ユーゴ戦争:報道批判特集
ユーゴ人道介入の口実「虐殺」デッチ上げ (その1)

(その1) わが介入への逡巡と周辺徘徊の経過

1999.7~2000.5《特別緊急連載》

 ユーゴ問題については、別途、mail、Web週刊誌『憎まれ愚痴』で、連続の特集報道をしているが、その資料収集に至る経過とその後の変転の曲折を、物語形式に綴り直し、その作業を通じて、さらに分かりやすくし、自分なりにも問題点を深めていきたい。

 さて、まずは、ことの発端だが、私は、「コソボ虐殺“演出説”」と題する『読売新聞』(1999.1.24)の記事を、地元の図書館の縮刷版で発見した時には、いわゆる発見の喜びを味わったのではなくて、実は、何を隠そう、「嫌な予感」が当たったという重苦しい気分に襲われてしまったである。

 この『読売新聞』(1999.1.24)記事そのものの全文は、すでに、紙の印刷の個人新聞に入れて配布したし、多くの仲間にmailで送った。わがホームページで実験中のWeb週刊誌『憎まれ愚痴』にも入力した。下記のURLである。

 http://www.jca/apc/org/~altmedka/ron-24-yom.html

 要約して説明すると、NATO軍がユーゴ空爆開始の最大のきっかけとした「ラチャク村のアルバニア系住民45人の虐殺事件」の報道が、実は嘘で、欧米が後押しをする「コソボ解放軍」によるNATO軍呼び込みのための「演出」だったという疑問提出の記事である。

 ただし、この記事は、日本でも世界でも最大発行部数を誇る『読売新聞』の独自取材の結果ではなくて、パリ支局発、現地の『ル・フィガロ』『ル・モンド』『リベラシオン』各紙の報道の短い要約紹介である。

 世界第2位の発行部数を誇る『朝日新聞』は、これらのフランス紙報道の要約紹介を、最大かつ最強の競争相手の『読売新聞』に抜かれたことも手伝ってか、少なくとも5日間は棚上げにした。この種の業界内だけの意味しかない、実に下らないスクープ合戦、結果的には読者無視となる意地っ張りの堕落の習性は、まさに、日本の大手メディアの通弊として、広く関係者に知れ渡っている。

 衰えたりとはいえ、世界第3位の発行部数の『毎日新聞』は、たったの1人のパリ支局員の手が、いや目が、回らなかったこともあってか、以上のフランス紙報道を、まったく無視した。現在わが家に宅配される唯一の日刊紙、『日本経済新聞』も、『毎日新聞』と同様だった。『産経新聞』は縮刷版がないので、この際、割愛する。

 こうした報道状況についても、後に論じたいが、私は、ある「元大手通信社記者」の旧友から、彼が自宅で取り続けている日本の「三大新聞」のどれかに、以上のフランス紙報道と、その後の疑惑否定の逆の海外報道が紹介されていたと、教えられたのである。彼は、『ル・モンド』も取っているから、その記事は覚えていた。しかし、日本の新聞の方は、どれだったかを覚えていなかった。それを聞いた途端、私は、第1感で、最初のは『読売新聞』かな、次のは『朝日新聞』かなと思ったのだが、その通りだったのである。

 この「第1感」の根拠と、私と『読売新聞』や『朝日新聞』との浅からぬ因縁についても、後に記すが、先に述べた「嫌な予感」の原因は、このこと以外にもあった。それは、拙著『湾岸報道に偽りあり』(p.1)に記した「出遅れの反省」を繰り返すことへの、一種の本能的な拒否反応でもあった。

 湾岸戦争の時にも、これは当たり前と言えば当たり前のことだが、その時に集中していた仕事があった。今度も、元旦から実験を開始したWeb週刊誌『憎まれ愚痴』の定期発行や、その他、インターネット関係だけで手一杯の状態だったから、また、あの、アメリカ帝国主義が、何をやらかしているのかな、などと横目で見ながら、3月24日からの空爆開始以後も、積極的な情報収集の努力はしていなかった。

 ところが、英語のヘヤリング訓練を兼ねて、毎日、聞きながら録音し、その録音テープをウォークマンに入れて、自転車走行中に自称「チャリン語学」している米軍放送ラディオでは、ユーゴ関係ニュースが激増状態になってきた。

 インターネット情報の中にも、ユーゴ関係の集会案内やら、空爆中止要請文やら、抗議文やらが、次々と流入してきたのである。しかも、同時並行で、オランダで開かれた市民メディア集会関係の情報も入ってきた。どうやら、ユーゴ問題の初期から活動してた「自主放送」こと「アドリア海の海賊放送局」の系統が、ユーゴ連邦内部で、反政府運動に荷担しているらしいのである。この件についても、後に論じたいのだが、簡単に言うと、この系統の運動には、欧米型の市民運動に付きまとう「うさん臭さ」があるのである。

 そこで、ユーゴ問題の初期から現地入りしている「ヤブカ募金・旧ユーゴの子供を援助する会」のNさんに電話したみた。珍しく日本にいて、すぐに集会案内を送ってきた。まずは4月25日の日曜日の屋内集会、次には5月16日、集会名は「Stop the 空爆!!/ユーゴに平和を市民集会とデモ」だった。その前後、連鎖的に、いくつかの集会に出てみては、参加者に、アメリカ筋が脅迫的に「ホロコースト」として告発している「セルビアの民族浄化」なるものの実態を聞くと、誰も正確には知らないと言うことが分かった。つまり、「分からないことが分かった」ことになる。

 これは、いよいよ怪しいぞ、と思って、図書館で雑誌を全部めくって見た。関係記事を全部コピーして、いつものごとくに、出掛ける時の電車の中で、パラパラめくってキーワード検索による記事点検をした。すると、一番怪しい背景の雑誌、創価学会系の『潮』(1999.6)の記事だけに、具体的な事件としての「ラチャク村の虐殺」への疑問提出が見られたのである。その疑問の根拠は、上記の『ル・フィガロ』記事だった。

 その後に分かったことだが、『ル・フィガロ』は、1999.1.20,21の両日にわたって、合計で優に丸々2頁にも及ぶ超大型記事を載せていたのである。出遅れの『ル・モンド』は21日、さらにその『ル・モンド』の記者から取材した『リベラシオン』は22日、ともに半頁である。日本の例に直すと、『読売新聞』が先駆け、『朝日新聞』と『毎日新聞』が後追いしたような状況である。

 次の問題は、上記のように「元大手通信社記者」の友人が、「それをさらに否定する記事を読んだ記憶があると言った」件である。こちらは『朝日新聞』(1999.1.29)の記事、「ラチャク村の『虐殺』事件/真偽めぐり論争/欧米メディア」だった。この記事も全文をmailで送り、わがホームページで実験中のWeb週刊誌『憎まれ愚痴』にも入力した。下記のURLである。

 http://www.jca/apc/org/~altmedka/ron-24-asa.html

 この『朝日新聞』記事は、疑惑報道を打ち消すための『ワシントン・ポスト』記事を中心とするものだったから、その報道姿勢には大いに疑問を呈したいのだが、以下のように実に短く、フランスの報道状況も添えられていた。これで「バランスを取った」ことにする積もりなのであろう。

「一方、フランスのルモンド紙は、遺体発見前後に村を訪れた合意検証団のメンバーの証言などから、一部の遺体が実際の死亡現場から発見現場に動かされていたと指摘するなど、アルバニア人側による偽装の疑いがあるとの見方を伝えた」

 以上のように、活字メディアでは、『潮』の記事を手掛かりに、フランスの報道に詳しい友人から聞いて、『読売新聞』と『朝日新聞』の記事に到達し、そこからフランスとアメリカの各紙の報道状況を知り、実物を求めて日本の図書館で探し、該当記事をコピーしたというのが、私の資料探索の経過だった。

 この間、映像メディアの方では、NHKが、5月14日、夜10時から45分間の3チャンネル「海外ドキュメンタリー」の枠で、BBCのユーゴ問題特集「コソボ紛争・その構図と歴史的背景/民族運動の起源」を、論評なしに、そのまま放映した。「ラチャク村の『虐殺』事件」に関しては、「アルバニア系住民」と言うだけで、事件の経過や犯人特定のコメントを避け、ただ単に、坂道に数人の死体が同じ方向に頭を向けて、ほぼ同じ間隔で行儀良く転がっているという、実に奇妙な状況を写し出した。

 この映像を見ただけで、私は、「ラチャク村の『虐殺』事件」はデッチ上げに違いないと確信したのである。活字メディアの資料収集を開始したのは、この映像を見て以後のことであった。

 以上で(その1)終り。次回に続く。

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