皇室典範特例法案に対する附帯決議関する有識者会議

以下は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議関する有識者会議」に
ついて政府が出した報告。なお、本文中の表記(年号や敬称等)は原文のまま。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する
有識者会議の開催について

2021年 3月 16日
内閣総理大臣決裁

1.趣旨
 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成29 年6月1日衆議院議院運営委員会・同月7日参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会)の一において示された課題について、様々な専門的な知見を有する人々の意見を踏まえ議論し整理を行うため、高い識見を有する人々の参集を求めて、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)を開催する。

2.構成
(1)有識者会議は、別紙に掲げる有識者により構成し、内閣総理大臣が開催する。
(2)有識者会議の座長は、出席者の互選により決定する。
(3)有識者会議は、必要に応じ、関係者の出席を求めることができる。

3.庶務等
(1)有識者会議の庶務は、内閣官房において処理する。
(2)内閣官房は、必要に応åじ、宮内庁、内閣法制局その他関係省庁の協力を求めるものとする。

4.その他
 前各項に定めるもののほか、有識者会議の運営に関する事項その他必要な事項は、座長が定める。

(別紙)
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する
有識者会議メンバー


大橋 真由美 上智大学法学部教授

清家 篤   日本私立学校振興・共済事業団理事長 慶應義塾学事顧問
冨田 哲郎  東日本旅客鉄道株式会社取締役会長
中江 有里  女優・作家・歌手
細谷 雄一  慶應義塾大学法学部教授
宮崎 緑   千葉商科大学教授・国際教養学部長
(五十音順)

 第1回  2021年  3月23日 
 第2回  2021年  4月 8日
 第3回  2021年  4月21日
 第4回  2021年  5月10日 
 第5回  2021年  5月31日
 第6回  2021年  6月 7日
 第7回  2021年  6月16日
 第8回  2021年  6月30日
 第9回  2021年  7月 9日
第10回  2021年  7月26日
第11回  2021年 11月30日
第12回  2021年 12月 6日
第13回  2021年 12月22日

*第1回〜第12回までの議事次第、議事の報告は、首相官邸ホームページに掲載。

報 告
2021年12月22日
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する
有識者会議

目 次

【報告】
1.はじめに 1
2.現行の皇位継承・皇室制度の基本  3
3.議論の経緯 4
4.皇位継承と皇族数の減少についての基本的な考え方 6
5.皇族数の確保について  8
(1)皇族の役割から見た皇族数の確保の基本的考え方 8
(2)皇族数確保の具体的方策  9
(3)その他 13
6.おわりに 15

【参考資料】 参考資料はこちら→
1 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議(平成29 年6
日衆議院議院運営委員会・平成 29 年6月7日参議院天皇の退位等に関
る皇室典範特例法案特別委員会)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
2 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識
者会議の開催について(令和3年3月16 日内閣総理大臣決裁)・・・・・・・20

3 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識
者会議開催実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

4 皇室に関する法制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
5 皇室の御活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
6 有識者ヒアリングの開催について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
7 有識者ヒアリング対象者一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
8 有識者ヒアリングで表明された意見について・・・・・・・・・・・・・・・・38

報 告

【1.はじめに】

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成 29 年6月1日衆議院議院運営委員会・同月7日参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会。以下「附帯決議」といいます。)では、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について、政府は検討を行い、その結果を国会に報告することとされています。
 この会議(以下単に「会議」といいます。)は、菅義偉内閣において、「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議の開催について」(令和3年3月 16 日内閣総理大臣決裁)に基づき、上記の課題について、様々な専門的知見を有する人々の意見を踏まえ議論し整理することをその趣旨として設置されました。会議としては、この趣旨を踏まえた上で、若い世代や女性を含め幅広い方々から御意見を伺い、議論を進めました。
 7月 26 日の第 10 回会議においては、それまでの議論を基に「今後の整理の方向性について」を取りまとめ、また更なる議論のため、事務局に対し、制度的事項や歴史的事項について調査・研究を依頼しました。岸田文雄内閣において会議は再開され、調査・研究結果も踏まえながら 11 月以降議論を行い、今般、附帯決議をめぐる議論について会議として結論を得ることができました。
 天皇及び皇族に関する制度は、憲法に定められた国家の基本に関わる事柄です。附帯決議で示された課題については、国民の中でも様々な考え方があり、将来に向けた方策を見出していくには大変難しいものがありますが、今のうちに検討しておく必要があります。
 会議においては、3月以来10 回を超える場を設け、慎重かつ真剣な議論を行ってきました。ここに、この課題についての会議としての考え方をお示ししたいと思います。

【2.現行の皇位継承・皇室制度の基本】

 憲法は、皇位は世襲のものであって、皇室典範の定めるところにより、これを継承する旨定めており、これを受け、皇室典範(昭和22 年法律第3号)は、「皇統に属する男系の男子」である皇族が皇位を継承する旨を定めています。
 ここで、「男系」とは、父方のみをたどることによって天皇と血統がつながることとされています。一方、「女系」とは、「男系」以外の天皇との血のつながり、すなわち母方を通じてしか天皇とつながらない血のつながりを含んだ血統のつながりのことをいいます。
 今上陛下は第126代の天皇でいらっしゃいますが、これまで歴代の皇位は、例外なく男系で継承されてきました。
 また、皇室典範には、
・非嫡出子は皇族としない
・皇族は、養子をすることができない
・皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合・皇族男子と婚姻する場合を除いて皇族となることがない
・皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる
ことなどが定められています。
 なお、「宮家」という言葉がありますが、これは、独立して一家をなす皇族に対する呼称であり、法律に基づく制度ではありません。

【3.議論の経緯】

 会議は、令和3年3月23 日、菅義偉内閣総理大臣・加藤勝信内閣官房長官御出席の下、議論をスタートさせました。
 第1回会議においては、様々な専門的な知見を有する方々等から幅広く御意見を伺い参考とするため、10の質問からなる聴取項目を作成し、ヒアリングを行うこととしました。この聴取項目は、
・「皇統に属する男系の男子」という皇位継承資格を有する皇族は、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下及び常陸宮正仁親王殿下の三方がいらっしゃるが、天皇陛下の次の世代の皇位継承資格者は、悠仁親王殿下のみである
・悠仁親王殿下以外の未婚の皇族は、全員が女性皇族であり、かつ、婚姻可能な年齢に達していることから、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」とされている現行制度の下で、悠仁親王殿下の世代には、悠仁親王殿下の他には皇族がいらっしゃらなくなることもあり得る
 という皇室の現状をどのように捉えるか、その現状に対してどのような対応策が考えられるのか、について考えていくため、作成したものです。(聴取項目の一覧は、参考資料6を御覧ください。)
 この聴取項目に基づいて、4月8日の第2回会議から6月7日の第6回会議までの計5回、合計21名の方からヒアリングを実施いたしました。(ヒアリング対象者の一覧は、参考資料7を御覧ください。)
 ヒアリングの対象者を決めるに当たっては、幅広いお考えをお聞きすることができるよう、歴史や法律、皇室制度や宗教などに詳しい専門家の方々から御意見をお聞きすることはもちろん、若い世代の方々等を含め広くお考えをお聞きすることができるように留意しました。
 このヒアリングを通して様々な考え方をお聞きした後、4回にわたり行った議論を踏まえて、7月26日の第 10回会議において「今後の整理の方向性4について」を取りまとめました。また、その際、会議として更なる議論を行うために必要と考えられる事項について調査・研究を行うよう事務局に対して依頼し、事務局において、7月末から3か月余にわたり調査・研究が重ねられました。
 事務局における調査・研究が終了し、11月 30日、岸田文雄内閣総理大臣・松野博一内閣官房長官御出席の下、「今後の整理の方向性について」を基礎にして会議における議論を再開し、本日12月22日、第13回会議において、この報告を取りまとめるに至りました。

【4.皇位継承と皇族数の減少についての基本的な考え方】

 附帯決議で示された課題は、皇位継承の問題と皇族数の減少の問題の二つであります。
 皇位継承については、先に述べたとおり、現在、皇位継承資格者として、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下及び常陸宮正仁親王殿下の三方がおられます。会議では、ヒアリングを通じて、これまでの皇位継承の歴史や伝統の重みについて改めて認識を深めることができました。このような皇位継承の流れの中で、将来において、皇位が悠仁親王殿下に受け継がれていくことになります。
 ヒアリングの中では、皇位継承のルールについて悠仁親王殿下までは変えるべきでないとの意見がほとんどを占め、現時点において直ちに変更すべきとの意見は一つのみでありました。
 皇位の継承という国家の基本に関わる事柄については、制度的な安定性が極めて重要であります。また、今に至る皇位継承の歴史を振り返るとき、次世代の皇位継承者がいらっしゃる中でその仕組みに大きな変更を加えることには、十分慎重でなければなりません。現行制度の下で歩まれてきたそれぞれの皇族方のこれまでの人生も重く受け止めなければなりません。
 会議としては、今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、次世代の皇位継承資格者として悠仁親王殿下がいらっしゃることを前提に、この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないということで一致しました。
 悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させるとも考えられます。
 以上を踏まえると、悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承については、将来において悠仁親王殿下の御年齢や御結婚等をめぐる状況を踏まえた上で議論を深めていくべきではないかと考えます。
 一方、現在、悠仁親王殿下以外の未婚の皇族が全員女性であることを踏まえると、悠仁親王殿下が皇位を継承されたときには、現行制度の下では、悠仁親王殿下の他には皇族がいらっしゃらなくなることが考えられます。会議においては、このような事態はどうしても避けなければならないということで意見の一致を見ました。そのためには、まずは、皇位継承の問題と切り離して、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題であります。これについては、様々な方策を今のうちに考えておかなければなりません。
 以下、この「皇族数の確保」について、会議として議論したことをお示しします。

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