マイナポイントは
マイナスポイント?!

マイナポイント第2弾にはご注意を!

 6月30日に本格開始したマイナポイント第2弾は、一カ月がすぎた。1兆8千億円という巨額の税金を投入して、9月末までにマイナンバーカードを申請した人を対象に、
(1)マイナンバーカード新規取得者等に最大5000円相当
(2)マイナンバーカードの健康保険証利用申込者に7500円相当
(3)公金受取口座登録者に7500円相当
のポイントを付与するというものだ。
  第二弾で新たに始まった健康保険証登録と公金受取口座登録には注意が必要だ。マイナンバーカードの利用にはさまざまな危険があることを、いらないネットのリーフ11で指摘している。マイナポイントに便乗した詐欺にも、消費者庁と総務省が注意喚起をしている。
 目先のポイントを「お得」と言っているだけでは、政府の誘導にのせられてしまう。

 https://www.soumu.go.jp/main_content/000823110.pdf

●健康保険証利用の登録で自己負担が増える

 マイナンバーカードの健康保険証利用を登録すると、4月から窓口での負担額が増えている(3割負担の場合、初診料で21円、再診で12円、薬の処方で9円など)。オンライン資格確認を利用している医療機関を受診するだけで、初診時に9円の負担が増える。
 厚労省や国は「便利、お得」と宣伝しながら、負担増は市民に伝えようとしていない
 この加算が始まった理由は、国のオンライン資格等確認システム導入の補助金では、医療機関の導入経費や毎月の維持費に足りないからだ。例えば6月23日配信西日本新聞の報道によれば、九州中央病院では国の補助金を利用しても導入経費で約270万円の持ち出しとなり、さらに回線使用料や保守点検などの維持費が年間約24万円の負担で、加算にすがるしかないという。医療機関の負担が大きく導入が進まないために、費用を患者に負担させようという意図だ。
 6月に閣議決定された「骨太の方針2022」でこの加算の見直しをうたっているが、2022年8月2日現在、加算は続いている。費用を患者に負担させるか、医療機関に負担させるか、国が負担するか、国は困っている。費用対効果の疑わしいこのオンライン資格等確認システムは止めるべきだ。

●取り消しのできない利用登録

 しかもマイナポータルのよくある質問をみると、一度健康保険証として利用申込をすると、取り消すことはできないとなっている(No3570)。健康保険証利用の登録削除もできない(No3570)。一生の問題であり、登録する前によく考えるべきだ。またマイナンバーカードを使うと受診のたびに毎回提示して、顔認証か暗証番号を入力して本人確認が必要だ(No3652)。こういうことを、厚労省は積極的に伝えようとしていない。
 マイナンバーカードの健康保険証利用ができる医療機関は1/4で、診療所では17%程度だ(2022年7月24日現在)。国は来年4月から医療機関にシステム導入を原則義務化するとか、保険証の原則廃止を目指すと言っているが、「加入者から申請があれば保険証は交付される」と注記しているように、今後も健康保険証で受診可能で、マイナンバーカードは必要ない。

 公金受取口座登録にも注意が必要だ。公金受取口座は変更や登録削除が可能とされているが(デジタル庁よくある質問)、預貯金口座へのマイナンバーの付番は取り消すことができない(2021.5.11参議院内閣委員会平井大臣答弁)
 2015年の番号法改正で導入された税務調査や社会保障の資力調査のための預貯金口座へのマイナンバーの任意付番と、2021年のデジタル関連法で導入された公金受取口座登録は紛らわしい。しかも2021年のデジタル関連法では、預金保険機構を通して預貯金口座にマイナンバーを一括付番できる預貯金口座管理法もセットで成立した。
 公金受取口座登録を呼び水にして、反発の多い預貯金口座の付番に誘導しようという意図がミエミエだが、一度預貯金口座にマイナンバーを付番すると取り消せない。

●苦戦している?マイナポイント第2弾

    総務省発表

 マイナポイント第2弾は初日に電話が殺到したとか、第1弾では開始5日で78万件だったポイント申請が338万件あったなど、順調にスタートしたかのように報じられている。
 しかし7月4日に総務省が発表した開始5日間の申込み状況では、(1)カード新規取得者等は44万件弱で第1弾の半分程度だ。すでにカードをもっている人が新たなポイント申請をしているばかりで、目的のマイナンバーカードの普及にはあまり役立っていない。
 7月30日のNHK報道では、カードを28日までに取得した人はおよそ80万人で、交付率は第2弾開始前の先月29日から0.6ポイントの伸びにとどまっているということだ。これでは2023年3月までに、ほぼ全ての住民にカードを取得させるという政府目標の達成は不可能だ。
 決済事業者の対応も、第1弾では上乗せポイントを付けて利用者獲得を競い合っていたが、今回はあまり上乗せをしていない。現在対応している決済サービスは97で、前回は対応したものの第2弾から撤退した業者が30もあるということだ(週刊エコノミストonline)。

●交付税を人質に自治体に圧力

 市民や事業者の醒めた反応に反比例して、政府のマイナンバーカード普及策は過激化している。
 6月7日に閣議決定された「デジタル田園都市国家構想基本方針」(135頁)で、マイナンバーカード交付率が高い自治体ほど地方交付税を増やすことを検討するとしたことに批判が広がっている。自治体からも、財源の不均衡を調整するための地方交付税制度に反し、カード普及の遅れを自治体の責任にするセコイやり方だと批判が相次いでいる。
 これに対して総務大臣が6月21日の記者会見で、普通交付税の減額とかカード普及という政策誘導を意図したものではなく、カード普及によるデジタル化に係る財政需要の増加という観点から検討している、と説明したことで、「デジタル化で経費削減すると言っていたのに、逆に増加するのか」とさらに批判を招いている。
 地方交付税を人質にとって申請を自治体に競わせるのは、マイナンバーカードの申請は任意という法に反するやり方だ。

●市民の声を「聞く力」のない政府

 総務省は交付率や伸び率が平均を下回る自治体625団体を「重点フォローアップ対象団体」として、都道府県に対して知事・副知事など「高いレベル」から直接働きかけるよう要請するとともに、5月から交付率の全国順位を記載した一覧表を提供し始めた。自治体に対しては「カードの安全性に不安がある、利用する場面が少ないといった市民の声を理由に積極的に取り組んでいない」(総務省新型コロナウイルス感染症対策・デジタル化推進等地方連携推進本部第2回2022年6月30日資料3P.4)などと批判しながら、ますます自治体に普及の圧をかけている。
 7月末からは新たなCMや、携帯ショップでのマイナンバーカード申請のサポート、カード未取得の約5500万人にQR付きカード申請書の再送付など、全住民にマイナンバーカードを所持させるというムチャな目標に向けた絶望的な取り組みを強めている。政府に市民の声を「聞く力」はないのだろうか。

 「ものごとが進まないときに必要なのは、真の原因に向き合うことだ。政府がそれを怠り、筋違いの促進策に熱を上げる。あきれざるをえない光景だ。・・・・・・取得が進まないのは、国民がカードの利点を実感できず、個人情報が漏れたり悪用されたりするのではという不安も払拭(ふっしょく)されていないからではないか。根本的な問題の解決こそが求められていることを、政府は心すべきである。」マイナンバー制度の活用を求めてきた朝日新聞も、7月13日の社説でこう訴えざるをえない状況になっている。
 しかし政府がアメとムチの普及策をやらざるをえない状況になっているのは、マイナンバーカードの利便性として力を入れてきた住民票など証明書のコンビニ交付や、マイナポータルを使った子育て施策の電子申請などでは普及が進まなかったためだ。
 今こそ、自己情報コントロール権を保障しない人権侵害のマイナンバー制度の廃止という「根本的な問題の解決」に向けて踏み出すべきだ。

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