大賀英二
中国文化財返還運動を進める会では、11月19日午後に東京・田町の港区立産業振興センターにおいて、「日中の草の根運動で文化財返還を実現しよう」と呼びかけ、90名近くの参加者を得て集会を持ちました。私たちの「進める会」は、戦前に日本が中国大陸において取得した文化財返還に関心ある約50名の個人(団体)が連絡を取り合って昨年末に結成され、その目的は文化財の返還運動を進めるうえで必要な資料と研究成果を広く社会に公開・普及し、平和と日中友好の推進に寄与しようとするものです。この集会では「進める会」が中国から収奪した文化財の返還を求めて運動を進めてきた経過と現状が報告され、またオンラインで中国での民間レベルでの返還運動との連携を深めることもできました。
この日の集会は関東学院大学・鄧捷教授の司会で開始され、最初に進める会共同代表・藤田高景さんから、戦前日本が日清戦争直後の1895年に遼寧省海城の三学寺から略奪して靖国神社に設置した一対の狛犬(石獅子)、同じく現在の栃木県矢板市の山縣有朋記念館に設置された石獅子一体を中国へ返還すること、そして日露戦争直後の1908年に同じ遼寧省旅順から略奪して皇居内に設置されている鴻臚井碑の返還について、本年4月の集会以降に進められてきた運動経過が報告されました。
次に、明治大学教授の山田朗さんから「日中戦争とウクライナ戦争から学ぶもの」と題して講演がなされました。そこで山田教授は、明治以降の日中戦争と現在のウクライナ戦争との類似性を詳細に説明したうえで、かつての戦争が世界戦争に至る経過を分析、いまのウクライナ戦争が同じ危険性を有していると指摘されました。最後に、歴史的な知恵を動員しながら中国との付き合い方を創出することの必要性を訴えました。
続いて、本会共同代表である東海林次男さん(東京都歴史教育者協議会会長)が講演「モノが語る歴史の捏造と瑕疵文化財」を行いました。日清戦争に始まる侵略戦争がどのような文化財の略奪に加担したかを説かれ、現在の美術館・博物館で展示している文化財の来歴を認識してその返還運動の大切さを強調されました。
この日、本会に団体として参加している大阪狛犬会の仲間2名が新幹線で上京。大阪での活動に関する報告を資料に基づいてお話しされています。集会は、進める会の共同代表である五十嵐彰さんから閉会の挨拶を受けて、夕方の5時少し前に終了しました。
上述したようにいま、皇居内の鴻臚井碑、及び靖国神社の狛犬を私たちが返還要求の対象として運動を進めるうえで、天皇制と靖国問題は欠かせない問題であります。私たちの運動への参加を呼びかける次第です。
「進める会」は年末12月12日から18日(日曜)まで千代田区の「九段生涯学習館2F」で開催される「日本の中国侵略を考える・写真展」に、中国文化財返還運動を紹介するパネル展示で参加します。下記の3名の共同代表が、同写真展の会場でミニ講演会を予定しています。
・13日(火)纐纈 厚さん「中国侵略から日本の近現代史を考える」
・14日(水)東海林 次男さん「靖国神社の “戦利石獅子” の由来など」
・18日(日)五十嵐 彰さん「文化財返還運動の思想的核心と提起された諸問題」
いずれも午後1時半から3時の予定。
中国文化財返還運動を進める会編『中国文化財の返還--私たちの責務』
このたび、中国文化財返還運動を進める会の編集によるブックレット、『中国文化財の返還--私たちの責務』が刊行されました。
私たちの会は、靖国神社・山縣記念館の石獅子、皇居の鴻臚井碑を当面の返還運動の対象として活動を始めていますが、本会を準備する過程で、文化財返還についての基本的な考え方や、それぞれの文化財が略奪された経緯などについて、さまざまな史料から検討してきました。その研究成果を、本会のメンバー(一瀬敬一郎・五十嵐彰・東海林次男・鄧捷・大賀英二)が分担執筆してまとめたのがこのブックレットです。
また、北海道大学法学研究科の吉田邦彦さんから、欧米での返還問題などの動きについて特別に寄稿していただきました。A5判54ページ、一部500円(送料別)です。ご注文をお待ちしています。
問い合わせ先
中国文化財返還運動を進める会
東京都港区西新橋1-21-5 一瀬法律事務所 /03ー3501ー5558 /Mail:info@ichinoselaw.com
郵便振替:00120-7-636180(中国文化財返還運動を進める会)