『本多勝一"噂の真相"』 同時進行版(その26)

短評:『週刊金曜日』の言論詐欺

1999.6.24.mail再録。

『週刊金曜日』(1999.6.18)「ナチスによる民族殲滅政策を日本の裁判所が初めて公的に認定」なる言論詐欺記事については、発売直後に友人からファックスが届き、同記事中の「K氏」を私と知る多くの友人知人から、質問、意見が寄せられています。

 しかし、目下、これまたシオニスト謀略「ホロコーストの嘘」の上塗りと言うべき「ユーゴ・ラチャク村『虐殺』報道操作事件」の追及に追われ、、ネット上の「本多勝一研究会」から質問が出た際にも、「ゴミ記事は相手にする暇無し。ホームぺージを見られたし」(ただし、いささか、スキャナー読み込み校正ミス未訂正あり)と返事しました。

 まるで目を通す気になりませんでしたが、丁寧に読んで質問してくる方から聞くと、どうやら、編集部による本文とは違う見出しの付け方、実に卑劣な判決文からの恣意的引用が行われているようなので、その点のみ、とりあえず指摘し、『週刊金曜日』の言論詐欺を告発して置きます。

 まずは題名の「公的に認定」が言論詐欺です。これと合わせて、新美弁護士の文章の中の小見出し「ニュルンベルグ裁判を肯定」を見て下さい。

 裁判所は決して「ナチスによる民族殲滅政策を[中略]公的に認定」などはしておらず、これには私も逆の立場から不満なのですが、ホロコーストの歴史認識については、中立の立場で判決を書いています。

 判決文の粗筋は、大きく分けて、「事案の概要」(裁判所の理解)「原告の主張」「被告金子の主張」「被告会社の主張」、それに対して裁判所が認定した「前提となる事実」「裁判所の判断」になっています。

 新美弁護士は、以上のような構造の判決文の内の「事案の概要」(裁判所の理解)の中から、「[中略](ホロコーストについての)歴史認識が一般化している」と言う部分を引用しているのであって、「肯定」とは書いていません。

 ゲルハルト・ヒールシャー記者の文章にも、見出しのような「ホロコーストは実在したと東京の裁判所が認定」とは書いてありません。上記の新美弁護士と同じ部分を引用し、『[中略]歴史認識が一般化している』との判断を示した」と記しているのです。

 地の文章での言論詐欺は、元慶応大学の全共闘こと現「ショア・ビジネス」、梶村太一郎の執筆部分に顕著に現われています。判決文は、そのままでも新書判の本になるぐらいの長さの判決なので、該当箇所を確定するのに時間が掛かって、ますます腹立たしさが増すのですが。引用文自体が不正確なのです。

 梶村は、後述のように、「(いずれも判決文から)」としているのですが、「原告の名誉毀損を問擬するにとうてい足りない」となっているのは、判決文では正しくは「原告に対する名誉毀損を問擬するに到底足りない」です。

 しかも、この部分は「政治的デマゴギー」という表現について、裁判所が、「およそ現代の政治的論争においては反対論を攻撃する常套語の一つといえるほど慣用化されている」という理由で、そう判断してだけなのであって、私がホロコーストを嘘だと主張することが誤りだということでは、まったくありません。

 次に、梶村が、つぎのように記している部分についてのみ指摘します。

「[中略]原告の『ガス室否定論』の主張は『人道犯罪の犠牲者の名誉の冒涜を扇動するデマゴーグの、破廉恥な民族差別のパラノイアに近い行為である』」(いずれも判決文から)と批判されてもやむをえないとの司法認定なのです」

 もともと、この種の表現は、『週刊金曜日』記事に現われただけで、あくまでも被告の主張でしかないのであって、こんな「司法認定」などはまるで存在しないのですが、最早、呆れを通り越して、しかし、本当に仕方無しに、念のために判決文をめくり直してみると、やはり、上記の括弧内のような、まとまった文章自体が、どこにも存在しないのです。

『週刊金曜日』の堕落も、ここに極わまれり、と、判決するしかありません。

 以上で(その26)終わり。次回に続く。


(その27)『週金』への公開問題提起文(mail:江ノ原元)
本多勝一“噂の真相”連載一括リンク