消極的。山井和則国対委員長や玉木雄一郎幹事長代理ら出席議員も、「宛先の人物に確認していただければわかる」と迫ったが、文科省は事実確認を始めようとせず、2時間以上押し問答が続いた。

地元・今治市でも疑問の声が出始めた。住民らでつくる「今治加計獣医学部問題を考える会」は2日、電話調査の結果を会見で発表。6割以上が「地域振興のために予算を使った方がいい」と回答、「多額のお金を出して誘致」は4割以下に止まったのだ。

【橋下氏まで対応を問題視】

加計問題は都議選にも波及。自民党を離党した若狭勝衆院議員は5月29日の会見で、「総理のご意向」と記された文書は「文科省の中に存在すると思う」と断言。「信憑性がない」と述べる菅義偉官房長官らを「曖昧な形にして収束させたい思惑」「総理が何らかの便宜を図った疑い。公正らしさに欠けるとしか見えない」と批判した。

「都民ファーストの会」の都議選候補への支援表明もした若狭氏は6月1日の決起大会で挨拶、自民党のしがらみ政治からの脱却を訴えた。すると、小池知事も「情報公開(公文書の管理条例改正など)」を都議選の目玉政策と位置づけ、加計学園をめぐる自民党の情報公開の姿勢を「情報公開徹底は当然」「これは都政でも国政でも同じ」と囲み取材で指摘。都議選の構図は「(意思決定過程)ブラックボックス化の自民党対透明化の都民ファーストの会」と強調。

4日の応援演説でも「まずは情報公開から始めなければならない」と最重要政策と位置づけ、自民党との違いをこう説明した。「今でも永田町と霞ヶ関とでやっているでしょう。『この文書は怪文書なのか』『私たちはちゃんとした文書としてキープしている』と。しかし基本は資料はすべて公開するのを大前提にしてこそ、新しい東京大改革が始まると思っています」。

一方、3日と4日に都議選向けの講演をした橋下徹前大阪市長も、政府与党の対応をこう問題視した。「『政治の力が働いていなかった』『文書がなかった』とか、そんなわけないじゃないですか」「総理のご意向で動いたのは間違いない。大阪府と大阪市に文書を取り寄せられたら『橋下知事のご意向』『橋下市長のご意向』と一杯入っていますよ」「安倍さんも菅さんも『政治主導で役所を動かしていった』と言ったのなら良かったと思う。問題なのは自分の友人が仕事を請けてしまったところ。友人だから引かせた(選考辞退の)方が絶対に格好が良かったと思う。『獣医学部を作るのは加計学園しかできない』というのだったら、無理やりにでも複数の学校に手を挙げてもらって、公開の場でちゃんと審査をすれば、良かったと思うのです」。

実際には、正反対のことが罷り通った。広域的に獣医学部がないこととの条件が付加され競合相手の京都産業大学が脱落したのだ。安倍首相の天の声による実質的な官製談合の疑いがあると前号で指摘したのはこのためだ。

都議選向けの集会で小池知事と橋下氏が、安倍自民党の対応を批判したことで、都議選が民意を示す絶好の機会になりつつある。「意思決定過程ブラックボックス化の安倍自民党イエスか、ノーか」を問う“情報公開選挙”の様相を呈してきたのだ。

(横田一・ジャーナリスト、6月9日号)

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