大日本帝国憲法の告文・勅語・上諭

◉1889 年2月11日に発布された大日本帝国憲法ならびに皇室典範の前には、天
皇による 「告文(こうもん)」と「勅語」が付されていた。 告文は 「皇祖皇宗」に向
けて憲法制定を知らせ、勅語は「臣民」に対して憲法発布を知らせる文書である。 告文
と勅語は憲法の本文を構成す るものではない。
◉発布に伴って発せられた告文、勅語、上諭はあわせて「三誥(さんこく)」と称され
る。
◉告文:大日本帝国憲法が発布されるにあたって、これに先立ち同日朝、明治天皇が宮
中三殿の賢所を自ら拝礼、憲法発布を奉告した。この内容が告文である。
◉勅語:明治天皇から黒田清隆首相に憲法本文が下賜された。これと同時に、勅語が渙
発された。
◉上諭:通常は、天皇が法律等を裁可し、成立させたことを表示する形式的なもので、
ほとんどの上諭が裁可・成立の事実を示す一文のみのものであるが、帝国憲法の上諭に
あたってはその性質上、六分段に分かれる長いものになった。
(以上、ウィキペディアより)

【吿文】
皇朕󠄁レ謹ミ畏ミ

皇祖

皇宗ノ神靈ニ誥ケ白サク皇朕󠄁レ天壤無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ寶祚ヲ承繼シ舊圖ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニ世局ノ進運ニ膺リ人文ノ發達ニ隨ヒ宜ク

皇祖

皇宗ノ遺訓ヲ明徵ニシ典憲󠄁ヲ成立シ條章ヲ昭示シ內ハ以テ子孫ノ率由スル所󠄁ト爲シ外ハ以テ臣民翼贊ノ道ヲ廣メ永遠ニ遵行セシメ益〻國家ノ丕基ヲ鞏固ニシ八洲民生ノ慶福ヲ增進スヘシ玆ニ皇室典範及憲󠄁法ヲ制定ス惟フニ此レ皆

皇祖

皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述スルニ外ナラス而シテ朕󠄁カ躬ニ逮テ時ト俱ニ擧行スルコトヲ得ルハ洵ニ

皇祖

皇宗及我カ
皇考ノ威靈ニ倚藉スルニ由ラサルハ無シ皇朕󠄁レ仰テ

皇祖

皇宗及
皇考ノ神祐ヲ禱リ倂セテ朕󠄁カ現在及將來ニ臣民ニ率先シ此ノ憲󠄁章ヲ履行シテ愆ラサラムコトヲ誓フ庶幾クハ
神靈此レヲ鑒ミタマヘ

【憲󠄁法發布勅語】
朕󠄁國家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣榮トシ朕󠄁カ祖宗ニ承クルノ大權ニ依リ現在及將來ノ臣民ニ對シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス

惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼ニ倚リ我カ帝國ヲ肇造シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威德ト竝ニ臣民ノ忠實勇武ニシテ國ヲ愛シ公󠄁ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル國史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕󠄁我カ臣民ハ卽チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ囘想シ其ノ朕󠄁カ意ヲ奉體シ朕󠄁カ事ヲ奬順シ相與ニ和衷協同シ益〻我カ帝國ノ光榮ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負擔ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ

【上諭】
朕󠄁祖宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕󠄁カ親愛スル所󠄁ノ臣民ハ卽チ朕󠄁カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所󠄁ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ增進シ其ノ懿德良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ俱ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日

[2]ノ詔命ヲ履踐シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕󠄁カ率由スル所󠄁ヲ示シ朕󠄁カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所󠄁ヲ知ラシム

國家統治ノ大權ハ朕󠄁カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所󠄁ナリ朕󠄁及朕󠄁カ子孫ハ將來此ノ憲法ノ條章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ

朕󠄁ハ我カ臣民ノ權利及財產ノ安全󠄁ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範圍內ニ於テ其ノ享有ヲ完全󠄁ナラシムヘキコトヲ宣言ス
帝國議會ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議會開會ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有効ナラシムルノ期トスヘシ

將來若此ノ憲法ノ或ル條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕󠄁及朕󠄁カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕󠄁カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ

朕󠄁カ在廷ノ大臣ハ朕󠄁カ爲ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕󠄁カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ

御名御璽

明治二十二年二月十一日

內閣總理大臣 伯爵󠄂    黑田淸隆
樞密院議長 伯爵󠄂     伊藤博文
外務大臣 伯爵󠄂      大隈重信
海軍大臣 伯爵󠄂      西鄕從道
農商務大臣 伯爵󠄂     井上 馨
司法大臣 伯爵󠄂      山田顯義
大藏大臣兼內務大臣 伯爵󠄂 松方正義
陸軍大臣 伯爵󠄂      大山 巖
文部大臣 子爵󠄂      森 有禮
遞信大臣 子爵󠄂      榎本武揚


◎「告文・勅語・上諭の大意」(ウィキペディアより)

【告文】
第一文段

明治天皇が皇祖皇宗(神武天皇および歴代天皇)に対し、自身の皇位継承以来、明治維新をはじめとする多事多難の時局を経て国家の独立を保持したことを奉告している。

第二文段

明治維新以降の、外国との国交の進展、および国内社会の急速な文明化を鑑みて憲法を制定したこと、その憲法の精神および目標とするところは、歴代天皇の統治のありようを基にしたものであること、憲法制定の目的は、天皇および国民による国家統治の基準を定め、国家機構と民生を安定させることにあることを奉告している。

第三文段

歴代天皇の神祐を祈るとともに、自ら率先してこの憲法に則って国を治めることを誓い、統治への神霊の加護を祈っている。

 

【勅語】
第一文段

国家の統治(天皇の統治大権の行使)を果たすために、憲法を発布したことを宣言している。

第二文段

歴代の天皇による統治が、国民の協力によって行われてきたことを確認している(君民共治)。

第三文段

君民共治の伝統を振り返り、これからも天皇による統治に協力することを求めている。

【上諭】

第一文段

明治天皇が国民の福利増進、君民共治の実現を目的に、国会開設の詔に従い憲法を制定したことを宣言する。

第二文段

天皇の統治大権は歴代の天皇から継承した者であり、以降歴代の天皇はこの憲法の定めに則って統治を行うべきであることを定めている。

第三文段

国民の権利及び財産を憲法および法律に則って保障することを定めている。

第四文段

帝国議会を翌明治23年(1890年)に召集、それとともに本憲法を施行することを定めている。

第五文段

帝国憲法の条文の改正について定めている。

第六文段

国務大臣に輔弼の責を、国民に国家統治(君民共治)の責を、それぞれ求めている。

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