ユーゴ戦争:報道批判特集
ユーゴ人道介入の口実「虐殺」デッチ上げ (その11)

(その11)「米ロ覇権争い」カスピ海石油の報道状況

1999.7~2000.5《特別緊急連載》

1999.9.20.mail再録。

 ユーゴ戦争の背後に「カスピ海油田争奪戦あり」と、私が指摘したら、具体的に論証せよという意見が寄せられました。

 私の本音で、「下らないワイドショーなど見る暇あったら経済紙誌の見出しぐらい見たら」などとを言ったら、きっと柳眉(最近は男の子も眉いじりするから男女差別とは言えないはず)を逆立てて怒られるでしょうが、でも何で、こんなに分かり切ったことを、石油屋でも経済記者でも、大手メディア国際記者でもない私が、わざわざ「論証」しなければならないのでしょうか。疲れるなあ、と、いささか憮然ながらも、とりあえず、読者の協力を得て、「カスピ海石油」に関する雑誌記事の索引をしてもらったところ、最近の記事が約30ほど出てきました。

「メディア戦争」も戦争の一環です。戦争には「天王山」とか「敵は本能寺にあり」とか、彼我の争奪合戦となる要の場所があります。場所、そして獲得目標、それを見抜かずに戦争に勝てる訳がありません。「メディア戦争」においても、その事情は全く同じです。

 かつて、大日本帝国の「皇軍」は、

「東洋平和の為ならば、何で命が惜しかろか!」

 と蛮声でガナり歩いては、中国大陸を侵略しまくりました。背後の権力者の本音は、「平和の為」どころではなくて、「大陸の権益獲得」にありました。この野蛮な侵略の歴史については、今や、嘘っぱちの口実、「平和の為」を擁護する馬鹿者は、「某」子供騙しの下手糞漫画書き程度の、無知蒙昧、厚顔無恥な、ド恥知らず以外には、ほとんどいません。

 日本の本音の狙いは当時も明らかでした。証拠は山程残っています。CIAの先輩とも言える「南満州鉄道株式会社」、略称「満鉄」の調査部が作成していた資料の数々、「国家総力戦」云々の、まさに国家機能のすべてを傾けた研究などが、国会図書館の書庫で徐々に腐り、黴を放ち続けています。埃アレルギー、正確にはチリダニの糞アレルギーの強い私には、その種の匂いが、すぐに分かります。露出した皮膚が痒くなります。ですから、余程の事情がない限り、国会図書館には、足を踏み入れたくないのです。

 ところが、今も今、そこらの商業雑誌にさえ溢れている「ユーゴ戦争」の本音について、「まるで指摘しない」と言えば「カマトト」の褒め過ぎになるでしょう、間違いなしに、まるで知らない「ユーゴ空爆反対論者」の文章が、かの「いわゆる心情左翼」好みの岩波書店発行、『世界』などにも載り、それが新聞広告の目玉にまでなっているのです。

 これでは全く勝ち目はない。憮然、暗然、仕方なしに、上記の約30の雑誌記事目録をデジタル化しようかと渋々思い定めたところ、『日本経済新聞』に、最近の情勢分析が載っていたので、これを先に紹介します。

 まずは、私なりの見出しを付け直すと、

カスピ海石油めぐる武装勢力と大国の思惑

 であり、文中の以下の部分が、ゴシック・リードの核心となります。

「(チェチェン武装勢力の)目標はチェチェンとダゲスタンをともに独立させ、連邦国家を創設することだ」

「ロシアのカスピ海沿岸部の3分の2を占めるダゲスタンを取り込めばこの連邦国家はエネルギー資源の宝庫とされるカスピ海に権益を持つことになる」

「武装勢力は、カフカス・中央アジアの資源に関心を示す外国の関与を嫌っている。昨年までチェチェンのマスハドフ政権との協力に関心を示した英国は現地で英国人技師が誘拐、殺害された後、手を引いた」

 以下が、本来の記事の全文です。

『日本経済新聞』(1999.9.20) 9面・国際14版
NEWSインサイト

イスラム原理主義/過激に

ロシアで国際テロ網構築進む

地図[中心部にカスピ海]説明:最近人質拉致・爆破などの事件が起きた地点(★)

★モスクワ

★ボルゴドンスク

★ダゲスタン共和国

★ビシケク(キルギス国境付近)

 ロシアの「やわらかな下腹部」といわれるカフカスから中央アジアにかけて、イスラム原理主義勢力による国際テロ・ネットワークの構築が進んでいる。ロシア南部ダゲスタンへのチェチェン武装勢力の攻撃、モスクワでの相次ぐ爆破テロ、そしてキルギスでの日本人技師拉致(らち)など、一定の関連性がうかがえる。ロシアとこの地域の旧ソ連諸国は過激の度を強めるその挑戦に直面している。

 キルギスで日本人を拉致した武装勢力が属するとされる「ウズベキスタン・イスラム運動」は、以前からチェチェン武装勢力とのつながりを指摘されていた。同運動の若者がチェチェンでゲリラ訓練を受け、ダゲスタンに侵入したチェチェン武装勢力にも加わっているとされる。

 ロシア国内で実質独立状態にある北カフカスのチェチェンは、いまやイスラム原理主義勢力の聖域と化している。チェチェン共和国のマスハドフ大統領は過去数回武装勢側から爆弾テロを仕掛けられているが、なんら対抗策をとれない。

 チェチェン武装勢力の中心人物は、ロシア当局から犯罪者として指名手配されているバサエフ氏だ。チェチェン紛争中の1995年、ロシア南部で病院を占拠する事件を起こし、過激派として一躍注目された。チェチェン和平後は共和国大統領選に落選し、一時マスハドフ政権で首相代行を務めたが、結局たもとを分かった。バサエフ氏の目標はチェチェンとダゲスタンをともに独立させ、連邦国家を創設することだ。今回その目標への第一段階としでダゲスタンに“出兵”した。ロシアのカスピ海沿岸部の3分の2を占めるダゲスタンを取り込めばこの連邦国家はエネルギー資源の宝庫とされるカスピ海に権益を持つことになる。

 ロシアの報道では、アラブ各国、パキスタン、アフガニスタン、トルコなどイスラム圏からチェチェンに資金と人員が送り込まれているという。中でもロシアが神経をとがらせているのが、バサエフ氏と、ケニアの米大使館爆破など原理主義テロの黒幕と米国から名指しされるサウジアラビア出身の富豪ウサマ・ビン・ラーディン氏の連携だ。2人を2年前に引きあわせたのが、ヨルダン出身でチェチェン紛争に野戦司令宮として参加したハタブ氏という。今回のチェチェン武装勢力の行動資金にビン・ラディン氏から2.500万ドルが提供されたとの報道もある。

 同氏関与の確証があるわけではないが、チェチェン武装勢力のテロはモスクワでの連続爆破事件にみられるように中東の原理主義過激派のテロ同様の激しさを増している。組織的、計画的なテロが多くなり、容易に犯人も特定できない。

 武装勢力は、カフカス・中央アジアの資源に関心を示す外国の関与を嫌っている。昨年までチェチェンのマスハドフ政権との協力に関心を示した英国は現地で英国人技師が誘拐、殺害された後、手を引いた。外国人誘拐は武装勢力からのある種のメッセージの側面も持っているといえる。日本のこの地域との協力を深める「シルクロード外交」にも大きな懸念材料だ。

(編集委員/江頭寛)

 最後に、次回に紹介する予定の雑誌記事の見出しの中から、一番分かりやすそうなところだけ、紹介しておきます。

1998.2.25.『SAPIO』潜入フォト&レポート「中央アジア狂騒」米国、ロシア、中国、イランほかが虎視眈々/「カスピ海」は大国が衝突する石油利権紛争の発火点だ

 以上で(その11)終り。次回に続く。

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