ユーゴ戦争:報道批判特集
ユーゴ人道介入の口実「虐殺」デッチ上げ (その15)

(その15) 喧嘩両成敗に陥る無精な自称平和主義者

1999.7~2000.5《特別緊急連載》

 さて、別途掲載、原爆と同類の東海村臨界爆発で、本誌の編集は、ますます手を広げ過ぎとなり、普通の商業メディアならば、収拾が付かぬほどの連載記事の長期休載、約束違反の状態に陥った。実験中の無料頁だから許して頂けるだろうが、自称編集長としては居心地が悪い。

 ユーゴ戦争の単発特集の方では、『週刊プレイボーイ』の現地取材が4本も溜まっている。そこで、少し先を急いで、大手メディア報道と串刺しで、受け手の問題点までを指摘してしまう。率直な「憎まれ口」による中締めである。ああ、また敵が増える!

 まず、今回の標題の意味を、分解して説明する。

「喧嘩両成敗」とは、簡単に言うと、セルビア人とアルバニア人の「歴史的な民族の相剋」に問題を狭め、現在の国際政治状況を無視した無責任な「解決」を論ずることである。

「喧嘩両成敗」は、幕藩体制などの封建的支配の制度を維持するために、ことの理非を問わずに争いを禁ずる秩序の表現である。こともあろうに、この封建思想に、現代の自称平和主義者たちの多数派が陥っているのだから、NHKなどが安心して、その種の「ルポ」と称する狭い「KLA発表報道」を流しては、得々としているのである。

「無精」については、これまでに縷々述べてきた通りの状況である。「誰も自分では調べずに大手メディアの影響を受けて、セルビア人が『民族浄化』をやっていると思い込んでいる」のである。これが普通の無関心層なら、別に驚くことはないが、「ユーゴ空爆反対!」の集会に参加したり、その種の集会の講師になったり、さらには集会を組織する人々でさえもが、そうなのだから、私は、とても疲れる。いい加減、嫌になるのである。

 なぜかと言えば、そういう人々は、「自称平和主義者」と呼べば、きっと、怒るだろうが、本来、アメリカや日本の大手メディアの報道には、眉に唾をたっぷり塗り込んで接していなければならない立場なのに、とてもとても強力に影響を受けてしまっているのである。最新の実例を示すと、「憲法9条」を守る運動でも知られる『告知板』329号(1999.10.20)に、「ユーゴ空爆は終わったが」という投稿が載っている。個人名は控えるが、投稿者は、アメリカに住む日本人の医師である。「空爆の長期化で米兵器メーカーが大いに潤っていたことは、4月上旬に報道されている」などと、具体的な批判の目は鋭いのに、空爆に関しては、「米政府の主張にも正しさがあったことは知っている。いかなる民族虐待も不当だ」という前置きを明記してしまっているのである。

 以上の「喧嘩両成敗」思想に陥り、「無精」なために、結果的には、大手メディアの思想支配に屈している人々が、平和運動の主導権を握ると、どういう結果を生むものだろうか。その典型が、空爆の期間にハーグで開かれた平和集会である。「コソボのアルバニア系住民」が参加していて、反対したために、空爆反対の決議が、流れたのである。「反対の反対は賛成と同然」である。

 規模の大きさに感激した日本人の報告も何度か聞いたが、実は、精々、千人規模である。日本の原爆記念日を中心とする集会でも、かつては何万人も集め、世界中から代表が参加していた。その、精々、千人規模の集会では、上記の括弧付きの「コソボのアルバニア系住民」の本当の身元を確かめたと言う話は、まったく聞かないのである。市民集会というものは、精々、この程度なのである。

 このハーグの平和集会に参加し、かつ大いに不満を覚えている日本人に聞くと、ハーグの運動の中心になっている欧米の自称平和運動家たちは、1990年代初頭に溯る「ユーゴ連邦問題」という議論の立て方を非常に嫌うとのことである。これは、完全に「喧嘩両成敗」思想に陥った自己満足の運動でしかない。

 さらには、このハーグの平和集会と、私が参加していきたニューヨークの「独立国際戦争犯罪法廷」とは、舞台裏で分裂していた。両方ともにアメリカ人の「お爺ちゃん」が親玉で、喧嘩別れをしたというのである。日本の原水爆禁止運動も、「お爺ちゃん」支配の権威主義的な政党、日本共産党と、今は亡き日本社会党による私物化抗争の中で、分裂し、縮小している。同じ現象である。

 これまでに、本誌の「ユーゴ戦争特集」では、大手メディアの典型として、NHKや朝日新聞、岩波書店などを取り上げてきたが、これも同じ批判の繰り返しで、実に空しい。翻って考えると、政治と同様に、大手メディアの水準を決定しているのは、その受け手の水準なのである。その水準が上がらないことには、個別の報道への批判を繰り返してみても、賽の河原の石積みに終わってしまう。

 結論としては、個人の脳ミソの自立の促進、そのために不可欠な刺激としての憎まれ口、これしかない。

 以上で(その15)終り。一応の中締め。

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