(命令概要)ガザ地区におけるジェノサイド条約適用事件(南アフリカ対イスラエル事件)

原文: https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/192/192-202401…

日本語訳PDF:https://www.jca.apc.org/jca-net/sites/default/files/2024-03/26Jan24_ICJ…

国際司法裁判所
概要(非公式文書)

概要2024/1号
2024年1月26日

ガザ地区におけるジェノサイド条約適用事件
(南アフリカ対イスラエル事件)

仮保全措置の申立て

国際司法裁判所(ICJ)は、2023年12月29日に南アフリカが裁判所書記官へ申立てを提起したことを想起する。この申立ては、ガザ地区のパレスチナ人に関してイスラエルがジェノサイド犯罪の防止と処罰に関する条約(以降「ジェノサイド条約」か「条約」と表記)に基づく義務に違反している疑いがあるとして、イスラエルに対する手続の開始を要請するものである。南アフリカによる申立ては「ジェノサイド条約が保護するパレスチナ人集団の権利について著しい緊急性があるため、ICJが本案判決に至る前にICJが次の各項の仮保全措置を提示するように求める」としている。

[訳注: 下記(1)から(9)までは要旨。原文では申立書からの引用]

(1)
イスラエル国は、ガザ地区内やガザに対する軍事行動を直ちに停止すること。

(2)
イスラエル国は、自国の指示・支援・影響を受けている軍隊または非正規武装部隊、あるいは自国の管理・指示・影響を受ける可能性のあるすべての団体および個人も、上記(1)の軍事作戦を助長しないように措置すること。

(3)
南アフリカ共和国およびイスラエル国は、ジェノサイド条約に基づく義務に従い、パレスチナの人々に関して、ジェノサイドを防止するため、それぞれ、その権限内にあるすべての合理的な措置を講じること。

(4)
イスラエル国は、ジェノサイド条約により保護される集団としてのパレスチナの人々に関して、ジェノサイド条約に基づく義務に従い、特に条約第2条に規定される下記の行為を一切やめること。

(a) 集団の構成員を殺害すること

(b) 集団の構成員に重大な身体的・精神的危害を加えること

(c)
身体の全部や一部を破壊するように計画された生活条件を意図的に課すこと

(d) 集団内で出生が困難になるように計画された措置を強制すること

(5)
イスラエル国は、上記(4)(c)に従い、パレスチナ人に関して、下記の行為をやめ、その権限内で下記の事項を防止するために、命令・制限・禁止事項の撤回を含め、あらゆる手段を講じること。

(a) 住居からの追放・強制移住、

(b) 以下の剥奪、

(i) 十分な食料と水へのアクセス、

(ii)
十分な燃料・避難所・衣服・衛生・下水設備を含む人道支援へのアクセス、

(iii) 医療用資材と医療的支援、

(c) ガザに住むパレスチナ人の生活破壊

(6)
イスラエル国は、その軍隊や、軍の指揮・支援など影響を受ける非正規の武装集団や個人、あるいはイスラエル国の管理・指示など影響を受ける可能性のある組織や個人が、パレスチナ人に関して、上記(4)および(5)に掲げる行為を行わないよう措置すること。それらの組織・個人がジェノサイドを直接に公然に教唆しない、ジェノサイドを共謀しない、ジェノサイドを企てない、ジェノサイドに関与しないように措置すること。これらの行為に関与した場合はジェノサイド条約の第1条、第2条、第3条、第4条に従って処罰に向けた措置をとること。

(7)
イスラエル国は、この申立てに関連するジェノサイド条約第2条が規定する行為に関する証拠の破壊を防ぎ、証拠を保全するための効果的な措置をとること。イスラエル国は、証拠の保全と継続して保全されるように支援する事実調査団・国際委任団などの機関がガザへ入域する際に拒否や制限をしないこと。

(8)
イスラエル国は、この決定を実現するためにとられたすべての措置に関する報告を、この決定の日から1週間以内に裁判所に提出すること。その後、この事件に関するICJの最終決定があるまで、ICJが命じる定期的な間隔で報告書を提出すること。

(9)
イスラエル国は、ICJに提起されている紛争を悪化・拡大させる行動、紛争の解決を困難にするような行動を慎むこと。そのような行為が行われないように措置すること。

I. 緒言(決定文のパラ13と14)

ICJはこの事件が提訴される直前の事態を想起する。1,200人以上が死亡、数千人が負傷、約240人が拘束され、その多くが人質として拘束され続けている。この攻撃の後、イスラエルはガザに対して陸・空・海による大規模な軍事行動を開始し、民間人死傷者が大量に発生し、民間インフラの大規模な破壊と、ガザ居住者の圧倒的多数が避難する事態となった。ICJはこの地域で生じている惨事の規模をはっきり認識しており、今日も人命が失なわれ生存者の苦難が続いていることを深く懸念する。

ガザで進行中の紛争は、いくつもの国連機関や専門部局が協調対応している。特に、国連総会決議(2023年10月27日採択のA/RES/ES-10/21、12月12日採択のA/RES/ES-10/22)、安全保障理事会決議(11月15日採択のS/RES/2712(2023)、12月22日採択のS/RES/2720(2023))は、紛争の多くの側面に言及している。しかし南アフリカがジェノサイド条約に基づき本手続を提起しているため、ICJが関与する本件の範囲は限定されたものである。

II. 一応の管轄権(決定文のパラ15から32まで)

1. 予備的所見(決定文のパラ15から18まで)

ICJはこれまでの決定を踏襲し、申立ての根拠とする規定が一見して明白にICJの管轄権を認定しているときは仮保全措置を提示することができる。しかし本案の管轄権を認定する場合ほどに厳密である必要はない。本事件で南アフリカはICJ規程第36条1項とジェノサイド条約第9条が根拠になると主張している。したがってICJはこれらの規定を精査し、本件の本案についてICJに一応の管轄権が付与されているかを判断しなければならない。その上で、他に必要とされる条件が満たされた場合に、仮保全措置の提示が可能となる。

ICJは南アフリカとイスラエルとがいずれもジェノサイド条約の締約国であり、条約の第9条にも、その他の条文にも留保を付していないことを確認した。

2.
ジェノサイド条約の解釈、適用、履行に関する紛争の存在
(決定文のパラ19から30まで)

ジェノサイド条約第9条では、条約の解釈・適用・充足に関する紛争があるとの条件でICJの管轄権を規定している。南アフリカはICJの管轄権をジェノサイド条約の仲裁手続条項によって申立てているため、ある行為または不作為についての申立国の訴えが条約に関する事項的管轄に含まれているかをICJは確認しなければならない。

ガザに関してのイスラエルの行為がその性質・対象・規模から判断してジェノサイド条約が規定する義務に違反しているとの意見を南アフリカが公式声明や両国の間で表明してきたことをICJは認めている。そのような表明は、例えば2023年12月12日に再開された第10回国連総会緊急特別会議で、南アフリカ国連代表が「ガザにおける過去6週間の出来事によれば、イスラエルの行動がジェノサイド条約の義務に違反していることが明らか」と述べており、そこにはイスラエルが代表出席している。南アフリカはこの表明を2023年12月21日にプレトリアのイスラエル大使館に送付した公式書簡にも記載した。

ICJは次の事項を認めている。すなわち、イスラエル外務省は、ガザでの紛争に関してジェノサイドとの非難を否定する文書を2023年12月6日に発表し、2023年12月15日に更新し、同日イスラエル国防軍のウェブサイトにも公表した。その文書の表題は『ハマースとの戦争、あなたの最も切実な疑問に答える』とされ、そのなかで、「イスラエルに対するジェノサイドの非難は、事実と法律の問題としてまったく根拠がないだけでなく、道徳的に極めて不快なものだ」と述べている。この文書で「イスラエルに対するジェノサイドという非難は、...法的にも事実的においても支離滅裂であるだけでなく、非常識である」と述べ、さらに「ジェノサイドというとんでもない非難には、事実上も法律上も正当な根拠がない」と続けている。

このような状況に基づいて、ガザにおけるイスラエルの行為または不作為がジェノサイド条約の義務に違反するとの疑いの当否に関して両国の見解は明白に対立しているとICJでは認識している。したがって、条約の解釈・適用・充足に関して両国間に紛争があり、そのため条約の要件が満足され、本件申立て手続きには一見して明白にICJの管轄権が存在すると判断する。

次に、申立国が主張している作為または不作為がジェノサイド条約の規定に該当する可能性を検討する。南アフリカはその申立ての中で、イスラエルがガザでジェノサイドを行った責任と、ジェノサイド行為の防止も処罰も怠った責任を指摘した。南アフリカはさらにイスラエルがジェノサイド条約の下での「ジェノサイドの共同謀議・直接で公然の教唆・未遂・共犯」に関する義務にも違反していると主張している。

ICJは、南アフリカが申立てているイスラエルによるガザでの行為または不作為のうち、少なくとも一部はジェノサイド条約の規定が適用される可能性があると判断した。

3.
一応の管轄権に関する結論
(決定文のパラ31と32)

上記の議論にもとづき、ICJはジェノサイド条約第9条に従って申立てを受理し審理に付す管轄権が一見して明白に存在するとの結論を得た。従って本件を付託事件リストから削除するとのイスラエルによる要求は受け入れられない。

III. 南アフリカの原告適格(決定文のパラ33と34)

ICJはイスラエルが南アフリカの原告適格を否認していないことを認識した。またジェノサイド条約の全締約国は条約が規定する義務に従うことでジェノサイドの防止・抑制・処罰という形の共通利益を認識していることをICJは想起する。従って、ある締約国が別の締約国による条約上の義務の違反を終わらせる目的を持って、違反の疑いをICJでの手続き等の手段により指摘することで条約の義務が遵守される(「絶対権」あるいは「対世権」)。

南アフリカがジェノサイド条約に規定される義務違反に関する意見の相違というイスラエルとの紛争において、ICJは一見して明白に[南アフリカが]原告適格を有するとの結論を得た。

IV.
保護が求められている人の権利および当該権利と請求される措置との関係
(決定文のパラ35から59まで)

ICJは規程第41条に基づいて仮保全措置を提示する権限を有する。その権限は、本案の判断が示されるまでの間、ある事件の当事者らが主張するそれぞれの権利を保全することが目的である。そのため、仮保全措置によって保全し、後にICJが判断することになる権利がいずれかの当事者に属するものであることをICJは確かめなければならない。したがって、そのような措置を求める当事者の主張している権利が少なくとも存在する可能性がある場合に限ってICJは仮保全措置の権限を行使できる。さらに、主張している権利と申立てられている仮保全措置とが関連している必要がある。

[訳注: 規定41条1項:
裁判所は、事情によって必要と認めるときは、各当事者のそれぞれの権利を保全するためにとられるべき仮保全措置を提示する権限を有する。なお「暫定措置を指示する」との用語を採用する日本語訳もある。]

ジェノサイド条約の締約国はすべて、ジェノサイド犯罪の「防止と処罰」に取り組んでいることをICJは認識している。このジェノサイド犯罪とは、条約第2条の(a)から(e)項で、ある国民の集団・民族集団・人種に属する集団・宗教的集団の全部や一部を破壊する意図を持って、

・ 集団の構成員を殺害すること((a)項)、

・ 集団の構成員に重大な身体的・精神的危害を加えること((b)項)、


身体の全部や一部を破壊するように計画された生活条件を意図的に課すこと((c)項)、


集団内で出生が困難になるように計画された措置を強制すること((d)項)、

・ 集団の児童を他の集団に強制的に移すこと((e)項)

と規定している。さらにジェノサイド条約の第3条では、

・ ジェノサイドの共謀((b)項)、

・ ジェノサイドの直接的で公然の扇動((c)項)、

・ ジェノサイドの未遂((d)項)、

・ ジェノサイドの共犯((e)項)

を禁止している。

ジェノサイド条約は第3条で、ある国民の集団・民族集団・人種に属する集団・宗教的集団の構成員を、ジェノサイド行為だけでなくジェノサイドの共謀などからも罰則をもって保護することを宣言しているので、ジェノサイド条約によって保護される集団の構成員たちの権利と、条約締約国の義務と、ある締約国に条約の遵守を要求する別の締約国の権利とに関連があることになる。ICJの見解では、パレスチナ人たちは独自の「ある国民の集団・民族集団・人種に属する集団・宗教的集団」であると見られ、ジェノサイド条約第2条の意味で保護される集団である。

2023年10月7日の襲撃後にイスラエルが行った軍事行動で、大量の死傷者、大量の住宅の破壊、多数の強制移住が発生し、民間インフラ施設も広範に損傷されたことをICJは認識している。ガザ地区の被害数を独立に検証はできないが、最近の情報によれば、2万5700人のパレスチナ人が殺害され、6万3000以上の負傷者が出ており、36万の住居が全壊または破損し、約170万人が強制移動(国内避難)させられた。ガザ地区のパレスチナ人へは水・食料・燃料・電気・その他必需品・医療・医療資材が止められている。

これに関してICJは国連機関と高官による3つの情報に注目する。すなわち人道問題担当
国連事務局次長 兼
緊急救助調整官による2024年1月5日の声明、WHOによるガザ北部派遣団の2023年12月21日の報告、そして国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の2024年1月13日の事務局長声明である。

さらにUNRWA事務局長が声明で、“人間性を否定する言辞”がガザの危機をいっそう困難にしていると述べたことをICJは確認している。そのような言葉は複数のイスラエル政府高官から発せられたことも確認している。特に次の例、すなわち、

2023年10月9日と10日、イスラエル国防大臣ヨアフ・ガラント氏、

2023年10月12日、イスラエル大統領イツハク・ヘルツォグ氏、

2023年10月13日、当時はイスラエルのエネルギーおよび社会基盤担当大臣であったイスラエル・カッツ氏、

に注目するべきである。また国連人権理事会の複数の作業部会の特別報告者、独立専門家と部会員合計37名が2023年11月16日に報道発表した「イスラエルの高官らが発した明白にジェノサイド的で人間性を否定する言辞」との警告にICJは着目する。さらに2023年10月27日、国連人種差別撤廃委員会は「10月7日以降、パレスチナ人に向けられた人種差別的ヘイトスピーチや人間性否定発言が著しく増加している」ことに懸念を表明している。

上記の事実と状況から、南アフリカが申立てによって保護を求めている権利の少なくとも一部は存在する可能性があると結論付けられる。すなわち、これは、ガザのパレスチナ人がジェノサイド行為から保護され、また条約第3条に定める禁止行為からも保護される権利と、イスラエルに条約の規定を遵守することを求める南アフリカの権利とに関する案件である。

次に、南アフリカが主張する“可能性のある権利”と、申立てられている仮保全措置との関連という条件を検討する。

南アフリカが仮保全措置の申立てで保護を求めている“可能性のある権利”、具体的にはジェノサイド行為と、その他にジェノサイド条約が第3条で禁止している行為とからガザのパレスチナ人集団が守られる権利、および、南アフリカがイスラエルに対して条約の義務を遵守することを求める権利について、申立てている仮保全措置は、少なくともその一部は、その性質上、これらの権利の保護を目的としているものである。従って、ICJが“可能性がある”と判断したこれらの南アフリカが主張した権利と、申立てられている仮保全措置の少なくとも一部との間には関連性がある。

V.
回復不能な損害のリスクと緊急性
(決定文のパラ60から74まで)

ICJ規程第41条により、裁判手続の主題となっている権利に関して回復不能な損害が生じうる場合や、申立てられている権利侵害によって回復不能な損害が生じうる場合に、ICJには仮保全措置を提示する権限がある。しかしこの権限は緊急性がある場合にのみ発動できる。この緊急性とは主張されている権利への回復不能な損害の生じる危険が現実的で差し迫ったものである、という意味である。

ジェノサイド条約がどのような根本的価値の保護を主眼としているのかという論点で考えたとき、本件申立てが指摘している“可能性のある権利”への侵害が回復不能な損害を引き起こしうる性質のものであるとICJは認識する。ここで“可能性のある権利”とは、ガザ地区のパレスチナ人集団がジェノサイドから保護される権利、ジェノサイド条約第3条が規定する禁止行為の対象とされない権利、イスラエルが条約上の義務に従うように要求する南アフリカの権利、が挙げられる。

ガザ地区における民間人は極度に脆弱な状態にあるとICJは認識している。2023年10月7日以降のイスラエルによる軍事行動によって、主要な事項だけを挙げても数十万人の死傷者、家屋・学校・医療施設や必須の社会インフラの破壊があり、加えて大規模な強制移動(避難)が生じている。このような軍事行動は現在も継続しており、さらにイスラエルの首相は2024年1月18日にこの戦争が「数か月の苦難となるだろう」と発言したことをICJは認識している。ガザ地区に住むパレスチナ人は、基本的な食材・飲料水・電気・必須の医薬品・暖房を得られない。ガザ地区で出産する女性の15%が合併症を起こすとWHOでは推計しており、医療が届かないことから産婦と新生児の死亡率が増加すると予測している。これらの状況をふまえると、ICJが判決に至る前に、すでに破局的なガザ地区での生存状況がさらに悪化する危険が大きいとICJは認識する。

イスラエルがガザ地区の住民が直面している状況を緩和するための措置を講じているとの声明をICJは認識している。さらに民間人を故意に攻撃する呼びかけは扇動罪を含む犯罪となる可能性があり、イスラエルの法執行機関が捜査している、との声明をイスラエルの法務長官が発したことを認識している。このような措置などは奨励されるべきだが、これらの措置などは、ICJが本件の最終決定に至る前に回復不能な損害が生じるリスクを取り除くには不十分であるとICJは判断した。

以上の考察に照らし、南アフリカが提起しICJが認定した“可能性のある権利”に対して、回復不能な損害が生じるおそれは実体的で差し迫っていることから、ICJは緊急性があると判断する。

VI.
結論および採択すべき措置
(決定文のパラ75から84まで)

ここまでに述べた検討により、仮保全措置の提示に必要とされるICJ規程の条件が満足されたとICJでは判断した。従って、南アフリカが指摘しICJが“可能性のある”と判断した権利を、ICJの最終決定に至るまでの間保護するため、ICJは一定の仮保全措置を提示しなければならない。南アフリカが申立てで請求している仮保全措置の内容と本件の現状を考慮したうえで、ICJは提示する仮保全措置が請求と同一である必要はないと判断した。

上記の状況に鑑み、イスラエルはジェノサイド条約の示す義務に従い、ガザ地区のパレスチナ人に関して、条約第2条の各号で規定する行為を防止するためのあらゆる措置を講ずるべきであるとICJは認識している。条約第2条では各号に、

(a) 集団の構成員を殺害すること、

(b) 集団の構成員に対して重大な身体的・精神的な危害を加えること、

(c)
身体の全部や一部を破壊するように計画された生活条件を意図的に課すこと、

(d) 集団内で出生が困難になるように計画された措置を強制すること

と規定されている。これらの行為が集団全体や一部を破壊する意図をもって行われた場合、条約第2条の規定に該当するものであり、さらに、イスラエル各軍がこれらの行為に及ばないようにイスラエルは直ちに措置するべきであるとICJでは認識している。

また、ガザ地区のパレスチナ人集団に関して直接的に公然とジェノサイドを扇動する行為を防止し処罰するため、イスラエルの権限であらゆる措置を講じるべきであるとの見解をICJは有する。

さらに、ガザ地区のパレスチナ人が置かれている不利益な生活条件に対処するため、緊急に必要な基本的サービスと人道支援とが到達するようにイスラエルは迅速かつ有効な措置を講じるべきであるとICJは認識する。

ジェノサイド条約第2条と第3条に規定された行為がガザ地区のパレスチナ人集団に向けられている疑いに関する証拠の保全について、イスラエルは有効な措置を講じなければならない。

最後に、ここで決定した本件仮保全措置の実効性を担保するため、イスラエルは講じたすべての措置について発令日から1か月以内に報告をICJに提出するべきであるとICJは認識する。この報告は南アフリカに開示され、報告についての意見をICJに送付する機会が南アフリカに提供される。

*

ガザ地区での衝突に関与する当事者のすべてが国際人道法に拘束されることをICJは強調しておく必要がある。2023年10月7日のイスラエルに対する攻撃の際に拘束され、それ以後ハマースや他の集団に拘束され続けている人質の安全にICJは重大な懸念を持っており、直ちに無条件で人質を解放するように要請する。

効力部分(決定文のパラ86)

効力部分の全文は以下のとおりである。

以上の根拠により、当裁判所は以下の仮保全措置を提示する。

(1) 15対2によって、
イスラエル国は、ジェノサイド条約に基づく義務に従い、ガザのパレスチナ人に関して、特に以下の行為を含めこの条約の第2条の範囲内のすべての行為の実行を防止するために、その権限内にあるすべての措置をとるものとする:

(a) 集団の構成員を殺害すること;

(b)
集団の構成員に対して重大な身体的または精神的な危害を加えること;

(c)
身体の全部や一部を破壊するように計画された生活条件を意図的に課すこと;

および

(d) 集団内で出生が困難になるように計画された措置を強制すること。

賛成票:
ドナヒュー裁判長、ゲボーギアン副裁判長、トムカ裁判官、アブラハム裁判官、ベニューナ裁判官、ユーセフ裁判官、シュエイ裁判官、バンダーリ裁判官、ロビンソン裁判官、サラーム裁判官、イワサワ裁判官、ノーテ裁判官、チャールスワース裁判官、ブラント裁判官、モセヌケ特任裁判官

反対票: セブティンデー裁判官、バラク特任裁判官

(2) 15対2によって、
イスラエル国はその軍隊が上記(1)のいかなる行為も行わないことを直ちに確保するものとする。

賛成票:
ドナヒュー裁判長、ゲボーギアン副裁判長、トムカ裁判官、アブラハム裁判官、ベニューナ裁判官、ユーセフ裁判官、シュエイ裁判官、バンダーリ裁判官、ロビンソン裁判官、サラーム裁判官、イワサワ裁判官、ノーテ裁判官、チャールスワース裁判官、ブラント裁判官、モセヌケ特任裁判官

反対票: セブティンデー裁判官、バラク特任裁判官

(3) 16対1によって、
イスラエル国は、ガザ地区のパレスチナ人集団のメンバーに関しジェノサイドの実行を直接的かつ公然と扇動する行為を防止および罰するために、その権力の及ぶ限りあらゆる措置をとるものとする。

賛成票:
ドナヒュー裁判長、ゲボーギアン副裁判長、トムカ裁判官、アブラハム裁判官、ベニューナ裁判官、ユーセフ裁判官、シュエイ裁判官、バンダーリ裁判官、ロビンソン裁判官、サラーム裁判官、イワサワ裁判官、ノーテ裁判官、チャールスワース裁判官、ブラント裁判官、バラク特任裁判官、モセヌケ特任裁判官

反対票: セブティンデー裁判官

(4) 16対1によって、
イスラエル国は、ガザ地区のパレスチナ人が直面する不利な生活状況に対処するため、緊急に必要とされる基本的サービスと人道支援の提供を可能とする即時かつ効果的な措置をとるものとする。

賛成票:
ドナヒュー裁判長、ゲボーギアン副裁判長、トムカ裁判官、アブラハム裁判官、ベニューナ裁判官、ユーセフ裁判官、シュエイ裁判官、バンダーリ裁判官、ロビンソン裁判官、サラーム裁判官、イワサワ裁判官、ノーテ裁判官、チャールスワース裁判官、ブラント裁判官、バラク特任裁判官、モセヌケ特任裁判官

反対票: セブティンデー裁判官

(5) 15対2によって、
イスラエル国は、ジェノサイド条約第2条及び第3条の範囲内の、ガザ地区のパレスチナ人集団の構成員に対する行為について、申立てに関する証拠の破壊防止と保全確保のための効果的な措置をとるものとする;

賛成票:
ドナヒュー裁判長、ゲボーギアン副裁判長、トムカ裁判官、アブラハム裁判官、ベニューナ裁判官、ユーセフ裁判官、シュエイ裁判官、バンダーリ裁判官、ロビンソン裁判官、サラーム裁判官、イワサワ裁判官、ノーテ裁判官、チャールスワース裁判官、ブラント裁判官、モセヌケ特任裁判官

反対票: セブティンデー裁判官、バラク特任裁判官

(6) 15対2によって、
イスラエル国は、この命令の日付から1カ月以内に、この命令を実現するためにとられたすべての措置に関する報告書を当裁判所に提出するものとする。

賛成票:
ドナヒュー裁判長、ゲボーギアン副裁判長、トムカ裁判官、アブラハム裁判官、ベニューナ裁判官、ユーセフ裁判官、シュエイ裁判官、バンダーリ裁判官、ロビンソン裁判官、サラーム裁判官、イワサワ裁判官、ノーテ裁判官、チャールスワース裁判官、ブラント裁判官、モセヌケ特任裁判官

反対票: セブティンデー裁判官、バラク特任裁判官

[以上が仮保全措置]

*

シュエイ裁判官は当裁判所の決定について宣言書を提出、
セブティンデー裁判官は当裁判所の決定について反対意見を提出、
バンダーリ裁判官とノーテ裁判官はそれぞれ当裁判所の決定について宣言書を提出、
バラク特任裁判官は当裁判所の決定について個別意見書を提出。

------------------------------

要約2024/1 への別記

シュエイ裁判官による宣言書
[書記官による要約]

シュエイ裁判官は、南アフリカにが一見して明白な原告適格を有しており、イスラエルがジェノサイド条約の義務に違反しているとの疑いに対して申立手続きを開始することができるとの他の裁判官らの意見に同意する。この同意への理由としてパレスチナの課題が国連の構想当時すでに議題となっており、ガザ地区を含めたパレスチナの人々がいまもって自己決定権を行使できていない状況であり、国連の関連する決議では「国連はパレスチナの課題が国際法に合致した適切な解決を見出すまで問題解決への恒久的な責任を有する」とされていることを指摘する。国連はその司法機関を含めてパレスチナの人々が国際法のもとに保護され、特にもっとも劣悪な犯罪、すなわちジェノサイドから保護されるように努める責任があるとシュエイ裁判官の見解を示した。

これまでの109日間におよぶガザでの人道上の惨事について、シュエイ裁判官はガザの人道上の状態について深い憂慮を示した。イスラエルの軍事行動によってガザ地区ではパレスチナ人の存在自体が危ぶまれ、人道と道義の根本的原理が問われているとシュエイ裁判官は述べている。シュエイ裁判官は60年以上前の事件について触れている。そこでは南西アフリカの委任統治国であった南アフリカの義務違反の疑いをエチオピアとリベリアが申立てたが、ICJは両国には法的利益がないとして両国の申立てを却下した。このため国連加盟国から強い非難がICJに対して起こり、ICJの威厳は著しく低下した。バルセロナ・トラクション事件では国際社会の全体に対して法律的には一定の国際的責務も存在し、その重要性により、あらゆる加盟国が保護しようとする自己の法的利益があることをICJが認めた。そのような責務は絶対権[対世権ともいう]の対象とされる性質がある。しかしこの事件でICJは原告適格について触れなかった。現在でも法律や運用は進化を続けており、パレスチナ人の集団に対する保護について国際社会は共通の法的利益があることについてほとんど疑問の余地はないとシュエイ裁判官は考えている。今回の申立ては、まさにジェノサイド条約の締約国に原告適格を認めるべき種類にあたるものであり、ICJは絶対権を用いて他方の締約国による条約義務違反の責任追求にかかる手続きを開始するべきであるとの見解をシュエイ裁判官は述べる。

このような考察に基づき、またICJの命令でも述べているように、この仮保全措置が今回の状況下で適正である[根拠ある]ことにシュエイ裁判官は同意する。

セブティンデー裁判官による反対意見
[書記官による要約]

セブティンデー裁判官は多数意見による本命令に敬意をもって反対する。その理由は、イスラエル国とパレスチナの人々との紛争は本質的・歴史的には政治上のものであり、イスラエル人とパレスチナ人が平和に共存できるように恒久的解決策を見出すために、外交交渉によって収束され、また関連するすべての安全保障理事会決議をすべての関係国が誠実に遵守するべきであると述べる。セブティンデー裁判官は、本件がICJによる司法判断の介入が許されるような法律上の紛争ではないとの意見である。さらに、仮保全措置の提示に必要とされる条件のいくつかは満足されていないとセブティンデー裁判官は指摘している。条件のうち特に、イスラエルの行為がジェノサイドの意図に基づくものであってジェノサイド条約の適用範囲であると申立て国は指摘するが、その意図は一見して明白というレベルですら証明されていないとの意見を示した。さらに南アフリカが主張する南アフリカの権利はジェノサイド条約による“可能性のある権利”ではないとの意見を示した。セブティンデー裁判官はICJが提示した仮保全措置は適正でない[根拠がない]との意見である。

バンダーリ裁判官による宣言書
[書記官による要約]

バンダーリ裁判官は宣言書の中で、2023年10月7日にイスラエルの市民に対して行われた攻撃を非難するべきだと述べるが、その攻撃への反応としてイスラエル軍による軍事行動はガザでの人道上の惨事であると指摘した。

バンダーリ裁判官は、本件の弁論はまだ不完全であり、ICJは十分な事実の記録を得ていないと認識している。さらに仮保全措置の提示を決定する上でICJは南アフリカの申立てた疑いについて決定したのではないし、南アフリカが申立てで請求した救済措置を提示したのでもないことを強調している。

バンダーリ裁判官は、南アフリカが保護を申立てている権利の存在する“可能性”を考量する場合には、この段階でICJに提出されている証拠に基づいている必要があると述べる。ICJはガザでの破壊が広範囲に及ぶこと、住民の生命が大規模に失われていること、それらによるガザ住民の苦境について考慮する必要があるとバンダーリ裁判官は指摘する。前記の権利の存在可能性については、仮保全措置という手続き段階では、ジェノサイド条約が第2条で規定しているジェノサイドの意図の存在について確定的判断をする必要はなく、バンダーリ裁判官の見解では、ガザに対する軍事行動が広範囲であり、死傷者の発生や、[生活圏の]破壊や、それらに伴う人道支援の必要性を考慮すれば条約第2条に関して[権利の]存在可能性を補強するうえで十分であるとしている。ICJが提示した仮保全措置について、措置の内容とそれを提示した決定のいずれも適正である[根拠ある]と述べる。

バンダーリ裁判官は最後に、武力衝突のすべての当事者は直ちにあらゆる戦闘と敵対行為を中止し、2023年10月7日に拘束された人質を直ちに無条件で解放するべきであると述べた。

ノーテ裁判官による宣言書
[書記官による要約]

ノーテ裁判官はICJがジェノサイド条約を尊重して仮保全措置を提示したことに同意する理由を宣言書の中で述べている。仮保全措置は主としてイスラエルの軍部を含む複数の高官による特定の声明・発言がジェノサイド条約の規定するパレスチナ人たちの権利を修復不能なほど侵害する実体的で差し迫った危険につながる可能性があるとする南アフリカの主張を根拠にしているとの見解をノーテ裁判官は示した。

バラク特任裁判官による個別意見書
[書記官による要約]

1.
バラク特任裁判官は次のように意見を述べる。南アフリカの主要な申立てはガザ地区での軍事行動の中断に関するものであるが、ICJはそれを却下した。代ってICJはジェノサイド条約に規定されるイスラエルの義務に関して措置を決定した。ICJはイスラエルがイスラエル国民を防衛する権利を再確認し、ガザ地区の住民へ人道支援を到達させることの重要性を強調した。ICJが提示した仮保全措置の範囲は南アフリカが申立てで請求した範囲よりも大幅に削減されている。

2.
本件ではICJが「ガザ地区での衝突に関与する当事者のすべてが国際人道法に拘束される」と決定しており、その当事者にはハマースも含まれる。ICJは同時に「2023年10月7日のイスラエルに対する攻撃の際に拘束され、それ以後ハマースや他の集団によって拘束が続いている人質の安全にICJは重大な懸念を持っており、直ちに無条件で人質を解放するように要請する」と述べた。

3.
バラク特任裁判官は次のように指摘する。ジェノサイド条約は、イスラエル国内と国外とを問わず、ユダヤ人の心情と歴史に大きな位置を占めるものである。バラク特任裁判官自身の回想として「ジェノサイド」とは単なる言葉ではなく、計画された破壊を意味するもので人間の行為の中で最悪のものであると述べる。[ジェノサイドという]非難は[自分の心を]もっとも重く圧迫し、自分自身の過去とも深く交絡していると述べる。

4.
バラク特任裁判官は次のように述べる。イスラエル国は強固な法制度と独立した司法をもつ民主主義を実現している。国家の安全保障と人権とが対立した場合に、後者の擁護を妥協することなく前者が実現されなければならない。イスラエルの国家と軍の行動規範には国際法の規定が不可分に組み込まれており、イスラエルの最高裁判所の判例には法治主義への確信と人命の尊重が明白に示されている。

5.
ICJが一見して明白に管轄権を有するとする南アフリカの申立てについて、その誠実性にバラク特任裁判官は疑問をもつ。南アフリカがガザの状況についての公式書簡を2023年12月21日にイスラエルへ送達した後、直ちにイスラエルは可能な限り早い時期に交渉に応じる用意があると返信した。南アフリカは有意義な外交交渉を開始するとの提案に応じることなく、イスラエルに対する[本件の]手続きをICJに提起した。イスラエルによる交渉開始の提案に[仮保全措置の]申立てという形で[南アフリカが]応えたことは残念であるとバラク特任裁判官は述べる。

6.
バラク特任裁判官は次の見解を示す。本件手続きは武力衝突の他方の戦闘集団であるハマースが当事者として参加しないために困難になっている。このことがICJの管轄権を制約することにはならないが、本件の回復措置などを適切に決定する上で考慮しなければならない事項である。

7.
バラク特任裁判官は次の見解を示す。本件がICJに提起された時点での直近の事実についてICJの考慮は不完全である。2023年10月7日に3000人以上のハマースのテロ集団がイスラエル領土に陸・海・空により侵入したとバラク特任裁判官は回想する。さらに1200人以上の、乳児や老人を含む罪のない民間人が殺害されたことをバラク特任裁判官は回想する。

バラク特任裁判官は次のように説明する。ハマースは軍事装備を民間施設の内部や地下に隠して攻撃を逃れようとしているため、自らの民間人たちを危険に晒している。さらに人質の命運に触れ、この悲痛な状態が100日以上も継続していること、ガザ地区で死亡や建物が破壊されていることにも触れる。

8.
バラク特任裁判官は、ガザの状況に適用すべき法律は国際人道法であり、ジェノサイド条約ではないとの見解である。

9.
バラク特任裁判官は次のように説明する。ジェノサイド条約に関して言えば、ジェノサイド犯罪の主たる要素は[ジェノサイドの]意図である、つまり国民・民族・人種・宗教といった集団の全部または一部を破壊する意図が問われている。しかし本件ではその意図が示されていない。仮保全措置の提示に必要な程度の“可能性”の規範さえ満足されていない。この理由により、“ジェノサイド条約適用事件(ガンビア対ミヤンマー)”と本件とを比較すると“可能性のある権利”についてのICJの見解にバラク特任裁判官は同意できないと述べる。南アフリカが提出した証拠はガンビア事件でのそれに匹敵するものではないとバラク特任裁判官は述べる。イスラエルの攻撃による民間人への影響を軽減するための措置を講じているとイスラエルが主張したことを、バラク特任裁判官は指摘する。イスラエルがこのようにガザの人々への被害を軽減する措置を講じていることをICJは認識しているにもかかわらず、それをまったく考慮せずにイスラエルによる[ジェノサイドの]意図についてICJが判断したことは驚きであるとバラク特任裁判官は述べる。ICJがこのような[イスラエルによる]措置や声明がジェノサイドの意図の“可能性”を完全に否定するには不十分との判断を示したことはさらに大きな驚きであると述べる。

10.
バラク特任裁判官は、ICJが南アフリカによる申立てとジェノサイド条約との関連について何らの判断を示さなかったと述べる。現在の予備的段階でICJが到達した結論は南アフリカによる申立ての当否を判断するものではないのであるが、バラク特任裁判官の意見では申立てはまったく証明されていないと述べる。

11.
バラク特任裁判官はICJが提示した仮保全措置について、次のように説明する。南アフリカに存在するという“可能性のある権利”への主張に説得力がないため、第1と第2の仮保全措置には反対した。しかし第1と第2の仮保全措置はジェノサイド条約の第1条と第2条とでイスラエルがすでに負っている義務を再宣言したに過ぎないとバラク特任裁判官は指摘する。

12.
第3の公的扇動についての仮保全措置にバラク特任裁判官は賛成した。緊張状態の緩和および侮蔑的言辞の抑制を期待するためであると述べる。[イスラエルの複数の]高官による声明に懸念があると述べる。

第4の仮保全措置にバラク特任裁判官は賛成した。バラク特任裁判官はその理由として高い人道主義と、もっとも脆弱な人々への武力紛争の影響が軽減される期待であると述べる。この仮保全措置はイスラエルに国際人道法の遵守義務を再確認させることになるとし、その義務はすでにイスラエル軍のDNAとなっているとの見解を述べる。

13.
バラク特任裁判官は、ICJが人質の人権を擁護する措置を講じることを南アフリカに対して命じなかったこと、ハマースが人質を解放するように働きかけることを南アフリカに対して命じなかったことは残念であると述べる。これらの措置は国際人道法を根拠とするものであり、人道支援を可能にしている根拠と同じであるとの見解をバラク特任裁判官は述べる。さらに、人質の命運こそがガザでの軍事行動の主要部であり、[ハマースに対して]人質を解放するように働きかける措置を講じることで南アフリカは紛争終結に向けた明確な役割を果たせたはずだったとの見解を述べる。

14.
最後に、第5の仮保全措置について、バラク特任裁判官が反対した理由は、イスラエルによって証拠が破壊や隠蔽されたとの事実を南アフリカが示さなかったためであると述べる。

------------------------------


この翻訳はクリエイティブコモンズ表示 - 継承 4.0国際の条件で使用が許諾されます。