文際学園(大阪外語専門学校及び日本外国語専門学校)の伊勢理事長は組合に財務諸表を無条件で開示せよ!

2019年4月23日最高裁第3小法廷は、文際学園に対して、大阪高裁判決を不服として行った上告を棄却し、大阪高裁判決が確定した。 全国のユニオン、なにわユニオン、そして共に大阪外語専門学校で闘ったゼネラルユニオン大阪外語専門学校支部のなかまとともに完全勝利したことをここに宣言する。 我々は伊勢理事長と真正面から闘い、そしてこの最高裁の棄却という判断によって、勝利した。 伊勢理事長は自らの判断によって、ここまで解決を引き延ばした責任をとらなければならない。 組合は今後団体交渉を通じてその責任を追及していく。全国のユニオンのみなさん、「合同労組、コミュニティユニオンは会社(学園)の利害関係人であり、労働条件の交渉のための条件として、財務諸表を組合に何の条件も付けずに閲覧させなければならない」という高裁判決がここに確定しました。 最高裁棄却までの道のり 大阪府労働委員会命令 http://www.pref.osaka.lg.jp/rodoi/meirei/2649.html 文際学園 提訴 大阪地裁判決 https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/han/h10661.html 文際学園、大阪府 ともに控訴 大阪高裁判決 https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/han/h10675.html 文際学園 上告 2019年4月23日 上告棄却 高裁判決が確定する。 以下は確定した高裁判決をまとめたものです。 事件番号・通称事件名  大阪高裁平成30年(行コ)第36号 文際学園不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 控訴人兼被控訴人(1審被告)  大阪府(処分行政庁・大阪府労働委員会)(1審被告) 同補助参加人  労働組合なにわユニオン(「1審被告補助参加人」) 被控訴人兼控訴人(1審原告)  学校法人文際学園(「1審原告」) 判決年月日  平成30年9月14日 判決区分  一部変更 確定した内容: 1 争点1(本件組合らの平成25年8月28日付けの団体交渉申入れに対する法人の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか)について (1) 本件組合らの平成25年8月28日付け団体交渉申入れは,賃金の引上げ等を議題とする団体交渉を同年9月5日午後6時30分に開催するよう法人に求めるものであったところ,法人は,書面(同年9月4日付け回答書)で一定の回答をしたにとどまり,団体交渉に応じることはなく,団体交渉の日時の調整等を申し入れることもなかったものである。 (2) この点,法人は,上記の団体交渉申入れは①B1理事長の団体交渉への出席及び②財務諸表の提出という前提条件が満たされない限り本件組合らとして団体交渉を行う意思はないとする一方的なものであったから,法人がこれに応じないことは不当労働行為(労組法7条2号)には当たらない旨を主張する。 しかし,上記の団体交渉申入れの書面には「団体交渉は拒否しませんが」上記①又は②の点の「どちらかが前提となります。それ以外の団体交渉は,解決する気がないと見なします。」と記載されているところ,上記のとおり,団体交渉を拒否しない旨を明言している上,上記①又は②のいずれか一つが満たされない団体交渉は「解決する気がないと見なします。」との記載も,その文言上,そのような団体交渉は不要である(団体交渉自体を拒否する)旨の意思を表明したものとまでは認め難い。上記書面のかかる記載内容に加えて,法人と本件組合らとの間における従前の経緯に照らせば,本件組合らは,法人との団体交渉を通じて,賃金引上げ等を求めていたのであって,本件組合らにおいて,上記①又は②を絶対的な条件として求め,それが満たされない限り団体交渉は不要である(団体交渉自体を拒否する)ような意思を示すことは自らに不利益なものでしかなく,本件組合らがそのような不合理な意思を示したものでないことは明らかというべきである。以上の点を考慮すると,上記書面の記載は,せいぜい法人との団体交渉の持ち方として,上記①又は②のいずれかを実現した上で団体交渉が実施されることを強く要望する(かかる要望をすること自体は何ら不当なものではない。)旨を表明したものと解するのが相当である。 (3) 以上によれば,本件組合らの平成25年8月28日付けの団体交渉申入れに対し,法人は,正当な理由なく団体交渉を拒んだものというべきである。法人のかかる行為は労組法7条2号の不当労働行為に当たる。 2 争点2(法人の平成25年9月4日付け及び平成26年2月20日付けの財産目録等の提出・閲覧に関する対応が労組法7条3号の不当労働行為に当たるか)について (1) 法人の平成25年9月4日付けの対応について ア 法人と本件組合らとの間における従前の経緯によれば,本件組合らは,賃金の引上げ等の交渉のために法人の客観的な財政状況を知る必要があると考え,資料の開示を求めたが,法人から開示された3点セットや教員数,非常勤講師コマ数及び損益分岐点を表す学生数では客観的な財政状況は理解できないとして,財産目録等の開示を求めていたものである。そして,3点セットや教員数,非常勤講師コマ数及び損益分岐点を表す学生数といった資料が,法人と本件組合らとの間の労使交渉において開示されるべき資料としてそれのみで必要かつ十分であることが明らかであるといえる証拠は見当たらない。 このような経緯の下で,法人が,本件組合らから平成25年8月28日付けの団体交渉申入れに対して正当な理由なくこれを拒否し,同年9月4日付け回答書により,具体的な理由を示すことなく,また,開示可能な資料の範囲や開示の方法等について本件組合らと協議することもなく,上記の3点セット等以上の資料の開示を全面的に拒む回答をしたことからすると,法人の上記回答は,賃金引上げ等の交渉に必要なものとして資料の開示を求める本件組合らの要求に対し,誠実に対応する意思のないことを示したものと見るのが相当である。 イ 以上によれば,法人の財産目録等の提出・閲覧に関する平成25年9月4日付けの対応は,賃金の引上げ等の交渉に必要な資料として財産目録等の開示を要求する本件組合らに対し,誠実に対応する意思のないことを示したものであるから,本件組合らを弱体化させる支配介入行為というべきであり,労組法7条3号の不当労働行為に当たる。   (2) 法人の平成26年2月20日付けの対応について ア 法人は,①本件組合らから平成25年10月8日付け書面により,財産目録等を備え付けるとともにその場所を本件組合らに明らかにすること及び速やかに本件組合らに財産目録等を閲覧させるとともにその写しを協議資料として本件組合らに提出することを求められたにもかかわらず,②本件組合らに対し,同年10月11日付け書面では同年11月中に連絡する旨を通知し,同月28日付け書面では回答に時間を要する旨を通知したにとどまり,③さらに本件組合らから平成26年1月24日付け,同年2月3日付け,同月5日付け,同月10日付け及び同月17日付けで,平成25年10月8日付けの申入れに対する回答を文書で示すことやそれについての団体交渉をするよう繰り返し求められた末に,④平成26年2月20日付けの文書で,財産目録等は学校内に備え付けられていること及び本件組合らは合同労組であるため閲覧・写しの提出には応じられないことを通知したものである。 イ 上記の経緯の下で行われた平成26年2月20日付けの法人の対応は,回答を長期間遅延させた上に,開示可能な資料の範囲や開示の方法等について本件組合らと協議することもなく,本件組合らが合同労組であることのみを理由として,財産目録等の関覧等を拒否したものであるから,法人は,賃金引上げ等の交渉に必要なものとして資料の開示を求める本件組合らの要求に対し,誠実に対応する意思のないことを示したと見るのが相当である。 なお,法人は,本件組合らは私立学校法47条2項所定の利害関係人に当たらないから,平成26年2月20日付けの法人の対応は不当労働行為(労組法7条3号)に該当しない旨を主張するが,法人が私立学校法47条2項の規定に基づき本件組合らに対し財産目録等を閲覧に供する義務を負うか否かということと,本件組合らと法人との間の団体的労使関係における本件組合らの求め(仮に法人が本件組合らに対し財産目録等を閲覧に供する法律上の義務を負わないとしても,本件組合らが団体交渉を通じて上記閲覧等を求めること自体が不当となるものではない。)に対する法人の対応が不当労働行為に当たるか否かということとは,別個の問題である上に,法人自身も同日付け文書において私立学校法47条の解釈の点を理由として挙げていないことからすると,法人の上記主張は採用できない。 そして,賃金の引上げ等の交渉のための資料とする目的での財産目録等の開示において,合同労組とそれ以外の労働組合とを区別して取り扱うことに正当な理由があるとはいえない。 ウ 以上によれば,法人の財産目録等の提出・閲覧に関する平成26年2月20日付けの対応は,賃金の引上げ等の交渉に必要な資料として財産目録等の開示を要求する本件組合らに対し,誠実に対応する意思のないことを示したものであるから,本件組合らを弱体化させる支配介入行為というべきであり,労組法7条3号の不当労働行為に当たる。   争点3(平成26年2月27日開催の団体交渉における,①財産目録等の提出・閲覧<労組法7条2号,3号>,②財務状況の説明<同条2号>及び③財産目録等の閲覧制度の説明く同条2号>に関する法人の対応がそれぞれ不当労働行為に当たるか)について 原判決の「事実及び理由」欄の第5の4(原判決32頁6行目から35頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 →不当労働行為に当たる 4 争点4(法人が,本件組合らの,財産日録等の閲覧制度に関する平成26年3月27日付け,同年4月9日付け及び同年5月21日付けの各団体交渉申入れに応じなかったことが労組法7条2号の不当労働行為に当たるか)について 原判決の「事実及び理由」欄の第5の5(原判決35頁11行目から36頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 →不当労働行為に当たる 5 争点5(法人が,①本件組合と事前協議を行うことなく,組合員に対し,平成26年4月から昇給を行ったこと及び②本件組合らと事前協議を行うことなく,組合員に対し,「仮」の文字を記載しない給与明細書を交付したことがそれぞれ労組法7条3号の不当労働行為に当たるか)について (1) ①(本件組合と事前協議を行うことなく,組合員に対し,平成26年4月から昇給を行ったこと)について ア 法人が本件組合と事前協議を行うことなく組合員に対し平成26年4月から昇給を行ったことは,本件労使協定に反するものである。その理由は,原判決の「事実及び理由」欄の第5の6(1)ア(原判決36頁11行目から18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ 法人は,本件組合との間の本件労使協定に反して,事前協議を経ることなく労働条件の変更をしたものであり,これは,本件組合の労働組合としての活動を無力化するものというべきである。すなわち,法人が本件組合との間の労使協定を遵守しないということであれば,本件組合に加入して労使交渉をする意味がないということになりかねず,組合員の本件組合に対する信頼は失われることになるといえる。このことは,一般に昇給が労働者にとって有利であり,また,それが本件組合の組合員を含めた職員全体に対し行われたものであるとしても変わりはないというべきである。 なお,本件組合は,翌月(平成26年5月)には文書で法人に対し,事前協議を経ていないことについて抗議をしているから,本件組合が本件労使協定に反する行為について不問に付したものとはいえない。 ウ 以上によれば,本件組合と事前協議を行うことなく組合員に対し平成26年4月から昇給を行ったことは,組合員の本件組合に対する信頼を失わせるものであるから,本件組合を弱体化させる支配介入行為というべきであり,労組法7条3号の不当労働行為に当たる。 (2) ②(本件組合らと事前協議を行うことなく,組合員に対し,「仮」の文字を記載しない給与明細書を交付したこと)について 原判決の「事実及び理由」欄の第5の6(2)(原判決37頁10行目から38頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 →不当労働行為に当たる
  • 争点6(本件組合らの,平成26年度の昇給及び夏季・冬季一時金に関する平成26年6月16日付け団体交渉申入れに対する平成26年7月10日開催の団体交渉における法人の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか)について
原判決の「事実及び理由」欄の第5の7(原判決38頁12行目から39頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 →一部不当労働行為に当たる 7 争点7(平成26年7月10日開催の団体交渉における,①財産目録等の提出・閲覧<同条2号,3号>,②財務状況の説明<同条2号>及び③財産目録等の閲覧制度の説明<同条2号>に関する法人の対応がそれぞれ不当労働行為に当たるか)について 原判決の「事実及び理由」欄の第5の8(原判決39頁24行目から41頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 →一部不当労働行為に当たる 8 争点8(法人が,財産目録等の閲覧に当たり条件を付していることが労組法7条3号の不当労働行為に当たるか)について (1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件における法人の財産目録等の閲覧に関する経緯は,次のとおりと認められる。 ア 本件組合らは,法人との間で賃金引上げ等の交渉をする中で,法人の客観的な財政状況を知るための資料として財産目録等の開示を求め続けていたところ,平成26年2月20日付けで,法人から,本件組合らが部外者を含む合同労組であることを理由に, 開示を全面的に拒否する旨の回答を受けた。 イ 本件組合の執行委員長であったA1は,自身が法人の職員であることから,職員として閲覧申請をすれば財産目録等を閲覧できるのではないかと考えて,平成26年2月26日,自身で閲覧申請書を作成して法人に提出したが,閲覧することはできなかった。その際,A1は,法人に対し,閲覧申請書の書式を交付するよう求めたが,拒否された。 ウ 同年2月27日,本件組合らと法人との間で団体交渉が行われ,その際,法人は,合同労組は私立学校法(47条2項)所定の利害関係人に当たらないので財産目録等の閲覧はできないが,法人の職員個人であれば財産目録等の閲覧ができる旨を回答した。 なお,この団体交渉において,本件組合らは,法人に対し,開示を受ける財産目録等は団体交渉のみに使用する旨や第三者に漏えいしないという協定を結ぶこともできる旨を申し出たが,法人はそのような協議に応じる姿勢を示さなかった。 エ 上記の団体交渉での回答を受けて,A1は,翌2月28日,財産日録等の閲覧申請に赴いたところ,法人から,関覧申請には実印と印鑑証明書が必要である旨を伝えられた。A1は,同月26日に閲覧申請をしようとした際にも前日の団体交渉においても,閲覧申請に実印と印鑑証明書が必要であるなどとの説明は受けていなかったため,認め印しか持参していなかった。また,A1は,閲覧申請には「第三者に情報を漏えいした場合には損害賠償義務を負い,処分を受ける」旨が記載された誓約書の提出が必要である旨も伝えられた。A1は,この日も財産目録等を閲覧できなかつた。 オ 同年3月7日,A1は,実印と印鑑証明書を持参して,閲覧申請に赴いた。A1は,申請書に実印が必要である理由を1審原告に尋ねたところ,本人確認のためであるとの回答であった。A1は,前回の申請の際に,本人確認については職員証でよいと言われていたため,抗議した。 また,A1は,誓約書に記載されている「処分」の意味について尋ねたところ,就業規則上の懲戒処分であるとの回答であった。A1は,法人に対し,誓約書の写しを持ち帰って検討したい旨を申し入れたが,法人は,これを拒否した。 A1は,自身が財産目録等の閲覧申請をするのは,それにより得た情報を本件組合ないし本件組合らの賃金引上げ等の交渉で活用するためであったことから,これは上記の誓約書に抵触するのではないかと不安になり,結局,誓約書は提出せず,それでもなお閲覧をしたい旨を法人に申し出た。法人は,A1に閲覧をさせなかった。 (2) 本件組合の主張は,法人は,財産目録等の関覧に当たり,守秘義務違反に対する制裁として損害賠償請求のみならず就業規則上の懲戒処分を科す旨の文言が付記された誓約書の提出を求めたことにより,財務情報の入手を妨害したもので,法人のこの対応は,支配介入(労組法7条3号)に当たるというものである。 前記のとおり,法人は,平成25年8月28日以降本件組合らから要求されていた財産目録等の開示を拒否し続けた上,上記(1)のとおり,法人が職員個人であれば閲覧ができる旨を述べたためにA1が実質的に本件組合らに代わって閲覧申請を行おうとしていることを認識しながら,本件組合らが法人に対し財産目録等を団体交渉のみに使用し第三者に漏えいしない旨を約するとの申入れをしていたことも考慮せず,A1に対して,第三者に情報を漏えいした場合は損害賠償義務を負うことや就業規則上の懲戒処分を受ける旨の誓約書の提出を求めて事実上A1に閲覧申請を断念させたものであり,これは,実質的に,本件組合らによる団体交渉のための財産目録等の入手を妨害する行為であったと見るのが相当である。
  • したがって,上記のように法人が財産目録等の閲覧に当たり条件を付していることは,本件組合らの活動を妨害し,本件組合らを弱体化させる支配介入行為というべきであり,労組法7条3号の不当労働行為に当たる。
9 以上によれば,法人の請求は,本件救済命令のうち次の各部分の取消しを求める限度で理由がある。 (1) 同命令主文2項のうち,法人は,本件組合及びC1ユニオンから申入れのあった②財務状況の説明に係る団体交渉に誠実に応じなければならないとする部分(争点3の②,争点7の②に関する部分) (2) 同命令主文3項のうち,以下の点が労働組合法7条に該当する不当労働行為であると認定されたこと及び今後このような行為を繰り返さないようにすることを記載した文書を本件組合に対して手交することを命じた部分 ア 平成26年2月27日及び同年7月10日の団体交渉において,財務状況の説明を誠実に行わなかったこと(争点3の②,争点7の②に関する部分) イ 本件組合からの平成26年6月16日付けの同年度の冬季一時金に係る団体交渉申入れに対して誠実に対応しなかったこと(争点6に関する部分) (3) 同命令主文4項のうち,以下の点が労働組合法7条に該当する不当労働行為であると認定されたこと及び今後このような行為を繰り返さないようにすることを記載した文書をC1ユニオンに対して手交することを命じた部分 ア 平成26年2月27日及び同年7月10日の団体交渉において,財務状況の説明を誠実に行わなかったこと(争点3の②,争点7の②に関する部分) イ C1ユニオンからの平成26年6月16日付けの同年度の冬季一時金に係る団体交渉申入れに対して誠実に対応しなかったこと(争点6に関する部分) 10 結論 以上によると,大阪府労委の控訴は一部理由があるので,これに基づき原判決を本判決主文第1項のとおり変更し,法人の控訴は理由がないので棄却することとする。